cat_11_issue_oa-president oa-president_0_d15aada32353_「幼児教育無償化」スタート後の不都合な真実 d15aada32353 d15aada32353 「幼児教育無償化」スタート後の不都合な真実 oa-president 0

「幼児教育無償化」スタート後の不都合な真実

2019年12月19日 08:00 PRESIDENT Online

鳴り物入りで始まった「幼児教育無償化」。保育園や幼稚園の保育料が無償化されるのですから、単純に考えれば、子育て世帯はもちろん助かるし、少子化対策にもなるはず! と思いますが、実は「こんなことやっちゃって、いいの?」「お金より保育が欲しい」という声も挙がっています。なぜなのでしょう。

毎月3万円の保育料が浮くけれど

2019年10月から「幼児教育無償化」がスタートしました。

消費税値上げ分を財源にして、保育園、幼稚園、認可外保育施設などを利用する3歳以上児の保育料を「無償化」する制度で、政府が「全世代型社会保障」と銘打つ目玉政策です。

正確に言うと、認可保育園や認定こども園など、保育料を市区町村が決めている認可施設は3歳以上児の保育料がゼロ円になります。認可外保育施設など、保育料を施設ごとに決めている施設では37,000円を上限に「無償化」され、それを上回る分は自己負担になります。保育料を園で決めている幼稚園(私学助成幼稚園)の場合は25,700円が上限になります。幼稚園の預かり保育の保育料も11,300円まで「無償化」されます。認可外保育施設や幼稚園の預かり保育の「無償化」は、親が働いているなど保育の必要性を認められる家庭だけが対象になります。

同様に、住民税非課税世帯の0~2歳児の保育料も無償化されます(図表1)。

都市部の100市区を対象とした「100都市保育力充実度チェック」調査(保育園を考える親の会実施)のデータで見ると、認可保育園等の3歳以上児の保育料平均額は最高所得階層で約3万円、中間所得階層で約2万円でした(認可保育園等は、所得に応じた保育料が設定されていて、生活保護世帯等は無償化前から保育料は無料)。多くの共働き家庭では認可保育園で毎月2~3万円の支出が、認可外保育施設の場合はそれ以上の支出が浮くわけですから、子育て家庭の家計が助かっていることは間違いありません。

にもかかわらず、その当事者の親からも「大丈夫なの?」という心配の声が上がっています。

お金よりも「保育」がほしいという声

実は、この「幼児教育無償化」、実施前からさまざまな議論がありました。

今回の「無償化」の実施は従来の制度で保育料が高かった家庭、つまり所得の高い層ほど恩恵を受けることになります。施策としての有効性に疑問符がつく中で、子育て当事者の間では「保育園に入れなくて困っている家庭がこんなに多いのだから、待機児童対策のほうが優先されるべきではないか」「保育ニーズがふえて、かえって待機児童問題が深刻化するのではないか」などの声が広がりました。

2019年4月の国の待機児童数は16,772人となり、2年連続で減少したと発表されています。ところが、認可の保育(認可保育園、認定こども園、小規模保育など)に申し込んで認可を利用できていない子どもの数を単純計算すると、2019年度は2018年度よりも増えていました。認可外保育施設で待機している家庭、遠くの施設を勧められて断った家庭など待機児童数から除外されている数字を含めると、認可に申し込んで認可を利用できていない子どもの数は全国で10万人に上ります。全体としては少子化傾向にあるので、どこかで保育のニーズ増は頭打ちになるはずですが、「保活」が厳しい状況はまだ続いています。

無償化の財源が足りない?!

「幼児教育無償化」の財源は、年間で7800億円程度と言われています。

消費税を上げて得られた貴重な財源の使い道が「幼児教育無償化」であると告げられて、「え、そこですか?」と思った当事者も少なくなかったと思います。

そんな折も折、11月20日に「幼児教育無償化の予算が400億円不足するかも!」という報道が流れました。足りなくなった理由は、幼稚園よりも無償化の単価が高い保育のほうに利用者が流れているためと推定されています。国はまだ精査中ということですが、これから保育園をめざす人たちの不安は膨らみます。

保育士の待遇改善と負担軽減を実現できたはずなのに

保育ニーズの急激な増加を受けて、都市部の自治体では、保育施設をこれまでにないスピードでふやしてきました。その結果、深刻な保育士不足が発生しています。

保育士が不足する背景には、施設増のほかに、処遇が低い、負担が重いなどの労働条件の悪さを理由とした離職が多いことがあることも明らかになっています。処遇については、家賃補助やキャリアアップ補助金などの制度が実施されて改善の途上にありますが、賃金構造基本統計調査での「全産業計」と「保育士」の格差は埋まっていません(図表2)。

これを一気に埋めるのは非現実的と思われるかもしれませんが、単純計算すると、年間4000億円を保育士給与に投入すれば埋まるはずなのです。また、保育士の負担軽減には、配置基準(保育士一人で何人の子どもを見るかという基準)の改善が最も有効ですが、2012年に国が自ら試算したプランでは、1300億円かければ1歳児や4・5歳児の配置基準を改善できることがわかっています。合計5300億円です。

「幼児教育無償化」の7800億円の予算を使えば、どちらも即座にできたのです。

「質」を後回しにするこわさ

保育の質は、保育士の働きに左右されます。保育士の人数が足りなかったり、未熟だったりすれば、保育の質は低下します。

保育園を考える親の会には、「保育士不足で、毎日散歩に行けないと言われた」「夏の水遊びができないと言われた」「先生が忙しすぎて、子どもへの当たりがきつい」という声が届きます。このところ、虐待まがいの保育が次々に報道されていることも気になっています。

保育士の人数の不足も解消しなければなりませんが、同時に良質な人材が保育士になってくれなければ、保育の質を上げることはできません。この時期の子どもの発達は、親や保育者などの養育者のかかわりの質(応答性など)の影響を大きく受けることがわかっています。保育は、子どもの安全を守りお世話をするだけではありません。人格形成期の子どものデリケートな育ちを支え促す「教育」でもあるのです。1・2歳児の半数が保育園等に通っている時代。保育士は日本の未来を担う子どもたちを心身ともに健やかに育てるという重要な役割を担っています。

来年度以降はもっと心配なことが起きる可能性

今、自治体の保育担当部署は、認可外保育施設の利用者の「保育の必要性の認定」業務など、無償化のために新たに発生した事務に奔走しています。

認可保育園等では、無償化と引き換えに保護者負担となった食材料費の集金業務で職員が多忙になっています。

幼稚園や認可外保育施設で「便乗値上げ」が相次ぎ、「値上げした分をどう使うのか、聞いても説明がない」など、納得できない保護者からの相談も保育園を考える親の会に届いています。

一番心配なのは、国や自治体の今後の保育施策です。「幼児教育無償化」の費用は、来年度から都道府県や市町村も負担することになっています。

新潟県では県の財政危機を理由に、独自に手厚くしていた保育士の配置基準を下げることを検討しています。新潟県では、国の基準では6対1(6人の子どもに1人の保育士)になっている保育士配置を、県独自の補助金を出して3対1に改善してきました。この補助金をなくしてしまうと、これまでのように子どもにていねいにかかわる保育ができず安全も損なわれると地元の保育園関係者は反対しています。

「100都市保育力充実度チェック」によれば、調査対象100市区のうち、1歳児の保育士配置を5対1〜3対1に改善している自治体は約8割に上ります。国の基準が低すぎて自治体が改善せざるをえない状況なのです。

市川市は、公立保育園を全園民営化する計画を発表し、その理由のひとつに「幼児教育無償化」によるコスト増を挙げています。公立保育園の無償化費用は10割が基礎自治体の負担となるためです。

お金を出して子供のための環境を支える

自治体の財政状況にかかわらず、保育の質を保障するためには、国による底上げが必要です。

もしも、毎月3万円払えば、信頼できる保育士によるていねいな保育と、美味しい給食と、子どもの散歩や水遊びが確保できると言われたら、払うという人は多いでしょう。

従来制度のように所得に応じた負担にすれば、経済的に苦しい家庭の子どもも守られます。

みんなでお金を出し合って子どものための環境を支えるほうがいいのではないか、と私は思うのですが、どう思いますか。

[保育園を考える親の会代表 普光院 亜紀 写真=iStock.com]

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2040年、日本に押し寄せる「半数が単身」の衝撃

2019年12月19日 08:00 PRESIDENT Online

ソロ客に支持されない商売は、立ち行かなくなる

「独身者に対する世間の風当たりは、今なお強いし、家庭持ちの人との間には根深い対立構造があるのを感じます」

独身研究の第一人者として博報堂ソロもんラボを率いる荒川和久氏はこう切り出す。

「既婚者の言い分は、独身者が自由な生活を謳歌するのは自由だけど、彼らの老後を支えるのが自分たちの子供世代というのが許せないということ」

独身者を快く思わない人がどれだけいようとも、社会の「ソロ化」は加速する一方だ。総人口に対する独身者率は、1980年の34%から2015年には41%まで上昇。40年には47%、つまり人口の約半分に達する見込みだ。日本社会で進んでいるのは高齢化ばかりではない。

この流れを受け、市場は確実にソロ仕様にシフトしつつある。コンビニはもちろんのこと、本来は「ファミリー」向けだったファミリーレストランでさえ、ソロ客需要に対応するために、仕切り付きのボックス席を用意するところも出てきた。

「今まで大切に扱われていなかったと感じるソロ客も、そういう店ならリピートするようになる。店の稼働率も上がり、ブランディングにも貢献します。ソロ客に支持されない商売は、近い将来、立ち行かなくなるでしょう」(荒川氏)

江戸時代の日本は「ソロ社会」だった

「実は歴史を振り返ると、江戸時代の日本はある意味ソロ社会でした」と荒川氏は解説する。

「江戸時代には生涯未婚者は、都市にも農村にも多かったし、明治維新から高度経済成長期の皆婚時代のほうがむしろ異常です。でもファミリー層は、自分たちこそが標準だと思っているため、自分の領域が侵食されていると恐れているんです」

だがソロ化の波は、実はファミリー層の生活にも押し寄せている。「今、一家揃って夕食を食べる家庭がどれほどあるでしょう。望むと望まざるとにかかわらず、みんな意外と『ソロ飯』していませんか」と荒川氏は問いかける。

