cat_11_issue_oa-president oa-president_0_cc2173efb6c3_橋下徹「日韓は完全かつ最終的に解決したか」 cc2173efb6c3 cc2173efb6c3 橋下徹「日韓は完全かつ最終的に解決したか」 oa-president 0

橋下徹「日韓は完全かつ最終的に解決したか」

2019年9月7日 12:00 PRESIDENT Online

1965年の日韓請求権協定で「完全かつ最終的に解決された」はずなのに、韓国の大法院(最高裁)において韓国人元徴用工による日本企業への損害賠償請求が認められた「徴用工判決」。歴史的な日韓関係の悪化はそこから始まった。日本側からは噴飯ものに見えるが、なぜ韓国の裁判所はそのような判決に至ったか。解決の手がかりを橋下徹氏が提示する。

日韓関係でも応用できる「和解の技術」

韓国大法院(最高裁)による徴用工判決から、日本政府による輸出管理手続きの厳格化(韓国をホワイト国から除外)に突入し、そしてついには韓国によるGSOMIA(軍事情報包括保護協定)の破棄と、日韓関係が悪化の一途をたどっている。

前号(Vol.165【超緊迫・日韓関係(1)】自分のプライドを守りつつ相手を利用するには)では、膠着した両国関係を改善するためには、過去の経緯にこだわり相互の関係を完全に絶って利益を放棄するのではなく、相互にプライドを保ちながら利益追求する方策を探るべきだと論じた。

今回は、そのための具体的な「和解の技術」を述べたい。

韓国国内の日本企業に賠償命令を下し、その財産の差し押さえを認めた韓国大法院のいわゆる徴用工判決について、日本における議論では、「1965年の日韓請求権協定があるのだから、全て終わりだ!」と単純に叫ぶ者も多いが(それでも最近はこのメルマガの影響なのか(笑)、そのような者が減ってきたようだ)、請求権協定のような「政府間の取り決め」だけでは、国民個人の「裁判に訴える権利」や、国民個人の「財産権・請求権」を直ちに消滅させることはできないという大原則をしっかりと認識すべきだ。

もし友人が加害者と勝手に和解したらどうするか

和解契約にあたる講和条約や日韓請求権協定には、「今後一切の請求はできない(しない)」「完全かつ最終的に解決された」という文言があるので、韓国国民個人の請求は消滅し、以後韓国国民個人はいかなる請求もできない、という意見が大勢である。

しかし、これは法的には甘い主張だ。

弁護士の世界で結ばれる和解契約にも、必ず最後に、「今後一切の債権債務関係は存在しない」という文言が入り、これを「清算条項」というが、これは道徳的なものであって法的な意味はないというのが、法律家の当然の認識である。端的に言えば、あってもなくても、あまり意味のない文言なのである。しかし、いわゆる徴用工判決をめぐる現在の議論においては、この文言がことさら強調されて、韓国国民の個人的な請求権が消滅した根拠に使われている。これは法的には間違いだ。

和解契約は、この清算条項の「前までの」和解文言が重要で、そこに紛争当事者の権利義務関係がどうなるのかを詳細に明記しておかなければならない。つまり最後の、「今後一切の請求はできない(しない)」「完全かつ最終的に解決された」などの清算条項はあってもなくてもどうでもいいのである。

このような清算条項があるからといって、和解契約関係者の個人的な権利が直ちに消滅するものでないことは、法律家の常識である。もしあなたの権利が、あなたのいないところで、勝手に消滅させられていたら怒り狂うのではないか?

あなたと友人が車に同乗中、交通事故にあったとしよう。あなたの友人が加害者と勝手に和解して、あなたの権利が消滅していたなら、あなたはどうするか? あなたの友人と加害者の間で交わされた和解契約の中に「今後は一切の請求はできない(しない)」「完全かつ最終的に解決された」という清算条項があるので、あなたの権利は消滅したと言われたら、あなたは何というか。

「その清算条項は、私を拘束しない。私の友人と加害者の間のものだ! 私には関係ない!」と言うのではないか? 今、韓国の元徴用工たちが主張しているのはそういうことなのだ。

日韓両政府が紛争の範囲を誤魔化したことが混乱の原因

また「今後一切請求できない(しない)」「完全かつ最終的に解決された」という清算条項は、その和解契約の対象となった紛争に限ってのことであって、他の紛争についてまで全てを解決するものではないということも重要な法的原則である。これも法律家にとっては当然のことだが、法律家以外には、そのような認識が弱いようだ。

たとえば、たまたま、あなたの友人が交通事故の加害者、あなたが被害者となった紛争を想定してみよう。友人間なので、早く解決したい。だから和解をした。そして最後に「今後一切の債権債務関係は存在しない」「以後何らの請求もしない」「完全かつ最終的に解決された」などの清算条項が入ったとする。

ところが、あなたは、この友人にお金を貸していたとする。そして、この友人が、交通事故の和解の清算条項を基に、交通事故とは無関係のこの借金までもチャラになったと言ってきたらどうするか。

あなたは、「そんなバカな話はない、あの和解の対象は交通事故に関することだけだ!」と怒り狂うだろう。その通りだ。和解契約というものは、そこで対象とした紛争についてのみ効力を発する。他の紛争や権利には何の影響もしない。当たり前のことだ。

だから和解契約を締結する場合には、これはいったい何の紛争について和解をしているのかを当事者間において詳細に確定する必要がある。ここをしっかりやっておかないと、これは和解の対象ではない! いや和解の対象だ! と紛争が蒸し返されるのである。今の日韓関係がまさにそれだ。

1965年の日韓基本条約・請求権協定で和解した紛争とは何だったのか? 実は日韓政府の双方でここを誤魔化したことが、現在の紛争の根本原因となっている。外交官は法律家ではない。だから、国(政府)同士の主張が激突するところを、あいまいな文言で誤魔化してまとめてしまう癖がある。それが「外交技術」だと。しかし、それは紛争を完全かつ最終的に解決させる「法的技術」としては甘い。外交技術による和解契約は、後に紛争を蒸し返すリスクがあり、現在の日韓関係はまさにその状態に陥っている。

もちろん、こじれた国と国との関係をいったん正常化するためには、外交技術による問題の棚上げが必要であることも間違いない。しかしその場合には、後に紛争が蒸し返される可能性があることも認識しておかなければならない。尖閣諸島を巡る問題も、結局は、1972年の日中共同声明や1978年の日中平和友好条約できちんと明記しなかったことが火種となっている。

[元大阪市長・元大阪府知事 橋下 徹]

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cat_11_issue_oa-president oa-president_0_5265a3a4682e_毎月小遣いをもらう子供はいずれ"社畜"になる 5265a3a4682e 5265a3a4682e 毎月小遣いをもらう子供はいずれ"社畜"になる oa-president 0

毎月小遣いをもらう子供はいずれ"社畜"になる

2019年9月7日 12:00 PRESIDENT Online

子どもへの小遣いはどう渡すのが正解か。「毎月いくら」と定額を渡している親は要注意だ。メガバンクの元支店長・菅井敏之氏は「子どもは進級・進学するだけで毎月の小遣いが自動的に増えると勘違いする。こうした年功序列の発想が染みついた子どもは、大人になってもお金を稼げない」という——。

もはや「自動的に給料が上がる」という時代ではない

金融広報中央委員会「子どものくらしとお金に関する調査」(第3回・2015年度調査)によると、小学生・中学生・高校生の7~8割が小遣いをもらっている。学年が上がるほど「月に1回」が多くなり、金額も増えている。注目すべきは、中学・高校生の7~8割が小遣いをもらうために「何の前提条件もない」と答えていることだ。

こういった定額小遣い制にNOと言うのが、40万部突破のベストセラー『お金が貯まるのは、どっち!?』(アスコム)の著者で、元メガバンク支店長の菅井敏之氏だ。

「これは年次が上がれば、自動的に給料も上がるという典型的な年功序列型の考えです。30年前の日本ならいざ知らず、今はそんなに甘くありません。仕事のパフォーマンスに応じた対価が給料、あるいは成果としてもらえる時代です。年次が上がれば、もらえるお金が増えるわけではなく、本当に稼いで貢献しないともらえない。そのなかで、新しい年がくれば、もらえる金額が増えるという定額小遣い制、まさに年功序列的な小遣い制はあまりいい方法とは言えないですね」

定額小遣い制の子どもはいずれ社畜サラリーマンになる

とりあえず従順に働いていれば、給料はもらえる。年齢を重ねれば、なんとなく給料は上がる。だから、命令されれば残業もする。そんな社畜的な社員は今の時代、肩身が狭くなる一方だ。

それと同様に、1年が経過して進級・進学するだけで自動的に小遣い額が増える仕組みを当たり前だと思っている子どもは、社会人になってもそんな緩くてズルい考え方から抜け出せず、ただ会社に籍を置くことに必死で、それにしがみつくようになってしまうリスクがある。同期入社でも実績次第で、大きな給与格差が出る企業が増えている中、そうした人材を企業は雇用し続けるだろうか。

子どもをひとりで食べていけるように育てるのが親の務め

菅井さんは「教育の基本は、子どもを自立させること」と言い切る。

「いい学校に行かせて、いい会社に入れることが教育と考えている人が多いですが、そうではありません。教育の真の目的は自立、つまりちゃんと子どもが自分で食べていけるようにすることです」

自分で食べていける人間になるには、お金の教育は切っても切り離せない。ならば、小遣いも年次が上がるごとに増える定額制ではなく、働きに応じてもらえる報酬制にしたほうがいい。

菅井さんはこれからの社会では「稼ぐ力」「管理する力」「受援力」という3つの力が必要になるという。小遣いを定額制ではなく報酬制にするという考えは、このうち「稼ぐ力」に該当する。

(1)子どもの「稼ぐ力」をどう養うか

お金は困りごとを解決したときにもらえる対価

「お金とは、何か困りごとを自分の経営資源で解決したときにもらえる対価です。ですから、小遣いが欲しいなら、例えばの話、おじいちゃん、おばあちゃんの家の不用品を処分する、近所の庭の草むしりをするなど、人の困っていることをいち早く発見して、それを解決して“お駄賃”という形で、お金を自分で稼ぐべきなのです」

菅井さんの銀行支店長時代に、新卒ながら何かと細かいことに気がつく、いわゆる気働きのできる社員がいた。本人に聞いてみると、子ども時代は定額小遣い制ではなく、報酬小遣い制だったという。そうした事例はほかも数人いて、子どもの頃から率先して働いてお駄賃をもらった経験が、稼ぐ力につながっていると菅井さんは確信したそうだ。

