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全国8500世帯・家計調査の衝撃「年収1000万でも10%は無貯蓄」

2020年6月6日 12:00 PRESIDENT Online

ゆとりを圧迫する教育費や住宅ローン

このほどプレジデント誌では世帯年収1000万円台と同300万円台の家族に、家計の状況などについてアンケート調査を行った。回答を寄せてくれた世帯主の横顔だが、1000万円台では40代後半から60歳までの男性が多く、その大半は既婚者で、配偶者や子どもたちと同居をしている。一方、300万円台では30代から40代前半の男性が多く、そのうち約4分の3は独身で、一人暮らしというケースが多い。

1000万円台では、生活に対するゆとりについて、「ある」「どちらかというとある」という肯定派が66.0%を占めた。その理由を尋ねると、「持ち家がある」ことがトップに浮上し、ついで「定期的な貯蓄をしている」が続く。そうした余裕が結果的に、円満な家庭生活、趣味・余暇の充実、充実した子どもの教育環境などにつながっているのだろう。また、5000万円以上の貯蓄以外の金融資産を持っている人が11.2%もいた。

一方、注目すべきなのが、生活に対するゆとりについて、1000万円台の人で「どちらかというとない」「ない」という否定派のビンボー世帯が34.0%もいること。ゆとりが感じられない理由のトップは、「貯蓄に回す余裕がない」こと。「1000万円もあるのにどうして」と思わざるをえないのだが、高所得層であっても家計が火の車という世帯も少なくないようだ。

また、ゆとりのなさの原因についてアンケート結果からは、「かさむ子どもの教育費」や「重い住宅ローンの返済」といった「背伸びをした生活」にあることが読み取れる。同時に、「所得税・住民税の増加」や、「年金など社会保障費の増加」による、給与の手取り額の伸び悩みも大きく影響しているようだ。

翻って300万円台はどうかというと、生活のゆとりについて「どちらかというとない」「ない」という人が79.6%を占め、想定の範囲内の結果となった。「貯蓄に回す余裕がない」という人は85.4%もいて、実際に貯蓄の残高が「ゼロ・無貯蓄」という人が26.0%にも達し、余裕のなさを象徴する。給与の手取り額が「少し減った」「かなり減った」という人は37.2%で、給与・賞与のカットとともに、ここでも税金や社会保険料など公的負担の増加が押し下げになっているようだ。

ただし300万円台でも、生活のゆとりに対して「ある」「どちらかというとある」という肯定派が20.4%を占めた。では、1000万円台で余裕がない人との差はどこにあるのか。そうした実態について、家計や税金のプロフェッショナルに分析をしてもらう。

年収1000万でも10%は無貯蓄

ビジネスパーソンで年収1000万円の世帯といえば、大企業の管理職といった、一握りの勝ち組をイメージするのではないか。しかし、さまざまな調査からは、そうした世帯の多くで家計が「火の車」に陥っているという、意外な実態が浮かび上がってくる。

2014年全国消費実態調査によれば、年収1000万~1250万円の世帯は、毎月の平均収支が3万8927円の赤字。また、金融広報中央委員会の調査では、1000万~1200万円未満の世帯のうち、なんと10.3%が、株や国債といった金融資産を「保有していない」と答えた。その理由について、家計の見直し相談センター代表でファイナンシャルプランナーの藤川太さんは、こう分析する。

「年収が上がるにつれ、つい生活レベルも高めてしまい、家計に余裕のない世帯が多いんですね。なかでも現役世代では、支出の約半分を占める固定費がかさみ、家計を圧迫するのです」

固定費はコンスタントに一定額がかかる生活費で、削るのが難しい。「住宅」「車」「子どもの教育」のコストが“3大固定費”といえるが、とりわけ高所得層は、高級住宅地に住み、外車などの高級車を乗り回し、子どもを私立の中学・高校に通わせるといった具合に、固定費の水準も高くなりがちだ。

収支のバランスを崩す2つの勘違い

しかし、支出が収入を上回らないようにセーブしていれば、赤字にはならず、貯蓄に回す余裕だってできるはず。それについて、藤川さんは、「高所得層は“2つの勘違い”から収支のバランスを崩しがちなのです」と指摘する。

「勘違いの1つ目は、収入アップに比例して、支出も増やせると考えること。実は、名目上の収入が増えても、手取りはそれほど増えません。累進課税方式なので、税率も上がるからです。最近では、税金や社会保険料の負担も徐々に重くなっているので、手取りはいっそう減る傾向にあります」

2つ目は、「年収が今後も減らない」と思い込んでいること。高度経済成長期なら、給与は右肩上がりで増えたが、今は先行き不透明だ。今回の「コロナショック」の影響次第では、会社の業績が大幅に悪化して、賃金カットもありうる。藤川さんは、「現在の年収を前提に、住宅ローンなどの大きな固定費を抱えてしまうと、年収が下がった場合、たちまち家計が破綻してしまうので危険です」と警鐘を鳴らす。

では、年収1000万世帯が家計を見直し、財政健全化を図るには、どうすればいいのだろうか? 固定費については、「住宅ローンの借り換え」「保険の見直し」といった手をすでに打っている人も多いが、「最近では、子どもの習い事の種類を、減らす親が増えています。中学・高校も、私立ではなく、公立に通わせる高所得層も目立つようになりました」と藤川さんはいう。車も、買い換えを先送りすれば、固定費の削減に役立つ。ほかにも、家計を切り詰められる余地はある。

「携帯電話を、大手通信キャリア以外の格安スマホに変更すれば、通信費が月1万円減るのはザラ。あまり利用していないスポーツクラブを脱会すれば、月1万円程度の会費が浮きます。高所得層の大半は電力の自由化についてノーマークですが、電気代がかかる世帯が多いので新電力にシフトすれば、年1万~2万円をカットできるケースも多いです」(藤川さん)

支出ばかりでなく、「収入増にも目を向けるべき」と藤川さんはアドバイスする。「年収1000万円世帯では、妻が専業主婦というケースが多いのですが、『子どもの教育費の足しに』などと説得して、奥さんにパート勤めに出てもらっては」(同)といったアイデアを、ぜひ参考にしてほしい。

[プレジデント編集部、ジャーナリスト 野澤 正毅 撮影=加藤ゆき 図版作成=大橋昭一]

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"アホノミクス"…安倍晋三が日本国民を見捨てたとき

2020年6月4日 08:00 PRESIDENT Online

大恐慌をさらに悪化させたとされる清算主義

“恐慌によって腐った部分を経済システムから一掃してしまえば、生計費も下がり、人々はよく働くようになり、価値が適正水準に調整され、無能な連中がだめにしてしまった事業を再建する企業家も現れるだろう”

これは1929年の世界恐慌時、米フーバー政権下で財務長官を務めたアンドリュー・メロンの言である(*「清算主義」対「リフレーション」の構図は正しいか?、田淵太一、東亞經濟研究會、2003)。要するにメロンは、大不況で「潰れるべきモノ(企業や人)」が淘汰されてしまえば、その代わりに優秀な企業や人が勃興するので、却って経済には良いと説いたのである。この考え方は「清算主義」と呼ばれ、これによってフーバー政権は世界恐慌時に何ら有効な経済対処を取らなかった。このことが、大恐慌をさらに悪化させたとされる。

この「清算主義」的発想は、安倍政権にも根強く存在すると私は見る。

「もたない会社は潰すから」自民党の正体見たり

自民党の安藤裕衆院議員が4月11日、ある自民党大物議員からの伝聞として〈自民党が冷たくなったよねというのはその通りで、提言の話で「損失補償、粗利補償しないと、企業は絶対潰れますよ」という話をある幹部にしたときに、「もたない会社は潰すから」と言うわけですよ〉と右派系ネット番組で発言したのだ。安藤議員はその後、日刊ゲンダイの取材に対してこの発言を釈明したが、自民党の正体見たりという実感がする。

第2次安倍政権が政権を握って早8年強。田中・竹下系の経世会の領袖だった小渕恵三首相が急逝(2000年)し、「密室内閣」と揶揄された森喜朗内閣に政権が交代すると、民主党時代の約3年半・麻生太郎内閣の約1年間を除けば日本はずっと、自民党清和会内閣が実に15年以上続いている状況である。かつて「クリーンなタカ派、ダーティーなハト派」と指摘されたように、ハト派で鳴らした田中・竹下系の派閥にはロッキードやリクルート事件は言うに及ばず、腐敗や疑獄が付きまとった。

一方清和会は典型的な親米タカ派路線だが、元来代議士一家や土着の資産家が多いので疑獄系の醜聞は比較的少ないように思える。こういった意味では、15年以上続いてきた清和会内閣で「政治とカネ」の問題は徐々にだがクリーンになっていったことは間違いない。しかしながら一方で、清和会による自民党支配は自民党という大衆政党の性質を一変させた。

大企業と都市部の中産階級さえ確保できれば政権維持できる

それまで、地方の職能団体(農協、漁協、郵便局、中小自営業者等)から支持を受け「一票の格差」を逆手にとって衆議院で過半数を保ち続けてきた田中・竹下系の性質からがらりと一変し、清和会は大企業、都市部の中産階級をその支持基盤として小選挙区下、一挙に大勝を重ねてきた。それまで自民党の伝統的な支持基盤だった地方の職能を「抵抗勢力」と名付けて敵視した小泉純一郎内閣以降、この傾向はますます揺らがない。

