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石原さとみ結婚で注目「創価学会員の入籍日が年3回に集中する理由」

2020年10月15日 08:00 PRESIDENT Online

創価学会にはさまざまな「記念日」がある。中でも特に重要視されている記念日が年3回あり、多くの創価学会員は、その日に合わせて入籍するという。女優の石原さとみさんの結婚で注目を集めている「創価学会員の結婚事情」とは――。

結婚報告の翌日も「記念日」だった

10月1日、女優の石原さとみが一般男性と年内に結婚することを発表した。

石原さとみはこれまでSHOWROOM社長の前田裕二や、2019年9月にジャニーズ事務所の副社長に就任した滝沢秀明との交際報道があった。恋愛遍歴を考えると一般男性との結婚報道に驚いた人も少なくないだろう。

一方で、石原さとみは創価学園の卒業生である。創価学園とは東京の小平と大阪の交野にある小中高の一貫校で、面接試験の際に創立者である池田大作のどこを尊敬しているのかを答えさせるなど、宗教色の強い教育機関だ。

また、創価学園の卒業生によると創価学園のなかには仏間として利用されている大きな建物があり、そこで生徒が「勤行(ごんぎょう)」や「唱題(しょうだい)」など創価学会における宗教行為ができるスペースになっている。

これは創価大学が一般入試に合格すれば通える学校であるのとは大きく異なる。創価学園に通っていた石原さとみは、おそらく面接試験で池田大作のどこを尊敬しているかについて答えたはずだ。

10月1日配信のNEWSポストセブン「石原さとみ結婚へ『このタイミングでの発表』に物議」では、10月1日は創価学会の記念日である10月2日の「世界平和の日」に近いため、「“10月2日の、創価学会の『世界平和の日』に合わせたのではないか”という声もあるのです」というキー局ディレクターの声を報じている。

創価学会において重要な記念日は3つある。そして、その3つの記念日のなかに報道にあった10月2日の世界平和の日は含まれていない。もし石原さとみが年内に入籍するならば、11月18日の創立記念日になるのではないかと筆者は考えている。

創価学会の「記念日」は具体的にどのような理由で定められたものなのか。「記念日」は創価学会員にとってどのような位置づけなのか。これらについて複数の創価学会員に聞き取りを行った。本稿はそれらをもとに筆者が考察を加えたものである。

特に重視されている3大記念日がある

まず、基本的な記念日を確認したい。創価学会の公式サイトであるSOKAnetの「年間の活動」というページのなかに「記念行事」という項目があり、そこには全部で9つの記念日が紹介されている。そのなかでも創価学会員に重視されているのが3月16日・5月3日・11月18日の3つだ。

3月16日は創価学会において「広宣流布記念の日」と呼ばれており、第2代会長である戸田城聖が当時の青年部に対して創価学会の活動を託した日であるとされている。

「青年部」というのは20代~30代の男性からなる「男子部」と、未婚の20代~30代の女性からなる「女子部」を統合した組織である。1958年の3月16日、戸田城聖が亡くなる約2週間前に日蓮正宗の総本山である富士大石寺において「広宣流布の模擬試験」という位置づけで記念の式典が執り行われた。

「広宣流布」というのはSOKAnetによると「仏法が説く生命尊厳の思想を根本に、人類の幸福と社会の繁栄、世界平和の実現を目指す運動のことです」とされている。これは創価学会のメインスローガンであり、さまざまな活動の目的となっている。

1958年3月16日の式典には、全国の青年部、約6000名が集まり戸田城聖から直接の薫陶を受けたという。この式典には当時の総理大臣である岸信介が招待されていたが、参加が急遽取りやめになってしまい、このとき代わりに出席したのが岸信介の娘婿であり前総理大臣である安倍晋三の父、安倍晋太郎であった。

たくさんの記念日には共通点がある

そのほかにも5月3日は戸田城聖と池田大作が会長に就任した日であり、11月18日は創価学会の創立記念日であるとともに初代会長牧口常三郎の命日でもある。また、「記念行事」の項目にはないものの、1月2日は池田大作の誕生日であることから実質的に記念日として扱われているなど、創価学会にはさまざまな記念日が存在している。

これらの記念日に共通しているのが、初代から三代までの会長に関連する出来事やその功績を淵源(えんげん)としているということだ。例えば「記念行事」として扱われている他の記念日は、戸田城聖の命日である4月2日や、池田大作の入信日である8月24日、戸田城聖が「原水爆禁止宣言」を発表した9月8日など、初代から三代までの会長が創価学会や社会に対して大きな影響を与えたとされる日を記念日として定めている。