さらには、今は家庭を築いている人も、子供が巣立ったり配偶者と離死別したりすれば、誰もが本格的にソロに戻る可能性がある。「健康不安が出てくる50~60代の既婚男性は、奥さんがいなくなったら生きていけるのかと怯えている。介護問題にしても、頼りになるのが家族だけでは心もとないはずです」。

家庭を築けば安心だとする人を、荒川氏は「タイタニック号」の乗客に喩える。

「沈没することをまったく想定していないので、泳ぐ練習もせず、外に出ようともしない。社会のソロ化という『波』が迫っているわけですから、そうした未来に適応していったほうがいいのです」

[小島 和子 撮影=榊 智朗]

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孫社長はなぜ赤字のウーバーを手放さないのか

2019年12月19日 08:00 PRESIDENT Online

ライドシェア事業大手のウーバーは、売上高こそ伸びているがずっと赤字だ。いまはソフトバンクグループ傘下にあり、孫正義社長の投資判断の是非が問われている。立教大学ビジネススクールの田中道昭教授は「孫社長は『ドライバー不要』という未来において、ウーバーが爆発的に成長すると考えているのだろう」と指摘する——。

※本稿は、田中道昭『ソフトバンクで占う2025年の世界』(PHPビジネス新書)の一部を再編集したものです。

投資事業そのものへの懸念が高まっている

ソフトバンクグループの2019年7-9月期決算は約7000億円の営業損失となりましたが、それはソフトバンク・ビジョン・ファンドが保有する銘柄の未実現評価損失(純額)が同四半期末で約5380億円にものぼったことが主な要因です。

投資会社としてのソフトバンクグループの象徴が10兆円規模のソフトバンク・ビジョン・ファンドです。同ファンドを通して多くの企業へ投資がされていますが、今決算での莫大な評価損を受けてソフトバンクグループの投資事業そのものへの懸念が高まっています。なかでも、ソフトバンク・ビジョン・ファンドの評価損計上に大きな影響を与えたのが、ライドシェア事業のウーバー銘柄など1兆1276億円もの公正価値減少でした。

グループのライドシェア事業は世界の8~9割にも

ソフトバンクグループは、これまで次々とライドシェア会社へ投資を行ってきました。

最初は、インドでオラを運営するANIテクノロジーズに対してでした。2014年10月に総額2億1000万ドルの出資を行い、筆頭株主になっています。続いてが、シンガポールのマイタクシー(グラブへ社名変更)で、2014年12月に2億5000万ドルを出資して筆頭株主になりました。

次にソフトバンクグループが投資を行ったのが、中国。2015年1月にアリババらと共同で6億ドルを出資した快的打車が、その1カ月後に滴滴打車と合併し中国最大のタクシー配車サービス企業ディディ(滴滴出行)となります。そして、ウーバーの発行済み株式の約15%を77億ドルで買い取ることにウーバーと合意したのが2017年12月、翌年1月に株式を取得し筆頭株主となりました。

つまり、ソフトバンクグループは、インドのオラ、東南アジアのグラブ、中国のディディ、そして米国、欧州、南米、アフリカ、豪州など世界各地に進出するウーバーといった、地域ナンバー・ワンのライドシェア会社へ投資を行っているわけです。その世界シェアは8割とも9割とも言われています。

上場しユーザーも増えたが、赤字体質が続いている

2019年5月には、ライドシェア業界の雄とも言えるウーバーがニューヨーク証券取引所に上場しました。初値は公開価格45ドルを下回る42ドルで、上場時の時価総額は約760億ドル(約8兆円)。それはGMやフォードの時価総額を大きく上まわる程でした。ただ、その後、11月から12月はじめ時点では株価は30ドル以下、時価総額も500億ドル以下で推移。上場直後に比べると少なくとも30%ほど、株価は下落、時価総額でみる企業価値も毀損(きそん)されたことになります。

これは、月間アクティブユーザー数と売上高は順調に増加しているものの、同年9月期まで6四半期連続で最終赤字を計上していることに対して投資家が懸念を抱いているためと考えられます。

月間アクティブユーザー数は、9月期末で1億以上と前年同期末から25%以上の増加。7-9月期の四半期売上高は3813百万ドル(約4150億円)で、前年同期比で約30%増となっています。年度売上高で見ても、2017年は前年比106%、2018年は同42%の伸びを記録しています。

その一方で、同四半期の営業損失は1106百万ドル(約1200億円)で、前年同期の営業損失763百万ドルから損失幅が増えています。年度の営業損失で見ても、2016年は3023百万ドル、2017年は4080百万ドル、2018年は3033百万ドルと、赤字体質であることは明白でしょう。

タクシー、デリバリー、配車サービスを支える4つの強み

では、ここで、ウーバーの会社概要などを詳しく見ていきましょう。ウーバーはトラビス・カラニック氏とギャレット・キャンプ氏が2009年3月に創業し、米国カリフォルニア州のサンフランシスコに本社を置いています。

米国証券取引委員会(SEC)に申請したIPO目論見書「FORM S-1」(2019年4月11日付)によれば、ウーバーは、「世界を変えていく機会を創出する」というミッションのもと、「パーソナル・モビリティ」「ウーバー・イーツ」「ウーバー・フレイト」という3つのプラットフォームを提供するとしています。そして、これらプラットフォームの基盤として、「大規模なネットワーク」「最先端テクノロジー」「オペレーショナル・エクセレンス」「プロダクトに関する専門性」を挙げています。

とりわけ「大規模なネットワーク」と「最先端テクノロジー」はウーバーの事業を特徴付けるものです。前者はドライバー、顧客、レストラン、運送業者など、さらにはビッグデータ、テクノロジー、インフラで構成されています。後者はマーケットプレース、ルーティング、ペイメントにかかわるテクノロジー。特にマーケットプレース・テクノロジーは需要予測、マッチングやプライシングに活用されています。

AI「ミケランジェロ」を駆使した相乗りサービスも

ウーバーの主力事業は「パーソナル・モビリティ」、つまりライドシェアです。そのビジネスモデルは、クルマを所有せずドライバーも雇用しない、その代わりモノやサービスの提供者であるドライバーやタクシー会社とその購入者である乗客を仲介するというもの。また、ライドシェア以外にも、オンデマンド配達サービス「ウーバー・ラッシュ」、運送トラック配車サービス「ウーバー・フレイト」、登録レストランなどの料理を一般人である「配達パートナー」が運ぶ「ウーバー・イーツ」など様々なサービスを提供しています。

特に指摘しておきたいのは、ウーバーはテクノロジー企業であり、「ビッグデータ×AI」企業であるという事実です。ウーバーは機械学習プラットフォーム「ミケランジェロ」を構築し、誰もがAIを活用できるよう、社内の開発環境を整備しています。

AI活用の一例が「ウーバープール」です。これは同じ方面に向かう他のユーザーと相乗りすることで、低料金で乗車できるサービスですが、このサービスを運営するには、正確な到着時間を予測して、どのユーザーを相乗りさせるか、スムーズに算出しなければなりません。ウーバーはここにAIを用いた独自の経路検索エンジンを活用しているのです。

ネックとなる人件費問題は自動運転で解決する

先にウーバーの赤字体質を指摘しましたが、2019年9月期決算(1~9月までの9カ月間)を見ると、売上高100億7800万ドルに対して売上原価52億8100万ドル、販売管理費やR&Dなどの営業費用124億2200万ドルで、76億2500万ドルの営業損失が出ています。売上原価には保険費用やデータセンター費用が含まれていますが、大きな部分を占めると考えられるのがドライバーへのインセンティブなど人件費です。

ウーバーが現行のビジネスモデルのまま成長を続けるなら、変動費である人件費も伸び続けるでしょう。そうすると、原価率を下げてコスト構造を改善するのは難しいと思われます。また、現在ドライバーは個人事業主の位置付けですが、従業員扱いになれば人件費はさらに高くなることも予想されます。

そこで、期待されるのが自動運転です。ウーバーは、2015年から自動運転技術の研究開発に着手し、現在は自動運転部門をスピンアウトさせたATGで自動運転の研究開発や実証実験を進めています。

自動運転が事業化されれば、まず売上原価の大きな部分を占める人件費を大幅削減することができます。自動運転では「ビッグデータ×AI」、クラウド・コンピューティング、データセンターなどが重要となってきますが、それらの費用は人件費に比べれば小さいうえ、固定費化されることで規模拡大に伴ってその単位コストも低下していくでしょう。

なぜ孫氏はライドシェアに投資をつぎ込むのか

つまり、有人のドライバーから自動運転にとって代われば、コスト構造を圧迫する主な原因であった原価率を下げて、収益性を高めることができるのです。さらには、ライドシェア会社の枠を超えてトランスポート・ネットワーク・カンパニーとして、MaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)によって大きな付加価値を生み出すといった成長にも期待できます。ウーバーの収益性や成長性は自動運転の実現にかかっている、と言っても過言ではないのです。

ソフトバンクグループの孫正義社長は、なぜ、ウーバーなどライドシェア会社へ投資を行ってきているのでしょうか。筆者は、それは、ライドシェア会社が次世代のモビリティの覇権を握ると考えたからだと見ています。

自動運転技術の研究開発は日進月歩ですが、自動運転が実現した際、最初に導入されるのはバスやタクシーといった商用車で、自家用車より先に自動運転車となることはほぼ間違いありません。なぜなら、自動運転車は当初高コストとなるため、高い稼働率でそれを吸収できるライドシェアから入るのが定石と考えられているからです。

完全自動運転車が完成しても、一般の人には手が出しにくい高価格となる可能性が高いのです。しかし、ライドシェアであれば、自動運転車が高価格でも事業として採算がとれると見込まれているのです。

ウーバーは各地域で競争に勝てるのか

ウーバーのプラットフォームと収益性・成長性の関係について、懸念点を一つ指摘しておく必要があります。それは、ウーバーのプラットフォームは「規模の経済」が効きにくい構造になっているということです。

プラットフォーマーは、その土台・基盤の上により多くの顧客を獲得し、より多くの商品・サービスを提供することで「規模の経済」を効かせながら収益をあげ成長していきます。ところが、ウーバーのサービスは地域毎に提供されることになります。自動運転が実現したとしても、地域毎に見れば、事業規模や顧客数が限定されることで単位コストの低下が効きにくい、スケールメリットを活かしきれないという側面もあるでしょう。また、限られた地域内での競争なので、プラットフォーマーとしての総合力を十分に発揮できないようにも思えます。