よって現在の清和会内閣は、かつての田中・竹下系内閣では「聖域」とされた農業分野までその構造改革のメスを入れている。代表的なものがTPP推進(―皮肉にもトランプ政権の意向により断念する格好となったが)だ。現在の自民党は、地方の足腰の弱い職能団体に利益を再分配するという構造は希薄で、大企業と都市部の中産階級さえ確保できれば政権党を維持できるという体制が出来上がっている。

公明党の最終カードをちらつかせた強硬論

ここに清算主義の根本がある。足腰の弱い、支援なくば恐慌下で潰れてしまうような企業や人は、田中・竹下系の内閣では重要な票田だったが、清和会内閣ではそうではない。清和会内閣で一貫して法人税減税が行われてきたのはその派閥の性質によるところが多い。法人税減税は中小零細企業よりも大企業にとってより便益となるからである。

このような状況下で再分配傾向の薄い清和会内閣の補助・助力として期待されていたのが小渕恵三内閣時代から連立を組む公明党の存在である。公明党は元来、その支持母体・創価学会を中心として、大都市部の低所得者層や零細自営業者を支持基盤としており、田中・竹下系の政権と政策的に相性が良い。

公明党が初めて連立を組んだのが経世会の小渕内閣であったこともその証左である。ところが前述のとおり、小渕首相が急逝して「棚ぼた」的に清和会・文教族の森喜朗が首班につくと、公明党は政策的に肌が合わない自民党・清和会との連立を、実に20年の長きにわたって強いられたのであった。もっともこの部分には公明党の政権権力への拘泥があったし、また公明党の支持基盤自体が経済成長によって中産階級に成長した側面もあった。とはいえ今回のコロナ騒動で、当初「困窮世帯に限定して30万円」としたものを「一律10万円給付」に転換させたのは、公明党による「連立離脱」という最終カードをちらつかせた強硬論に官邸が押されたからと言えよう。

安倍晋三の経済対策はどれも後付け・小出し

大企業と都市部の中産階級の支持を受ける清和会内閣は、根底に「弱い者は潰れてしまっても、その溝を優秀な会社や起業家が埋めるので構わない」という清算主義的観念があるとはすでに述べた。コロナ禍で様々な経済対策が打ち出され、またされる予定だが、どれも後付け・小出しであり、「強者の発想」に拘泥する清和会内閣の根底に変化はないように思える。

東証一部上場企業では繊維業のレナウンがコロナ禍で倒産したが、この会社の倒産はコロナ禍以前からの経営基盤弱体をその始祖としていた。多くの大企業は、コロナ禍での一時的な利益の激減すらも内部留保や大規模融資によって概ね乗り切るだろう。それもこれも、2000年の森喜朗内閣から計15年以上も、大企業を支持基盤とした大企業優遇政策が清和会内閣によって実行されてきたからだ。

経済成長を支えた「非合理的不採算企業」

清和会内閣が支配する以前、田中・竹下系内閣が一時期自民党派閥の頂点として君臨してきた時代、「本来、市場の摂理に任せておけば倒産するべき不採算企業を、公的助成や支援で温存してきたために、日本経済の生産性は低くなっている」という批判が跋扈(ばっこ)した。こういった批判が、のちの構造改革路線・新自由主義路線につながることとなる。

しかし50年代~70年代前半の高度成長下、いわゆる「非合理的不採算企業」は都市部・農村部を問わずいたるところに存在した。従業員が10人未満の下請け町工場が工業地帯には乱立し、都市下層民の雇用を支えた。当然、ひとたび不況の風が吹くとそれらの企業は倒産し、不況が収まると類似企業が息を吹き返した。こういった企業は、あきらかに「非合理的不採算企業」だが、当時はこういった企業の近代化の必要性は唱えられど、「潰れるべき企業は潰れてしまって構わない」という意識は希薄だった。なぜなら経済全体が成長していたし、そういった経済成長はとどのつまり大企業の下請けとして機能していた「非合理的不採算企業」が支えていたからである。

今こそ必要なのは迅速かつ大胆な支援である

ところが経済成長が一服して日本経済に成長余地が無くなると、こういった「非合理的不採算企業」への補助や支援は無駄だ、というように言われるようになった。市場原理という競争社会の中では、こういった企業は自然淘汰されていくべきだ、という考え方が主流になり出した。しかし現代的市場経済は、すべてにおいて市場原理主義を肯定しているわけではない。外部から見て不採算、非合理的と見なされる企業や人にも、社会の中で一定の役割を担い、ややもすればそこから大発明や天才が輩出されることもある。すべての企業や人を合理的か否か、不採算か否か、で決めてしまえば、小説も演劇も音楽も一切必要が無い、ということになる。

しかし社会の構造はそうなってはいない。たとえ一見不採算でも非合理的でも、社会の構成員として一定の役割を果たしている企業や人を、市場原理の名のもとに切り捨ててよい法は無いのである。清和会内閣として最も「長寿」を誇る第2次安倍内閣には、この視点が欠落しているように思えてならない。今こそ必要なのは「市場原理に任せておけば淘汰されかねない企業や人」への迅速かつ大胆な支援である。ここを怠ると、大変なしっぺ返しを食らうであろう。

[文筆家 古谷 経衡]

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地獄がついにきた…レナウンショックが倒産連鎖を引き起こす

2020年6月4日 08:00 PRESIDENT Online

レナウンの倒産はコロナのせいなのか

新型コロナが問題になって以降、上場企業の初めての倒産に衝撃が走りました。5月15日、レナウンが民事再生法の適用を申請。負債総額は約138億円にのぼり、事実上の経営破綻となりました。新型コロナウイルスの影響による「コロナ倒産」と言われていますが、実はコロナ以前からレナウンの経営は悪化しており、百貨店やショッピングモールを通した代理店手法を使う旧来の販売戦略に固執する、旧態依然の経営方針が経営破綻へと繋がりました。

レナウンは、バブル崩壊後の1990年代から業績は下降線を辿り、百貨店の低迷に加え、ユニクロなど大手SPA(製造小売り)の台頭も直撃しました。2010年に中国の山東如意の傘下となり、経営再建を試みるも、時代の流れに乗るタイミングを逸した同社は自力では意思決定も立ち上がることもできなくなってしまった。

全国の百貨店の衣料品の売上高の推移は右肩下がりで、日本百貨店協会のデータによると、19年の売上高は1兆6800億円と、08年の2兆7100億円と比べて、10年間で約1兆円も減収したことになります。売上高構成比でも08年の36.8%に対して19年は29.3%になっており、販売苦戦だけでなく、百貨店における衣料品売り場自体が縮小しています。全国百貨店自体の年間売上高も、年々減少傾向で、百貨店を代理店として商品を売ってきた、アパレル業界はコロナ以前から非常に厳しい状況に置かれています。

レナウンはなぜ時代に乗り遅れたのか

一方、拡大を続けているのがネット通販(EC)市場です。経済産業省のデータによると、ネット通販の衣料・服飾雑貨などの市場規模は18年の市場規模は1兆7700億円と、08年の730億円と比べて、約1兆7000億円増加していることになります。百貨店の衣料品の売上高と比較すると、まるで、鏡で映したかのように真逆の数字となり、アパレルはECの台頭で、ここ10年で明らかに業界変容が起きたのです。レナウンのようにこの10年間に消費行動に合った販売戦略を打ち出せなかった企業は淘汰される結果となったのです。

レナウン自体もこの業界の変化を当然、理解しており、戦略の立て直しをはかっています。にもかかわらず、なぜ、日本のファッション産業を牽引してきた名門企業は変化に対応できなかったのでしょうか。レナウンは10年に「中国のLVMH」とも称される山東如意の傘下となっています。中国進出をかけて、10年前に大きく舵を切っていました。レナウンのカジュアルブランドを扱う店舗を10年間に中国で、最大1000店舗出す計画を立てていましたが、実際は100店舗にも届かず14年に撤退し、中国進出を失敗しています。

リストラにより人材難に陥った…

さらに、レナウンは山東如意グループの傘下後、40以上あったブランドを半分以下にするなど不採算事業の整理を進め、「ダーバン」「アクアスキュータム」を主力ブランドとして注力しましたが、販路である百貨店向けが低調で、厳しい経営が続いていました。13年に山東如意の子会社となり、人員削減やブランドの統廃合、資産の売却を行いながら起死回生を見計らっていましたが、リストラを続けてきた社内に、アパレル業界の激変に対応するための施策を打ち出せる人材は残っていなかったのです。

レナウンは、営業利益の赤字拡大が続き、18年は25億7000万円の赤字、19年には79億9000万円に赤字拡大し、最後は、コロナの影響により、主力の百貨店ブランドの販売が落ち込んだことと、山東如意子会社との原材料の販売取引において売掛金の回収が滞り、53億円の貸倒引当金を計上したことがとどめと刺した格好になっています。

本気で再建する気のない親会社。ECの展開などを自力での施策を展開できるうちに、戦略を立てることができずに、心ないM&Aの相手にすがってしまった。民事再生法の適用申請自体も、山東如意は難色を示し、結局、保険業務を行う子会社・レナウンエージェンシーが債権者としてレナウンの民事再生法適用を申請しています。

レナウンの衝撃は他のアパレル企業に

10年かけて会社はボロボロになり、自社の意志では何も決定できなくなったレナウン。最後は親会社に見放された格好になりました。

レナウンの破綻は、進めていたEC化の遅れも要因の1つです。レナウンの19年12月期の業績では、ECの売上高は11億900万円で、EC化率は3.2%でした。EC売上の拡大計画を掲げていましたが、うまく、伸ばすことができていなかったのです。