「ただし家の手伝いには報酬は発生しません。それは、家族の成員として当たり前のことだからです。とはいえ、言われずにやったら50円、大掃除したら100円、と各家庭でルールを決めて、ふだんの手伝いを超える仕事については、小遣いをあげてもよいかもしれません」

(2)子どもの「お金を管理する力」をどう養うか

賢い使い方や管理の仕方も教えよう

そんなふうに人の困りごとを解決することで稼いだら、今度はそのお金の使い方や貯蓄方法を教えることが大切だ、と菅井さんはいう。

「子どもにお金をそのまま持たせていると、単にゲームを買っておしまいになってしまうことが多いでしょう。でも親としては、もっと賢いお金の使い方を教えたい。つまり何か物を買うときは、買って終わるものではなく、買ったらそこから新しい何かを生み出すものを買うべきであるということ。私の考えでは、買って終わりのものは単なる浪費で、新しく生み出すものは投資です」

コツコツ貯める習慣も重要だ。

「いつか欲しいものが出てきたときに買えるように、貯金しておくということです。収入が入ったら、そのうち2割は先にとって貯金をさせる。それで残ったお金で暮らす。収入-支出がいつもプラスになるようにする。この習慣を小さいうちからつけておくことが大切です。そのために、小遣い帳をつけさせてお金の流れを見える化するのがよいでしょうね」

ちなみに先の金融広報中央委員会の調査によると、自分の貯蓄が「ある」と答えた小・中・高校生は4~5割。「定期的に貯蓄している」中学生は約3割、高校生は約2割だった。また小遣い帳をつけているのは、小・中・高校生とも約2割となっている。

家庭内借金はいちばんよい金銭教育

もし、子どもがストックしたお金で買えない高額なものを欲しがったときは「家庭内借金」をすることで管理する力を養うことができるという。

「借金をすると当然、金利が発生しますので、家庭内借金でも金利をつけます。延滞すれば、延滞利子もつけます。きちんと毎月、返済できるように、返済計画を立てさせましょう。取り立ては厳しく、そこに甘えやさらなる借金は許されません」

家庭内借金でまず教えたいのは、金利には単利と複利の2種類あるということ。単利は、当初の借入額の元本に利息が計算されるが、複利は元本に利息を足したものを新たな元本として利息を計算するため、単利と複利では時間がたつほどに大きな差が出る。

「貯金や投資であれば複利でどんどんお金は増えるけれど、借金ではその逆で雪だるま式にその額が増えていく。大変なことになるということを教えておきたいですね」

借金が雪だるま式に増えることを親が教える

その怖さを教える際に有効的なのが、“72の法則”だ。これは、72÷金利≒手元のお金が2倍になる年数、というものだ。例えばリボルビング払いの金利を18%とすると、72÷18=4、つまり4年で元金が2倍になる。

「金利の話を交えて借金をすると、こんなに余分にお金を払わなきゃいけないんだ、返せないとどんどん借金は増えていくんだ、そして信用や信頼を一気に失ってしまう、そういうことを疑似体験させるわけです。そうすると、子どもは『あぁ、借金するんじゃなかった』と身をもって実感するわけです。そういった借金で起こりうるリスクを、子どもに経験させる。できたら実際に失敗させる。そうしたプロセスの中で子どもはお金のリテラシーを学んでいくのです」

家庭内でのこうした疑似体験することで、わが子が安易に借金をしない大人へと成長するのだ。

(3)子どもの「受援力」をどう養うか

わが子を人から助けてもらえる体質に育てる

「稼ぐ力」「管理する力」と合わせて、最後にしっかりと伝えておきたいのが3つ目の「受援力」だ。

「受援力というのは、人から応援される力です。この力を持っている人は、社会でどんどん成功します。いまは物事がどんどん専門化し、なかなか自分ひとりの力で稼ぐことが難しい時代。そのときに、いろいろな人の力を借りて解決できる人は、チームの力で成功できるんです。反対に、誰にも頭を下げられず、一人で抱え込んでしまう人は自滅してしまうのです」

菅井さんはこの受援力を養うには“丁賞感微(ていしょうかんび)”が大切だという。

・丁(低)=いつも丁寧に、頭を低くして初心を忘れず

・賞(褒)=相手を誉め、尊敬していることを伝える

・感=感謝の気持ちを忘れずに

・微=いつもニコニコ笑顔を絶やさず

「お金持ちはいつもニコニコ、腰が低くて、人のことをほめるし、ありがとうって言いますよね。子どもに教えるなら、まず『ありがとう』という言葉でしょうね。たとえば、お正月に祖父母からお年玉をもらったら、『これはお正月だから当たり前にもらえるもんじゃないよ。お前がいつも元気でおじいちゃん、おばあちゃんって気にかけているからもらえるんだよ、ありがたいことだよね』と親が通訳しなければいけないでしょうね」

以上、3つの力を意識しながら、小さい頃から子育てをすると、子どもには次第に「自分でも稼げる」という意識が芽生えてくる。まずは定額小遣い制は廃止することから始めてはどうだろうか。

「自分のしたことが人に喜ばれた、人の役に立ったという成功体験を積んできた子は、自然に自己肯定感が高まります。社会で成功している人は、たいてい自己肯定感の高い人です」

定額小遣い制の廃止は、子どもを自立した大人に成長させ、社会で成功させることにつながるはずだ。

[コンサルタント・元メガバンク支店長 菅井 敏之 取材・構成=池田純子]

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cat_11_issue_oa-president oa-president_0_75583f37e2e6_役所は教えてくれない「要介護認定」の裏ワザ 75583f37e2e6 75583f37e2e6 役所は教えてくれない「要介護認定」の裏ワザ oa-president 0

役所は教えてくれない「要介護認定」の裏ワザ

2019年9月7日 12:00 PRESIDENT Online

もし明日あなたが介護をする立場になったら、あなたは“正解”を選べるのか? 知られざる裏ワザを駆使して親と自分を守り抜こう!

介護認定で正直者が損をする!?

介護はある日突然始まり、生活は一変する。介護に伴う時間、体力、金銭面の負担は避けられないが、その負担を軽減する存在が『介護保険制度』だ。要介護認定を受けると、年金収入などが(単身世帯で)年280万円未満の場合、原則1割の自己負担であらゆる介護サービスを受けることができる。

介護サービスが必要となると、地域包括支援センターなどで要介護認定の申請を行い、介護認定調査員が自宅や病院を訪れ、介護を受ける本人の調査を行うのが本来の流れだが、介護認定を受けるために大切なことは申請前から始まっていると語るのが、All Aboutで介護ガイドをつとめる介護アドバイザーの横井孝治氏だ。

「要介護認定の申請にあたり、必要となるのが、主治医の『意見書』ですが、医者は当然ながら患者のことを第1に考えます。そのため、意見書を書いてもらうための伝え方が重要です。適切なサービスが受けられないと親が自立した生活を送っていけないから助けてほしい、というスタンスで医者に接するといいでしょう」

あとは窓口で申請を行えば、1~2週間以内に調査員の訪問による聞き取り調査が行われる。

「調査には必ず立ち会ってください。お年寄りは『他人に迷惑をかけてはいけない』という気持ちが強く、普段は寝たきりに近いような人がいきなり立ち上がり、『この人は元気なんだ』と判断され、適正な認定がおりなかった、というケースも少なくない」(横井氏)

訪問調査の時間は1時間程度

要介護度の認定は、麻痺の有無、寝返りができるかといった身体機能、日常生活において介助が必要かなど、6項目50問以上の質問で行われる。訪問調査の時間は1時間程度のことが多く、かなりタイトな調査だと言えるだろう。

横井氏によれば「現在は調査員が目の前で起きていることを素直に記録する傾向にあるため、何について質問されるのかを事前に調べて、自分なりに回答を整理することが必要」だという。

困っていることやできないこと、そして親が何を求めているのかをまとめておき、調査の際に効率よく伝えるようにしたい。

「主治医の意見書をしっかりと書いてもらい、普段困っていることを書いたメモなどを用意すると、スムーズに意見を伝えられます。要介護認定を受けるうえで、訪問調査への対応は最重要ポイント。しっかり準備をしてください。ほかにも訪問調査で準備するべきことや知っておくと役に立つ裏ワザを、まとめてあります」(同)

また、認知症の疑いがあっても親が病院に行きたがらないケースも。その場合、役に立つのがWebサイト「おやろぐ」の「認知症かんたんチェック」だ。これは精神科で受ける認知症の初期診断である「計算力」や「短期記憶」の測定をゲーム感覚で行える。

介護はいつ始まるかわからないものだからこそ、早め早めに知識武装をしておきたい。

▼8つの裏ワザを、介護を知り尽くした男がこっそり伝授!

POINT① 訪問時間は夕方以降を希望する

訪問調査を依頼する時間帯が重要だ。高齢者は早起きする人が多く、体力に余裕のある午前中は元気に振る舞ってしまうことが多い。そのため疲労がたまってきた午後以降、できれば夕方に調査を依頼したほうが介護状況の実態を効率よく調査員に伝えることができる。

POINT② 主治医による意見書の内容を充実させる

要介護認定を下すのは、2次判定を行う「介護認定審査会」だが、1次判定でのコンピューターによる暫定の判定通りに決定するケースが多い。しかし、主治医による意見書がしっかり書かれていれば、本来に近い要介護度が得やすくなると言える。

POINT③ 調査員に日記やメモを渡す

調査員に普段の親の行動を親の前で説明すると、本人が嫌がる内容も含まれ、傷つける可能性がある。メモや日記を渡すことで親に気づかれることなく問題行動を説明することができる。その際は、説明用の本命と親用のダミーを用意することも一手だ。

POINT④ ありのままをスマホなどで撮影しておく

認知症患者には、昼間は穏やかでも、夜になると暴れたり大声を出す患者が存在する。しかし、夜間に訪問調査は行われないため問題行動が調査員に伝わりにくい。そのため問題行動の様子や、暴れて怪我をした箇所などを撮影して調査員に見せよう。

POINT⑤ 「区分変更申請」は意義申し立てのチャンス

要介護度は定期的に見直されるようになっており、1~3年に1回、再審査を行う。しかし容体が急変した場合などには、更新時期を待たずに「区分変更申請」を行うことが可能。この制度を活用すれば、認定結果への異議申し立てを行うことができる。

POINT⑥ 「暫定ケアプラン」でサービス受給を前倒しできる

要介護認定には、1カ月ほど時間がかかることが多い。しかし緊急時には認定結果が出る前に暫定の要介護度を出して介護サービスを前倒しで利用できる。認定された正式な要介護度が、暫定の要介護度よりも低いと、自己負担の費用が発生する恐れがあるので注意。

POINT⑦ 表現や伝え方を「親のため」で統一する

主治医は、基本的に患者ファースト。「介護家族が仕事を辞めて介護しても当然」ぐらいのアドバイスをすることも少なくない。それを逆手に取り、「介護を放棄するため」ではなく、「親を守り続けるため」に協力してほしいと伝えると医師の助力を得やすい。

POINT⑧ 訪問調査前に掃除はしない!