先ほど、石原さとみの入籍日は10月2日ではなく11月18日になる可能性が高いと述べたが、それは10月2日よりも11月18日のほうが記念日として重要であるからだ。

10月2日は池田大作が初の海外布教に旅立った日だが、もちろんより重要なのは創立記念日のほうだ。このため10月2日を入籍日にしている創価学会員の夫婦はほとんどいないようである。

学会員は常に記念日を意識して生活している

また、創価学会員はこうした記念日を人生の“軸”として捉えていることが多い。今回の石原さとみについての報道は、「結婚」と記念日との関係性に注目したものだったが、記念日と創価学会員の関係性はそれだけではない。

例えば、仕事における具体的な目標を特定の記念日までに達成すると決意することや、勧誘している友人が入会する日を記念日に合わせるなど、記念日というものを強く意識しながら創価学会員は日々の生活を営んでいる。

これは記念日というものが一年のスケジュールにおいてある種の“軸”として創価学会内で機能していると言えるだろう。

他にもメインの記念日である3月16日・5月3日・11月18日を記念して、新入会者が参加する大規模なセレモニーが各地域にある創価学会の会館で開催されている。創価学会員はこのセレモニーに向けて友人や同僚に対する勧誘、いわゆる「折伏(しゃくぶく)」に力を入れていく。

その他の記念日に合わせてセレモニーが開催されることもあるようで、このような年に複数回ある記念日を目指して創価学会員は勧誘活動を活発に行っている。

創価学会員は多数の記念日を人生の“軸”として意識しながら生活している。ライフステージの変化や社会での成功と記念日を関連させることで、信仰生活を豊かなものにしていると考えられる。

つまり多くの創価学会員がそうしているように、石原さとみが創価学会員であれば、結婚という自身にとって重要な出来事を、人生の“軸”である記念日と結びつけている可能性は高いといえる。

(文中敬称略)

[ライター 片山 一樹]

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知的障害疑いの42歳資産家令嬢に900万貢がせた「初彼氏」をどう遠ざけるか

2020年10月15日 08:00 PRESIDENT Online

都内在住で知的障害の疑いがある42歳独身女性はネットで出会った「山陰地方に住むバツイチ男」に約900万円を貢いだ。女性の老親はマンション1棟を所有する資産家で貯蓄は1億円超、年収は年金以外に1000万円超。男はさらに1500万円の生前贈与を狙っているようだ。そこでファイナンシャルプランナーが諭したアドバイスとは――。

「貯蓄1億円超」資産家の40代の次女が貢いだ900万円

今回の相談者は、都内に一棟建てのマンションを所有する高齢の資産家の家族。マンションの家賃収入で、現役時代も、年金生活になってからも、家族の生活費を十分にまかなってきた。

生活費の問題はこの先もない。そう思われたが、この家族には40代の2人の娘がいる。2人とも外出は可能だが、現時点で就労していない。この先も就労する可能性は低いだろうと、親は考えている。

長女のAさん(47歳)は、高校を卒業後は家事手伝いをするくらいで、外で働いた経験はない。アルバイトの経験もないという。

次女のBさん(42歳)は1年くらい前まで、一般企業で働いていたとのこと。実はBさんには知的障害の疑いがあるのだが、診断は受けていない。高校を卒業して就職してからは、社員30人以下の小さい会社ではあるものの、普通の会社員として働いてきた。

Bさんは仕事でミスを起こすことが多く、ミスの多さからか、社内で嫌がらせを受けることも少なくなかったよう。数年前からはときどき、「会社に行きたくない」と言うようになり、1年くらい前からは、うつ病のような状態に。無断欠勤を続けた後、復職できぬまま、退職した。

Bさんは自宅と会社を往復する日々だったこともあり、給料は多くなかったが、退職時点ではコツコツ貯めた貯蓄が900万円ほどあった。ところが、現在、Bさんの手元には10万円ちょっとしかない。

これほど早く、貯蓄が減った理由。それはBさんの近くにいる「男性」が関係していることは明白だった。

高齢の親はマンション1棟所有、賃料収入は年1000万円以上

【家族構成】
父親 80歳
母親 75歳
長女(Aさん)47歳
次女(Bさん)42歳


【家計・資産状況】
貯蓄
約1億3500万円
このほかに、娘たちへの生前贈与分が2人分で3000万円くらいある
収入
父親:年金収入 120万円、賃貸収入 年1100万円
母親:年金収入 100万円、賃貸管理 年200万円
長女、次女とも収入は0円
支出
家族4人で年間600万円程度

※長女、次女の国民年金保険料は、次女が働いていた時期を除くと、親が払っている。現在は、生活費やおこづかいとして、ふたりに月5万円ずつを渡している。

知的障害の疑いのある42歳次女が「初めての彼」にのめり込む

今回、相談者の母親(75歳)が頭を悩ませているのは次女のBさん。

前述の通り、1年前に会社員を辞めた時点で、Bさんにはコツコツ貯めた貯蓄があった。その貯蓄が10万円にまで減ったのは、Bさんが「付き合っているという彼氏」に原因がある。