このEC化率については、他の百貨店を主力としてきた総合アパレル企業にとっても、生き残りをかけた施策となります。「ポールスチュアート」などを展開する三陽商会の20年2月期におけるEC売上高は84億6400万円で、EC化率は12.7%です。「23区」や「自由区」を運営するオンワードオンワードホールディングスの20年2月期におけるEC売上高は、333億800万円で、EC化率は13.4%となっています。

オンワードホールディングス、三陽商会など百貨店を主力としている企業がECの強化をしていくことは、百貨店の衣料品フロア自体が維持できなくなることを意味します。百貨店と言えば、メインの階に華やかな、衣料品店舗が占めている、今の姿も、今後は全く違う姿に変化していく事になるでしょう。百貨店も変革を受け入れることができなければ、存続自体が危うい業界なのです。

リユース・中古品の台頭

それに加えて、直近のリユース市場の台頭です。「経済産業省の平成30(2018)年度 我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備(電子商取引に関する市場調査)報告」によると、18年のフリマ市場は6,392億円であり、はじめてフリマアプリが日本に登場した12年から、僅か6年で巨大な市場が形成されたことになます。一方「衣類・服飾雑貨等」の小売市場規模は推定で約14兆円とされ、また、同カテゴリーの国内ECの市場規模は先述の通り1兆7700億円とこちらは拡大傾向です。今のところ、マーケット全体で考えると、フリマアプリがアパレルの実店舗やEC市場に巨大な影響を与えているとは言えないと分析しています。

現状のフリマ市場の位置付けは、フリマアプリ(二次流通)と新品市場(一次流通)は補完関係にあり、フリマアプリは“売ることを前提とした買い物”という新しい消費スタイルを確立しつつあります。フリマアプリのプラットフォーム事業者による決済サービスによって、例えばフリマアプリでの売却代金を実店舗やECでの購入に充てるといったことも可能となっています。フリマアプリは新品市場と競合するポジションというよりも、刺激する存在との見方が、現段階では適しています。

レナウンショックは序章にすぎない

ただ、今後、フリマアプリの市場規模が今後さらに拡大する過程において、消費者の購入の選択肢として一次流通(店舗やECでの購入)と二次流通(フリマ市場での購入)を同列に考える消費行動が定着化すれば、フリマ市場も顧客を奪い合うライバルとなり、市場構造に変化が生じることは予測されます。

アパレル企業は、今回考察した、百貨店を主力とする企業だけではありません。ファーストリテイリングの「ユニクロ」、しまむらのような製造小売り(SPA)の存在や、作業服に強みを持つワークマンなどの企業がレッドオーシャンの中で戦っています。

EC化率を伸ばすことができないアパレル企業は生き残る事は厳しく、そして、背後に控えるフリマ市場。レナウンショックは、構造的に問題を抱えているアパレル・百貨店業界の淘汰・再編への序章にすぎないのです。

[テクニカルアナリスト 馬渕 磨理子]

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cat_11_issue_oa-president oa-president_0_2kqvuqnr8049_「SSK」「愛愛名中」…なぜ愛知は地元大学への進学率が高いのか 2kqvuqnr8049 2kqvuqnr8049 「SSK」「愛愛名中」…なぜ愛知は地元大学への進学率が高いのか oa-president 0

「SSK」「愛愛名中」…なぜ愛知は地元大学への進学率が高いのか

2020年6月4日 08:00 PRESIDENT Online

2016年度の文部科学省調査によると、高校生が卒業後に自県の大学や短大、専門学校に進学した割合は愛知が全国最多の71%。その理由の1つに、私立大学の充実がある。各大学のいまを、日本経済新聞社編『名古屋のトリセツ』(日本経済新聞出版社)からお届けする――。

※本稿は、日本経済新聞社編『名古屋のトリセツ』(日本経済新聞出版社)の一部を再編集したものです。

女子大生がかつての名古屋嬢ファッションをけん引

愛知県は高校卒業後、地元の学校に進学する人の割合が全国で最も高い。理由の1つが私立大の充実にある。女子大御三家「SSK」はかつての名古屋嬢ファッションをけん引し、「愛愛名中」に代表される中堅私大と共に中部圏の企業や自治体に多くの人材を送り出してきた。

全国的な知名度は東京や関西の難関大に劣るが、地元でのブランド力は大きな強みだ。

「NAGOYAのお嬢さんに注目 しゃちほこよりゴージャス」(「JJ」2001年3月号、光文社)。00年代の初め、女性ファッション誌が競って「名古屋嬢ファッション」の特集を組んだ。上品なワンピースに巻き髪、大きなロゴの高級ブランドバッグ――。当時読者モデルとして必ず登場したのが「SSK」と呼ばれる椙山女学園大学、愛知淑徳大学(1995年に共学化)、金城学院大学の女子大学生たちだった。

椙山女学園には曽祖母から4代続けて通う学生も

松坂屋名古屋店の婦人服担当、城戸憲吾さんは「SSKの学生らが名古屋嬢ファッションの先頭を走っていた」。服装の独自色は薄まりつつあるが、ブランドバッグは今も学生に人気だという。

3校とも女子校としての歴史が長く、椙山女学園には曽祖母から4代続けて通う学生もいる。「お嬢様の学校」とのイメージを抱かれがちだが、金城学院の広報担当者は「学生はすごく真面目に勉強している」と強調。椙山女学園の広報担当者は「カフェで優雅にランチではなく、学食で本を読みながら定食を食べる学生が目立つ」と語る。

椙山女学園を受験した女子高校生(18)は「女性のキャリア教育がしっかりしていると思った」。愛知淑徳や金城学院も就職サポートに力を入れ、金融や航空などさまざまな業界に卒業生が進む。OGには著名人も多く、故前畑秀子さんは椙山のプールで練習を重ね、84年前のベルリン五輪の200メートル平泳ぎで日本人女性初の金メダルを獲得。引退後は母校で後進の指導にあたった。

高卒後に地元へ進学する率は全国最多

16年度の文部科学省調査によると、高卒後に自県の大学や短大、専門学校に進学した割合は愛知が全国最多の71%。地元志向の背景について、名古屋に本校がある「河合塾」教育情報部の岩瀬香織チーフは「実家から通えるエリアに多数の大学があり、有力企業が多いため就職の不安が少ない」と説明。遠方の国公立大に合格しても愛知の私大に進む受験生が多いという。

とりわけ、「愛愛名中」(愛知大学、愛知学院大学、名城大学、中京大学)の中堅4私大が果たしている役割は大きい。県内で最も学生が多い名城大は19年春の卒業生のうち、65.3%が愛知、岐阜、三重の3県の企業や団体に進んだ。ほかの3大学も6~7割が中部で就職している。地元の公務員を志す学生も多く、中京大は県庁に29人、県警に56人が合格した。

また、愛知大が12年に名古屋駅近くに新キャンパスを設けるなど校舎の都市部への移転が進み、岐阜や三重からも学生を集めやすくなっている。

近年は定員厳格化の影響で首都圏の中堅私大の合格ラインが急上昇している。このため中部圏で抜群のネームバリューと就職実績を誇る愛知の私大は相対的にメリットが大きくなっているとされる。

その筆頭格が南山大学だ。1932年、ドイツ人宣教師が旧南山中学校を設立。カトリック系のミッションスクールで、キリスト教学科には司祭の養成課程もある。

今後の課題はいかに中部以外から学生を呼び込むか

同じカトリック系の上智大学とは関係が深く、59年の伊勢湾台風の支援をきっかけに、さまざまなスポーツで対決する「上南戦」が始まった。1年ごとに東京と名古屋で開催され、通算成績は南山の17勝38敗5引き分け。南山には「勝てば学長をプールに投げ込む」との伝統があるが、19年まで3連敗中だ。南山大学長室によると、20年4月に就任する米国出身、ロバート・キサラ新学長も伝統を受け継ぐ考えだという。

18歳人口の急減で、学生の奪い合いはさらに激しくなる。地元で根強い人気を誇る愛知の私大も例外ではない。河合塾の岩瀬さんは「中部だけでなく、他の地域から学生を呼び込めるかが課題になる」と指摘する。

愛知に国立4大学愛知県にある国立大は、名古屋大学、師範学校が前身の愛知教育大学に加え、名古屋工業大学、豊橋技術科学大学の工学系2校がある。名大は旧帝大で最後発ながら、天野浩教授ら学部や大学院出身の5人がノーベル賞を受賞。名工大と豊橋技科大は7~8割が大学院に進み、技術者や研究者として中部の製造業を支える。

名大は経営を効率化して国際競争力を高めるため、2020年4月に岐阜大学と運営法人を統合する。県境をまたぐ国立大の法人統合の先行例として注目されている。

[日本経済新聞社編]

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"コロナの谷に落ちて大赤字"ソフトバンクが日本経済に与える最悪シナリオ

2020年6月4日 08:00 PRESIDENT Online

歴史的な業績悪化が金融システムに与える危険性

新型コロナウイルスの感染拡大により、世界経済は大きく混乱している。その影響が、投資会社としてのソフトバンクグループに莫大な影響を与えている。同グループの出資先のいくつかの企業の業績は大きく悪化し、それらの株価は急落に見舞われた。それに伴い、ソフトバンクグループは大赤字に転落することになった。

今年1月以降、本格化したコロナウイルスの感染拡大によって、世界的に個人消費、自動車などの生産活動、観光など実体経済が悪化した。それにより、3月中旬には世界の株式市場は急落し債券市場も混乱した。そうした状況下、主に借り入れによって投資を行ってきたソフトバンクグループの信用力が低下し、クレジットリスクが大きく上昇した。