訪問調査ではありのままを伝えないと実際とは異なる判定結果となり、本来なら受けられる介護サービスが受けられなくなってしまう。そのため、訪問調査に向けて特別に家の掃除をする必要はない。親が「できない」ことは「できない」と伝えよう。

[網田 和志]

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cat_11_issue_oa-president oa-president_0_aa7caaf6d057_小室圭さんと眞子様の結婚は破談にするべきか aa7caaf6d057 aa7caaf6d057 小室圭さんと眞子様の結婚は破談にするべきか oa-president 0

小室圭さんと眞子様の結婚は破談にするべきか

2019年9月7日 12:00 PRESIDENT Online

2017年9月に婚約が内定した眞子さまと小室圭さん。しかし18年2月に結婚の延期が発表され、その後の進展がない。2人はどうなってしまうのか。ジャーナリストの元木昌彦氏が、小室さんへの手紙という形式で、「今すべきこと」を問う——。

「2年目も学費免除の資格を受けた」との報道

拝啓 小室圭殿

突然、このようなお手紙を差し上げる無礼をお許しください。

日本は厳しい暑さも少し和らぎ、秋の気配を感じられるようになりました。

秋のニューヨークには一度だけ行ったことがあります。少し紅葉し始めたセントラルパークで見上げた青空の美しさを、今でも忘れられません。

貴方は学業に忙しくて、マンハッタンをぶらぶら散歩する時間などはないでしょうね。

フォーダム大学のLLMコースを卒業されたそうですね、おめでとうございます。

週刊誌報道によると、「極めて優秀」な14人には入れなかったが、「優秀」とされた23人の中には入ったと伝えられています。

学年で37番以内、上位4分の1に入ったとのことですから、大したものです。さぞ、眞子さんもお喜びでしょう。

9月からは2年間のJD(法務博士)コースに進学するそうですね。

8月27日の「直撃LIVE グッディ!」(フジテレビ系)では、貴方が「2年目も学費免除の資格を受けた」と報じていました。

もしそうなら、楽ではないでしょうが、学費の心配をせずに、これまで以上に勉学に励むことができると思い、ひとごとながら嬉(うれ)しく思っております。

ところで、今回お手紙を差し上げたのは、気になる報道が最近続けてあったからです。

「400万円の金銭トラブル」について元婚約者が動いた

スポーツニッポン(8月26日付)はこう報じています。

「秋篠宮家の長女眞子さま(27)との婚約が延期されている小室圭さん(27)の母佳代さんと金銭トラブルになっている元婚約者の男性が、代理人とともに佳代さんの弁護士と今月上旬、面会していたことが25日に分かった。代理人がスポニチ本紙の取材に明かした」

そこで元婚約者の男性は、「できればお金を返してもらいたい」「佳代さんと会って話がしたい」と要望を伝えたそうですが、弁護士から返答はなかったといいます。

『週刊文春』(9/5号)は、3人が会ったのは8月ではなく7月23日だったとしていますが、元婚約者とその代理人(『週刊現代』に出入りしているフリーライター)が、上芝直史弁護士と会い、400万円の金銭トラブルについて話し合ったと報じています。

どちら側がリークしたのかわかりませんが、3者会談があったことは間違いないのでしょう。

私は、ようやく金銭問題が解決に向けて動き出したのかと、ホッとしたのですが、『文春』によれば、この話し合いはいきなり壁にぶち当たったというのです。

「婚約者が訴訟を起こすならそれもやむなし」か

元婚約者は「400万円は貸したという認識なので、全額返していただきたい」といったそうです。

ここはスポニチの「できればお金を返してもらいたい」とはニュアンスがだいぶ違います。

それに対して上芝弁護士は、「借りたお金ではないので、一切返すつもりはありません」と一歩も譲らなかったと『文春』は報じています。

さらに『文春』は、「ここに、小室さん母子の強い『意志』が感じられるのだ」としているのです。

『文春』は、眞子さんも、同意見だと、こう書いています。

「眞子さまは圭さんから説明を受けて、『そもそも返さなくてもいいお金』と理解されています。返さなくていいものを何年もたってから急に要求し始めた相手のほうが理不尽だとお考えになっている。眞子さまは筋を通す方ですから、返すべきだと思われればそう主張されますし、逆に返すべきでないと思えば、どんなに周りから反対されても返さなくていいとおっしゃる方です。今はむしろ、『婚約者が訴訟を起こすならそれもやむなし』と思っていらっしゃるでしょう」

失礼ないい方になるかもしれませんが、この木で鼻を括(くく)ったような弁護士のいい方は、貴方とお母さん、それに眞子さんも了承したうえなのでしょうか。

対応が事実であったとするなら、母子に失望せざるを得ない

私は、週刊誌報道を鵜呑(うの)みにすることはしません。そこには何らかの編集部の意図が埋め込まれていることが多いからです。

でももし、これが事実だとしたら、秋篠宮ご夫婦の理解を得られるわけはないし、かえって嘆き悲しまれるのではないでしょうか。

世論も、これまで以上に厳しくなることは必至だと思います。

今年1月、貴方が金銭問題について説明する文書を公表した際、上芝弁護士は、「お相手の理解を求められるようにこれから積極的に努力する」と述べていたと記憶しています。

私は今でも、貴方たちの結婚は、成就させてあげたいと考えています。

でも、この対応が事実であったとするなら、私も貴方方母子に失望せざるを得ません。

「世間に理解され、祝福されるような解決」のために

1月に上芝弁護士は、返済ではなく、支援への謝礼、またはトラブルの示談金という名目で支払う可能性にも言及していたはずです。

お互いこの1年9カ月の間、肩身の狭い思いをしてきたのだから、全額でなくても半額でも払って、収束させるのが大人のけじめのつけ方ではないでしょうか。

私は、お互い代理人を立てて話し合うと報じられた時、私なりに想像を膨らませて、落としどころを考えてみました。

要求されている全額を払うことは考えられない。なぜなら、貴方と佳代さんは、最初から400万円は「贈与」されたものだと主張しているから、全額を払えば、これまで向こう側が主張してきたいい分を全面的に認めることになり、貴方たちに対する風当たりはこれまで以上にきつくなるはずです。

それに、「世間に理解され、祝福されるような解決」を望んでおられる秋篠宮ご夫妻は、これで納得されるとは思えません。

私は、半額の200万円ぐらいが落としどころではないかと思います。

メディアが1万回繰り返せば、それが“事実”になってしまう

もちろん条件が付きます。元婚約者が会見をしないまでも、文書を公表して、これまで小室母子のプライバシーを一方的に週刊誌に暴露してきたことを詫び、400万円という中には、かなりの額の贈与が含まれていることを認め、これまで小室母子を支援してきたことへの謝礼として受け取って円満に解決したこと、圭さんには眞子さんと幸せになってほしい、という一文を添えることが絶対条件でしょう。

貴方に聞きたい。金輪際おカネは返さないと決めたのなら、なぜ、弁護士を立てて元婚約者側と“交渉”を始めたのでしょうか。

上芝弁護士のこれまでのメディア対応も、首をかしげざるを得ないことが多々あります。どこまで貴方たちのいい分を分かって、代弁しているのか、心もとないと私は思っています。

話し合いをするということは、問題を先送りするのではなく、前向きに解決の道筋を探ることです。

週刊誌報道やテレビのワイドショーで流される宮内庁関係者など、出所のわからない伝聞推定情報で世論というものが形成されてきました。

当人たちに身に覚えのないことでも、メディアが1万回繰り返せば、それが“事実”になってしまうのです。

美智子上皇后の「乳がん」も、2人のせいになってしまう

ある週刊誌は、美智子上皇后が乳がんになったのも、貴方たち2人のことを心配してストレスを溜めたためだと報じています。

いくら牽強付会が得意な週刊誌でも、やり過ぎだと思いますが、これが貴方たちを取り巻くメディアの実態であることを、理解しておいた方がいいと思います。

週刊誌があることないことを書きたてようと、一つだけ崩せない真実があります。それは、眞子さんと貴方の「結婚への意志」が揺るぎないということです。

秋篠宮と紀子さんと眞子さんとの意思疎通のなさや、美智子皇后(当時)がこの婚約を解消させたいと考えていると報じても、必ず最後には、それにもかかわらず2人の結婚への強い意志は変わらないと書き添えています。

一人の女性を幸せにできなくて、何のための人生か

報道によれば、貴方方は、毎日、携帯電話やSNSを通じて連絡を取り合っているそうですね。

でも考えてほしい。貴方は日々の忙しさに身を任せていれば、会えない寂しさを紛らわすことができるかもしれません。

眞子さんのほうは、外へ出れば好奇の目に晒され、家では、両親と腹蔵なく話し合うことができていないと報じられています。

衆人環視のような中で、一人ぼっちで耐えている眞子さんのつらさは、想像を絶するものがあると思います。

弁護士資格を取得することも大事かもしれませんが、一人の女性を幸せにできなくて、何のための人生なのでしょうか。

弁護士にとって大事なことは「相手(クライアント)の気持ちを理解すること」だといいます。貴方は今、眞子さんの切なる気持ちをどこまで理解しているのでしょうか。

理解しているならば、今すぐに行動に移すことです。弁護士資格には再チャレンジができます。だが、婚約延期までに残された時間はあと半年余りしかありません。

見る前に跳べ! というのは私のモットーですが、跳んでみないとわからないことが、人生にはあるはずです。

とんだ説教じみた手紙になってしまいました。お許しください。

心落ち着く季節、秋の夜長を学業にお励みください。

敬具

2019年9月吉日

元木昌彦拝

[ジャーナリスト 元木 昌彦]

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「1ドル100円割れ」でも、まったく驚かない理由

2019年9月7日 12:00 PRESIDENT Online

円はドルに対してじり高の展開となる可能性がある

今年5月以降、外国為替市場で円高傾向が続いている。8月26日には一時、104円台半ばまで円が買われ(ドル安・円高)、1月3日の高値(104円10銭程度)に接近した。円高傾向の背景には、米国の景気後退懸念の高まりや米中貿易摩擦への警戒などから、投資家が“リスクオフ”に動いたことがある。