Bさんの彼氏は、年下の30代後半。遠く離れた山陰地方に住んでいて、離婚経験がある。前妻との間には子供はいない。Bさんはそう両親にカミングアウトした。

その彼氏とBさんは、ネット上で知り合ったらしい。Bさんにとっては、40代でできた初めての彼氏で、気持ちが完全に舞い上がっている。母親の目にはそう映っていた。現在は数カ月に一度の割合で、彼氏の居住地に足を運んで、2人の時間を楽しんでいるそうである。

母親が気づいたときには、900万円が消えていた

本当に2人が好き合っているのであれば、親としては、離婚歴がある人でも受け入れたかもしれないという。

だが、母親が気づいたときには、900万円あったはずの次女の貯蓄は底を突いていた。手元に残った10万円は、親が渡したおこづかいの残りである。

900万円の使いみちはよくわからないが、「仕事で急に資金が必要になった」とか、「知り合いがケガをして、現金が必要になった」、「免停になったので、もう一度、免許を取らなくてはならない。申し訳ないけど、免許取得費用を貸してほしい」など、どれも疑いたくなるような理由を次々と述べたという。

貯蓄が底を突いてからは、「生前贈与でもらったお金を、私が使えるようにしてほしい」という次女からの無心がはじまった。

本来の贈与では、贈与したお金は贈与された側が管理すべきだが、知的障害の疑いがあることなどから、贈与したお金は親が管理を続けている。母親が「このお金は、あなたの将来の生活費だから、今は渡せない」というと、今まで見たことがないくらいBさんは激高したという。

Bさんは今、彼氏が住む場所で暮らすために、免許の取得を考えている。その費用を自分名義の貯金(親からの生前贈与分)から引き出してほしいと懇願されているが、渡すべきか、母親は悩んでいる。

「山陰地方のバツイチ男」が本当に独身なのかは、確認できていない

相談者は資産家で、金銭面では不安など感じられない家庭だが、母親は、次女が彼氏に騙されているのではないか、心配でならないことからと相談にきた。

ファイナンシャルプランナーである筆者が「娘さんは、彼氏の家に行ったり、ご親族に会ったりしていますか?」と聞くと、「家の近くまでは行っているらしいのですが、住んでいるはずの実家には一度も呼んでもらったことがなく、宿泊先のホテルで会っているようです」という。

「彼氏には離婚歴があるとのことですが、もしかしたら現在も結婚しているということはありませんか?」と聞くと、母親は黙り込んでしまいました。

「娘さんは結婚詐欺に巻き込まれている可能性がありますね。私はひきこもりのお子さんが、結婚詐欺に巻き込まれたケースを何例か見てきており、それらのケースと似ています。もし結婚詐欺だとしたら、お金を巻き上げられるだけ巻き上げて、いきなり連絡がつかなくなるかもしれません」

こうした私の話を聞いて、母親はますます寡黙になりました。そこで、このように提案しました。

「彼氏に会うことを止めると、逆効果といいますか、周囲に反対されることで、娘さんは意固地になってしまうかもしれません。反対されると気持ちが盛り上がったり、駆け落ちをしたいと言われたりする可能性も出てきます。それなら逆に、彼氏を東京に呼ぶことを提案してみてはいかがでしょうか。たとえば、皆さんがお住まいの家の近くに彼氏が住む部屋を借りるから、そこに住んではどうかと提案してみるんです。もちろん、現在の居住地で仕事をしているはずですから、すぐに引っ越しはできないと思いますが、まずは東京に住む提案をして、相手の反応を見てはいかがですか」

「そのうちね」といって、親に会おうとしない男

それから数カ月後。母親から再び相談を受けました。

Bさんと彼氏のその後の様子をうかがうと、次女を通して、東京に来るように何度も誘っているけれど、「そのうちね」といって、かわされたままだそうです。

次女が連絡を取ろうとしても、3回に1回程度しか、電話に出てくれなかったり、LINEの返事もなかなか返ってこなかったり。

親としては、このまま連絡がつかなくなってくれたほうが良いと思っているが、元気のない次女の様子を見ていると、今のまま、放っておくこともできず、悩みすぎて抜け毛が多くなったと、苦笑いする母親。

そこまで聞いて、筆者はこう母親に言いました。

「あくまでも個人的な意見ですが、先方の居住地に行っても実家には入れてもらえず、東京に来ることを勧めても、話をはぐらかされるだけであれば、ゴールが結婚になるとは思えません。それでも万が一、結婚することになったら、今度はお母様たちに対して、お金の無心をはじめるかもしれませんよね。他人から900万円ものお金を受け取っても平気でお金の無心を続けるのは、普通の神経ではないですから、もしかしたら結婚したのちにすぐに離婚を言い出し、手切れ金をよこせという話になる可能性もあります」