その後、世界の中央銀行が積極的に資金を供給したこともあり、とりあえず株価は持ち直した。しかし、実体経済はかつて経験したことがないほど冷え込んだままだ。ソフトバンクグループが投資する企業の業績が悪化し、企業価値が毀損されている。その結果、同社は創業以来最大の損失に陥ったのである。

ソフトバンクグループは、国内外の大手金融機関から多額の資金を借り入れ、その資金で投資を行ってきた。今後、同社の投資ファンドなどから損失が続く場合、大手金融機関の財務内容などに影響が及ぶ可能性がある。状況次第では、わが国の金融システムに重大なストレスがかかるリスクは排除できない。

ソフトバンクの投資ファンド「15社が倒産する可能性あり」

近年、ソフトバンクグループはIT先端分野を中心に、成長期待が高いスタートアップ企業などに投資を行ってきた。それを象徴するのが、サウジアラビア政府などの出資によって組成された10兆円規模の“ビジョンファンド”だ。

2020年3月期決算において、このファンドを中心に損失が発生し、ソフトバンクグループの連結純損益(国際会計基準)は9616億円の赤字に陥った。純損益の赤字は15年ぶりで、赤字幅は過去最大だ。営業損益は1兆3646兆円の赤字で、IT関連を中心に88社に投資しているビジョンファンドの巨額の投資投資損失を計上した。

ビジョンファンドは88社の投資先の約6割、50社の企業価値が下がり、年間で1.8兆円の投資損失が出た。ソフトバンクグループの創業者である孫正義氏は投資先の経営悪化について、「ユニコーン(企業価値が10億ドルを超える未上場企業)がコロナの谷に落ちた」と表現した。

その背景にはコロナショックがある。ワクチンなどが開発段階にある中、世界各国は感染の拡大を防ぐために国境や都市を封鎖し、人の移動を制限せざるを得なくなった。それが、需要と供給を寸断し、収益の減少や資金繰りの悪化などから同社の投資先企業の価値が下落してしまった。

新型コロナウイルスの感染拡大によってライドシェア需要が落ち込み、ライドシェアアプリ大手の米ウーバーテクノロジーズの業績が悪化した。3月には、コロナショックによる資金繰りの悪化から、出資先である英国の衛星通信企業ワンウェブが経営破綻に陥った。

また、シェアオフィス大手の米ウィーカンパニーも、グループの業績を悪化させた要因だ。コーポレートガバナンスやビジネスモデルへの懸念から、ウィーカンパニーの上場は延期され企業価値が下落した。

その上に、コロナショックが発生し、ウィーカンパニーの損失は拡大している。ビジョンファンドの投資状況に関して、孫氏は15社程度が倒産する可能性があると厳しい見方を示している。

揺らぐビジネスモデル、成長を急いだ代償か

現在、ソフトバンクグループのビジネスモデルは、大きく揺らいでいるとみるべきだ。同社のビジネスモデルは、孫氏の人を見抜く力(眼力)をもとに、「これは」と思える企業家を発掘して出資し、その成長を取り込むことにある。

代表的な成功例が、中国のアリババ・グループだ。孫氏はアリババ・グループの創業者であったジャック・マー氏に会って5分程度で出資を決めたといわれる。その後、アリババ・グループは世界有数のITプラットフォーマーに成長し、ソフトバンクグループの業績、資金調達、財務力などを支えている。

しかし、コロナショックの発生により、これまでの投資先の選定方法がベストではないことが明らかになった。ウィーカンパニーはその一例だ。孫氏はウィーカンパニーの共同創業者であるアダム・ニューマン氏がイノベーションを発揮できる人材であるとほれ込み、出資を決めた。

一方、ウィーカンパニーのビジネスモデルは、単なる“オフィスのサブリース”と指摘する専門家もいた。ウィーカンパニーは、シェアオフィスのアイデアや人材のマッチングを目指すアプリ開発なども進めていたが、今のところ収益は黒字になっていない。中には、「ウィーカンパニーのビジネスモデルに真新しさはない」と指摘する見方もある。

ある意味、ソフトバンクグループは成長を急ぐあまり、リスクを冷静に評価することが難しかったのかもしれない。昨年末までの過去5年間、世界的な低金利環境から株式市場に資金が流入した。企業は低金利を活用して社債を発行し、その資金を使って資本コストが上昇した自社株を買い、一株当たりの価値還元の増加に取り組んだ。

その結果、“買うから上がる、上がるから買う”という強気心理が過度に連鎖し、世界的に株価が大きく上昇した。特に、米GAFAや中国のBATH、さらにはIT関連のスタートアップ企業には、今後の経済をけん引するとの期待が集まった。その中でソフトバンクグループは、ライバルの投資会社に先を越されまいと、前のめりに投資をしたといえるかもしれない。

アリババ株の売却だけでは対応できない

ソフトバンクグループは、基本的に国内外の大手銀行などから資金を調達しその資金で事業を運営している。そうした手法は、いわゆる“高レバレッジ経営”と呼ばれる。“高レバレッジ経営”は、経済がうまく回っている間は効率の良い経営が可能になる一方、今回のように経済活動に問題が出ると、資金の確保などに困難が生じる可能性が高い。

そのため、投資家の中には、同社の財務レバレッジのリスクに懸念を表明する声が増えている。今後、世界経済がさらに混乱し投資先企業の経営が悪化する場合、同社の財務レバレッジは上昇しリスクが高まる可能性がある。その場合、わが国の金融機関の信用力に置く影響を与えることが懸念される。そのリスクは小さくはないはずだ。

これからソフトバンクグループは、自社株買いや社債の償還などのために約6兆円の資金需要が発生する見込みだ。資金を確保するために、同社はアリババ・グループの株式など資産の売却(総額4.5兆円)などで対応しようとしている。

ただ、資産の売却には限りがある。資金調達手段の1つとして借り入れの重要性は増すだろう。今後、同社がどのようにリスク管理を行ってビジョンファンドの運用を安定させ、キャッシュのアウトフローを抑えられるかは重要なポイントだ。

世界経済の下振れで金融システム不安が発生

将来は不確実であり先行きは断言できないが、もしコロナショックの影響が長引くと、世界的に経済活動の停滞は長期化するはずだ。そうなると、企業業績への不安も高まる。その場合、ソフトバンクグループが投資してきた企業に関して、想定を超える業績や財務内容の悪化、さらには経営破綻が発生するリスクは軽視できない。

そうした展開への懸念が高まり始めると、金融機関は貸倒引当金の積み増しなどを余儀なくされる。それは、銀行の融資能力を低下させる一因となり、わが国で金融システム不安の発生にもつながりかねない。

5月18日時点で、ソフトバンクグループが保有する株式の価値は28.5兆円とみられる。時価ベースでの保有資産規模を見ると、同社には追加の資産売却を行う余力があるといえる。ただ、株式の価格(価値)は世界経済全体の動向に大きく影響される。

同社の投資先には米国や中国、インドなどの企業が多い。米国を中心に世界経済の下振れ懸念が高まるようだと、ソフトバンクグループの財務内容などへの不安も高まらざるを得ないだろう。その場合、同グループから金融部門への悪影響の波及が懸念される。

[法政大学大学院 教授 真壁 昭夫]

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テラハ「木村花さん」の死は、SNSでなくフジテレビの問題だ…悔やむ業界関係者

2020年6月4日 08:00 PRESIDENT Online

木村花さんの死、ネット誹謗中傷から番組制作サイドへ

フジテレビ系の恋愛リアリティー番組「TERRACE HOUSE TOKYO 2019-2020」(以下、「テラスハウス」)に出演していた女子プロレスラーの木村花さんが22歳で亡くなったニュースが、連日メディアをにぎわせている。木村さんは、Twitter上で連日視聴者からの誹謗(ひぼう)中傷を受けていたことが死の原因だったのではないかと言われている。

これを受けて、歌手で実業家の柴咲コウさんや、漫画家のきくちゆうきさんなど著名人がネット上での誹謗中傷に対して法的措置を取ることを検討していると表明しているほか、政府も5月26日、ネット上に悪意のある投稿をした人の特定を容易にする制度改正に動き出した。当初、木村さんが亡くなったニュースは、SNSでの悪意あるコメントに対する問題として取り上げられがちだったが、ここにきて問題の焦点は、番組制作サイドに向けられるようになった。

国民の問題意識は「テラスハウス」を含む恋愛リアリティーショーをめぐる問題を再考するにあたって正しいと言えるだろう。

画面内にあるはずのマイクがどこにも見当たらない

筆者は、かつてある恋愛をテーマにしたネット番組の広報に携わっていたことがある。

恋愛リアリティーショーは主な視聴者が恋愛ドラマを好む10〜30代の女性ということもあり、近年市場が急拡大している。事実、ここ数年でも、恋愛リアリティーショーのラインナップはかなり増えている。

「バチェラー・ジャパン」(Amazon プライム・ビデオ)、「さよならプロポーズ」(AbemaTV)、「いきなりマリッジ」(AbemaTV)、「オオカミちゃんには騙されない」(AbemaTV)、「あいのり」(Netflix)など、どれも“素人”の男女が出演し、真剣な恋愛模様を映しているものだ。

だが、これらの番組を見て視聴者はあることに気づくはずだ。画面内に、あるはずのマイクがどこにも見当たらないのである。

これは、番組制作サイドが、出演者たちの会話を自然な男女の会話の“絵”として見せるために、カメラやマイクなどの素材は一切視聴者に見えないように配慮して編集されているからにほかならない。この制作サイドの工夫により、視聴者はまるで、そこにマイクもカメラもないかのように、男女の恋愛模様をのぞき込んでいるような感覚で番組を楽しみ、没入することができる。