この為替動向に関して、一部では「“異常”ともいえるペースで円高が進んでいる」との見方もあるようだ。確かに、8月26日朝方のような、ごく短期の動きに目を奪われてしまうと、そうした印象は拭えないだろう。

ただ、冷静に米国の金利(国債の流通利回り)の変化などを見ると、足元の円高は必ずしも“異常”なペースで円高が進んでいるとはいえないだろう。むしろ、ドル/円の為替レートは日米の金利差や米国のファンダメンタルズ=経済の基礎的な条件の変化などに沿って推移していると考えられる。

今後、米国経済は減速が鮮明化する懸念もある。今すぐではないにしても、いずれ米国が景気後退(GDP成長率が2四半期連続でマイナスの状況)に陥ることも考えられる。そうした状況を考えると、日米の金利差は縮小傾向に向かいやすい。やや長めに考えると、不安定な動きを伴いつつも、円はドルに対してじり高の展開となる可能性がある。たとえば「1ドル100円割れ」となっても、驚くには値しない。

米金利の低下による円高圧力の高まり

短期的な為替レートの変動に影響を与える要因の中で重要なのが、金利だ。投資資金は、金利の低い国(通貨)から、金利の高い国(通貨)に向かう。この基本的な理論を常に念頭に置き、ドル/円などの為替レートの動向を考えることが大切だ。

今、米金利が上昇する一方、わが国の金利が低位に推移しているとする。為替レートが変わらないと仮定すると、円よりも、米ドルを保有した方がより高い利得を手に入れられると期待できる。

その期待から金融市場では、円売り・ドル買いのオペレーション(取引)が増える。なお、多くの投資家は金利の低い円を借り入れて投資資金を調達し、円を売ってドルを買い、日米の金利差を獲得しようとする。これを“円キャリートレード”という。円キャリートレードはドル/円の為替レートに無視できない影響を与える。足元、米金利はわが国の金利以上に低下している。これが、円高圧力を高めている。

わが国の金融政策は事実上の限界に直面

米金利低下の大きな要因は景気の減速(GDP成長率の低下)だ。2018年7~9月期の米実質GDP成長率は前期比年率ベースで3.5%だった。その後、浮き沈みはあるものの、米国経済の成長率は鈍化している。

特に、米国の景気循環に大きな影響を与える企業の設備投資は低下基調だ。設備投資が伸びていないということは、米国経済全体での資金需要が低下していることを示唆する。資金需要が伸びないと、お金のレンタル料である金利には低下圧力がかかりやすい。

加えて、7月末、FRB(連邦準備理事会)が利下げを行った。FRBは米中の貿易摩擦の影響などが先行きの不確実性(リスク)を高めていると警戒し、予防的利下げを実施した。

一方、わが国の金融政策は事実上の限界に直面している。日銀がこれ以上の金融緩和を進めることは難しい。この結果、日米の金利差縮小と米国経済の先行き懸念からリスクを削減する(リスクオフに動く)投資家が増え、円が買い戻されている。

米国は18~21カ月後に「景気後退局面」を迎える恐れ

8月に入り、米国の国債流通市場では、10年国債の利回り(長期金利)の水準が、金融政策の動向を反映しやすい2年国債の利回りを下回った(長短金利逆転)。

短期よりも長期の金利水準が低くなるということは、今すぐではないにせよ、近い将来、米国が景気後退局面を迎えるとの懸念が高まっていることを示している。過去の展開を振り返ると、長短の金利が逆転してから18~21カ月たつと、米国は景気後退局面を迎えている。

景気後退への懸念が高まる状況下、多くの投資家はリスクオフに動く。今後の動向次第では、これまで以上のマグニチュードで円キャリートレードの巻き戻しが進む可能性も排除できない。米国の長短金利が逆転したことは軽視できない変化だ。

今後の米国経済の動向を考えた時、GDPの70%程度を占める個人消費の動向は重要だ。足元、米国の個人消費は相応に好調だ。米国の労働市場では人手不足が深刻化している。それを反映して、賃金は緩やかに上昇している。それが、個人消費を支えている。旺盛な個人消費が設備投資減少のマグニチュードを緩和し、米国経済は相応の安定感を維持していると考えられる。それが、世界経済全体を支えている。

米国家計の債務残高は過去最高水準に

ただし、未来永劫、経済が右肩上がりの成長を続けることはできない。個人消費もしかりだ。すでに米国経済が減速している中、個人消費も徐々に鈍化する可能性がある。それに加え、家計の債務残高が増えている。これは、消費を圧迫する要因の一つだ。

6月末の時点で米国家計の債務残高は13兆8600億ドルに達した。これは、過去最高水準だ。クレジットカードローンの返済延滞も増えている。ここから先、個人消費が一段と勢いづくことは想定しづらい。

今すぐではないにせよ、米国経済が景気後退局面に移行する可能性は徐々に高まっている。長短の金利が逆転した状況が続く場合、米国経済の先行き懸念は高まるだろう。それに伴い、ドル/円の為替レートにも徐々に円高圧力がかかりやすいと考えられる。

トランプ大統領はFRBに「利下げ」を行わせたい

先行き不透明感が高まる中、FRBのパウエル議長は、基本的には金融緩和を重視している。しかし、FRB関係者の見解が、一つにまとまっていない。これは、一時的にドル/円の為替レートを上下に変動させるだろう。

7月末のFOMC(連邦公開市場委員会)では、2名の地区連銀総裁が利下げに反対票を投じた。彼らは総じて米国経済は回復のモメンタムを維持し、利下げは必要ではないと考えている。また、金融緩和に関するFRB関係者の考えにも濃淡が感じられる。FOMC参加者の見解をどうまとめられるか、パウエル議長の力量が問われる。

一方、市場参加者は9月のFOMCでの利下げを既定路線と考えている。さらに年内に追加の利下げを予想する市場参加者も増えている。本当にそうなるか否かは、為替相場に大きく影響する。トランプ大統領が繰り返しFRBにさらなる利下げを求めていることも、市場参加者がFRBの追加的な利下げを期待する一因だろう。トランプ大統領はFRBに利下げを行わせて米国の株価を支え、有権者の支持を獲得しておきたい。

中国や欧州でも景気の下方リスクが高まっている

もし、FOMCなどの場でFRB関係者の見解の相違が解消されていないことが確認されるなら、8月上旬のように局所的にドル買い・円売りの取引が増えることが考えられる。反対に、FRBの政策方針が金融緩和にシフトすると考えられる場合、内外金利差の縮小から、従来以上に円高が進むこともあり得る。FRBの金融政策のスタンスがどうなるかは、ドル/円の為替レートに無視できない影響を与える。

また、米国以外の国や地域でも、景気の下方リスクが高まっている。中国経済は成長の限界を迎えている。度重なる景気刺激策にもかかわらず、十分な効果が表れていない。中国経済は一段と厳しい状況を迎える可能性がある。ユーロ圏経済はドイツを中心に景気後退懸念が高まっている。それを反映して、ドイツの国債流通市場では短期から30年まで全ての国債の流通利回りがマイナス圏に落ち込んだ。

やや長めの目線で考えると、円はドルなどの主要通貨に対して買われやすいだろう。ただ、米中の通商協議への思惑なども絡み短期的にはドルが反発する可能性も排除はできず、当面は不安定な展開となることも考えられる

[法政大学大学院 教授 真壁 昭夫]

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「売上5億で赤字367億」PayPayはペイするのか

2019年9月7日 12:00 PRESIDENT Online

「スマホ決済3社」赤字決算の読み方

スマホ決済の主導権を巡り、各社が激しい競争を繰り広げている。

先行したPayPayは2018年12月に「100億円あげちゃうキャンペーン」の第1弾を実施。利用額の20%を還元するという大盤振る舞いに利用者が殺到した。当初4カ月の予定だったが、わずか10日間で上限に達しキャンペーンは終了した。以降、LINE Payやメルペイが追随し、乱戦が続いている。

これほど多額な還元をして経営は大丈夫か――。多くの人がそう感じているのではないか。日本総合研究所の主席研究員で公認会計士の資格も持つ小谷和成氏に、決算書を読み解いてもらった。

100億円超のキャンペーンが、なぜ可能なのか

PayPayの19年3月期の決算は売上収益5.9億円に対して販売費及び一般管理費が371億円かかっており、還元キャンペーンの費用はこの中に含まれている。結果、当期利益は367億円のマイナスだ。

LINE Payはどうか。18年12月期の数字で見ると営業収益(売上高)44億円に対し、営業費用が97億円で営業利益は▲53億円、当期純利益も▲54億円となっている。過去の当期純利益を確認すると、16年12月期▲21億円、17年12月期▲27億円で年を追うごとに赤字幅が拡大していることがわかる。

メルペイは17年11月20日に設立されたばかり。第1期の18年6月期決算は7カ月ほどの変則決算となり売上高はゼロ、販売費及び一般管理費が8.8億円で当期純利益は▲8.9億円となっている。LINE Payとメルペイの決算には還元キャンペーンの費用が含まれていないので、次の決算ではマイナス幅がさらに拡大する可能性が高い。

これだけの損失を出しながら、なぜ破たんしないのか、疑問に思う読者も多いだろう。しかし、創業当初に大きな赤字が出るのはインフラ系のIT企業の宿命であり、驚くことではない。

決済サービスのようなITビジネスで安定収益を確保するためには、いかに多くの会員を集めるかが勝負になる。そのためには、サービス開始時点で莫大なマーケティング費用やキャンペーン費用が必要になる。

一方で、高額な設備投資が必要ないというメリットもある。製造業であれば、工場建設や設備の購入に莫大な資金がかかる。それを考えれば、100億円キャンペーンは驚くほど多額な初期投資というわけではない。

設備投資とキャンペーンの違い

設備投資とキャンペーンの違いは、決算書に計上されるタイミング。キャンペーンの場合は、実施した年に全額が費用として表れるが、設備投資は違う。たとえば、新規事業のために100億円を使い工場を建設すると、貸借対照表に固定資産100億円と記載される。そのうえで工場の耐用年数が20年であれば、100億円を20年かけて徐々に経費計上していく。

結果的に赤字になりにくいわけだが、新規事業から撤退することになった場合には、大きな影響が出る。減価償却の残りが一気にマイナスとなって表れ、赤字に転落する可能性がある。工場を閉鎖するにも莫大な費用がかかるので、大きな痛手となる。