ニューヨーク大学ビジネススクールのスコット・ギャロウェイ教授はテクノロジー・ニュースのウェブサイト「Recode」の創業者でジャーナリストのカラ・スウィッシャー氏との対談で、ウーバーを民泊プラットフォーマー「Airbnb」と比較して、「ライドシェアなら、(サービス地域が限定されるので)ローカルでの需要と供給をリーズナブルに創り出せる」、一方で「Airbnbはグローバルな需要を掘り起こす必要がある」、「そういうわけで、ウーバーはローカルで多くの事業者との競争にさらされる」と述べています(2019年9月21日付「Introducing Pivot with Kara Swisher and Scott Galloway」の該当部分を筆者が和訳)。

このような「規模の経済」の観点からも、ウーバーの収益性・成長性を見ていく必要があるでしょう。

シナリオ分析をふまえ長期的に見る必要がある

ウーバーは赤字体質から抜け出す見通しがたたず、株価も上場時に比べれば低迷しています。ここ数年単位でいうなら、なかなか厳しい事業運営を強いられることになると予想されます。

一方で、より長期で見るなら、特に自動運転技術の進化やその社会実装のスピードに対して、サステナビリティやシェアリングの価値観の変化がライドシェア会社、さらにはソフトバンクグループの時価総額を動かす大きな要因になると分析しています。それは、先述の通り、自動運転が社会実装されたタイミングにおいては、商業車として対応できるライドシェア会社が既存のプラットフォームやビッグデータを活かして収益化しやすく、各種プレイヤーのなかでも有利になると考えられるからです。

今四半期決算ではウーバーなどの評価損からソフトバンクグループの投資事業への懸念が高まりました。しかし、筆者は、こうしたシナリオ分析もふまえながら、ソフトバンクグループやライドシェア会社を見ていく必要もあると考えています。

[立教大学ビジネススクール(大学院ビジネスデザイン研究科)教授 田中 道昭]

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FPうなる完璧家計「家族4人で出費は月10万」

2019年12月19日 08:00 PRESIDENT Online

リッチな老後を迎えるにはどうすればいいのか。家計をV字回復させる方法について「実物家計簿」を通して解説しよう。テーマは「FPがうなる完璧家計」――。

※本稿は、「プレジデント」(2019年10月18日号)の掲載記事を再編集したものです。

保険料・教育費ゼロゼロ家計で徹底節約

わが家は低所得ではあるものの、生活には満足している。それは現在は非常に少ない支出を実現しているからだ。その理由としては、食費や住居費など基本的な部分がとても安く済んでいることもあるが、保険料と教育費がゼロという部分が大きいだろう。

もし私や妻が怪我や病気で入院しても高額療養費制度で、自己負担は実質3万5400円(住民税非課税世帯の場合)しかかからない。子どもの医療費はそもそも無料だ。超過分は助成されるのだから保険料より安くつく。

1年以上仕事ができなくても困らないだけの貯蓄はある。妻が入院したら私が仕事を増やせばいいし、入院中にオンラインで稼ぐ方法もある。私か妻が死んだとしても残った1人で所得を月15万円程度にすることは難しくない。それで月々に貯金できる額は減るものの、現在の生活が維持できるのだから、わが家のような低コストの家計では必ずしも保険に入る必要性はないのだ。

教育費もかけない。2人の子どもは保育園に通っており、住民税非課税世帯では保育料はゼロだ。逆に児童手当は3歳未満が月1万5000円、3歳から小学校修了前までが月1万円もらえる。わが家の場合、子どもの衣類やおもちゃはほとんどが貰い物か個人売買で揃え、不要になれば転売しているので、かかるのはオムツ代程度。生まれてから子どもに関する収支はずっと手当のほうが多い。

私としても子ども時代は塾や習い事に行くより、遊びに行ってほしい。それでも子どもが勉強したいと言うなら、オンラインでは無料で学習する方法も多くあるので教育費をかける必要はない。小学校に上がったらこづかいは一切与えず、ネット等で小銭を稼ぐ方法を教える予定だ。お金を稼ぐ生きたノウハウを教えるほうが、将来の役に立つはずだ。

日本人は親が子どもの面倒を見ようとしすぎていると感じる。親はお金よりも情報や選択肢を与えれば十分だ。大学に関してもあまり行く意味がないと思っている。しかし本人が自分で進学するほうが、コスパがいいと考えるなら、奨学金を借りればいい。

マスコミや企業の広告に惑わされるな、見栄と常識は捨てよ

現在住んでいる都営住宅の家賃は2万5000円程度で、所得が低いから入居ができている。都営住宅は抽選倍率が高いが、電車ではなくバス圏内の築古物件であれば定員割れしていることもある。40歳以下のファミリー世帯には当選しやすい優遇もあり、わが家もそれで当選した。低倍率の物件を狙って応募していればそのうち当たるものだ。

食費を月1万円に抑えられているのは、廃棄野菜を激安販売している野菜卸業者から買っている点が大きい。まともな青果店なら1000円近くはしそうな野菜が山盛りのかごで100円だから、1カ月の野菜代は2000円程度。米は田んぼを持つ実家から送ってもらうのでタダだ。普段行くスーパーでも惣菜や魚は一切買わないし、肉は価格の低い鶏ムネ肉の一択。食卓では基本的に野菜炒めや煮物をご飯にかけた丼と汁物のみだが、野菜はたっぷりなので栄養バランスは悪くない。

贅沢な暮らしに興味はないし、子どもとの時間や1人で過ごす時間も十分にあるので現在の生活に満足している。低所得にもかかわらず、毎月10万円の貯蓄はできているし、その一部は資産運用にまわしている。

マスコミや企業の広告にのせられるままにお金のかかる生活を当たり前に選択するのではなく、見栄や常識は捨てて、自分たちの幸せを考えて行動した結果が今のスタイルである。現在、妻は第3子を妊娠中だが、全く家計の不安はない。むしろ児童手当が増えることが楽しみだ。

ここまできたら思い切って田舎で暮らそう

ここまで完璧な節約を実現している家庭を見たことがない。ファイナンシャルプランナーもお手上げレベル。主婦向けに「節約家計講座」でも開けば和田さんはそれなりに儲かるだろう。もっとも、本人は儲けるつもりもなさそうではある。

一般的な家庭が和田さんから学べることは保険料ゼロというポイントだ。和田さんの言う通り、保険というものは高い水準の生活を維持するために必要なもの。家族4人で月に10万円以下という低水準で生活が成り立っているのなら、たしかに保険などをかける必要がないのだ。

しかし、ひとつ疑問点を挙げるとすれば、なぜわざわざ都会に住んでいるのかという点だ。この収入で満足しているのなら、田舎に行っても仕事はいくらでも見つかるだろうし、家も都営住宅ではなく大きな一軒家に住むことだってできるはずだ。

都会というのは、生活するのにお金はかかるけどその分たくさん稼いで住むところだ。「子ども時代は塾や習い事に行くより、遊びに行ってほしい」というならなおさら田舎暮らしをするべきだ。都会ではそのような環境は整っていないように思える。

▼家族構成・収入・支出

[プレジデント編集部]

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「徹底した逃げ回り」産経も怒る安倍政権の劣化

2019年12月19日 08:00 PRESIDENT Online

記者会見では珍しく「低姿勢」だったワケ

臨時国会が12月9日に閉会した。同国会では「桜を見る会」の問題をめぐって野党が安倍晋三首相を厳しく追及した。

安倍首相は9日の記者会見で、桜を見る会の問題についてこう話していた。

「国民の皆さまからさまざまなご批判があることは十分に承知している」

記者会見では珍しく、安倍首相は終始“低姿勢”だった。この“低姿勢”には問題をなんとか解決したい安倍首相の魂胆が隠れている。

11月8日に共産党が問題を追及して以降、政府は来年度の開催中止や招待規模の見直しなどを矢継ぎ早に発表して早期収拾を図ろうとした。しかし、消費者庁から行政指導を受けたことのある磁気治療器販売会社「ジャパンライフ」の元会長が桜を見る会に出席した疑惑など、新たな問題が次々と浮上した。

このため安倍首相にとって悲願の憲法改正の国会論議は全く進まなかった。これまでの記者会見では、改憲の議論を年明けにも始めたい考えを示しているが、果たして安倍首相の思惑通りにいくだろうか。

任期内に安倍首相による憲法改正は極めて難しい

現実問題として2021年9月末までの自民党総裁の任期内に安倍首相が憲法改正を実現することは極めて難しい。安倍首相は7月の参院選で憲法改正の議論の是非を争点に掲げて勝利したことを前提に、臨時国会で野党を巻き込んだ改憲論議を進めたいともくろんでいた。

臨時国会では衆院憲法審査会が自由討議を3回行った。しかしこの審査会に付託されている国民投票法改正案は審議されず、結局、5国会連続での継続審議が決まった。首相は12月9日の記者会見で「国民の皆さまの声は、『(改正論議を)もっとしっかり前に進める』というものではなかったかなと思う」と話し、その表情には悔しさがにじみ出ていた。

得意の外交で、内閣支持率を回復させたいが…

安倍首相は今後、得意と言われる外交で自身の存在感をさらにアピールして、内閣支持率を回復させ、来年1月召集の通常国会で、改憲論議を加速させていくつもりだ。

実際、安倍首相は9日の記者会見では「12月中にイランのロハニ大統領の来日を調整している」と語り、「米国と同盟関係があり、同時にイランと長年、良好な関係を維持してきた日本ならではのかじ取りが、国際社会からも求められている」と説明した。

安倍首相は12月15~17日にはインドを訪問してモディ首相とも会談する。12月下旬には中国での日中韓首脳会談に出席し、中国の習近平(シー・チーピン)国家主席や韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領とそれぞれ首脳会談を行う。

習氏との首脳会談では香港の民主化運動を中国との外交にいかに利用できるか。アメリカは香港の運動を支援する香港人権民主化法を成立させ、中国に圧力をかけてる。文氏との首脳会談では、日本に有利な徴用工問題解決の糸口を見つけられるかどうかである。

いずれにせよ、安倍首相の外交手腕が試されることは間違いない。

まさに専横さで国会や国民を愚弄する安倍政権

この臨時国会閉会に絡めて各紙はさまざまな社説を書いている。

12月10日付の朝日新聞の社説は「説明責任を顧みず、論戦から逃げ回る。安倍政権の立法府軽視も極まった観がある」と書き出す。「逃げ回る」「極まった観」という言い回しは、安倍首相を嫌う朝日社説らしい。見出しの「政権の専横を忘れまい」というきつい表現にも朝日らしさが出ている。ちなみに専横とはわがままで横暴な振る舞いや態度を指す。数の力で野党の反対を押し切り、「安倍1強」とまで言われる安倍政権は、まさにこの専横さで国会や国民を愚弄してきた。