母親は「結婚は認めたくないけれど、次女が望むなら、仕方がないかも」と思っていたが、今度は自分たちがお金の無心をされる可能性があることや、そもそも次女は働けないため、生活費を丸抱えする可能性も考えると、結婚にOKを出すことは無理だと決めた。

この母親の決断を受け、アドバイスした。

「事態を動かしたいのなら、次回、娘さんが彼氏の住む場所に行かれるときは、お母様も同席されてはいかがでしょうか。親が出てくることを聞いた彼が、及び腰になったり、連絡がなかなかつかなくなったりして、そのうち自然消滅していくのではないでしょうか」

ひきこもりの子供が結婚詐欺で大金を失う事例が増加

今回の相談は、ふだんアドバイスをしているひきこもりの子供がいる家庭の家計サバイバルプランとは、かなり趣が異なる。

ただ、前述したように筆者はひきこもりの子供が結婚詐欺と思われる被害に遭って、何千万円もの預金を失った事例をいくつか見てきている。

何千万円も失ってしまったひきこもりの子供たちは、親亡き後、生活保護の受給しか生活を成り立たせる手段がなくなった。お金の問題だけではなく、詐欺に遭ったひきこもりの子供は40代前後。明らかに中年世代だが、精神的なダメージが大きすぎて、それまで外出ができていたのに、ほとんどのケースで家から出られなくなっている。中には自殺をしようとする子供も出てしまい、今でもその子供の様子が心配でたまらない。

今回のケースでも、娘さんががんばって貯めた900万円を失ってしまったのは、残念でならない。だが、この先、お金を渡さずに済めば、次女が親亡き後を暮らしていくサバイバルプランは十分に成り立つ。

まだまだ予断を許さないが、相談に来ることで、気持ちを奮い立たせたいという母親とは、今後も進捗状況を確認しながら、次女がお金を渡さないで済む方法を一緒に検討していきたいと考えている。

[ファイナンシャルプランナー 畠中 雅子]

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ラーメン愛好家を虜にした家系の名門「六角家」が皮肉な破産を迎えたワケ

2020年10月15日 08:00 PRESIDENT Online

「『六角家』の倒産は、家系ラーメンの一つの時代が終わったといえるぐらい象徴的な出来事です。かつて『吉村家』『本牧家』と並び『家系御三家』とまで呼ばれた名門もついに。あのとんこつ感と醤油感が絶妙のバランスを保っていたラーメンがもう二度と食べられないのかと思うと……巨星墜つ。そんな気持ちです」

こうガックリと肩を落とすのは、食ジャーナリストの小林孝充氏だ。2020年9月4日、ラーメン愛好家たちの間に衝撃が走った。90年代、家系ラーメンの「代名詞」とまで呼ばれ、一世を風靡した老舗の名店「六角家」が、横浜地裁より破産手続き開始決定を受けていると報じられたのだ。

家系ラーメンの「御三家」といえばここ!

家系ラーメンといえば、太麺に豚骨ベースの濃厚な醤油スープを合わせるのが特徴だ。トッピングには海苔3枚、ほうれん草、チャーシューをのせるのが基本的なスタイル。もともとは神奈川限定の「ご当地ラーメン」だったが、90年代にブームが起こって以降、全国に広まり、「札幌ラーメン」「博多ラーメン」に次ぐ人気を誇っている。「家系ラーメン」と筆文字で書かれた大きな看板と赤いカウンターの店を見たことがある人も多いだろう。

その家系ラーメンの業界で“御三家”と呼ばれ、ファンの間で人気だったのが「六角家」だった。

「『六角家』は、家系ラーメンの創始者である吉村実氏の元で修業していた神藤隆氏が、1988年に独立して横浜市神奈川区六角橋で始めたお店です。本家の『吉村家』に比べ、『六角家』は豚骨の主張が更に強いと評判になり、本家に劣らぬ人気を誇りました。1994年には新横浜駅近くに誕生した『新横浜ラーメン博物館』に開館当初から“横浜代表”として出店されました。当時、まだ食をテーマにしたアミューズメント施設は珍しかったため、若者を中心に多くの人が集まり、『六角家』の名前は一躍全国区になりました」(ラーメン評論家・山本剛志氏)

それほどの超有名店がなぜ今回倒産したのか。皮肉なことに、その原因は「六角家」がそれまで横浜のご当地ラーメンに過ぎなかった家系ラーメンを全国区にしたことにあった。

「『六角家』の新横浜ラーメン博物館への出店などで、家系ラーメンが全国的な認知度を獲得しました。『家系』という言葉が横浜のご当地ラーメンを意味する用語の総称へと完全に変わった2010年頃から、家系ラーメンの人気に商機を見出した大手飲食企業が、この業界に参入し始めたのです。そういった店は“資本系”と呼ばれ、アクセスが良好な駅前への出店に軸足を置いたチェーン展開で急速にファンの支持を拡大していきました。『横浜家系ラーメン 町田商店』、『横浜家系ラーメン 壱角家』などは資本系の代表的な存在です。