ITビジネスでは固定資産が少ないので、赤字が見えやすい。決算書を確認してみると、PayPayは、407億円の総資産のうち現金及び現金同等物(流動資産)が335億円を占め、固定資産はかなり少ないようだ。LINE Payも流動資産113億円に対して、固定資産は36億円。メルペイも流動資産6.3億円に対し、固定資産は0.6億円だ。

流動資産とは、現預金のほか、主におおむね1年以内に現金化される資産だから、この金額に余裕があれば、資金繰りに窮することはない。その意味では約6億円しか流動資産を持たないメルペイが不利に見えるが、正しく判断するには親会社の状況も併せて考える必要がある。

親会社のサポート力の勝敗は

親会社の決算を見る場合のポイントは現預金、純資産、利益の3つだ。

現預金を多く保有していれば、子会社の資金需要に対応できることを意味する。また、純資産や利益が大きければ子会社が大きな赤字を出してもそれに耐えうる体力がある。この場合の利益とは、営業利益でも経常利益のどちらでもいい。営業利益は本業で稼いだ利益を表す。経常利益は営業利益に資産運用による利益など、本業以外で稼いだ利益を加えたものだ。

LINE Payの親会社であるLINEの決算を見ると、18年12月期(連結)で売上収益(売上高)が2071億円で営業利益は161億円。これは子会社LINE Payの業績も織り込んだ数字だ。

セグメント別損益を見ると、戦略事業の営業利益は349億円のマイナスだが、コア事業では265億円のプラスになっている。

LINE Payは戦略事業に含まれる。コア事業とは広告やゲームなどの事業だ。LINEはコア事業でしっかり稼いでいるので、戦略事業のマイナスは大きな問題になる金額ではないというわけだ。

コア事業で安定収益を確保しながら戦略事業で新しい分野を開拓していく。そのためにはある程度の先行投資が必要になる。そう考えれば、還元キャンペーンにしても無謀な戦略とはいえない。

PayPayはソフトバンクグループのソフトバンクとヤフーが合弁で設立した会社。ソフトバンクグループの19年3月期の売上高は9兆6022億円で営業利益は2兆3539億円と順調。純資産(自己資本)を意味する親会社の所有者に帰属する持分は7兆6214億円で現金及び現金同等物の期末残高は3兆8585億円と、子会社の赤字を支える体力も資金も十分に備えている。

メルペイの親会社、メルカリは苦戦している。18年6月期(連結)の売上高は357億円で経常利益は▲47億円。直近3期の推移を見ると売上高は毎年100億円規模で増加しているものの、経常利益のマイナスが拡大している。

しかし、同社は18年6月にマザーズへ上場し資金調達を行った。結果、純資産は44億円から544億円に増加、現金及び現金同等物の期末残高も508億円から1091億円になっている。19年6月期の業績が気になるところだが、同社は7月25日に連結業績予想を下方修正した。売上高は516億円と前期比44.5%増の大幅な成長だが、営業利益は前期の▲44億円から▲121億円へ赤字幅を拡大、純利益は▲137億円の大幅な赤字になる見通しだ。メルペイのキャンペーンの費用が響いたとみられる。

今回検証した3社以外にもスマホ決済に参入している会社は多い。電子マネーがSuicaをはじめとする交通系ICカードとEdyに集約されつつあるように、スマホ決済も最終的には2社か3社が生き残るのではないだろうか。

▼創薬ベンチャー、その驚異の赤字決算

赤字続きでも破たんしないカラクリ

IT企業と同様に、創業当初に大幅な赤字を余儀なくされる業界のひとつとして、創薬ベンチャーがある。iPS細胞、間葉系幹細胞による治療薬の開発を手掛けるヘリオスもその1つだ。11年に設立され、15年にマザーズに上場しているが、上場後1度も黒字になったことがない。むしろ赤字幅は年々拡大している。

18年12月期の決算は売上高ゼロ、営業利益は▲50億円にもかかわらず、破たんしないのはなぜかといえば、創薬ベンチャーは上場時に莫大な資金を投資家から調達しているからだ。現預金を多く保有しているので破たんしないのだ。創薬ベンチャーは収益が得られるまで長い期間がかかるが、開発した新薬が当たれば莫大な利益が得られる。それを狙って多くの投資家が資金調達に応じる構造になっている。

破たんしない理由は、決算書の賃借対照表の、資本金+資本剰余金、現預金、棚卸資産や有形固定資産の項目を見ればわかる。

資本金+資本剰余金は、株主の出資で得た資金の合計。融資と違い、返済する必要がない資金だ。この金額が大きければ、赤字が続いても資金繰りに困ることはない。ヘリオスの貸借対照表で見ると227億円に上る。この金額を投資家から集めたことになる。

現預金を多く保有していれば、これからの投資に対応できる余力が大きいことを意味する。株主から集めた資金は現預金として保有される。ヘリオスは赤字が続いているにもかかわらず、116億円の現預金を保有している。

一方で棚卸資産や有形固定資産が少なければ、事業運営において実物資産への投資が少なくて済み、その分だけ研究開発に投資できることを意味する。ヘリオスは棚卸資産をほとんど持たず、有形固定資産も取得価額でわずか4億円程度。創薬ベンチャーは、それほど設備投資が必要ないからだ。その分、研究開発費は1年で42億円と潤沢に使えている。

このように投資家の期待を集める業種は、上場で多額の資金を調達できるので破たんしにくい。その資金を使い果たしても、増資で追加調達ができるかもしれない。この点ではITビジネスも似ている。仮にLINE Payが上場すれば、多くの投資家が株式を購入するだろう。どちらも破たんしにくいビジネスモデルといえる。

▼赤字でも安定収入のインフラビジネス

赤字でも、ライバル不在で利益は確保

鉄道会社などインフラビジネスも当初は赤字になりやすい業種。その理由は、初期に莫大な設備投資が必要になるからだ。

鉄道会社は開業に当たって線路を整備しなければならない。また、開業後もはじめは利用者が少ないので、赤字が続く。しかし、沿線に商業施設などができて認知度が上がってくると、居住者も増えて、利用者が増えていく。競合が現れにくいのもメリットだ。同じ地域を並走する鉄道を開業するのは不可能だから、一種の独占状態になり、利益が確保できる。運賃は原価に利益を上乗せして決めているから、設備投資分が回収できれば赤字にはならない。

設備投資の費用は、減価償却費として分割で費用計上していくことになる。よって初期の設備投資が大きい会社は、開業後しばらく減価償却費が大きくなり、償却費前で利益が出ていても減価償却費で相殺され、事業自体の収支を見極めにくい。本業で堅実な利益(キャッシュフロー)が得られているかを確認するには、営業キャッシュフローを確認すればいい。キャッシュフローは現金の収支を把握できる数値で、営業キャッシュフローがプラスであれば、本業がうまくいっていることを示す。

たとえば、つくばエクスプレスを運営する首都圏新都市鉄道は91年に設立され、05年に開業した。

14年3月期から19年3月期にかけての営業キャッシュフローを確認すると、おおむね250億円前後で安定推移している。また、確認できるもっとも過去の決算書である11年3月期の時点で、すでに黒字なので、いつまでかはわからないが、貸借対照表を見れば創業期は赤字であったことをうかがい知ることができる。

損益計算書を1年間の成績とすれば、貸借対照表は過去の成績の積み重ねといえる。なかでも純資産の繰越利益剰余金はこれまで繰り越してきた黒字と赤字の合計を表す。数値がプラスであれば、過去の成績がトータルで黒字であり、マイナスならトータルで赤字を意味する。つくばエクスプレスの場合、17年3月期まではマイナスになっているので、過去に赤字が発生していたことがわかる。

ITビジネスや創薬ベンチャーと同様にインフラビジネスも当初が赤字だからといって、事業に魅力がないとはいえない業種だ。

▼3社とも純利益は赤字

▼「バーコード決済会社」の決算書の特徴

▼親会社の体力(連結ベース)

▼創薬ベンチャー、その驚異の赤字決算


[公認会計士 小谷 和成 構成=向山 勇 撮影=奥谷 仁]

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cat_11_issue_oa-president oa-president_0_1ca64510eb76_カクテルは、酒の持ち味を伝えるメディアである 1ca64510eb76 1ca64510eb76 カクテルは、酒の持ち味を伝えるメディアである oa-president 0

カクテルは、酒の持ち味を伝えるメディアである

2019年9月5日 08:00 PRESIDENT Online

キリン・ディアジオ社が主催するカクテルコンペティション「ワールドクラス2019日本大会」が開催された。優勝したのはホテルニューオータニのメインバー「バー カプリ」でバーテンダーを務める吉田宏樹さんだ。世界中のバーテンダーが技を競う世界大会へ向けて準備を進める吉田さんに、仕事に対する信念を語ってもらった。ビジネスマンにも役立つヒントがきっとある。

繰り返し挑戦したバーテンダーの晴れ舞台

【吉村】バーテンダーにとって、ワールドクラスはどのような大会なんですか?

【吉田】ぼくのなかでは最終目標で、最高峰のコンペティションです。ずっと優勝したいと思ってきた大会です。

【吉村】ほかの大会とどう違うんですか?

【吉田】競技会のスタイルが非常に自由。でも、「なんでもいいですよ」と言われたほうが、バーテンダーとしては難しくて(笑)。最初に挑戦したころは、ぜんぜんカクテルを作れなかったんです。

【吉村】今回は何回目の挑戦ですか?

【吉田】ホテルニューオータニに入社してから毎年応募してるので、計11回。ファイナルまで行けたのは、2回だけです。1次予選を通らなかったこともあります。去年、初めてファイナルに出場し、すごく緊張して悔しい結果になりました。で、今年こそはと準備して臨みました。

【吉村】ご自身では、どういうポイントを評価されたと思いますか?

【吉田】今年は他人の真似事ではなく、自分らしくやろうと思ったんです。大会では、プレゼンテーションのスタイルやカクテルに流行りのものを取り入れることも大事なんです。たとえば、オレオサッカラム(柑橘系フルーツの皮の油分をつかったシロップ)やアクアファバ(ひよこ豆を茹でた汁で、卵白の代わりになる)を使ったり。でも、去年負けて思ったのは「自分のコンセプトまで曲げる必要はない」ということです。自分の言葉で、自分の得意な味で勝負して……その結果が高評価につながったように思います。「自分らしさ」を曲げなかったのがよかったんですね。

【吉村】吉田さんの自分らしさって、何ですか?

【吉田】カクテルを作るときに「ベースを殺さないこと」。そして「店で実現可能なカクテルをつくる」ことでしょうか。大会用ではなく、普通にこのバーで飲めるお酒をつくることです。

【吉村】ワールドクラスでは、ウオツカを使ったケテル ワン・チャレンジ部門とスコッチ・ウイスキーを使ったジョニーウォーカー・チャレンジ部門で部門優勝もされています。どういうカクテルを作られたのですか?