朝日社説は桜を見る会の問題には次のように指摘し、問題の究明を求める。

「政治の公平・公正に対する信頼は政策遂行の基礎である。税金で賄われる公的行事を、安倍首相が私物化していたのではないかという疑念を放置したまま、先に進むことはできない」

「首相の私物化」。桜を見る会の問題の本質はここにある。

「首相は本会議などで一方的に弁明することはあったが、一問一答で詰められる委員会質疑に応じることは最後までなかった。参院予算委員会で、自民党出身の委員長が提案した首相抜きでの質疑すら、与党の反対で実現しなかった。異様なまでの論戦回避である」

「一方的に弁明」「論戦回避」。国会中継を見ていると、朝日社説のこの指摘がよく分かる。

政権にとって都合の悪いデータを国会に出し渋る

菅原一秀経済産業相と河井克行法相自身による説明責任、それに首相の任命責任を取り上げた後、朝日社説は「政権にとって都合の悪いデータを国会に出し渋るのも、この政権の常套手段だ」と書き、こう指摘している。

「日米貿易協定の承認手続きは臨時国会最大の焦点だったが、野党が求めた経済効果の試算などは示されず、検討に必要な情報が十分にそろっていたとは言いがたい。成果を急ぐトランプ政権に配慮した来年1月1日発効ありきの審議だったというほかない」

安倍政権はトランプ大統領のアメリカ第一主義に大きく加担していると思う。そう批判されても仕方あるまい。

さらに朝日社説は「年間を通してみても、国会をないがしろにする安倍政権の専横ぶりは際立っていた」と批判し、野党が要求した通常国会の予算委員会開催や臨時国会の早期召集などの要求が無視されたことを挙げる。

最後まで朝日社説は安倍政権を酷評する。

「国会を閉じ、年が改まれば、一連の問題も忘れられる――。首相はそう高をくくっているのかもしれない。しかし、政治権力が国民への説明を放棄した先に待っているのは、民主主義の土台の崩壊である」

「民主主義の土台の崩壊」。沙鴎一歩もこの1年の安倍政権と安倍首相の言動を振り返ってみると、そう感じる。

野党が政権の不祥事をただすのは当然だ

左派の朝日社説に対し、右派の読売新聞の社説(12月8日付)は首相主催の桜を見る会についてはこう言及する。

「功績を残した人々を慰労するのが本来の目的だが、首相側は地元後援会員らを多数招待していた。桜を見る会の趣旨に反しており、節度を欠いたとの批判は免れない。政府が開催基準の抜本的な見直しを決めたのは当然である」

この指摘はいいだろう。気になるのが「臨時国会閉幕へ 政策論議の劣化を懸念する」という見出しと、次の書き出しである。

「不祥事の追及に労力を費やし、与野党の政策論争は深まりを欠いた。憂うべき事態である」

「不祥事の追及」に労力を費やすことがどうして問題なのか。野党が国会で政権の不祥事をただし、政権として本来のあるべき姿を求めるのは当然である。それを「憂うべき事態」と断言する読売社説はいかがなものか。

次のくだりを読むと、読売社説がなにを憂えているかが分かる。

与野党がともに間違っているのではない

「立憲民主党など野党5党は、追及本部を設置した。関係省庁の担当者を呼び、事細かに問題点をあげつらった。衆参両院の予算委員会で首相出席の集中審議も求めたが、与党は応じなかった」
「野党は、安倍内閣のイメージダウンを狙い、政府・与党は野党の攻勢をかわし続けた。国会戦術上の駆け引きに終始し、本質的な議論は乏しかった。言論の府として、嘆かわしい」

読売社説の指摘する本質的議論とは、消費税引き上げの影響や党首討論の開催、憲法改正などの論議である。

読売社説のこの主張。一見すると、与野党がそろって党利党略の国会戦術に時間を費やした結果、肝心な国会審議ができなかったと喧嘩両成敗のように受け取れる。

しかし問題の本質は、安倍首相が桜を見る会という公的行事を私物化したところにある。しかも安倍首相は野党の質問にまともには答えていない。安倍首相が逃げるから、野党が追及する。安倍首相がきちんと答弁していれば、国会の政策論争は進んだはずだ。与野党がともに間違っているのではなく、与党を率いる安倍首相が間違っているのだ。

なぜ、読売社説はそう書かないのだろうか。読売社説はどこまでも安倍政権擁護なのである。

読売社説は「与野党はそれぞれの問題意識を表明しあい、議論を深めていくことが大切だ」と締めくくっているが、開いた口がふさがらない。

「今からでも遅くない。全てを明らかにして新年を迎えればいい」

12月10日付の産経新聞の社説(主張)は「臨時国会閉幕 役割果たしたとは言えぬ」と読売社説と同じように国会論議が不十分だったという趣旨の見出しを立てている。

しかし、政権に対する批判は忘れていない。どのような論調の新聞であろうと、政権批判はきちんと行うべきなのである。

「安倍晋三首相は在任記録が最長になったが、政権のゆるみが目立った。不祥事で重要閣僚2人が辞任した。説明責任が今も果たされていないのはどうしたことか」

産経社説の後半での指摘だが、安倍政権の問題は全て「ゆるみ」「たるみ」に由来する。「もり・かけ問題」も桜を見る会の問題もその根っこは同じである。最近だと、週刊文春(12月19日号)がスクープした「首相補佐官と厚生労働省女性審議官の不倫」の背景にも、安倍政権の「ゆるみ」「たるみ」が見える。

最後に産経社説はこう訴える。

「立憲民主党など野党4党は『桜を見る会』の問題追及のため40日間の会期延長を求めた。与党は災害、景気対応の補正予算案、令和2年度予算案の編成を急ぐとして拒んだ。内閣府による招待者名簿破棄などがあり、首相や政府側の説明は十分ではなかった。問題がないというなら今からでも遅くない。全てを明らかにして新年を迎えればいい」

沙鴎一歩もそう思う。国会の幕が閉じられたからと言って野党は究明の手をゆるめてはならないし、安倍首相は自ら進んで疑惑や問題に白黒を付けるべきなのである。

[ジャーナリスト 沙鴎 一歩]

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cat_11_issue_oa-president oa-president_0_7ad014cd1de0_男子高校生が「N国党」を圧倒的に支持するワケ 7ad014cd1de0 7ad014cd1de0 男子高校生が「N国党」を圧倒的に支持するワケ oa-president 0

男子高校生が「N国党」を圧倒的に支持するワケ

2019年12月16日 08:00 PRESIDENT Online

「NHKから国民を守る党」を支持する若者が増えている。今年8月のネットアンケートでは、N国党が男子高校生の支持率が自民党に次いで高い政党となった。マーケティングアナリストの原田曜平さんは「若者が支持政党を選ぶ基準について、ほかの政党は学ぶべきだろう」と分析する――。

【座談会の参加メンバー】

A 関東の私立高校1年生男子
B 関東の県立高校1年生男子
C 関東の私立高校1年生女子
D 関東の私立高校1年生女子
E 都内の私立大学1年生女子
F 都内の私立大学3年生男子

「面白いから」支持をする

【原田】今年8月、高校生、大学生、若手社会人の政党支持率をアンケート調査したところ、とても興味深い結果が出ました。ほかの世代に比べて若年男性の「NHKから国民を守る党」の支持率が高く、特に男子高校生の支持率は24.9%と自民党の26.1%に次いで高い数字でした。なお、最も多かったのは「特になし」で28.7%です。なぜ男子高校生はN国党を支持しているのか。今の高校生や大学生たちは、政治に対してどんな意識を持っているのか。2016年から選挙権年齢は18歳に引き下げられました。今日集まってくれた高校生はまだ18歳未満だけど、数年後には有権者になるわけです。その世代の政治への考えをじっくり聞いてみたいと思います。

【A(高1男子)】僕もN国党党首の立花(孝志)さんのYouTubeチャンネルは結構観ています。N国党の支持率が高いのはたぶんエンタメの要素が大きくて、「面白いから」という理由で支持してる人が、高校生の男子には多いんじゃないかと思います。YouTubeチャンネルのコメント欄を見ていると、そういう空気を感じます。

「政治家」と「インフルエンサー」に違いはない

【原田】立花さんの動画は何がきっかけで見始めたの?

【A(高1男子)】YouTubeのオススメに上がってくるんです。それで観てみたら、政見放送で「不倫路上カーセックス」を連呼していたり、「NHKをぶっ壊す!」というメッセージがわかりやすかったり。そういう過激な発言をしないと人の目を引くのは難しいというか、インフルエンサーになるためには有効なんだと思います。

【B(高1男子)】僕は「支持政党はどこですか?」と聞かれたら、「N国党です」と答えると思います。僕も立花さんのYouTubeはよく観ていて、今Aくんが言ったようにインフルエンサーになるためには手段を選ばない姿勢も納得できるし、政策もわかりやすい。逆に自民党とかが掲げてる公約は、今の男子高校生にはわかりづらいんじゃないかなって。

【原田】ネタとして面白がっているだけじゃなくて、政策もわかりやすいと。じゃあBくんは「NHKをぶっ壊す!」という公約にも賛成ということ?

【B(高1男子)】おおむね賛成です。

【原田】2人は「インフルエンサーになるためにはああいう活動が有効」と言っていたけれど、政治家はインフルエンサーになるべきだと思う?