ラーメンは看板ではなく、味がすべて

『吉村家』や『六角家』は厳しい徒弟制度をとっており、厳しい修業の末、熟練した“ラーメン職人”が親方から技術を継承することで、店の味を守ってきた。一方、資本系はスープや具材をセントラルキッチンで作り、各店に配送する方式を取りました。マニュアルさえきっちり守れば、誰でも『店の味』を再現できるようにしたことで、熟練した職人がいなくても家系ラーメンを提供することに成功したのです」(ラーメン探究家・田中一明氏)

家系ラーメンの古くからのファンには、「吉村家」「六角家」といった店が提供する、職人たちのこだわりのラーメンのみを「家系」であると考え、資本系のラーメンは家系と認めない者もいるという。しかし、家系の歴史を知らない多くの消費者にとっては、ラーメンは「看板ではなく、味がすべて」(田中氏)。資本系の“大躍進”により「家系ラーメン業界」内での競争が激化していくと、段々「六角家」はかつての勢いを失っていった。

「職人の味には到底かなわない。資本系の味は画一的で“亜流”だと呼ぶマニアも昔は多かったのですが、度重なる商品開発と改良の結果、現在は資本系のなかでも、幅広いファンを集めるほどの人気店がいくつもでてきました。そうなるといやが応でも競争は激化します。『六角家』もかつてない競争の波にさらされることになりました。ただし、『六角家』が手をこまぬいていたわけではありません。90年にはセブンイレブンと組んで『六角家』の名を冠したカップ麺の販売にもいち早く乗り出し、その知名度を武器に全国に系列店を広げました。

しかし、幸か不幸か、本店で修業した弟子たちが全国各地に散らばってしまうことで、六角家本店自体に安定した技術を持つ人材がいなくなってしまったのです。それでも店長の神藤氏が健在の間はなんとか客もついていましたが、2015年ごろには店内で職人同士の怒号が飛ぶこともあり、店の雰囲気や接客の悪さを指摘する口コミも増えました。同年には消費税の滞納が理由で、神藤さんの自宅が財務省に担保にとられるなど経営悪化が囁かれ始めた。そしてその2年後、とうとう神藤さんが体調不良で厨房に立つことができなくなったのが決定打となって、六角家の本店が閉店したのです」(前出・山本氏)

それでも、いつか神藤氏は帰ってくる。家系ラーメンの伝説である「六角家の味」が復活することを願っていたラーメン愛好家たちは多かった。しかし、彼らの願いも空しく、六角家はついにこの9月「倒産手続き」に入ったのである。

[「文春オンライン」編集部 「文春オンライン」特集班/Webオリジナル(特集班)]

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大分県の離島に「住みよい北朝鮮」を築き上げた村長親子の末路

2020年10月15日 08:00 PRESIDENT Online

全国には、何十年も選挙が行われていない町や村がある。そのうちの一つだった大分県の姫島村では2016年、61年ぶりの村長選が行われた。親子2代にわたり島を統治してきた「王朝」に、ノンフィクションライターの常井健一氏が迫った――。

※本稿は、常井健一『地方選 無風王国の「変人」を追う』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

32年もの間、村長の椅子に鎮座してきた

大分県東国東(ひがしくにさき)郡姫島(ひめしま)村(人口1930人、2017年3月1日時点)は、瀬戸内海にぽっかりと浮かぶ日本有数の「一島一村」の自治体である。

2016年秋、そんな島で、歴史的な事件が突然起きた。

〈61年ぶり村長選へ、来月の姫島村長選〉

同年10月18日、大分合同新聞がこんな見出しで大きく報じるなり、島には続々と報道陣が上陸してきた。8軒しかない旅館や民宿は季節外れの繁忙期に突入した。小さな村の騒ぎは大手紙の全国版でも報じられ、その名が知られることとなったのである。

姫島の村長選は1955年にあった一騎打ちを最後に、16回も無投票が続いた。その間、現職の藤本昭夫(取材当時73)は初当選時からじつに8度も不戦勝。つまり、32年も投票用紙に自分の名前が書かれたことが1度もないまま、島の主の如く村長の椅子に鎮座してきたというわけだ。

1943年に満州(中国東北地方)で生まれた昭夫は3歳の時に父の故郷である姫島に移住し、対岸の町にある県立国東高校、東京の慶應義塾大学経済学部で学んだ。卒業後の68年、日本住宅公団に入職し、主に経理畑を歩んだ。そして、80年に帰島。84年から村長の職にある。