【吉田】ケテル ワン・チャレンジでは、「リ・シルク Re:Silk」というカクテルを作りました。

この「Re:」は、リサイクルやリユースの「Re:」で、Silkは絹のことです。ケテル ワンは、爽快ですっきりして、シルキーな口あたりが特徴のウオツカです。この蒸留所はオランダにあるのですが、風車で作った電力で蒸留器を動かしています。

わたしの今回のカクテルは、エコを意識して、いままで捨てていたものを新たに材料に使ったりしています。ケテル ワンの企業姿勢に重なる考え方です。

ベースはケテル ワン。そこにフレッシュレモンジュースやアクアファバ、オレオサッカラムなどを加え、シェイクして作ります。うちのバーでは毎日レモンやライムの生ジュースを作って、絞り終わった皮は捨てていましたが、その皮の油分を使ってオレオサッカラム(柑橘系シロップ)を作ったのです。衛生管理の規則もあって、卵もうちのバーでは使えません。卵白の代わりになるものはないかと考えたときに、アクアファバの利用を考えました。

【吉村】飲ませていただくと、メレンゲのような口あたりとシルクのような滑らかさがありますよね。まさに「リ・シルク」です。

【吉田】ケテル ワンのシルキーなテクスチャー(質感)を引き出したかったんです。

【吉村】アクアファバを使うことで、卵白よりもクセがないですね。ラベンダーズのビターズが、豆っぽいにおいをうまく抑えていますよね。このカクテルを飲んでいると、心地よい甘みと酸味のあと、最後にロースト感がぽっと残ります。不思議ですね。これは美味しい。とても品がいい。

【吉田】ケテル ワンの特徴は、シルキー感とロースト感なんです。だから、コーヒーとの相性もいいんです。

【吉村】「卵白が出せないなら、違うものがあるだろう」とか「捨てる皮からシロップを作る」とか、吉田さんの発想がいいですよね。一見ネガティブな状況を逆手にとって、ポジティブに反転し、新しいものを作っていく。

【吉田】コンペで出したカクテルをお店で提供できないなんて、あり得ないと思うんです。卵白使っちゃったら、うちのバーでお出しできないじゃないですか。今回作ったカクテルは、材料がきれないかぎり(笑)いつでも、ここでお飲みいただけます。

【吉村】さて。ジョニーウォーカー・チャレンジのカクテルは?

【吉田】ジョニーウォーカー ブラックラベル 12年を使った「サマービュー(summer view)」。グアバジュースやクランベリードリンクなどの入ったハイボールです。スコットランドのヒースの花々が咲き誇る風景をグラスに表現しました。ちょうどジャパンファイナルの時期が、スコットランドでヒースの咲く時期と重なっていたので。

【吉村】ちゃーんと考えてまんなあ(笑)

【吉田】それは、もちろん(笑)。あの手この手で。食中カクテルというテーマでしたので、イギリスのソウルフードであるフィッシュ&チップスに合わせるカクテルとして考えました。審査員のみなさんにフィッシュ&チップスの写真を渡して、食べている情景を連想して飲んでくださいと。

【吉村】エアーつまみ、ですね。すばらしいプレゼンテーション。

【吉田】「写真かい」って言われましたけど(笑)。食べ物の指定はないのですが、ぼくはフィッシュ&チップスにしぼりました。それもヴィネガーの味に。あの酸味に合わせたときに、ちょうどいいようなカクテル。ジョニーウォーカー ブラックラベル 12年の特徴のうちのフルーティさがヴィネガーと相性がいいんじゃないかなと。

カクテルの上にはヒースの花々に見立てた日本の花穂紫蘇を散らしました。ストローは紙でできたもの。エコの観点から、考えを統一してます。ビーチパラソルみたいな夏らしいイメージになります。

【吉村】飲むと、梅っぽいような、とても和風なテイストがしますね。日本の夏にぴったり。ウイスキーの燻した感じもふんわり漂ってきて、しっかりコシもありますし。

【吉田】けっこう油っぽい食べ物に合うと思うんです。

【吉村】飲み口は爽やかで、後でしっかりウイスキーの力を感じるハイボールですね。

【吉田】食中酒としてのカクテルはしっかりと味わいが感じられないと、だんだん何を飲んでいるのかわかんなくなっちゃうんで。ベースをきかせ、カクテルの個性が失われないようにしています。

【吉村】甘い香りが、白身魚にフィットしそうです。あとでスモークな感じが追いかけてくる。吉田さんのカクテルは、バランスがいいですよね。全体的にまるい印象です。

【吉田】バランスはかなりこだわっています。とくにウオツカって味がないですよね。どうウオツカを表現するか、これが難しいんです。ひたすら入れればいいってもんじゃないですし。ほどよいアルコール感とそのウオツカのもつ個性を引き出すのが大事です。

【吉村】個性をひきだしてあげる──それって、プロデューサーの仕事みたいですね。この人のこういう個性を、ここで引き出してって。

【吉田】そうですね。カクテルを作るときって、リキュールとか副材料でけっこう簡単にそのベースの味や特徴を殺せるんですよね。でも、ぼくらバーテンダーはお酒の魅力を伝えることが仕事。自己満足でおいしいカクテルを作るんじゃなくて、やはり、ベースの味をお客さんにしっかり伝えることが大事なんです。だから、ベースをちゃんと生かすのがとても大事です。ワールドクラスは、そこをとても見てくれているので、魅力的なコンペティションですよね。

ビジネスにも通じる、プレゼンの力

【吉村】今回、コンペティションで心がけていたことは何ですか?

【吉田】プレゼンをしながらカクテルを作ります。しかも5分という限られた時間内です。言うべきこと、言わなくてもいいことを、はっきりしておくことでしょうか。

【吉村】あらゆるプレゼンに言えますね。メリハリをつけ、よけいなことをしない。よけいな力を加えないってことですね。

【吉田】言いたいことをわかりやすく説明する。ぼくは最初にコンセプトを言いました。

【吉村】カクテルを考えるときに、どんな苦労がありますか?

【吉田】これとこれを混ぜたら美味しいかなと作っても、あと一歩のことがあります。今回のカクテルを考えるときも煮詰まりました。そんなときには、寝ることにしてるんです。ぼく、寝起きがものすごく頭が冴えるんですよ。とことんやって煮詰まってからアイデアがひらめく、というのがパターンです。

【吉村】それって蒸留と似てますね。醸造酒を煮つめて、一回死ぬじゃないですか、それからまた蒸留酒として再生する。そのときに、違う次元で命が新しくなる。

【吉田】カクテルをつくってテイスティングしてると、けっこうベロベロになるんです。だから「無理だぁ」って思ったら、寝ちゃう。良いことだけを思い出しながら寝ることにしてます。「あれ、まずかったな」とか思わない。「ここが上手くいったから、もうちょっとやってみよう」って。そうすると、翌日ポジティブな気持ちで起きられるんです。

【吉村】ところで、吉田さんにとって、カクテルって何ですか?

【吉田】自己表現の一つ。それとお酒の魅力を引き出すメディア。ストレートでウオツカ飲んでみてくださいというより、素晴らしいカクテルをつくって、ウオツカの魅力を知ってもらうメディアだと思うんです。

【吉村】9月にグラスゴーで開かれるワールドクラス世界大会で、世界のトップバーテンダーと競いあうことになりますが、そのときは、どういうスタンスで臨みますか?

【吉田】自分のスタンスを変えるつもりはまったくありません。伝えるべきことをしっかり伝えて、あとは味にこだわっていきたい。美味しいものを作れば納得してくれる審査員の方もいらっしゃると思いますので。味と、日本のバーテンダーの美しい所作というんですか、それだけは失わないように世界でもやっていきたいと思っています。

【吉村】吉田さんにとって、バーの意味合いって何ですか?

【吉田】街場のバーもそうですが、ドアを開けるのって勇気がいりますよね。でも、まずは座ってもらえば、新しい空間が待っています。

「人は家でも下ろせない荷物を抱えている。だけどバーはそれを下ろせる場所なんだ。バーテンダーはその荷物を下ろしてあげることができるんだよ」って、先輩に教えてもらいました。座っていただいたら、寛いでいただけるようにするのがカウンターの商売です。テーブルではできません。

【吉村】人生を重ねれば重ねるほど、それがよくわかってきますよね。心の荷物をちょっと下ろして、また、かついで帰るんですけど(笑)。でも、100グラムくらい軽くなってるかもしれないですね。

【吉田】ときどき荷物を忘れて帰るひともいます(笑)

[interview & text:Nobuhiko Yoshimura、photograph:Tadashi Aizawa]

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cat_11_issue_oa-president oa-president_0_157b99312955_「#採用やめよう」で働き手の給与は増えるのか 157b99312955 157b99312955 「#採用やめよう」で働き手の給与は増えるのか oa-president 0

「#採用やめよう」で働き手の給与は増えるのか

2019年9月5日 08:00 PRESIDENT Online

クラウドソーシング大手・ランサーズが今年6月、「#採用やめよう」というキャンペーンを展開し、注目を集めた。このキャンペーンは企業向けのメッセージだが、一方で、働き手にとってフリーランスとして働くことにはどんなメリットがあるのか。秋好陽介社長に聞いた——。

「年収2000万円」のフリーランスもぜんぜんいる

——「採用をやめよう」という刺激的なキャンペーンを始めたのは、どうしてですか。

ランサーズのユーザーであるフリーランスには、社員以上に優秀な方がたくさんいます。たとえば「年収2000万円」といった方もぜんぜんいる。そういう方たちが社会のメインではなく、サブとなってしまうことに、以前から違和感をもっていました。

そして今年5月、フリーランスのユーザーの結婚式に招かれて、あらためて衝撃を受けました。その方は、ライターや講師としてランサーズでもトップクラスで稼いでいるすごいフリーランスなのですが、結婚式にはフリーランスの仲間や、発注者の上場企業の幹部社員など、面識の有無にかかわらず、いろいろな属性の人が出席していたのです。

普通の結婚式なら大学の同級生や会社の上司、同僚が集まるのだと思いますが、まったく違う。集まっている人たちの熱気がすごかった。上場企業の方からは「本当にいい人を紹介いただいて、ありがとう」と言われました。

