琴平町の金刀比羅宮表参道で参拝客に利用されている「石段かご」が、来年1月中旬にも営業をやめることが分かった。担ぎ手の高齢化に加え、後継者が見つからないことから廃業を決断したという。体力がない高齢者らが象頭山に鎮座する同宮に参拝できる唯一の乗り物で、こんぴら参りの象徴的な風景だっただけに、参拝客や周辺の土産物店の店主らから惜しむ声が上がっている。
石段かごの屋号で営業する田中武彦代表(72)=同町=によると、営業を始めたのは1970年ごろ。それ以前は、表参道に三つの団体がかご屋として営業していたが、効率化などの面から一つに統合して石段かごが発足したという。一時は3、4年間活動を休止したが、瀬戸大橋開通前の83年ごろに田中代表が復活させた。
最盛期には約20人の担ぎ手がいたが、ここ数年は3人に激減していた。最高齢は69歳、平均年齢は60歳を超えている。若手の後継者を探したが申し出がなく、石段かご発足から半世紀近い歴史に幕を下ろすことになった。
3人は交代しながら「山かご」と呼ばれる竹や木材を組み合わせて作ったかごに参拝客を乗せて担ぎ、石段の登り口から365段目にある同宮の大門までの間を往復している。かごは軽量化しているとはいえ、重さは約20キロで片道に約20分かかる。
田中代表は「まちの活性化のために頑張ってきたが、参拝客を乗せて1日に何往復もするには年齢的にきつい。1年半ほど前から考え続けた結果で、営業終了は断腸の思い」と胸中を吐露。さらに、「『石段かごのおかげで悲願だったお参りをすることができた』というお客さんの声が励み。最後の営業日まで力を振り絞りたい」と表情を引き締めた。
一方、周辺の土産物店の店主らからは「見慣れた風景がもう見られないのは残念」「かごも含めてこんぴら参りなので寂しい」との声が上がる。広島県東広島市から訪れた80代の女性参拝客も「普段はつえを突いているので石段は上れないと思っていたが、かごで運んでもらいお参りすることができた。こんなにいいものが無くなるとは」と惜しんでいた。
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