親子56年間の「王朝」に吹いたつむじ風

「8選」は現職の村長として全国最多。全市町村の中でも堂々の第2位だ(取材当時)。

さらに、驚愕の事実がある。

藤本の前任者は、父の熊雄(くまお)だった。満州帰りの父も1960年の初当選時から無風続きで7期24年もの長い間、姫島村長を勤め上げ、現職の立場のままで名誉の死を遂げたのである。

熊雄から昭夫へ。親子で56年──。

当然、村役場の現役職員は「藤本村長」しか知らない。80代以下の島民は、村長選びに参加した経験すらない。2000人の誰もが自分の目が黒いうちには村長選というものは行われないと信じ込んでいた。

ところが、神代の小島につむじ風が吹いた。

無敵の「フジモト王朝」が自動的に延長されようとした2週間前、「9選阻止」を訴える挑戦者がひょっこりと現れたのだ。

対抗馬の藤本敏和(としかず)(同67)は、島生まれ、島育ちのUターン組である。

県庁所在地の大分市にある名門・大分上野丘(うえのがおか)高校から東京外国語大学中国語学科に進み、1972年にNHK入局。下関支局でアナウンサーとして活躍した後、韓国の延世(ヨンセ)大学に留学した。東京に戻ると国際放送の番組制作を手掛け、チーフプロデューサーに。一時は和光大学でも教鞭を執った。定年後は、2014年に島出身の妻とともに里帰りした。

本稿の主人公2人はどちらも「フジモト」なので、それぞれ「昭夫」、「敏和」と呼ぶことにしたい。

雇用形態を増やし、7人に1人が役場勤めに

私が取材した2017年末時点、村役場の正規職員は130人ほどだった。それに加え、ほぼ同数の臨時職員が働いていた。つまり村民の7人に1人、大家族の中に1人は役場勤めがいるという計算になる。その大半は診療所とフェリー乗り場で働いている。

給与水準は、月額平均約25万円。これは財政再建中の北海道夕張市や人口最小の東京都青ヶ島(あおがしま)村よりも安く、全国の自治体の中でワースト3に入る。だが、時短勤務や嘱託など柔軟な雇用形態も増やしながら、ボーナスは正職員と同基準で出している。その上、「出戻り」のシングルマザーも積極雇用するなど、困難を抱える家庭にも手を差し伸べてきた。

そのため、村では官民の所得格差も少ない。ある種の平等主義を徹底したことで、過去の村長選で失いかけた地域社会の調和はすっかり蘇った。

「こうした村主導の取り組みが、(全国屈指の組織力を誇る大分の)自治労さえ島に入れない防波堤にもなった」

そう誇らしげに説く島民にも出会った。

ここはなぜ「住みよい北朝鮮」なのか

「住みよい北朝鮮」

ある村議は、島をそんな一言で表現する。

なぜ「北朝鮮」か。島の民は健康で文化的な最低限度の生活を営むために、選挙による民主主義よりも選挙を行わない寡頭支配を選んだ。無投票による「独裁」、つまり藤本親子による世襲体制を抱きしめたのだ。

ある村議は嘆息する。

「お年寄りは祭りを通して昔を思い出して、『熊雄さんにお世話になったから息子の昭夫さんも支えなくては』という気持ちになる。お弁当を楽しみにしていて、それをタダでもらうだけでありがたいと思ってしまうんだ。祭りの原資は自分で納めた税金なのに、ね」

お弁当をもらって、「村長に世話になった」と錯覚する。地区の行事に補助金が出ても、「世話になった」。村のグラウンドを借りても、「世話になった」。診療所を利用しても、フェリーに乗っても、「村長に世話になった」……。

感謝の気持ちは、往々にして負い目に反転する。村民の「心」を支配する。つまり、村長としての活動は事実上の選挙運動になってきた。

「自分の家族が就職でお世話になって役場に勤めているから、誰もが村長には逆らえないと思ってしまう」

史上初めての対抗馬となった藤本敏和は、誰も口にすることはできない村の実情をこう明かす。

昭夫は助役や副村長を置かず、村長1人で全権を掌握するワンマン行政を理想としてきた。ナンバー2を作らない。後継者を育てようともしない。すなわち、ライバルは生まれず、寝首をかかれる恐れもない。これも古今東西の為政者が心がけてきた権力維持の定石だ。

「議場」とは名ばかりの会議室

だが、光が多いところには影もある。

姫島の観光誘致策には、大きなイベントが多い。例えば、夏になると子どもたちがキツネのお面をつけて踊る盆踊りが開かれる。国の無形民俗文化財にも指定されている伝統行事だが、その裏では開催が近づくと残業を強いられる職員たちの苦労がある。それなのに、箸の上げ下ろしまで厳しく指導する昭夫のやり方に耐え切れず、役場から逃げ出す者は少なくない。