【B(高1男子)】ほぼ立花さんの受け売りなんですけど、NHKってすごく大きな組織で、それに対抗するためには自分も有名になってN国党を大きくしていく必要がある。より多くの支持を集めるためにはインフルエンサーになるべきだと思います。

「政党」と聞いて真っ先に思い浮かべるのが「N国党」

【原田】一方、女子高校生のN国党の支持率は4.9%と、男子と比べてかなり低いです。男子と違って、動画の内容や発言に引いちゃってるのかな。ただ、そもそも女子高校生は支持する政党が「特にない」が54.3%と全世代で最も高いから、そもそも政治に関心がない人の割合が高いという見方もできますね。

【C(高1女子)】N国党の立花さんの過激な発言は、男子ウケはするかもしれないけど、やっぱり言葉遣いがよくないのはちょっと……。

【D(高1女子)】一歩引いちゃうよね。ただ、私は「支持政党はどこですか?」と聞かれたらたぶん「ないです」と答えるけど、「知っている政党は?」と聞かれたら「N国党かな」になっちゃうかも。それぐらいインパクトが強くて、「ほかにどういう政党があるんだっけ?」って思っちゃいます。

女子大学生のN国党の支持率は全世代で最も低い

【原田】「政党」と聞いて真っ先に浮かぶのがN国党になっちゃうんだ。でも、例えばテレビをつけたら自民党の安倍晋三首相が一番たくさん映ってるじゃない。それでもあまり情報が入ってきている気はしない?

【D(高1女子)】もちろん安倍さんは知ってるんですけど、ずっと自民党政権が続いているのもあって、別になんとも思わないです。

【原田】自民党政権が当たり前の状況に見えているわけだね。一方、女子大学生のN国党の支持率は2.7%と全世代で最も低い。でも「特にない」が42.3%と、女子高校生に次いで高いから、やはり政治そのものに興味がないのかな?

【E(大1女子)】私は、山本太郎さんの政策に共感できる部分が多いので、支持政党は一応れいわ新選組になります。N国党については、立花さんを初めてメディアで見たときに「過激だな……」と思ったし、政策の主題にすべき問題はNHKよりもほかにあると思っていたので、あまり興味を持ちませんでした。

【原田】ちなみに女子大学生のれいわ新選組の支持率は1.7%で、全政党の中で最低だから、Eさんは少数派かもしれないね。

男子大学生「支持政党は特にない」が全世代最低

【原田】そして男子大学生は、「支持政党は特にない」が全世代(中学生〜50代)で最も低い23.9%。「若者の政治離れ」と言われるけれど、この数字を見ると政党への関心は高い、ということだよね。つまり、若者の投票率は低いのに、支持政党はあるという不思議な状態になっている。内訳を見ていくと、自民党が36.8%で最も高く、次いでN国党の16.1%という結果になっています。

【F(大3男子)】僕は明確な支持政党はないんですが、少なくとも自民党の一強体制は好ましくないと思っているので、先の参院選でもいわゆる戦略的投票というか、自民を大勝させないための投票行動をしました。

【原田】じゃあFくんも大学生の中では少数派なのかもしれないね。

【F(大3男子)】大学生の自民党支持率が高い理由としてよく「現状に対して不満を持っていないから」と言われるし、僕自身、周りの友人たちを見ていてもそれは感じます。今回のアンケート結果を見るに、それは高校生にも共通していると思うんです。ただ、さっき男子高校生の二人の口から「エンタメ」とか「インフルエンサー」という言葉が出てきたように、もはや社会問題の解決を政治に求めていないんじゃないか。その意味では民主主義の退廃じゃないかと、軽く絶望しています。もちろん、アンケートだから遊び半分でN国党にマルをつけた人も相当数いるとは思いますけど、その何割かは実際の選挙でもN国党に投票するでしょうし。

NHKの解体は最優先で取り組むべき問題か

【原田】大学生からそう言われちゃってるけど、高校生はどう思う?

【A(高1男子)】たしかにN国党にはネタとして面白いところもあるんですけど、それはあくまで政治の土俵に上がるための策略で、政策自体もちゃんと理論武装されていると思ってます。受信料の問題とか、言っている通りだと思うし。

【F(大3男子)】素朴な疑問なんですけど、Aくんは高校生だから自分で受信料を払っているわけではないですよね。それでいてNHKから不当にお金を取られているという不満がある?

【A(高1男子)】自分自身は不満はないけど、不満を抱いている人が一定数いるという話はわかります。

【F(大3男子)】政治が解決しなきゃいけない問題って、例えば格差の解消や、ほかにもたくさんあると思うんです。それらを差し置いて、最優先でNHKを壊さなきゃいけない?

【A(高1男子)】それはたぶん、ちょっと過激なことを言っている人を支持してる自分に酔ってるところもあるのかも……。

党名を見ただけで何をする政党かわかる

【原田】今Fくんが「政治が解決しなきゃいけない問題」と言ったけど、NHKの解体もその中に含めるとして、高校生が気になっている社会問題って何かな?

【C(高1女子)】まずNHKに関しては、私も高校生だから受信料を自分で払っていないので、その問題自体を身近に感じていません。それよりも、例えば高校の無償化だったり電車の停車駅がどう変わるかとかのほうが、自分にとっては身近な問題です。

【D(高1女子)】NHKを壊して私たちに何かプラスの影響があるのかなって考えたときに、あんまり思い浮かばないですね。それよりは、自分の未来のことを考えても、待機児童の問題とかのほうが重要だと思います。

【原田】Dさんはさっき「N国党以外に印象に残る政党がほとんどない」と言っていたけれど、高校の無償化なり待機児童の問題なりを議論している政党もあると思います。そういう情報は入ってこない?

【D(高1女子)】そうですね。「自分から情報を取りにいっていないだけ」と言われればそれまでですけど。

【C(高1女子)】そういう意味では、N国党は「NHKから国民を守る党」という党名を見ただけで何をする政党なのかわかるのが大きいかも。「自民党」とか「立憲民主党」とかいわれても、どういう政党なのかわからないので。

【原田】じゃあ、例えば「待機児童をなくす党」とか、ワンイシュー政党がほかにも出てくれば若者は政治に関心を持ちやすくなる?

【C(高1女子)】伝わりやすさは結構変わると思います。

【原田】一方、女子大学生のEさんはれいわ新選組を支持していると。それは政策を見て判断しているんだよね?

【E(大1女子)】そこまで詳しく調べたわけじゃないですけど、山本さんは生活保護とかセーフティーネットについても言及していて、なんとなく弱者に優しいイメージがあるので。私は高校時代に授業でホームレスの問題に触れたことがあって、ホームレスの人たちは「努力が足らなかったからそうなったんだ」と言われがちだけれど、努力だけじゃどうしようもないこともあると思っています。れいわはそういう意見をすくい上げてくれているのが好印象です。

18歳に選挙権はまだ早い?

【原田】今回プレジデントオンラインに「男子高校生のN国党支持率が高い」という記事が出たら、おそらく「やっぱり18歳に選挙権なんて与えるべきじゃなかった」みたいなことを言うおじさんが少なからず出てくると思うんだよね。

【D(高1女子)】中学3年生ぐらいから学校の先生が選挙について話をしてくれるようになりましたけど、どういう政党があってどういう政策をしているかにはあんまり触れてくれないんです。だからいまいちよくわからない。これも「自分で調べなさい」と言われればそれまでなんですけど……。

【C(高1女子)】私は、実際に投票できる年齢になったら公約は調べると思います。そのうえで票を入れないと無責任なので。でも、今の段階では意欲的に調べようという気にはならないです。

【D(高1女子)】そういうふうに「政治ついて知らなきゃいけない……でもよくわかんないな」となったときに、「NHKをぶっ壊す!」というのは言っていることはわかるので「これでいいや」ってなっちゃうところはあるかも。

【原田】興味がないのに世の中から「政治に詳しくなれ」という圧力がかかるから、わかりやすい公約に飛びついてしまう……という側面もあるかもしれないと。大学1年生のEさんはすでに選挙権を持っている?

【E(大1女子)】はい。投票にも行きました。私の場合は、自分でも多少は調べたんですけど、両親からよく政治についての話も聞いているので、その影響はあると思います。

N国党の動きは若者向け発信のヒントになる

【F(大3男子)】高校生の皆さんの話を聞く限り、政治について興味もないし情報収集の仕方もわからない中で、主にYouTubeでN国党が発信したメッセージが刺さった結果、アンケートでの支持率が高かったということですよね。それは言い換えれば、皆さんに最初に届いた政治的なイシューが、NHKの体質の問題だったということ?

【B(高1男子)】僕の場合はその通りですね。

【原田】じゃあ、別にNHKじゃなくてもよかった可能性もあるのかな。例えば立花さんが猛烈に喫煙に反対してても刺さったかもしれない。NHKを解体することの是非は置いておいて、今回のアンケート結果を好意的に解釈するなら、N国党は若い人に政治的関心を抱かせるためのヒントを与えてくれたと言えるかもしれません。それは既存の政党が若者向けにメッセージを発信することをサボっていた、あるいは発信していたけどうまくいっていなかったことの裏返しでもあるよね。

【F(大3男子)】人口構造を考えたら、選挙を見据えるうえで若者が軽視されるのは仕方がない部分もありますけどね。

【原田】うん。だから僕は、少しでも若い人の票を増やすためにも18歳で選挙権を与えることには賛成なんです。ただ、N国党に感化された男子高校生がN国党しか知らないまま大人になってしまうリスクもある。一方で今のところは、自民党も立憲民主党をはじめとする野党も、YouTubeを使って立花さん以上に男子高校生を取り込める気がしない。メディア環境が変わっていく中で、必ずしもキャッチーではない、でも社会にとって必要な政策を訴えるにはどうすればいいか。正直、今の僕にはいい案が浮かばないんだけど、N国党のような極端なPRが刺さりやすい状況は、ひょっとしたら今後もしばらく続くかもしれないね。

[マーケティングアナリスト 原田 曜平 構成=須藤 輝]

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"MARCH付属"を蹴った小6女子の勝ち組人生

2019年12月16日 08:00 PRESIDENT Online

中学受験でMARCH付属校の人気に拍車がかかり、偏差値がどんどん上がっている。この先どうなるのか。中学受験塾代表の矢野耕平氏は「いまの偏差値はかなり高騰した状態で、将来的には今より下がる可能性もある。子どもを安易に付属校に進ませると、結果的に成長の芽を摘んでしまうこともある」という——。

中学受験で付属校の人気にますます拍車がかかっている

昨今の中学入試では大学付属校が人気を博している。理由は大まかにいえば、2つ考えられる。

1.2020年度(2021年1月)からスタートする「大学入学共通テスト」での英語の民間試験の導入が延期されるなど、大学入試改革が迷走しており、受験生や保護者たちの不安が高まっていること。
2.2016年度より実行された文部科学省による「大学合格者数抑制策(定員の厳格化)」により、主として首都圏の私立大学が難化している。これに伴い、この数年は浪人生数が増加していること。