視聴者は“リアリティー”を提供してもらっている

だが、その実態は、男女のデートをしているシーンを含め、ドラマの撮影のようにショットガンマイクと呼ばれる1メートルほどの撮影専用マイクを使って音を拾っている。つまり、その収録の様子は、大勢のスタッフに囲まれてシーンを撮影するドラマ撮影となんら変わらないのである。

では、ここで考えてみてほしい。

あなたが恋愛リアリティー番組に出演したとして、2メートルほど離れた目の前で、業務用のカメラが回り、かつショットガンマイクが向けられている部屋で、「自然な会話」ができると自信を持って言えるだろうか。

「テラスハウス」含め、恋愛リアリティーショーに出演する男女は一般的に、芸能事務所に所属するモデルや俳優の卵であることが多い。それは、彼らがカメラを向けられても自然な姿で振る舞えるからという理由があることは言うまでもない。つまり、制作サイドの撮影や編集、出演者の人選などの工夫によって、視聴者は“リアリティー”を提供してもらっているのである。

見られるためには、SNSでバズるしかない

さらに、もう一つ重要な論点がある。それは、番組制作サイドがSNSで話題になることを重要な価値指標に置いている点だ。

前出の恋愛リアリティー番組は、どれもネットで配信されるため、ネットで話題になることで、口コミ的にアプリやサブスクリプションサービスへの登録を促すマーケティング戦略が取られていた。その動線はTwitterやインスタグラムなどのSNSとYouTubeだ。

YouTubeについては、番組の冒頭だけを見せ、本編は有料会員に登録させる導線づくりとして機能しており、SNSは個々の出演者にアカウントを持たせ発信させることで“ファン”を増やしていく戦略だ。

番組放送後、視聴者はSNSにある出演者の投稿をチェックし、出演者の番組内での振る舞いと、SNS上の発信という2つの“メディア”を往復することになる。こうして、その往復移動が増えていくと、視聴者は木村さんを含む出演者をフォローしたり、ときにはコメントを送ったりするようになり、番組にハマっていくのである。

Twitterでの言及数が新規視聴者獲得の生命線

つまり、ここまでの話をまとめると、下記のようになる。

(1)リアリティーを追求するため、番組ではヤラセ感を払拭。カメラやマイクは映さない。リアルっぽくあればあるほどよいという制作側の志向。
(2)それゆえにリアリティ番組であることを忘れ、没入する視聴者。
(3)出演者のSNSアカウントがあり、放送終了後に視聴者のタイミングで直接出演者にリプライを送る。
(4)SNS上で直接出演者と絡めることでより番組にハマる。さらにSNSで視聴者自身も番組のことをつぶやく出演者のAさん。
(5)Aさんの投稿がたまたまタイムラインで目に入ったSNSユーザーが、新規視聴者として番組を視聴。過去放送回からさかのぼって視聴し、リアルタイムで見ていた視聴者とは数日遅れで、番組のことをSNSで投稿する。「テラスハウス」の場合、Netflix放送から約1カ月遅れてフジテレビで放送されていたため、フジテレビの視聴者もここに分類される。

ここまでの流れを読み、「テラスハウス」に代表される恋愛リアリティー番組が、いかに“バズる”ための舞台装置を用意し、ここまで成長してきたかがわかるだろう(事実、番組の広報戦略会議では、先週放送回がどれだけSNSで言及されたかを真面目に議論する)。

SNS上での出演者への誹謗中傷は副作用

さらに、番組はTwitterでの言及数が新規視聴者獲得の生命線となっているため、賛否を呼びそうなシーンを入れることで、それにツッコミたくなる環境を整えている。

そのため、SNS上での出演者に対する誹謗中傷はある種の「副作用」だったと言える。しかし、その出演者が被る副作用に対し、芸能事務所も、番組制作サイドも保障をまったく準備していなかったといえよう。

もともと、フジテレビはわが国の恋愛リアリティショーのブームを作ってきた存在だ。ブームの火付け役になったとも言える「あいのり」は1999年にスタートしている。その、フジテレビは出演者の誹謗中傷や出演後の十分なケアをしてきたのだろうか。木村花さんの件は、SNS民だけでなく、フジテレビ側にも責任もあるのではないか。

そんな中、5月23日にフジテレビとNetflixから「テラスハウス」は放送が休止されることが発表された。だが、今後もテラスハスをめぐるリアリティーショーの制作サイドの問題は追及されることは避けられないだろう。すでに今回の木村さんの死を受け、制作サイドにいた人間から「ヤラセ」だったという告発記事も出ている。

これに対して、出演者の一人である新野俊幸さんはTwitterで下記のように反論している。

本件をめぐる問題はヤラセの有無ではない

<「事実」が大事だと思うからコメントするけど、俺は何も指示されてないよ、忖度なしで。編集にはムカついてたけどな。>

皮肉なことに、木村さんが死を遂げた後も、出演者のSNSでの発信こそが、放送休止となった恋愛リアリティーショーに視聴者がより没入する肥やしとなっているのである。

本件をめぐる問題は、「ヤラセがあったか」の真偽を問うものではない。

むしろ、“ヤラセ感”のないように番組をつくり、SNSで話題になることによってここまで成長してきた恋愛リアリティーショーの構造自体を否定しなければならない局面にきているのだ。リングで活躍する女子プロレスラーとして活躍していた木村さんが、テレビという舞台の上でも活躍した結果、熱狂的な観客にあおられ、亡くなったとすればそれほど皮肉な話はないだろう。

私もリアリティー番組の文化をつくってきた人間の一人として、木村さんの死は重く受け止めざるを得ない。

[ライター 柚木 ヒトシ]

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日本人が知らない真っ赤な過去…岡田晴恵に近すぎる元感染研・田代眞人という男

2020年6月4日 08:00 PRESIDENT Online

岡田晴恵を育てた男、謎に包まれた田代眞人

昨今の“コロナ特需”でテレビに出ずっぱりの白鴎大学の岡田晴恵教授。感染免疫学、公衆衛生学を専門とし、詳細な解説や時に大胆な発言ですっかりお茶の間の顔となる。日に日にあか抜けるビジュアル変化は熟女好き男性のハートをガッチリつかみ、「モーニングショー」(テレビ朝日)がオンエアされるたびに、ネット掲示板の5ちゃんねるでは「晴恵実況スレ」が立つほどだ。

“コロナ特需”に乗っかったマスコミ各誌が岡田晴恵を取り上げるなかで、『週刊文春』(2020年3月26日号)では、国立感染症研究所の研究員時代に執筆した岡田の論文に不正疑惑があったことを報じた。さらに当時の上司にあたる田代眞人との不倫疑惑も取りざたされた。

同誌によれば岡田は、1990年代後半に感染研・ウイルス第一部の実験補助員に採用された。そのとき部長だったのが、当時のインフルエンザ研究の権威であった田代眞人。彼が第三部の部長に異動した際に、岡田は研究員として正式採用されたそうだ。

岡田は田代のもとで実績を積み、共同研究者として数々の論文を発表する。岡田がこれまで出版した書籍を見ると、『鳥インフルエンザの脅威』(河出書房新社)をはじめ田代が監修したものが多く、『感染症とたたかう インフルエンザとSARS』(岩波書店)など共著も多い。

田代は“コロナの女王・岡田晴恵”を手塩にかけてつくり上げた。岡田の研究姿勢には、田代イズムが脈々と受け継がれているに違いない。

田代眞人の告発「中国は国家ぐるみで嘘をついている!」

岡田晴恵の師匠、田代眞人はどのような人物なのだろうか。東北大学医学部卒業後、自治医科大学助教授などを経て、感染研に入所。同インフルエンザウイルス研究センター長、WHOインフルエンザ協力センター長、WHOパンデミック緊急会議委員、国際インフルエンザ学会理事などを歴任し、昨年秋には瑞宝小綬章を受章している。

日本にとどまらず世界で感染症の権威として活躍した田代。彼は過去に興味深い“告発”をしていたことが明らかになった。

今から15年前の2005年、当時猛威を振るっていた鳥インフルエンザ感染者数について「中国は国家ぐるみで世界を欺いている」とドイツで告発をしたのだ。その様子は、現地の有力紙・フランクフルター・アルゲマイネでも取り上げられている。

東南アジアを中心に流行していた高病原性鳥インフルエンザ(H5N1型)。告発当時、報告されていた中国での感染者はたったの3人だった。しかし、田代はこれに対して異議を唱えた。

田代氏はWHOインフルエンザ協力センター長。東京の感染研にある彼の研究室は、アジア地域の鳥インフルエンザ調査を行う、国連のアジア窓口の一つとされていた。

同紙によれば、アジアで鳥インフルエンザが流行するなか、田代が中国・湖南省を訪れた際、非公式ながら驚くべき情報を得た。現地の共同研究者から、「中国国内ではすでに数百の人が死んでいる。さらに数千人が隔離施設に押し込められている」というのだ。

中国が公式に報告している数字と桁がまるで違う。この証言をしたとされる関係者はすでに中国当局に逮捕された、という恐ろしい話だったという。もし本当ならば、現地研究者の決死の告発ともいえる。

同年11月19日、この情報を持ち帰り、田代が中国の虚偽を告発したのはドイツにあるマールブルク大学。ウイルス学の権威・ハンス・ディーター・クレンク博士の引退講演によせてこのスピーチを行い、他の専門家たちの度肝を抜いたのだった。