また、絶対的な権力は絶対に腐敗する。

私は昭夫に役場の中を一通り案内された。

2階にある村長室の近くに「議場」と表札のかかった一室があった。

扉を開けると、がらんどうだった。部屋の中央には安っぽい長机をつなぎ合わせ、「ロ」の字にされていたが、これでは議場というよりも会議室だ。私がこれまで訪ねた町や村で見てきた、「自治の殿堂」たる議会の重々しい雰囲気とは大きく異なった。

昭夫にとって村長就任後から18年がたったそのころから現在に至るまで、議会なんてあってないようなもので、数ある会議のうちの一つに過ぎないのだと私は悟った。

迂回融資疑惑、そして最大のナゾは

村議の1人によると、議会では質疑も一般質問もなく、執行部提案が原案通り可決されて1日で閉会するという。32年間で質問に立った議員はのべ7人しかいない。

2012年、村が漁協の関連団体に貸し付けた3500万円が、村長の実弟が経営する水産仲卸会社に迂回融資されたという疑惑が浮上した。村、つまり昭夫はその監査請求を棄却した。すると、島民たちは一斉に口を噤(つぐ)んだ。むろん、村議たちも沈黙を守った。

そして、最大のナゾとされているのが子どもたちの存在だ。

昭夫には70年代生まれの息子も娘もいたはずだが、20年ほど前に島を出てから姿をくらましたままなのだ。「県道船」と呼ばれる村営フェリーに乗らなければ、島に帰ることはできないので、帰省すれば間違いなく島民に目撃される。だが、長い間、なんの音沙汰もないという。

そもそも昭夫は私生活を人前で語ろうとしないし、村民が尋ねることも禁じ手とされている。

私は村長室で行ったインタビュー中、「3代目」に引き継がれる可能性を思い切って問うた。

すると、昭夫は「ない」と短く答えた。

「とっさんの話を聞いて一目惚れした」

近い将来、「フジモト王朝」は途絶える──。

島の民がそう薄々と意識するようになったころ、NHKで働いていた敏和が東京からやってきて、村で講演することがあった。島でプロパンガス販売店を営む、村議の小野仁(ひとし)(取材当時55)は一目見てピンときたという。

「私はいずれ村長を替えたいと思って村会議員になったんですよ。島出身の人間の中から村長候補をずっと探していた時期もあったけど、しばらくの間は周囲に流されていた。だけど、とっさんの話を聞いて一目惚れした。目が覚めたんだよ」

敏和がUターンすると、小野は同じ集落に住んでいる関係で頻繁に顔を合わせるようになった。かつて小野の父は6期も村議を務め、収入役だった敏和の父とも親しかった。

小野は事あるたびに敏和に「村長選に出ろ」と決起を迫るようになった。

派手な不意打ちを食らわせたが…

一方、敏和は教育委員になると小野だけでなく、役場の内部からも村長に対する不満をこっそり聞かされるようになった。だが、そんな動きをしていることが村長の耳に入れば潰される。これまでも村長に歯向かい、島から出て行った者は少なくない。敏和は小野の自宅を訪ね、「密室」で酒を酌み交わすことが増えた。

61年ぶりの村長選の約1カ月前、年に1度の村民体育大会が行われた。そこで、敏和と小野が住む集落では、昔使われていた景気づけの応援歌を復活させた。当日、2人は大喝采を浴び、高揚感に酔いしれた。

「その後、打ち上げで飲んでいるうちに、出馬の話が決まりました」(敏和)

口達者な小野は、報道機関出身の敏和よりもメディア対応に長(た)けていた。私の取材にも立て板に水で受け答えする。彼はその能力を活かして、敏和の一大決意を地元紙にリークした。

果たして、冒頭で紹介した大分合同新聞のスクープは生まれ、村長に不意打ちを食らわせた。だが、そのやり口は有力者の不興を買った。

新人が戦うにはあまりに不利だった

61年ぶりの戦いが始まる告示日、フェリー乗り場のそばにある大きな広場には400人を超える村人が集まった。この島の歴史において、「キツネ踊り」で有名な盆踊りの時期でもない限り、村民の2割が一堂に会することなんてありえない。役場で仕事をしている200人の村民は参加していないにもかかわらず、だ。

副知事、県議、県内大手の建設会社の幹部、漁協、農協、村内全6地区の区長、高額納税者のIT起業家、そして村議8人のうち7人が駆けつけた。昭夫はここぞとばかりに「力」を見せつけた。

一方、そこから500メートルのところにある敏和の自宅前には10人ほどしか集まっていなかった。村議は小野のみ。あとは親類縁者だった。一時は熱心に「応援するよ」と言ってくれた人たちは見事に切り崩され、静かに身を引いていった。

