昭和48年12月、タイ・バンコクより1歳で宇都宮にやってきたゾウの宮子。彼女も今年で48歳、体重は約3800キログラムになりました。今では宇都宮動物園の中で1番威張っている元気なおばさんです。
シッポを丸め出したときが彼女のイライラしているときのサイン。重い寝小屋の扉を鼻でドンドンとたたき、地響きのようなうなり声を響かせた後、「パォッ」と大きく鼻を鳴らす姿はちょっと怖いかもしれません。こんな宮子ですが、一目置いているのが面倒を見てくれる飼育員。特別な存在です。
普段はやさしく大好きな担当飼育員ですが、怒っているときの彼はとっても怖い存在。先日も朝食の準備をしている中、彼がちょっと目を離すと袋の中から大好きなパンをつまみ食い、彼女の側に戻るとずっと我慢していますよと言わんばかりに知らん顔。「いただきます」の合図を待てない子供のような行動に思わず笑いが出てしまいました。
一方、野生では年配のゾウをリーダーとした雌を中心に群れで暮らしています。具合が悪い仲間が倒れないように支えあったり、亡くなった群れの仲間にみんなで砂を掛けてお葬式のようなことをしたりすることもあるそうです。頭がいいというのは、ヒトに近いことをいうのでしょう。
ゾウが初めて日本にやってきたとされるのが1408年、室町幕府4代将軍足利義持に献上するため。それ以来、ゾウは日本に献上品として送られてきました。中でも有名なのは1728年、江戸幕府8代将軍徳川吉宗のゾウ。最後には見せ物小屋に払い下げられ、悲しい最期だったそうです。それから長い月日を経て、上野動物園にゾウがやってきたのは1888年。ゾウの飼育ブームが大都市を中心に始まりました。
先に書いた通り、ゾウは一度暴れだしたら手に負えなくなる強い動物なので、展示を中心とした動物園では扱いやすい雌のゾウが多く飼育されました。種の保存など動物園の役割を考えるより経営が中心でした。残念ながら宮子も当時、展示のためだけに輸入されたので、飼育環境が十分でないことも職員は知っています。
しかし、この環境の中でも彼女に楽しく長生きをしてもらえるため、毎月、宮子の身体検査をしたり、定期的な採血でストレスホルモンをチェックしたり、食事も飽きないように工夫をしています。暑い夏には大好きな水浴びに時間を掛けたりもしています。現在、コロナで大変な時期ですが昨年は何とか砂遊びができるコーナーを増設できました。
もうすぐ50歳を迎える宮子は、決して若くはありません。ヒトと一緒で足元から気を付けてあげないといけません。足に負担がかからないように、そして大好きな水浴びがもっと手軽にできるように、今年はプールの改修工事を計画しています。宮子をプールの中で思いっきり遊ばせたい、動物園の職員の願いを何とかかなえ、プールではしゃぐ宮子をごらん頂ければ私たちと同じうれしい気持ちになってもらえるかもしれません。
宮子のため、これから挑戦するクラウドファンディングを職員一同が力を合わせて頑張って成功させていこうと思いますので応援をよろしくお願い致します。(宇都宮動物園 荒井賢治)