島根県民の東京都内の宿泊拠点として利用されてきた県営ホテル「島根イン青山」(東京都港区)の営業を、島根県が運営委託と賃借の契約期間が切れる2022年7月末までで終了する方向で検討していることが19日、分かった。県民利用の低迷や施設の老朽化に伴う多額の維持管理費を踏まえた。今後、施設の所有企業や運営委託会社などと具体的な終了日や廃止後の活用策などを協議する。
ホテルは1987年8月に開業。首都圏の独立行政法人や民間会社が県有地に建てて所有する住宅棟と事務所棟で構成する複合施設(地下1階、地上10階)の住宅棟の地下1階、地上4階を県が借り、宿泊施設として都内の不動産会社に運営を委託している。
延べ床面積は2600平方メートルで48室を備え、県民には安価な料金(1泊シングル5900円、ツイン9200円、いずれも税込み)で宿泊を提供する。
年間でホテル部分の賃借料1億7200万円を支払う一方、複合施設の所有会社などから土地貸付料2億7300万円を受け取る。委託料は無料で、不動産会社から1700万円の納付金を受ける。
宿泊者数はピークの94年度に1万8800人を数え、2018年度は1万7千人。全体では大きな減少はないものの、県民向け施設として運営する中、肝心の県民の利用は都内での相次ぐホテル建設などで急減し、18年度はピーク時の約4割強の5200人となった。
さらに、空調や給排水などの設備の老朽化が顕著で、今後も維持管理費の負担が増す状況。賃借料や維持管理費が不要になる上に廃止後も土地貸付料が得られることから、財政健全化と人口減少対策の財源確保に向け、運営委託と賃借の契約が同時に満了を迎える22年7月末まででの廃止を検討することにした。