首都圏の中学入試におけるMARCH(明治大学・青山学院大学・立教大学・中央大学・法政大学)の付属校の実質倍率の変化を見てみよう。図表内の数値は2016年度入試と、昨冬の2019年度入試(1回目入試)の実質倍率を示している。

立教大学の「付属校」である香蘭女学校が大躍進

図表を見ると、MARCH付属校すべての実施倍率が上昇していたことがわかる。当然、実質倍率が上がれば上がるほどその難度は高くなる。MARCH付属の「偏差値高騰」がいま起きているのだ。

図表内でも、2016年度1.5倍、2019年度3.6倍と実質倍率が跳ね上がった香蘭女学校(品川区旗の台)の躍進ぶりがひときわ目立つ。この学校は1学年定員160人の比較的規模の小さなミッションスクールだ。大きな魅力のひとつは、立教大学の「関係校推薦枠」が毎年80人あること。純粋な立教大学の付属校ではないが、事実上の付属校的存在。2021年度の立教大学入学生より推薦枠が97人に増員されることになっており、さらなる倍率の上昇が予想される。

同校は3年前の2016年度入試において、2月1日入試の4科(算・国・理・社)受験者は250人、4科合格者は166人(実質倍率1.5倍)だった。ところが、2019年度は入試回数を2回に分けた関係で2月1日入試の定員を減らしたにもかかわらず、4科受験者は364人に増加。そして、合格者は100人と実質倍率3.6倍となった。

かつては偏差値40台前半でも合格することがあったが、いまや偏差値55程度でも不合格になってしまう受験生が出てくるまでになった(偏差値数値は四谷大塚主催「合不合判定テスト」を用いている)。

付属校は「偏差値高騰」、いずれ元に戻る可能性がある

先ほど、付属校の偏差値が「高騰」していると書いた。普通は、物価や地価などに用いられる、ことば。付属校の現状を関して表現するのに「高騰」という語をあえて使ったのには理由がある。言いたいのはこういうことだ。

いまは「大学入試改革の不明瞭さ」「大学入試の難化」という外的要因で難化しているが、大学入試が落ち着きを取り戻したら、MARCHの各大学の偏差値は下落する(というより、元に戻る)可能性が高いと見る予備校・塾関係者は多い。

今はその人気は沸騰しているが、それに付和雷同する前に一歩立ち止まってほしい。大学入試改革の混乱や大学合格者数抑制策により、今年度の中学受験でも大学付属校人気は確実だが、状況を冷静に見守る目も持つべきだと思う。

そのように言いたくなるのは、近年MARCH付属校に合格する子どもたちの顔ぶれを見ると、このままいけば、MARCHより上位に位置付けられる国公立大学や早慶大に現役で合格するのではないかという子が大勢含まれているように感じられるからだ。

“MARCH付属“を蹴った小6女子の勝ち組人生

数年前に青山学院中学と成蹊中学(系列の大学にエスカレーター式に進学できるが、他大に進学する生徒が大半)の2校に合格をした女の子がいた。

合格直後、2つの合格通知を手にした母娘は、どちらの学校に進学すべきか悩み、塾に相談をしにきた。こちらが推したのは成蹊。偏差値上では当時もいまも青山学院が成蹊を大きく上回っているが、彼女の学力的な「余力」を十分に感じていた(中高でさらに大きく学力を伸ばせそうに感じた)こと。そして、彼女自身が周囲に流されやすいタイプで、青山学院に進むと外部受験の芽はなくなるということは明確だと思われたからだ。塾サイドの提案を受け入れた母娘は成蹊進学を決断した。

その6年後、彼女が塾に顔を出した。聞けば、大学入試で慶應義塾大学に現役合格したという。もし、青山学院の付属校に進んでいれば、大学も青学だったはずだ。彼女は付属校を回避したことで学力的にワンランク上の慶應に進学することができたのだ。彼女はわたしに、「あの中学入試のときに成蹊を選んで本当に良かった」と語った。このような事例は決して特別ではない。

よって、「大学までエスカレーターだから安心」と付属校に進学すると、かえって損してしまうケースがあることを保護者はしっかり理解しておきたい。小学6年生の時点で進学する大学を決めることになる付属校進学は一定のリスクがつきまとうものなのだ。

中高大エスカレーターの「トク」「ラク」

とはいえ、受験生やその保護者の多くは、付属校だからこそ「トク」ができる点、「ラク」ができる点に大きなメリットを感じているわけだ。

付属校に入れば、高校入試に阻まれることなく、大学入試を見据えて戦略的に組まれたカリキュラムの中で中高6年間を過ごすことができる。それだけではない。早期のうちに「やりたい」ことが定まっている子にとって中高一貫校は継続的に何かに一意専心しやすい環境である。

幼少期より絵画に取り組み、その実力を発揮している小学生の女の子がいるとしよう。当人も保護者も将来は美術の道へと歩ませたいと考えている。このような具体的な将来像を思い描くことのできる子には中学入試の道をわたしは声を大にして勧めたい。

この女の子であれば、美術に力を入れている中高一貫校、例えば女子美術大学付属(杉並区和田)などがいいかもしれない。美術教育を中心としたカリキュラムを編成しており、大半の卒業生たちが系列の女子美術大学をはじめ、美術と関連する分野へ進んでいる。

将来像を早期のうちから描ける子は、高校入試のみならず大学入試もない大学付属校に進むことで、中学・高校・大学の10年間の一貫教育を受けることができ、心にゆとりをもって学ぶことができるのではないだろうか。

大学を早期に決定するという「リスク」

一方で付属校の「自由」を持て余してしまうと、学力不振に陥り、大学の内部進学さえできないという事例も起きている。そうなると、高校生の途中になって慌てて他大学に向けての対策を始めなければならない。

しかし悲しいかな、付属校の大半はエスカレーター式に系列大学に進むことを前提とした比較的ゆるやかな学習カリキュラムを敷いているため、一般的な大学受験生の学力レベルに追いつくのは並大抵のことではない。しかも、中学入学以降日々勉学に励む習慣など「捨て去って」いる生徒も少なくないから、勉強のペースを元に戻すのは困難であるといってよい。

大学付属校には「進路(分野)が限定される」というリスクも存在する。ある男の子が立教池袋中学校に進学したとしよう。当初の第一志望校であり、大満足の中学入試結果であった。しかし、高校生になって「将来は医師を目指したい」と言い始めたらどうだろう。系列の立教大学に「医学部」はない。そうなると、その時点から医学部進学を目指しての予備校通いが必須となる。

そして、その予備校で席を並べている中高一貫の進学校に通う子どもたちの大半が、「先取り学習」をおこなっているため、受験勉強スタート時点で既に大きな学力差が生じてしまう可能性が高いのだ。こうなると、本人も保護者も第一志望校のはずであった付属校の進学を悔やむことになってしまう。

志望校選定には「前向きな理由」が大切

先述した通り、大学入試が混乱をきたしていることもあり「付属校人気」が過熱している。しかしながら、保護者としては、子の志望校を選択する際には消去法ではなく、もっと前向きな理由付けがほしいものである。

わたしは予備校講師の武川晋也氏との共著『早慶MARCHに入れる中学・高校』(朝日新書/朝日新聞出版)をこのたび上梓した。

わが子は果たして「付属校向き」なのか、「進学校向き」なのか? そして、わが子はそもそも「中学受験」の道を進むべきか、「高校受験」を選択すべきか? そのような悩みを抱えている保護者に対して塾講師の本音を開陳した内容に仕上げている。手に取ってくださると幸いである。

[中学受験専門塾スタジオキャンパス代表 矢野 耕平]

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cat_11_issue_oa-president oa-president_0_8f2ae538b7f0_「桜問題」から逃げ続ける安倍首相の甘い見通し 8f2ae538b7f0 8f2ae538b7f0 「桜問題」から逃げ続ける安倍首相の甘い見通し oa-president 0

「桜問題」から逃げ続ける安倍首相の甘い見通し

2019年12月16日 08:00 PRESIDENT Online

冒頭発言13分間のうち、一度も「桜」は出てこない

「桜国会」と言われた臨時国会は12月9日、閉幕した。夕方に安倍晋三首相の記者会見が行われたが、その内容は国民をがっかりさせるものだった。このままでは来年になっても支持率が回復することはなさそうだ。

安倍氏の会見は9日午後6時から首相官邸で行われた。国会が閉幕する際には首相が会見を行うのが慣例になっている。今回もその慣例に従って行われた。

会見にあたり安倍氏は、いつも長い冒頭発言を行う。今回も、今国会で承認された日米貿易協定、成立した改正会社法などの利点を強調。今後取り組む経済対策、教育、全世代型社会保障などについてとうとうと説明。その上でこう結んだ。

「年が明ければ令和2年。(中略)令和の時代を迎えて日本も新しい時代への躍動感にみなぎっています。この絶好のタイミングにあって、力強く進めていく、その先には憲法改正があります。常にチャレンジャーの気持ちを忘れることなく、国内外の山積する課題に全力で取り組んでいく決意であります」

その間、13分間。「桜」という言葉は出てこない。

「桜を見る会」について聞いたのは1社だけだった

安倍氏の長い口上の後、質疑が始まる。幹事社の日経新聞が憲法改正について質問。もう1社、幹事社のテレビ東京が「桜を見る会」について、①破棄されたという招待者名簿のデータを探し出すように指示を出す考えはないのか、②ジャパンライフの山口隆祥元会長とは面識がないのか——と聞いた。ここで初めて「桜」が登場する。

安倍氏は「桜を見る会について、国民の皆さまからさまざまなご批判があることは十分に承知している」とした上で、名簿発見に向けてあらためて指示を出す考えはないこと、山口氏とは個人的な関係はないことを説明。従来の発言とほぼ同じ内容だった。

会見は次にブルームバーグが日中関係について、NHKが衆院解散について、ニコニコ動画が若者の選挙離れについて、そして読売新聞が自衛隊の中東派遣について質問。30分あまりで会見は終わった。

結局、「桜を見る会」についての質問は1回だけ。質疑あわせて3分程度。会見全体の10分の1程度にとどまった。

国民の関心を無視した期待外れの会見だった

憲法や衆院解散、自衛隊の中東派遣も大切な政治課題であることは論をまたない。しかし今、国民の関心事は「桜を見る会」だ。期待外れの会見だったと言わざるを得ない。

11月15日、安倍氏が記者団の囲み取材に応じた時、記者団が「改めて会見を開かれるお考えはないでしょうか」と質問。安倍氏は「もし質問されるんだったら、今、質問されたほうがいいと思います。今、質問してください」と返答したことがあった。