中国はデマだと否定、WHOも根拠なしとバッサリ

告発から6日後、中国当局は声明を出す。中国保健相スポークスマン・毛群安は「私たちが虚偽の報告をしているとの話は、まったくのデマだ」と話したことを中国・人民日報は報じている。

記事によれば「保健省とWHOが検証したところ、湖南省で鳥インフルエンザの調査をしたWHO専門家の中に、日本人はいなかった。何百もの中国人が鳥インフルエンザで死んだという報告は真実ではない」「田代眞人がWHOの専門家として中国を訪問したことはない」と名指しで否定した。

さらに英科学誌『ニュー・サイエンティスト』はこの騒動に触れ、WHOスポークスマンのディック・トンプソンのコメントを掲載。「中国が虚偽を働いている噂(うわさ)に根拠はない」というものだった。

結果的に、デマを拡散したという形になってしまった田代。この件でWHOの職を解かれたということはないようだ。真相は闇のままである。

SARS流行時も「中国の隠蔽」を指摘

田代はかねて、中国に対する強い疑念を持っていたようだ。

2004年に出版した岡田との共著『感染症とたたかう インフルエンザとSARS』のなかで、SARS(重症急性呼吸器症候群)流行に関して、2002年11月から中国広東省を中心に流行していた原因不明の新型肺炎について、当初中国は流行の事実を隠蔽(いんぺい)したと指摘。

WHO専門家チームによる調査・支援の受け入れを中国は拒否し、この初動対応の遅れが世界的な感染拡大を招いたと述べている。

田代と中国の因縁の関係。これは岡田にも受け継がれているのだろうか。

一方、岡田晴恵のドイツでの論文は見当たらない

田代が中国の虚偽を告発したドイツ・マールブルク大学は、グリム兄弟が学び、哲学者ハイデガーが教鞭を執るなど、500年の伝統を持つ名門校だ。医学関連の研究も盛んで、免疫血清療法と破傷風血清療法を発見したベーリングも研究活動を行った。彼は1901年に第1回ノーベル生理学・医学賞を受賞している。

岡田は、同大学のウイルス学研究所に、アレクサンダー・フォン・フンボルト財団の奨学研究員として留学していた。時期は2000年前後と推定される。

アレクサンダー・フォン・フンボルト財団はドイツのノーベル財団といわれるほど権威ある団体である。関連する「日本フンボルト協会」ホームページによれば、この財団を通して世界中から毎年2000名以上の研究者がドイツでの在外研究に携わり、うち48名のノーベル賞受賞者を輩出しているという。

奨学研究員になれば、若手研究者であれば奨学金として月額2650ユーロ(6カ月から24カ月)、中堅研究者であれば月額3150ユーロ(6カ月から18カ月)が給付されるとある。その奨学生に選ばれるのは決して簡単なことではないだろう。ちなみに、田代も同じ奨学研究員として1984年にギーセン大学に留学している。ギーセンはマールブルクの隣町だ。

奨学研究員として選ばれた岡田は、ドイツで一体何の研究を行っていたのか。残念ながら、留学時に発表した論文は見つけることができなかった。彼女の留学時代を知る人物は「正義感あふれる人」と評している。自分の損得は顧みずに、正しい行いを追求する信念の強さがあったという。

(文中敬称略)

[プレジデント編集部]

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「知らなきゃ丸損」新型コロナで申請しないともらえない3つのお金

2020年6月4日 08:00 PRESIDENT Online

コロナ禍で収入が急減した人たちのために、国は給付制度の要件緩和や対象拡大を実施している。つまり申請すれば「もらえるお金」が増えているのだ。ファイナンシャルプランナーの井戸美枝さんが、知らないと損する3つの制度を紹介する――。

休んだ人は会社の承認だけでもらえるお金も

最大200万円を配る「持続化給付金」など、新型コロナウイルスにより収入が減少した中小企業者や個人事業主を救う制度が創設されています。

一方で、会社員であっても、自粛要請や感染の疑いで会社を休み給与が減った場合など、役所に申請すれば「もらえるお金」があることをご存知でしょうか。

コロナ禍に対応するために従来の制度の要件が緩和されたり、対象が拡大されたりしている例もあります。ここでは社会保険など平時からある「使える制度」の最新情報を紹介していきます。

まずは「傷病手当金」です。傷病手当金は、病気やケガで会社を4日以上休業し、会社から給与が出ない場合に健康保険から給付されるものです。

新型コロナ感染の疑いで会社を休む場合も例外ではなく、ほかの病気やケガで休むのと同じように給付が受けられます。

傷病手当金を受け取るには「病気やケガで働けない」ということを医師に証明してもらう必要があります。しかし新型コロナでは、感染拡大防止のために、医師の診察を受けずに、一定期間、自宅療養をする人もいます。

そうしたケースなど、やむを得ない理由により医療機関を受診せず、医師の意見書を添付できない場合には、特例的に事業主が証明すれば給付対象になる措置が取られています。場合によっては、医師の意見書がなくても給付が受けられる、というわけです。

条件に当てはまる人は、まずは勤務先に相談してみてください。

国保加入者でも特例的に支給されるケース

ふつう、傷病手当金の給付が受けられるのは、会社員など健康保険に加入している人だけです。自営業やフリーランスの人が加入する国民健康保険には、傷病手当金の制度はありません。

しかし新型コロナに感染、または感染が疑われるなどで休業せざるを得なくなった場合については、国民健康保険に加入する人でも、特例的に傷病手当金が支給される可能性があります。

国民健康保険は自治体が運営主体であり、この特例的措置は、国が自治体に要請し、各市区町村が判断して行うものです。市区町村で条例を作る必要があることから、6月の議会で決まるところが多そうで、市区町村の6割程度が実施する見込みです。1日あたりの支給額や日数ともに、健康保険の給付と同様です。

対象となるのは、雇用されて働く給与所得者、つまり個人事務所など社会保険に加入していないところで働いている人や、アルバイトやパートなど、非正規雇用で働いて国民健康保険に加入している人です。フリーランス、自営業など、雇用される立場でない人には支給されません。

この特例的な措置が適用されるのは、2020年1月1日~9月30日までの間に実際に休業した場合です。適用を受けるためには、自身で市区町村の窓口に傷病手当金の申請をする必要があります。万が一、感染した場合、また感染の疑いで休業した場合は、居住する市区町村に給付の有無を確認しましょう。

仕事や通勤に原因があればより充実した給付も

傷病手当金の支給額は1日あたりの給与の3分の2に相当する額で、給与の約6割を受け取ることができます。ここで言う1日あたりの給与とは、「標準報酬月額」を30で割った額のことで、毎月受け取る給与の3分の2程度を受け取れる、と考えていいでしょう。

支給額の上限は日額3万887円です。もしも勤務先から休業中も給与が支払われた場合は、給与が傷病手当金より少ない場合のみ、差額が支給されます。傷病手当金より給与が多い場合は支給されません。給付されるのは最長1年6カ月です。

加入する健康保険組合によっては、金額や期間など、追加的な給付が受けられる場合がありますので、勤務先に確認してみましょう。

傷病手当金は病気やケガで会社を休んだ場合の制度ですが、病気やケガが仕事中や通勤途中に起きたものであった場合には、傷病手当金ではなく、「休業補償給付」が受けられます。対象となるのは、労災保険に加入(雇用されている人は原則的に皆、労災保険適用)していて、病気やケガの療養中で働くことができず、休業中、賃金が支給されない人です。

給付額は、労災保険から日給(給付基礎日額)の6割、さらに特別支給として2割が上乗せされ、合計で日給の8割です。支給期間は休業4日目からですが、連続3日休業ではなく、通算3日の休業を経て4日目の休業でも構いません。なお、業務が原因の病気、ケガの場合、3日目までについては事業主から日給の6割が支払われます(通勤が原因の場合は支給なし)。

傷病手当金が支給されるのは最長で1年6カ月ですが、休業補償給付には日数の制限がなく、働くことができない間は支給が続きます。さらに1年半経過した時点で、病気やケガの程度の労災保険が定める傷病等級1~3級に該当する場合には、より手厚い「傷病補償年金」に切り替わります。

仕事中や通勤途中に起きた病気やケガであれば、給付額、日数とも、傷病手当金より充実した給付が受けられる、というわけです。

医療機関で働く人をはじめ、介護施設、商業施設などでは、今後も新型コロナのクラスターが発生する可能性も否定できません。そうしたケースで新型コロナに感染した、あるいは感染が疑われた場合は、休業補償給付の対象となる可能性が高そうです。

医療費が一定額を超えたら「高額療養費」

傷病手当金や休業補償給付はもともとある制度です。一定期間は休業しても給与の3分の2程度、仕事中や通勤途中に起きたものなら8割が支給されるのですから、収入はある程度カバーされ、かなり助かる制度といえます。

さらに医療費の自己負担が一定の額を超えると、超えた分が還付される「高額療養費」という制度もあります。

1カ月の医療費の自己負担額の上限は年齢や所得によって決まっており、一般的な所得の会社員(標準報酬月額28~50万円)の場合、約9万円です。これを超える分が、健康保険または国民健康保険から給付されるわけです。手術や入院で30万円かかったとしても、自己負担は約9万円で済みます(差額ベッド代や食事代は別途自己負担)。

高額療養費には、自己負担が一定額を超える月が1年に4回以上あると上限額が低くなる「多数回該当」や、家族で医療費負担が重い場合は家族の分を合算できる「世帯合算」などもあります。家計への医療費の負担が重くなると、より充実した給付が受けられる仕組みといえます。