フリーランスも企業も、お互いにハッピーになれる関係性が確かに存在する。もっとこうした関係を広めたいとあらためて思ったのです。

「正社員を否定するのか」という批判も起きた

——「採用やめよう」というコピーはどこで生まれたのですか。

結婚式に出た後、社内で議論をしました。新しい働き方について、世の中に議論を巻き起こすような広告キャンペーンをしようと、社外からコピーライターも招いて話し合いました。社内からは「もっと丁寧に説明するほうがいいのではないか」という意見もありましたが、最後は「採用やめよう」で意見がまとまりました。

——確かにコピーは刺激的でないと話題にならないとは思います。しかし「正社員を取るな」とも読めるメッセージを、新卒の面接解禁日となる6月1日に日本経済新聞の全面広告で展開したことで、「正社員を否定するのか」という批判も起きました。批判は想定内だったということですか。

全社集会で広告キャンペーンを説明した際、社員からもさまざまな意見が出ました。「今後ランサーズも正社員をとらないのですか」という質問が出たほどです。正社員をとらないというのは誤解です。私たちは正社員を否定しているわけではありません。

ランサーズでは200人の正社員と800人のフリーランスがいっしょに働いています。私の秘書業務はタイ・バンコクにいるフリーランスにも手伝ってもらっています。かつては執行役レベルのチーフ・マーケティング・オフィサー(CMO)もフリーランスでした。

今後も正社員をもちろん採用しますが、基本的にフリーランスでできることはフリーランスにもお任せするのが、ランサーズが求めている働き方です。そういう働き方にアップデートしたいと考えているのです。

——しかし、いい人材を求めている会社ほど、「いい人ならば正社員として採用しよう」と考えて、熱心に動いているのではないでしょうか。

今回の「採用やめよう」というメッセージのポイントは、「正社員だけで人材を確保するという考え方をやめませんか」というものです。

東京でも地方でも人材確保の視野に入っているのは正社員ばかりです。日本の労働人口は現在6600万人。30年後には4400万人まで減少すると予想されています。一方、有効求人倍率は1.6倍と思うように人を採れない状況が続いています。今後、ますます状況は厳しくなりますし、地方ではなおさらでしょう。

社員と同じくらい仕事にコミットしてくれるフリーランスがいる

いつまでも正社員で人材確保し、補助的・補完的な仕事はフリーランスやパートといった考え方では立ち行かなくなります。社員と同じくらい優秀で、社員と同じくらい仕事にコミットしてくれるフリーランスがいるのですから、正社員とフリーランスをバランスよく採用した方がハッピーになれるはずです。政府も兼業、副業を増やそうとしている時代です。

——いい人材がとれないというならば、幹部社員を年収1000万円で採用しようとしているすしチェーン「くら寿司」のように、待遇をグッと引き上げるという手もあるのではないですか。

求人の内容が労働市場の現状とギャップがあるのかもしれません。そのギャップを埋めるための企業努力はもちろん必要です。フリーランスを安く買いたたける相手として考えているような企業は正社員ばかりかフリーランスからも嫌われます。正社員、フリーランスを対等なパートナーとして人材確保する会社が選ばれる時代にならなければなりません。

新しい働き方を考える時に、社外の人材をもっと本気で活用しないと日本の未来は危うい。米国はフリーランスに重要な仕事を発注するのは当たり前です。日本企業も自社が得意でない仕事は社外人材に任せ、自ら得意な仕事に邁進(まいしん)するようになるべきです。

非正規から抜け出せず、生活が厳しい人もいるが?

——そうなればいいのですが、非正規社員問題のようになりませんか。非正規社員は20年ほど前から増えました。当時は自分に合った働き方を自由に選択できるというメリットが強調されましたが、振り返ってみると、非正規から抜け出せず、厳しい生活を強いられている人が増えました。

フリーランスの報酬は適正な単価でないと持続性はありません。ランサーズでは以前は市場価格がわからず、意図せず低い金額で発注してしまうクライアントもいましたが、現在はクライアントの企業からの依頼内容をAI(人工知能)で分析し、適正単価でマッチングされるような仕組みを取り入れています。その結果、この1、2年は単価に関しても多くのフリーランスの方に満足いただいています。仕事のジャンルも変わってきており、マーケティングやコンサルティングなど付加価値の高い業務が増えています。

ランサーズが実施している「フリーランス実態調査」によると、2015年以降増えてきたフリーランス人口は、18年から19年にかけては約1100万人で横ばいでした。これは新しくフリーランスになる人が増えている一方、正社員になる人も同様に増えているためです。つまり正社員とフリーランスを行ったり来たりする人が増えているのではないかとポジティブに受け止めています。

各人が自分らしくやりたいことをやれる選択肢があることが大切です。私は正社員から自己実現のためにフリーランスになることだけでなくて、フリーランスからから正社員になることもいいことだと思っています。

柔軟な生活ができると満足感をもつ人も多い

——フリーランスと言っても一括(くく)りにできません。正社員で働きながら副業として働いている人や定年や出産でやりたい仕事を余暇にするというフリーランスはそれでいいかもしれません。コンサルタントや弁護士のような高い技能を持ったフリーランスも心配は少ないでしょう。一方、現状ではフリーランスの仕事だけで生きていくというのは大変です。正社員になりたくてもなれないという人も多いはずです。年金・社会保険料の支払いなどに不安をもっていないフリーランスは一握りではないでしょうか。

フリーランスにもいろいろな形があります。実態調査によると、自分で自由に働け、柔軟な生活ができるという満足感を持っている人も多くいます。私自身も大学生だった時に大阪でフリーランスとして働き、「自分が求められている」と実感できました。それは働くことの大きなモチベーションになりました。

もちろん課題もあります。フリーランスは労働時間の多くを経理や税務申告など本業以外に費やしています。ランサーズではそうした煩雑な事務作業をワンコインでサポートする「フリーランス・ベーシックス」というサービスを提供しています。

——事務的なサポートにとどまらず、社会保険や年金に関するサポートも必要ではないでしょうか。いま世界各地で配車サービス大手Uberに対する反対運動が起きています。その訴えは「フリーランサーを労働者として認め、プラットフォーマーが社会保険などを負担すべきだ」というものです。ランサーズの取り組みはいかがでしょうか。

年金については話し合ったことはありませんが、現在保険や教育等の一部のサービスを行っております。社会保険制度についてはランサーズ1社で対応するのは難しいと思います。業界団体などで考えなくてはいけない課題だと思います。

フリーランスの多くは正社員を望まない人たち

——政府は副業、兼業を増やそうとしています。その際、正社員を前提にした社会保険や年金の制度も含めて変えていく必要があるはずです。正社員を前提にした制度のままフリーランスが増えると、フリーランスという働き方を選んだ人たちが不利益を被る恐れはありませんか。

正社員とフリーランスとを分断した考えではなく、新しい働き方を前提にした新しい制度を作ったほうが良いのではないでしょうか。

フリーランスの多くは正社員を望まずにフリーランスになった人たちだと思います。正社員レベルの福利厚生はなく、その分、責任は生じますが、自由に働ける。そんな働き方を選んだ人たちです。責任と自由のバランスをどのように保つかを議論しなければならないと思います。

政府が推進すべき取り組みとも連携し、その一方でランサーズも草の根の活動として、働き方のアップデートに取り組みたいと思います。

[ランサーズ社長 秋好 陽介 聞き手・構成=経済ジャーナリスト・安井 孝之]

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消費税増税前に買っておいた方がいいモノとは

2019年9月5日 08:00 PRESIDENT Online

消費税の増税に備えて知っておくべきことは?

これまで8%だった消費税が、2019年10月1日から10%に引き上げられる見通しに。それと並行して、政府はさまざまな施策を打ち出しています。私たちの消費生活に深く関わることばかりなので、必ず内容を理解する必要があります。そこで、今回は各種施策の概要を紹介しましょう。

現段階で予定されるのは「軽減税率の導入」「保育・幼児教育の無償化」「キャッシュレス決済時のポイント還元」「自動車税の変更」「住宅購入時の減税・補助制度の拡充」です。まず「軽減税率」は、酒類や外食などを除いた飲食料品と週2回以上発行される新聞にかかる消費税率を、現行の8%のまま据え置くことを指します。

「保育・幼児教育の無償化」は、子どもの保育料が無償になったり、補助金が出たりする制度です。子どもの年齢や、共働きかそうでないか、などで適用条件は変わりますが、たとえばシングルや共働き世帯は、所得にかかわらず3~5歳の子どもの幼稚園、保育所、認定こども園の費用が原則無償になります(0~2歳児は、住民税非課税世帯のみ無償)。

「キャッシュレス決済時のポイント還元」は、買い物のときにクレジットカードや電子マネーなど、現金以外の手段で決済した場合、2~5%の還元が受けられるというもの。期間は19年10月~20年の東京オリンピック前とされています。

「自動車税の変更」は、19年10月から従来の「自動車取得税」が廃止され、「環境性能割」という新たな税制が導入されることを指します。環境性能割では、名前のとおり、環境に優しい車の税金が優遇されます。よって、エコカーなら消費税の増税後に買っても、環境性能割のおかげでそれほど税負担が重くならずに済む可能性があります。逆に、欲しい車の燃費が悪い場合、消費税が増えるうえに環境性能割の恩恵も受けられないので、増税前に買ったほうがベターでしょう。

最後に「住宅購入時の減税・補助制度の拡充」ですが、具体的には「住宅ローン減税」の期間の延長(10年⇒13年)、条件を満たす住宅購入者に現金が支給される「すまい給付金」の制度拡充(支給額が最大30万円⇒50万円、対象者も拡充)、「住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置」の拡充も予定されています。

増税前の駆け込みで散財しないように!