この時は、記者会見に応じようとしない安倍氏の消極的な姿勢に批判が集まった。しかし、せっかく会見したのに1社しか質問しない、ということには報道陣の追及姿勢にも批判が高まることだろう。

「桜」を聞きそうな社を意図的に指名しなかった可能性

ただし、この記者会見には「からくり」がある。会見場には「桜を見る会」の質問をしようと待ち構えていた記者はたくさんいた。しかし、事務方は「桜を見る会」以外の質問をしそうな社(もしくは記者)を優先的に選んだ可能性があるのだ。

この問題を積極的に追及しているのは、朝日新聞、毎日新聞、東京新聞など政権に批判的な論調の新聞。さらに情報番組も含めて連日取り上げているTBS、テレビ朝日など民放テレビも積極的だ。

先ほど紹介した質問した社をあらためて確認してもらいたい。「桜を見る会」の質問をできるだけ避けたい安倍氏の思いを、司会進行の事務方が忖度(そんたく)したと言われてもしかたがない。

「憲法」「解散」にマスコミの関心をそらす操縦術

安倍氏は会見で憲法改正について「決してたやすい道ではないが、必ずや私の手で成し遂げていきたい」と発言。衆院解散の可能性については「国民の信を問うべき時が来たと考えれば、解散総選挙を断行することに躊躇(ちゅうちょ)はない」と答えた。どちらも従来よりも、踏み込んだ発言だ。

改憲に強い決意を示し、その流れ次第では年明けの解散に踏み切る考えを表明した、と見る向きもあるだろうが、実際はそうではない。安倍氏は、憲法改正や衆院解散という政治課題について強めの発言をすることで、報道陣の目をそちらに向けさせ「桜を見る会」の報道を押さえ込もうとしたのだろう。政治記者は「憲法」「解散」という言葉には過敏に反応する。その「癖」を知り抜いた高等テクニックだ。

実際、翌10日の朝刊では「桜」よりも「憲法」が大きく扱われた社があった。質問者の「選別」も含め、安倍氏による巧みなマスコミ操作が際立った記者会見だったと言える。

記者会見は逃げ切り、国会は閉幕した。安倍氏はこれで「桜」政局の大きなヤマを越えたと考えていることだろう。しかし、それは甘いということは指摘しておきたい。

「納得している」は15%。「納得していない」は72%

報道機関の世論調査で安倍内閣の支持率が暴落していることは11月25日付の「支持率5割切りに安倍政権が焦りを深めるワケ」で紹介したが、その傾向は今も変わらない。12月7、8日にJNNが行った調査では「桜を見る会」での安倍氏の説明について「納得している」は15%。「納得していない」は72%に上っている。

安倍氏は9日の会見で憲法改正について語る際、「最近の世論調査では、(憲法改正について)議論を行うべきだという回答が多数を占めている」と語り、国民の期待を背に受けて改憲を進めていく決意を語っている。

しかし憲法について議論をしてほしいと思うよりも、はるかに多くの国民が「桜を見る会」の究明を求めている。そのことを直視しなければ来年になっても支持は回復しないことだろう。

[プレジデントオンライン編集部]

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スバル"究極の車"が日本人にウケなかった理由

2019年12月16日 08:00 PRESIDENT Online

富士重工(現SUBARU)が作った車の中でも特に評価が高い「スバル1000」。国内初の先進技術を搭載していたが販売不振が続き、わずか5年で市場から姿を消した。アルファ・ロメオさえ真似したとされる名車は、なぜトヨタに勝てなかったのか——。

※本稿は、野地秩嘉『スバル ヒコーキ野郎が創ったクルマ』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

辛口評論家すら絶賛した世界的な先進技術

これまで富士重工(現SUBARU)が作ったなかで、極めつきの名車とされているのが「スバル1000」(1966年発売)だ。

後にアルファロメオが作ったベストセラーの小型車アルファスッドに影響を与えたとされるもので、スバルユーザーの間では「日本自動車史上ナンバーワン」「神話の域にいる車」と言われた。

自動車評論家の徳大寺有恒は著書『間違いだらけのクルマ選び』のなかで、数ある大衆車に辛口の評価をしているのが、スバル1000だけは絶賛されている。それくらい高い評価を受けた車だった。

設計担当はスバル360で名を上げた百瀬晋六と配下の「百瀬学校」のチームである。彼らは富士重工初の小型車に当時、世界的にも先進とされた技術を「これでもか」と詰め込んだ。

シトロエンやルノーも用いた国産車初の「FF方式」

先進技術のひとつとして採用したのがFFでありフロントエンジン、フロントドライブという方式だった。いずれも次のような機構である。

「駆動方式は、当時の国産車としては画期的なフロント・エンジン/フロント・ドライブのFF方式を採用していました。それまで、純粋な国産車で、FF方式を採用した乗用車は一台もなく、海外でもシトロエンやルノー、サーブなどの限られたメーカーのみが生産していました」(『スバコミ』ファンサイト)

また、後継車にも採用されている水平対向エンジンはこうなっている。

「水平対向エンジンの特徴は、小型軽量であることと、スロットル・レスポンスの良さにあります。言い換えれば、極めてスポーティな特性を持っていると言えます。また、シリンダーの中を往復するピストンの動きが左右対称となるために、動的なバランスが取りやすく、従って振動が少なくなる利点があります。振動を抑えることは、乗り心地が良くなるばかりではなく、エンジンの耐久性も向上することになります」(同サイト)

次いで、レースカーにも採用されたインボードブレーキ、そして、先進的なデュアルラジエーターシステムについても同サイトは丁寧に説明している。

もっとも驚いたのは車内の広さ

インボードブレーキ

「センターピボット・ステアリング方式の採用によって、タイヤの接地面の抵抗を最小限に止め、操舵反力が軽減された。同時にハンドルの操舵角度も大きくとることができた。
バネ下重量が軽減されて、タイヤの接地性がよくなり、加速、乗り心地、走行安定性が良くなった。ブレーキがホイールから離れているので、泥や水が入りにくい」

デュアルラジエーターシステム

「デュアルラジェータ方式のスバル1000には、一般的に採用されている、冷却ファンがありませんでした。その構造はメインとサブの二つのラジェーターと、リザーバータンク、サブラジェーター用の小型電動ファンから成り立っている密封加圧式の冷却システムで、状態に応じて三段階の効率的な冷却を行うことができました。また、この方式が国産車に採用されたのはスバル1000が最初でした」

いずれも世界水準を超えた技術だった。そして、ユーザーがもっとも驚いたのは居住性、つまり車内の広さである。

FR車の場合、フロントのエンジンが作った駆動力をリアにつなげるために、車の中央にプロペラシャフトを通す突起ができる。

現在の車はほぼFF車だから、プロペラシャフトのある風景を忘れた人が多いかもしれないが、リアシートに3人が乗る場合、中央の人間は足を置くスペースがなくなるのである。

それを解決したのがスバル1000で、FF車がその後の大衆車の標準となるのは、この車が出たからだろう。

先進過ぎて理解が得られず、修理屋さんには嫌われ

わたしは大学に入った年、18歳でこの車を手に入れた。運転席に座ると、車内が「やけに広い」と感じたことを覚えている。

当時、車格が上のトヨタのコロナと同じかもしくはそれ以上の広さだったというから、広く感じたのも無理はなかった。

そして、車体が軽かったからスピードも出た。長い坂道を下っていると、どんどんスピードが出てきて、車体が押しつぶされているのではなく、浮上する感覚があった。そのまま空に飛びあがってしまうんじゃないかとも思ったくらいだ。運転する車ではなく、飛行機のように操縦する車がスバル1000だった。

それほどの名車だったけれど、しかし……、実際は思ったほどは売れなかった。

誰もが自家用車を手に入れるモータリゼーションの時代でもあったし、スバル360から乗り換えようとした客もいたので、決して惨敗ではなかった。

しかし、売れ行きではカローラ、サニーとは比較にならなかったのである。1967年、カローラが年間に16万台売れていたのに比べ、スバル1000は3万台から4万台といったところだった。

自動車評論家の徳大寺は『間違いだらけのクルマ選び』で、わざわざ1章分を費やして「スバル1000が売れなかったことが歴史を変えた」と記述している。

「スバル1000は、いくらほめてもほめ足りない素晴らしいクルマであった。しかし、このきわめて理想主義的な、名門中の名門であるアルファ・ロメオでさえ真似(まね)したクルマは、あえなく三振ではないにしても、レフトフライぐらいに終わってしまった。多くのユーザーはスバルの先進性を理解できなかったし、また街の修理屋さんはこの面倒なクルマを、えらく嫌ったのである。かくしてスバル1000は登場してから五年後の一九七一年、あのみにくいレオーネ(注:後継車種)へとモデルチェンジされていくことになる」

「カローラより高い」ことが最大のネックだった

ここにあるように、売れなかった理由は当時、FFに慣れていなかったカーユーザーにとっては運転のフィーリングが、FR車とは微妙に違ったことが大きかった。

また、いくつもの先進技術はよかったけれど、修理に手間がかかったのである。修理工場にとってみればクラッチの交換でもエンジンをいちいち車から外すという、ひと手間が必要で、作業員はスバル1000がやってくると顔をしかめたという話もある。

そして何よりも値段だ。

カローラ、サニーよりも少し高かった。先進技術にかかった費用、そして、トヨタ、日産よりも部品代が高価になってしまったことで、車両価格は上がった。

スバル1000は高性能だけれども、それを高価格でしか販売できなかった。トヨタだったら、それこそお得意のトヨタ生産方式を活用して、少しでも価格を下げるのだが、富士重工にはそういった生産ノウハウがなかったのである。

具体的にはスバル1000の発売当時の価格は62万円。一方、トヨタカローラ(初代)のそれは52万5000円。10万円違うのならば、人は新規の技術よりもやはり価格で車を選ぶ。

百瀬は「あんな車は許せない」と怒った。

徳大寺も書いているが、名車スバル1000はわずか5年の命だった。売れないと判断した経営トップはスバル1000のデザインを通俗的にして、値段も安めに設定したレオーネという車にシフトするのである。