「もらえるお金」を知れば保険料が節約できる

医療費の負担にも上限があり、収入も一定の水準までカバーされる、ということを考えると、病気やケガで長期療養しても、経済的なダメージは一定のレベルに収まるというわけです。

民間の医療保険に加入している人も多いですが、ある程度、貯蓄があり、医療費の自己負担分や、傷病手当金などで不足する分をカバーできれば、医療保険の必要性は低いとも考えられます。

届け出をきちんとすれば「もらえるお金」は、かなりたくさんあります。制度を知ることで、もらわずに損をすることも避けられますし、民間の保険に加入しすぎて重い保険料負担を抑えられる可能性もあります。コロナ禍の今、まずはどんな制度があるかを「しっかり知ること」が大切です。

[経済エッセイスト 井戸 美枝 構成=高橋晴美]

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年金暮らしの70代父母を「ムダ遣いするな」となじる50代独女の言い分

2020年6月4日 08:00 PRESIDENT Online

70代の両親と同居する50代の娘は30代で精神疾患にかかって以来、働けず、障害年金を受給している。すでに1000万円の貯金があるが、これから親亡き後、自分の生活費が残されているかを不安に思う娘は、母親の浪費を疑う。娘に呼び出されたファイナンシャルプランナーは、親子間の対話を促すが——。

70代の親に向かって「浪費をするな」と責める50代娘の理屈

70代の女性Aさんから、同居する50代の娘に「なぜ、アンタは浪費するのか」と日々責められて困っているという相談がありました。

娘は30代のときに精神疾患と診断され、以来、障害年金を受給(年間約78万円)しています。Aさんはその障害年金をアテにすることなく、夫婦の年金(年間計約300万円)だけで家族3人の家計をまかなっており、Aさんはムダ遣いをしているつもりはありません。

ところが、娘は強い口調で「いつもスーパーやドラッグストアで買い物しすぎじゃない?」「安いセール品だからって買っちゃだめだよ。家に十分ストックある」と、毎日のように声を荒げるそうです。

Aさんはそれに押されて1円単位で節約の努力を続けてきた、と言います。しかし、筆者の前で「わたし、もう疲れてしまいました」とこぼします。これまで娘に何度も家計は赤字ではなく、浪費は一切していないと説明したものの、理解を示さず、今や顔を合わすのさえつらいということでした。

現在50代の娘は高校卒業後、正社員として就職することはなくアルバイト生活を送っていました。アルバイトはいずれも長く続きませんでしたが、両親ともにそれほど気にしなかったそうです。もともとあまり体力がなく、女の子は結婚するものと思っていたこともあって、正社員にはこだわりませんでした。そのうち娘は30代となり、気がつけばアルバイトに行かなくなっていたのです。今は週に1回程度は図書館へ行くものの、それ以外は家にこもっています。

「娘のお金には手を付けない」と親が決めた理由

Aさんには、家の中にいる娘はそれなりにフツウに見えるので、努力すれば治るのではないかという期待があります。素人考えながら、外の空気に触れさせるのは効果があると思って、自宅の庭で花や野菜を一緒に育てたり、ドライブに連れ出したりしましたが、娘の言葉はきつくなる一方です。

治ることへの期待を持ちつつも、最近は、ずっとこのままの状態が続くことへ覚悟のようなものもできたとAさんは言います。そのこともあって娘が受給している障害年金を「少しでもいいから家計に入れて」とお願いしたことは一度もありません。

障害年金は娘のものであり、自分と夫が死んだ後の生活費にできるよう貯金しておいてほしいと考えているからです。自分たち両親が健在なうちは、娘のお金には手を付けない。夫婦でそう心に決めたのです。

家族とお金については次のとおりです。

赤字家計ではないのに、娘が母親を非難するのはなぜか

◆家族構成

母(相談者):70代 年金収入 60万円
父:70代 年金収入 240万円
長女:50代 無職 障害年金 78万円
長男:40代 隣県在住 家族は妻と小学生の子2人

◆資産状況

自宅:一戸建て(持ち家)
預貯金:1000万円(父母分)、預貯金:1000万円(長女分)
長男の住宅購入時に援助をし、父死亡の際には渡すものはないと合意済み。

◆家計状況

父母の年金で3人分の生活費はまかなえているのは確かだが、細かい支出費目は家計簿をつけていないため不明。家計を預かる母自身の印象としては、家計は苦しくない。
収入は、Aさんと夫の年金だけで、それぞれ年60万円、年240万円です。

年間の支出は、年間収入の300万円より少ない276万円。具体的な数字のわかる費目は、口座振替の公共料金や電話代などです。家計簿を細かくつけているわけではないので、食費や被服費の額は月によりまちまち。ただ、赤字家計にしないように注意し、毎月2万円を長男(独立して結婚)の孫の祝い事に充てられるよう生活費とは別に積み立てています。

月の支出は1カ月平均23万円です。総務省の家計調査では世帯主が70歳以上の無職世帯の消費支出額は約23万4000円。この統計では世帯人数は2.35人となっているので、3人住まいのAさん宅は家計のやりくりをちゃんとしていることになります。

では、なぜ、娘は母親を非難するのでしょう。

ついつい強い口調になってしまう娘の「胸の内」

後日、筆者はAさん宅へ伺いました。その際に娘にも話を聞くことができました。実はファイナンシャルプランナーの存在をAさんに教えたのは、娘当人だったのです。プロであれば、母の浪費がわかるはずと考えたようでしたが、あいにくその期待にはこたえられませんでした。

娘は、母親に席をはずすように頼みました。言葉づかいは、「……もらえますか」と一応依頼の形でしたが、その口調は完全な「命令」。怒りのようなものが込められたこの口調で浪費を非難され続けたらめいってしまうだろうと筆者も思いました。

娘は、あれこれ話してくれました。

●結婚できずにいることを親不孝だと思っている。
●一つひとつの家事はできるが、段取りが下手で、ひとり暮らしをする自信がない。
●たまに会う甥っ子たちはかわいくて、自分もお小遣いを渡すのだが、進級や誕生日などに両親が渡す祝儀の金額が気になって仕方ない。
●弟には家族があるので迷惑をかけたくない。
●最近の母親は年のせいか口調が柔らかくなったが、以前はかなり厳しく、生活の相談はできなかった。
●将来の経済的な不安を話すためには、両親の死について触れざるを得ず口にできなかった。

母と娘では気持ちや情報が少し行き違っているように見えました。

そこで、「私も立ち会うので、気がかりに思っているお金のことをご両親に少し伝えてみませんか」と言ったところ、少し考えた後、了承してもらえました。

娘の積立額は1000万円だが、本1冊買うのもプレッシャー

母親に戻ってもらい、別の部屋にいた父親にも声をかけました。娘は両親の前で次のポイントを語りました。

●相続の際は財産を弟と半分ずつ分けるべきだが、そうすると自分の生活費は足りるのか。そもそもすべてもらったとしても足りるのか。
●両親の死については縁起でもないので口にできなかった。
●障害年金は、「貯めておくように」と「強く」母に言われたことからずっと貯めていて、積立額は約1000万円になっている。ただ、本1冊買うのもプレッシャーで、図書館で本を借りていた。

一方、両親からは改めて、家計は赤字になっておらず、統計と比べてみても、月の支出額も多くはない、また浪費やムダ遣いはしていない、といった説明がありました。

自分たち亡き後のことが気がかりなので障害年金から生活費を入れてもらおうとは考えず、娘自身の貯蓄にしてもらいたかったことや、娘との3人の生活を守るために孫たちへのこづかいやお祝いは上限を決めていることなども合わせて説明がありました。

さらに、手元の預貯金(1000万円)と自宅(持ち家)は娘に残すつもりでいることも伝えられました。「あと1回は車を買い替えるだろうから、1000万円よりは減るけど、なるべく多く残したいと考えている」と父親がおだやかに語ったのです。

両親他界後に自分が「生き延びられる期間」がわかった

両親の話を聞いて、両親の気持ちや家計の状況を理解した娘は、「預貯金で暮らしが成り立つ期間を計算したい」との要望を申し出ました。

単身者の消費支出は1カ月あたり平均約16万円(「家計調査」による)。娘は運転しないので自動車関連費はゼロと想定しても、家事が得意ではないので食費は統計よりも多く見積もっておいたほうがよさそうなどとして、障害年金に対する毎月の不足額は9万5000円で計算したところ、貯蓄1000万円でカバーできるのは8年9カ月間となりました。

不足額が9万円なら9年3カ月間、7万円なら11年11カ月間、5万円なら16年8カ月間です。生活費を少なくするか、収入を増やして毎月の不足額を減らすことができれば、貯蓄でカバーできる期間を延ばすことができるとわかります。

現在70代の両親ともに元気でいてくれる間は年金収入があり、その間は、娘の貯蓄はさらにふやすことが可能です。ただ、父死亡後の母子二人の生活は貯蓄を取り崩すことになるでしょうから、親の貯蓄は現在よりも少なくなると予想されます。また、父母に介護が必要になった場合にはさらに減るでしょう。実際のところ、両親から受け取れるお金は、その時になってみないとわかりません。

その後、Aさんは娘にまかせる家事について相談しています。父親と娘は、1万円でも2万円でもいいから自分で収入を得られるといいねという話をしているそうです。

娘がお金の面で安心を得たとは言い難いのですが、貯蓄で暮らせる目安がわかったからなのか、Aさんに対する浪費の非難はなくなったようです。

お互いへの信頼がないと、当事者同士で話し合おうとしても前に進みません。そうした場合、われわれのような第三者を加えることで、話し合いがスムーズに進むケースも珍しくありません。「もう限界だ」と思う前に、ぜひ第三者に相談することを検討してみてください。

