県内を拠点にオペラ公演を手掛ける声楽家団体「四国二期会」が6日、ブルガリアの国立歌劇場で、源平屋島合戦を題材に県人が制作したオペラ「扇の的」を披露する。初の海外公演に向け、同会理事長で香川大教授の若井健司さん(58)は「香川の芸術文化を海外に紹介するという私たちの長年の夢がかなった。これを第一歩としたい」と意気込んでいる。
若井さんによると、公演のきっかけは若井さんが同歌劇場のディレクターに提供した「扇の的」の資料。ブルガリアでの公演に出演した際に、ブルガリア人は日本への興味が高いと聞きつけ、参考にと資料をディレクターに渡したという。その後、ディレクターから公演の打診があり、昨年11月に正式に招へい状を受け取った。
会場はスタラザゴラ国立歌劇場で、1925年に創立された由緒ある歌劇場。公演では、同会の19人が同歌劇場所属の合唱団、オーケストラと共演し、日本語で全幕を上演する。
「扇の的」は台本、作曲、出演などを全て県人が担った作品。屋島に逃れ、死を予感して滅び行こうとする平家の女性たちと、厳しい戦いの中を懸命に生きようとする那須与一ら源氏の姿を描く。2014年にサンポートホール高松の開館10周年記念事業で初演され、同年に県内の優れた舞台芸術をたたえる「ブルーポラリス賞」に輝いた。
ブルガリア公演まで2週間を切った9月23日には、高松市高松町の古高松コミュニティセンターで最後の通し練習が行われた。十二単(ひとえ)やよろい武者の衣装を身に着けた出演者らが本番さながらの気迫で臨み、歌や動きを確認した。
公演に義経役で出演する前田昭和さん(49)は「高松で作られたオペラを海外で披露できるのは夢のよう。屋島のイメージをブルガリアの観客に少しでも伝えられたら」と語った。