増税と連動して予定される新制度を駆け足で紹介しました。どれも、一見消費者に有利な内容に見えますし、特に軽減税率は、食料品を買う分には増税の影響はないということなので、ありがたく感じられるかもしれません。

ただ、軽減税率、それにポイント還元制度もそうですが、内容が複雑で、判断・対応するためのコストが膨れ上がると予想され、本当に社会のためになる施策とは言い難いでしょう。また、保育・幼児教育の無償化も、それ以前に預けたい人が必ず預けられる環境整備のほうが急務であり、ピントがずれているように感じられます。

増税前に買うべきもの&買わなくていいものリスト

ただ、何かと問題はあるにせよ、決まってしまったからには、うまく対応するしかありません。

まず気を付けたいのは、増税前に見られがちな駆け込み消費に踊らされないこと。増税前に買ったほうがいいもの、買わなくていいものをまとめたので、参考にしてみてください。

また、現金決済派だった人はキャッシュレス生活を始める好機。VISAなどの国際ブランド付きプリペイドカードやデビットカードなどは、使いすぎ予防になるので初心者向き。ぜひ検討してみてください。


[1級ファイナンシャル・プランニング技能士 風呂内 亜矢 構成=元山夏香 写真=iStock.com]

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「すべてデパート」の医師妻が我慢を始めたワケ

2019年9月5日 08:00 PRESIDENT Online

山下さんは4人家族。夫は外科医。妻は専業主婦で、買い物はすべてデパート派。ファストファッションを買ったこともなかった。だが不慮の事故で夫の月収が92万円から63万円に激減。さらに都内の私大に通うことになった長女への仕送りが毎月22万円。赤字転落した家計を立て直す方法とは——。

自動車事故の後遺症で医師の夫の手取り月給が92万円から63万円に

「夫の自動車事故と、長女の大学進学が重なって、家計が一挙に苦しくなりました」

わざわざ北海道から東京の私のオフィスに相談にいらした山下由美さん(仮名・47歳)。来年には次女の大学進学も控え、このままでは赤字が悪化して、せっかく貯めた貯金(1150万円)がなくなってしまうのではと、不安になったそうです。

山下家は、勤務医である夫の稔さん(仮名・51歳)と由美さん、大学1年生の麻衣さん(仮名・19歳)と、高校3年生の芽衣さん(仮名・18歳)の4人家族。

稔さんはベテランの外科医として、これまで多くの難手術を手掛けてきました。ところが、今年の1月、車で外出中に追突事故に遭い、入院。懸命なリハビリを続けたものの、利き腕の右手にしびれと痛みが残り、手術を行うことが難しくなってきました。病院の勤務には復帰したものの、以前は約92万円あった手取り月収が、4月以降、約63万円に減ってしまいました。ボーナスも手取りで年300万程度ありましたが、減額必至です。

さらに、長女の麻衣さんの大学進学で、家計的に大きな誤算がありました。麻衣さんは地元の国立大学が第一志望でしたが、結果的には東京の私立大学に進学することになったのです。東京での家賃や生活費は両親にとって想定外でした。

「100万円を超える学費(年間)はボーナスを充てて何とかしのぎますが、それとは別に家賃と生活費を合わせて毎月20万円仕送りしています。ちょうど夫の給料が毎月30万円も少なくなったところに、この20万円の出費。ダブルパンチでたちまち毎月の家計の赤字は23万円という火の車状態です」(由美さん)

私大へ進学した長女のための仕送り月20万円+αも痛い

麻衣さんのほうも大都会・東京での初めてのひとり暮らしで浪費しがちです。毎月、仕送りの追加要求が2万~3万円あり、5月の大型連休ではホームシックで帰省し、往復の飛行機代などイレギュラーな支出もありました。加えて、次女の芽衣さんも来年の大学受験を控え、予備校代、模試代も増えてきました。そして稔さんは思うように仕事ができないストレスからか、お酒の量が増えました。

「このままでは毎月の赤字をボーナスでも補塡(ほてん)できなくなるかもしれないし、貯金にも手をつけることになると思うと、もう、心配で心配で」と、由美さんは精神的にかなり追い込まれた状態です。

毎月安定した高収入を得ていても、予期せぬ事故などで収入が激減し、赤字になってしまうことは、あまり多いケースではないとはいえ、誰にでも起こり得ることです。また、子どもの進路も親の期待どおりにはなかなかいかないもの。

由美さんは「東京で私立大学に通わせる親の経済的負担の大きさ」をこぼしたい気持ちをぐっと我慢にして、子どもの決めた道を応援しようと心に決めました。

ただ、そうはいっても、毎月23万円の赤字が続いているのは、危機的な状況であることに変わりありません。由美さんは長い間家計簿をつけていたそうですので、家計簿を拝見しながら、対策を考えていくことにしました。

「月23万円の赤字」を放置したヤバすぎる家計のすべて

由美さんは長年、雑誌の付録の家計簿を愛用し、「日記も兼ねて」ほぼ毎日家計簿をつけているそうです。几帳面に細かく記入、集計するのがモットーで、ページを開くと、「食パン6枚切り・218円」「ヨーグルト・特売138円×5個」など、買ったもの一つひとつの金額、個数、特売情報などを詳細に記入した、「文字で埋め尽くされた家計簿」でした。

ですが詳細に記入してある割には、家計管理にはあまり生かされていないようです。

稔さんの収入が毎月100万円近くあった1年前の家計簿と比較すると、食費、日用品費、通信費、被服費、交際費、嗜好品代などの支出額が、ほとんど変わっていませんでした。麻衣さんは東京で生活し、現在は家族3人なので、これはやや使い過ぎでしょう。

収入激減にもかかわらず、食料はすべてデパートで購入

私は家計簿の活用法や買い物の仕方など、由美さんから詳しく話を聞いて、具体的な改善点を探っていきました。

まずわかったことは、家計簿は「つけるだけ」になっているということ。細かいところまできっちりしたい性格なので、詳細に記入するものの、その内容を吟味したり、振り返ったりすることはほとんどなく、集計が合えばそれで満足していたそうです。

そのため、以前と同じようにお金を使い、赤字になってしまっても、どの費目をどのように減らしていけばいいのかが、まったくわからないといいます。

家計簿は記入や集計にどんなに労力をかけても、「つけるだけ」では家計の改善に役立てることはできません。「何にいくら使っているのか」をつかみ、買ったものが「そのときに必要だったか」「必要以上に買いすぎていないか」「この値段でよかったか」を振り返り、「欲しいだけで買ったもの」「たくさん買いすぎたもの」「高いなあと思ったもの」を、次から減らしていくことが大切です。こうして、買うものに優先順位をつける目的で家計簿を見直すと、さまざまな発見があるはずです。

由美さんにもこうした視点で家計簿を見直してもらいました。

すると、詳細に記入していたおかげで、「このヨーグルトは特売につられて家にあるのに買ってしまった。今度からは安くてもあるものは買わないようにしますね」など、振り返りが順調に進んでいきました。

そして、買ったものだけでなく、「買っているお店」にも「家計費がかかる理由」があることに気づきました。由美さんは自宅の近所にあるから、「カードのポイント還元率が高いから」といった理由で、食材も、洋服も、日用品もデパートで買っていたのです。

なんと月19万円の支出カットに成功した

スーパー、ドラッグストア、ファストファッションはもちろん、いまはメルカリなどでも安くていいものが買えることをお伝えし、さっそく利用してもらうことにしました。それにより、食費は当初月13万8000円のところを9万円に、また生活日用品を月3万8000円から1万4000円に減額することができました。

通信費は「つながりにくいのでは?」という先入観を捨てて、スマホの契約をキャリアから格安SIMに変更したり(4台で月3万2000円→1万6000円)、小さいときから通っていたものの、受験で続ける時間がなくなった次女のピアノ教室を一時お休みしたり(教育費月4万2000円→3万4000円)、ほとんど乗っていない2台目の車を処分したり(車関係費2万8000円→1万8000円)と、いままで「あたりまえ」と思って続けていたことも、一つひとつ見直してもらいました。

また、食費は月単位の予算では全体像がつかみにくいことから、「週予算」での管理でやってみることにしました。こうした由美さんのチャレンジも含めた改善案を持ち帰ってもらい、家族みんなで「山下家の家計」について、話し合ってもらうことにしました。

長女も家庭教師のバイトを始め、仕送り代が4万円減

1カ月後、由美さんからメールをいただきました。

山下家の初の「家族マネー会議」は、最初はぎこちなかったそうですが、実際の家計簿の数字を見てもらい、たたただ節約ということではなく、「必要じゃないと思う出費を、みんなそれぞれに減らすようにしてみない?」と話したところ、稔さんが「ワインを毎月買うのをやめて、ワインセラーにあるものを大事に飲むことにするよ」と口火を切ってくれました。

すると「スカイプ」で東京から家庭会議に参加していた麻衣さんはバイトを始めると宣言し(月4万円の家庭教師のバイト代分、仕送り代を減額)、芽衣さんはピアノ教室の中止を納得したうえで、「ママがいろいろ買いすぎないよう、私が冷蔵庫と納戸の中をチェックするね」と、メンター役を買って出てくれました。

その結果、毎月23万円だった赤字が、約4万3000円にまで削減できるめどが立ちました。まだ毎月は赤字ですが、年間では大きく改善できることになります。

「黒字」を目指して頑張りすぎると、リバウンドする

一気に「黒字」を目指して頑張りすぎると、リバウンドしてしまいます。できることから始めていくことが大切ですし、山下家の場合、家族で話し合うことで、みんなが自分の問題として家計改善に取り組むようになりました。これは今後のさらなる改善に向けて大きな力になると思います。

「芽衣が社会人になるまでのあと5年、みんなで意識して取り組んでいけば、乗り越えられそうな気がしてきました」と、由美さんも前向きな気持ちになったようです。

山下家の場合は、夫の事故というタイミングが重なってしまいましたが、地方に住む親にとって、子どもへの仕送りは大きな負担になるものです。教育費はコントロールが難しい費目ですので、「どうしてもお金がかかる時期」には「貯金」をいったん脇に置いて、多少の赤字は覚悟しつつ「収支トントンの家計」を目指してもいいのではないでしょうか。

長い人生にはこうした「谷」の時期もあるもの。そのなかでどれだけ具体的な手を打てるかが、「強い家計」の指標になるのだと思います。

何をいくら削ったのか【コストカット額ランキング】

1位 -4万8000円 食費

家族の人数が4人から3人になったことを意識して、毎週の予算内でやりくりするようにした。買い物する場所をデパートからスーパーに変更

2位 -4万円 長女仕送り

毎月追加の仕送りはしないことに。長女が家庭教師のアルバイトも始めた

3位 -2万4000円 生活日用品

ドラッグストアで1カ月分だけ買い物。シャンプーなどのブランドも見直した

4位 -1万6000円 通信費

4台のスマホをすべて格安SIMに変更

5位 -1万4500円 嗜好品

ワインセラーに寝かせているワインをまずは大事に飲み切ることに

6位 -1万2000円 被服費

デパートでの購入を減らし、ファストファッションも取り入れた

7位 -1万円 車関係費

ほとんど乗らなくなった1台を売却し、保険料、ガソリン代を削減

8位 -8000円 教育費

大学受験の勉強のため通えなくなった、次女のピアノレッスンを中止

8位 -8000円 交際費

夫の付き合いゴルフ、妻のランチ会をぞれぞれ月1回ずつ減らすことに

10位 -6000円 理・美容費

インターネット予約割引などを活用

[家計再生コンサルタント、株式会社マイエフピー代表 横山 光昭]

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