[ファイナンシャル・プランナー 菅原 直子]

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なぜワイドショーは「個人的な意見」しか言えないコメンテーターを重用するのか

2020年6月1日 08:00 PRESIDENT Online

テレビのニュース番組やワイドショーには「コメンテーター」がよく出てくる。「専門家ではない一般の人」として、個人的な意見を述べて視聴者を引きつける。だが元テレビ朝日プロデューサーの鎮目博道氏は「コロナ問題で報道のあり方が問われている。コメンテーターに頼った番組作りはもうやめるべきだ」という――。

専門性よりも大切な「話術」「見た目」「呼びやすさ」

以前、私が担当していたニュース番組で、ひとつの方針を決めたことがあります。それは、「専門家をキャスティングするときには、必ず『本当に詳しい人』を呼ぼう」ということ。

例えば、弁護士さんをキャスティングする場合は、そのニュースで問題となっていることについて、「日本では第一人者だ」と弁護士さんの間で言われている人物にまず声をかけ、断られたら2番目に詳しい人、それもダメなら3番目に詳しい人……という方針です。

ニュース番組の準備は時間との勝負ですから、そうやってお願いしていっても次々に断られる場合も多い。でもそれでも最低限、必ず「専門分野がきちんと合っていて、実際にその事例を多数経験している人」にお願いするということにしたのです。

事件について話を聞きたいのに、スタジオにいる弁護士さんの専門が「民事」だったりしたらお話になりません。

しかし、この方針はキャスティング担当者から思わぬ不評を買いました。まずは作業の負担が大きすぎるということ。そして、「その人の話が面白いかどうかは分からない」ということがその理由です。

それよりはテレビ番組に出演し慣れていて、話が上手い弁護士さんに解説してもらった方がいい、というのです。

コロナ問題を機に「コメンテーター不要」の思いが強くなった

日頃からお付き合いがありますから、出演交渉も簡単ですし、番組サイドが「どんな話をしてもらいたいのか」ということも心得てくれていますから、確かに都合がいい。でも、その人は本当はその分野について特に詳しいわけじゃない。

テレビの業界人はついつい「話がわかりやすくて」「見た目が良かったり爽やかだったりして」「テレビ的なことを理解してくれている」人を優先して番組に呼びがちです。専門家の場合もそうですが、「コメンテーター」と呼ばれる人たちは特にそうです。

僕は以前から、「ニュースや情報番組にコメンテーターは実はいらないのではないか」と少し思っていて、新型コロナウイルスの問題を契機に、その思いが一層強くなってきています。

取材者を泣かせる「ピントがズレたコメント」

なぜ以前から「コメンテーターはいらないのでは」と思っていたかというと、僕がニュースや情報番組のディレクターをしていた時に、何度も悔しい思いをしたことがあるからです。

例えば、ひとつの事件について、ディレクターとしてかなりの日数をかけて勉強をして、取材・撮影・編集をしてVTRを完成させて放送したのに、スタジオでコメンテーターに「ちょっとピントがズレたような意見」を言われてしまい、僕が現場で知った問題点や、伝えたかったこととは少し違う方向に結論づけられてしまったりすることがたまにありました。

そういう少しズレた意見をいうコメンテーターは、大概そのニュースの専門家ではない場合が多かったように思います。ベテラン記者ですが、ずっと政治を取材してきたはずの人に、事件について少しズレたコメントをされてしまった……となると、その事件の現場に行き、たくさんの関係者から話を聞いたディレクターはとても悔しい。

そもそも、ひとりの人間が専門分野を超えてどんな話題にでも「個人的意見」をいう「コメンテーター」というシステムはニュース番組には要らないのではないか、と考えるようになったのです。

視聴者は「事実」と専門家の「科学的知見」を求めている

これが「バラエティ番組」や「トーク番組」であれば話は別です。ひとつの「ニュース的な話題」をテーマとして、いろいろな立場の人がそれぞれの意見を言い合い、論争をすること自体を楽しむ番組も、それはそれで「アリ」だと思います。

この場合、あえて「専門家ではない一般の人」の意見や、「別ジャンルの専門家の見方」なども意味はあると思います。また、「ニュースの性質」によっては、ニュース・情報番組の中でもひとつの問題についていろんな人が意見を闘わせる「激論コーナー」のようなものが有効なこともあると思います。

例えば、「憲法改正の問題」のように、みんなで議論をすることが大切で、様々な立場の人の考え方を知ることで自分もより一層考えを深めることができるような問題については、そうした演出方法は有効だと思います。

しかし、新型コロナウイルスの問題は、そうではないと思います。人々は何より「正しいことが知りたい」と強く願っている。しかし、新型のウイルスですから、専門家の方であっても本当のところは分からない部分も多い。

そんな中、できるだけ多くの「事実」や「専門家の科学的な予測」を知り、この先どうなるのか、自分がどうするべきなのか、を判断する材料にしたいと思ってテレビを見ている人がいま多いのではないでしょうか。

コメンテーターの「単なる意見」は求められていない

そういう視聴者には「専門家ではない一般の人」の意見や、「別ジャンルの専門家の見方」はとりあえず必要ないと思いますし、場合によっては邪魔に感じることも多いと思います。「感染はこれからどうなるのか」であれば、感染症の専門家の話が聞きたい。「コロナで経済はどうなるのか」であれば、その分野の専門家の詳しい分析・予測が聞きたいはずです。

みんなが知りたいのは、新型コロナウイルスについての「事実」と専門家の「科学的知見」です。コメンテーターの「単なる意見」は必要ないのではないでしょうか。

僕は、本来テレビのニュース・情報番組に出演するのは、「キャスター」と「専門家」と「取材者」だけでいいと思っています。先ほど書いたように、「問題については詳しいのだけれど、説明がそんなに上手ではないのでわかりにくい」専門家の方のお話についてはVTRできちんとわかりやすく整理すればいい。

あるいはスタジオでキャスターがボードなどを使ってわかりやすく説明し直したり、取材した記者やディレクターが補足すればいいと思います。

コメンテーターを登場させる番組演出はもう、必要とされなくなってきているのではないかと思うのです。

玉川さんは、取材の報告者として出演すればいい

こうした中、コメンテーターによる発言が問題となり、炎上したりする事例も出てきています。テレビ朝日「羽鳥慎一モーニングショー」の玉川徹コメンテーターは4月29日、新型コロナウイルスの検査機関についての自らの発言が誤っていたとして謝罪しました。

発言を誤った原因は「テレビ朝日の記者が都庁のレクチャーを取材したメモの解釈を間違えた」からということでしたが、これは本来、レクチャーを実際に取材した都庁担当の記者がスタジオ出演して解説すれば防げたことかもしれません。

玉川さんは、僕の先輩なのでよく存じ上げています。とても優秀な取材をなさる方なので、あるいはコメンテーターとしてではなく、ご自身で取材をなさってその報告者として番組にご出演なされば良いのではないか、と僭越ですが思ってしまいます。

そもそも、日本のテレビは朝から晩までニュースと情報番組ばかりになってしまっています。こんなにニュースと情報番組ばかりやらなくても良いのではないか? とも個人的には思うのですが、それはこの際置いておきます。

その長い放送時間を埋めるためにコメンテーターのトークで内容を伸ばしている、つまり「事実を意見で水増ししている」と視聴者の方々に思われてしまっては大変です。少なくとも、「事実を伝えている部分」と「意見を述べている部分」を明確にわかるように演出する方法を考えた方が良いのではないでしょうか。

テレビ局は「事実」をもっとたくさん報道するべきだ

コメンテーターに依存した番組構成では、さらに深刻な問題を引き起こす恐れがあります。

意見が一方向に偏ってしまうと、「世論を何らかの方向に誘導しようとしているのではないか」と視聴者に疑われてしまいます。そうすると根本からメディアに対する信頼を損なってしまう可能性さえあるのです。

せっかくニュース・情報番組がたくさんあるのですから、もっと「事実」を扱う数を増やしたら良いと思います。これほどたくさんのニュース・情報番組がなかった20世紀と比べても、残念ながら扱うニュースの項目数は増えていないような気がしますし、下手すれば減っているのではないかとすら思えます。

新型コロナウイルスの関係で日々取材にあたっている記者やディレクターにどんどん出演してもらい、解説してもらうのも良いと思いますし、新型コロナウイルス以外にもたくさん大切なニュースはあるはずです。

ニュースが「コロナ一色」になってしまい、他の問題をいくら取材しても放送してもらえないという不満の声を記者やディレクターから聞くこともあります。彼らが日々頑張って集めてきている「事実」をもっとたくさん放送すれば良いのに、なぜしないのだろう? と不思議に感じます。

コロナでテレビニュースのあり方が問われている

最近よく、TBS「Nスタ」のキャスターをしている井上貴博アナウンサーが、「私たちの報道のあり方も問われている。反省しなければならない」といった趣旨のことを放送で口にされています。

井上さんがおっしゃるように、いま私たちテレビのニュース・情報番組はそのあり方を問われているのだと思います。現場からこうした声が上がってくるのは素晴らしいことだと感じます。

まさに、新型コロナウイルスの問題を契機に、もう一度テレビニュースは自分たちの姿を見つめ直し、考え直さなければならないのではないでしょうか。

[テレビプロデューサー・ライター 鎮目 博道]

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