「みんなと一緒」だからこそ売れたのだ

あるOBは言った。

「スバル1000からレオーネに変わった時、百瀬さんはかんかんに怒っていました。『レオーネは堕落だ。あんな車は許せない』。もうチーフデザイナーを退いていましたけれど、百瀬さんは富士重工が他社の車と変わらないものを出すことを認めたくなかったんだと思います」

スバル1000よりも20年以上前、百瀬が叩きこまれた戦闘機の設計とはつねに先進技術を盛り込むことだった。

見た目よりも、スピード、旋回性能、機体の軽さなどを追求して、ライバルの飛行機を圧倒する。そうしないと撃墜されてしまうからだ。

百瀬はスバル360、スバル1000でも先進技術を盛り込むことを当然考えていた。彼にとって「いいクルマ」とは他の会社のクルマを圧倒するような技術の粋を集めたものだったのである。だからこそ、ふたつの名車が誕生した。

しかし、時代は流れていた。

モータリゼーションの時代のユーザーが欲しいクルマとは、性能が飛び抜けたものではなく、「売れている車」だった。

カローラ、サニーならばどこにでもある。みんなが認める車で、故障してもすぐに部品が交換できる。みんなが乗っていて、しかも、便利。

通俗的ではあっても、横並びではあっても、安心感があった。「みんなと一緒」だからこそ売れたのだ。

「アメリカの自動車会社が進出してきたら吹っ飛んでしまう」

スバル1000が出た1966年。日本の自動車生産台数はアメリカ、西ドイツに次いで、世界第3位の台数になった。

2年後には日本のGNPは西ドイツを抜いて、世界第2位となる。共産主義のソ連をのぞいて、敗戦国だった日本はアメリカに次いで経済力のある国にまで成長した。

同年の自動車生産台数は約206万台。これもまたアメリカに次ぐ数字だった。そうなると「敗戦国だから」と国内のマーケットを閉鎖しておくことなどとてもできない。

なんといっても第二次大戦に勝利したイギリス、フランスの経済を凌駕しているのだから、海外の車に高関税をかけたり、非関税障壁を設けることなど許されないのだった。

すでに1965年には完成自動車の輸入は完全に自由化されており、73年には資本の完全自由化が決まった。78年には乗用車の関税はゼロになっている。

1960年代の後半から日本の自動車業界は海外メーカーと同じ条件で競争していたのだった。

自由化以前、自動車業界関係者は「アメリカの自動車会社が進出してきたら、日本の自動車会社は吹っ飛んでしまう」と信じていた。なんとか互角に戦うことができるのはトヨタ、日産二社だけとも言われていたのである。

富士重工も含む中堅以下の自動車会社は外資の軍門に下るか、もしくはトヨタ、日産の傘下に入るしかないと覚悟を決めていたところもある。そこで、中堅以下の自動車会社は提携に動いた。

絶対に三菱とは組めなかった事情

1966年、プリンス自動車は日産と合併、事実上は吸収合併である。プリンスはブリヂストンのグループで、スカイラインは同社が生んだ傑作車だ。

同社の技術部門で、特にエンジンを統括した中川良一は中島飛行機出身で、戦時中には傑作といわれた航空機エンジン「誉」の設計主任をしている。

つまり、プリンスは富士重工にとっては同じ中島飛行機から派生した会社だったのである。そのプリンスは日産に吸収された。

同じ年、トヨタは日野自動車と業務提携、翌67年にはダイハツ工業とも同種の契約を結ぶ。

66年12月、富士重工も動いた。戦前からの名門企業で、トラックと乗用車を出していた、いすゞと業務提携を結んだのである。

ただ、この提携は長く続かなかった。2年後、いすゞが「三菱重工(1970年から三菱自動車)もグループに入れたい」と提案したことで、富士重工はいすゞとの提携をやめた。

なんといっても富士重工は三菱とは組むわけにはいかなかったのである。

自動車部門では軽自動車が競合した。また、航空機部門では防衛庁に納入する際の最大のライバルが三菱だった。加えて、バス部門、農業機械でも競り合う相手だ。そのうえ、所帯は三菱重工の方が圧倒的に大きかった。

提携が進み、「一緒になろう」となったら、間違いなく吸収される側が富士重工だったのである。

「商品よりも販売力が弱い」選んだ相手は…

そのうえ、年配の社員たちにとって三菱は中島飛行機のライバルだ。三菱、中島と並び称されたけれど、三菱のゼロ戦に載ったエンジンは中島製であり、機体自体も過半を製造していたのは中島飛行機だ。

それなのに、戦後になって、三菱のなかに吸収されるのはプライドが許さなかったのである。こうしていすゞが出してきた三社の合同案に乗れない富士重工は提携を解消するしかなかった。

成り行き上、いすゞと三菱は提携をした。ただ、この提携もまた1年しか続かなかった。強くはない者同士が連合を組むのは簡単なことではない。強ければ余裕があるから相手の言うことを聞いて腹におさめることができる。

しかし、余裕がないものにとっては、ちょっとした相手のミスを許すことができないし、また、相手のちょっとした言葉遣いに神経質に反応してしまうのである。

結局、富士重工が選んだ道は業界ナンバー2、日産との業務提携だった。日産は軽自動車を作っていないし、航空機部門もない。なんといってもメインバンクは同じ興銀だ。興銀にとっても、三菱銀行が後ろに付いている三菱重工との縁組よりも、日産、富士重工の組み合わせが最上の策だったのである。

「もし、富士重工の車が売れなくなって、会社が傾けば日産が引き取ればいい」

興銀幹部はそこまで考えていたに違いない。

「商品力よりも販売力が弱かったから」

両社が業務提携した1968年は、乗用車は売れていたけれど、スバル360はそろそろ売れなくなっていた。

販売力が上がらなかったセールスマンの差

また、スバル1000もカローラ、サニーに比べたら、とてもヒットしたとは言えない販売成績を続けていた。

富士重工にとってはモータリゼーションに乗って、もっともっと売らなくてはならない時期だったけれど、販売面の弱さが出てしまったのである。

当時、富士重工の販売にいた人間は現場の弱さについてこう語る。

「ディーラーのセールスマンは給料の他に販売成績によって歩合が付きました。あの頃は富士重工だけでなく、どこの自動車会社も同じだった。

そうなると、優秀なセールスマンは売れる車を持っているディーラー、つまりカローラやサニーの販売店に行くわけです。

そこにいても、車を売れないセールスマンは今度、どこに行くかと言えば、三菱、富士重工、いすゞのディーラーに来るしかない。それでも、ディーラーではセールスマンの人数が足りないから、どこからか補充してこなければならない。

富士重工の場合は本社に入社した新入社員をディーラーに行かせて、そこで車を売らせる。だいたい、3年くらいはそんなことをさせました。

富士重工のような中堅以下の自動車会社が上位へ行けないようになっているのは商品力よりもむしろ販売力が弱かったからなのです」

[ノンフィクション作家 野地 秩嘉]

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加計学園問題の首相補佐官が公費で「不倫出張」

2019年12月16日 08:00 PRESIDENT Online

安倍首相補佐官と厚労省女性幹部が公費で「京都不倫出張」(「週刊文春」編集部/週刊文春 2019年12月19日号)

安倍政権で官邸主導を牽引する和泉洋人首相補佐官(66)と、不倫関係にある厚生労働省大臣官房審議官(兼内閣官房健康・医療戦略室次長)の大坪寛子氏(52)が、京都に出張した際、ハイヤーを借りて私的な観光を楽しんでいたことが、「週刊文春」の取材でわかった。交通費は公費から支出されているだけに、「公私混同」との批判も出そうだ。

8月9日に、二人は京都大学iPS細胞研究所(CiRA)の山中伸弥所長に面会するため京都に出張。午前中に山中氏との面会をすませると、ハイヤーに乗り、観光客で賑わう河原町へ。老舗の甘味処でかき氷を注文すると、和泉氏は自分のスプーンで大坪氏に食べさせるなど、親密な様子を見せた。その後、ハイヤーで40分ほどかけて京都市北部の山奥にある貴船神社へも立ち寄った。古くから「恋愛成就を祈る社」として知られる同神社でも、大坪氏が和泉氏にお賽銭を渡したり、腕をからめて参道を歩くなど、終始仲睦まじい様子だった。

国土交通省出身の和泉氏は、安倍政権発足当初から首相補佐官を務め、長期政権で強まる「官邸主導」を牽引する「官邸官僚」の中心人物として知られる。中でも菅義偉官房長官の信頼は厚く、沖縄の米軍基地移設問題や新国立競技場建設、米軍機訓練候補地である鹿児島県馬毛島の買収など、安倍政権が注力する重要課題の対応にあたってきた。加計学園の獣医学部新設問題では、「総理は自分の口からは言えないから、私が代わりに言う」と前川喜平・文部科学省事務次官(当時)に発言したとされる問題(和泉氏は発言を否定)を巡り、国会に招致されたこともある。

和泉氏に経緯を聞くと、公務で京都に行ったことは認めた上で、次のように説明した。

「(貴船神社には)行きました。彼女はもともと、午後は休暇を取っているから。僕は休暇ではなく、出張です。僕の場合は特別職なので、勤務時間がないのですが」

また、交際については「ないです」と否定。ハイヤー代は「ポケットマネーで支払った」と答えた。

一方の大坪氏は、往復の新幹線代の支払いについて、「内閣官房で行なっています」と公費だったことを認めた上で、午前中は公務だが、午後は半休をとったと説明した。

和泉氏との関係については、「補佐官から『医学用語が分からないから一緒についてきて通訳してくれないか』と言われた」などと説明し、交際について問う記者に「男女って……(和泉氏は)だいぶおじいちゃんですよね。いくつだと思う?」と回答した。

ただ、「週刊文春」では、この日以外にも、和泉氏がハイヤーで仕事帰りに大坪氏を自宅まで送り届けたり、都内で手つなぎデートやエスカレーターでハグする様子など、上司と部下を超えた関係であることを複数回確認している。

内閣官房の健康・医療戦略室のナンバー2である大坪氏は、山中教授が中心になって進めているiPS細胞の備蓄事業について、国費投入の削減を突如打ち出し、「日本の医療戦略を混乱させている」(厚労省関係者)との批判があがっている。官邸・霞が関に大きな影響力を持ち、健康・医療戦略室の室長である和泉補佐官が、部下の大坪氏との不倫関係によって、公平であるべき行政を歪め、「私物化」していないのか、今後、説明が求められそうだ。

[「文春オンライン」編集部 「週刊文春」編集部/週刊文春 2019年12月19日号]

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