姫島の選挙には新人に不利な条件が整っていた。

まず、村には「ポスター掲示場設置条例」がない。そのため、村長選が行われても島に選挙ポスターが貼られたことは1度もない。姫島と同じように設置条例を設けていない町村は、全国に24しかない(2017年12月31日時点)。極めて少数派だ。

さらに、同様の理由で選挙公報も討論会もない。

つまり、敏和のような新人が突然現れた場合、政策の中身はともかく、顔を知らせる手立てさえゼロに近いのだ。

村長派が仕込んだ“罠”

実際、Uターンから2年たったとはいえ、半世紀近くも島を離れていた敏和を覚えている者は少なかった。島では「元NHK」という肩書きなんて、なんの役にも立たない。むしろ、「可根古(日本料理店)の長男」、「収入役だった藤本秋太郎の長男」と強調したほうが、どこの誰なのかを思い出してくれる。

選挙戦中、両陣営は「村民生活への影響に配慮する」という申し合わせを行った。そういった自主規制は新人の敏和にとって選挙運動の足かせとなった。

その一例がある。

選挙戦の中日は、文化の日だった。役場周辺では村の文化祭が行われ、島じゅうの人たちでごった返した。すでに期日前投票は始まっていたので、お年寄りの多くは役場に寄るついでに投票を済ませた。

チャレンジャーの敏和にとって、これほど有権者に対して1度に「顔」を売れるチャンスはなかった。だが、時すでに遅し。両陣営で「活動自粛」の合意をしてしまった後だった。それが村長派が仕込んだ“罠”だと気づいた敏和陣営は地団太を踏んだ。

一方、イベントの主催者である村長は大手を振って文化祭の会場を練り歩き、誰にも邪魔されずに多くの村民たちとふれあった。

圧勝も村長派の表情は硬かった

投開票は島に一つしかない小学校の体育館で行われた。投票率は88.13%。97.81%だった61年前の“前回”を大きく下回った。結果は、村長が1199票、敏和は512票。ダブルスコアだった。

完敗したはずの敏和は泰然としていた。たった2週間の運動で、キャリア32年の「王」を相手にしながら島の3割近い支持を得たからだ。「敏和は取れても200票」という村長らの見立ても覆した。

新人側の立会人として開票作業を見守っていた村議の小野は、まるで勝ち戦の思い出を語るような満面の笑みで開票中の様子を回想した。

「村長の票が次々と積まれていくのに、向こうの立会人の表情が硬いんだ。とっさんの票が予想よりも多いから、あっちの連中は頭を抱えていたよ」

想定外の批判票を集めた敏和自身は「役場職員の大半は入れてくれた」と分析している。

「だけど、やっぱりお年寄りの票が取れなかった」

島民たちが食わず嫌いで畏(おそ)れ続けていた村長選は、いざやってみたら村の改革に一役買った──。

私は結論として、そう感じた。

王座を降りた村長は暮らしていけるのか

敗北から数カ月後、敏和は得意の語学力を活かし、島で週1回の韓国語講座を始めた。新聞の折り込みチラシで呼びかけると13人の応募があった。

「人口2000人の村で13人も集まるということは、2万人の町なら130人──と同じことでしょう。これはすごいことです」

一方、島の人たちは喜寿を間近に控えた村長の「老後」を心配している。昭夫は30代で東京からUターンして以来、「普通の人」として暮らした経験がないからだ。

島を出る時はフェリーの特別室に1人で座り、対岸に置かれている運転手付きの公用車で行動してきた。四半世紀以上、フェリーの切符を買ったことも、一般席に座ったこともない。

「村長を辞めて、役場の職員を召し使いのように使えなくなったら、暮らしていけないんじゃないか」

そんな声もある。

仮に次の選挙で敗れても、適任者を見つけて禅譲しても、積年の埃《ほこり》は出てくるだろう。私が島に滞在した4日間に聞いた証言を総合すると、昭夫の政治は情実にとらわれ、公私混同甚だしいという評価だ。これ以上、晩節を汚さないためには、早いうちに先代のような「殉職」を遂げるしか道はない──。

そんな縁起でもない陰口も叩かれているが、昭夫は強気だった。

「次も誰が出ようと、ボクが出れば同じこと」

昭夫の村長任期は2020年11月25日に満了する。瀬戸内海に浮かぶ「最後の王朝」は、その日まで続くことは確約されている。

だが、その先の確かなことは、島の誰にもわからない。

[ノンフィクションライター 常井 健一]

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まもなく沈没する自動車業界でトヨタが生き残るためのたった1つの方法

2020年10月15日 08:00 PRESIDENT Online

100年に一度の大変革期「自動車産業のトップはグーグルに」

私は、今年6月、『日本経済予言の書』(PHP研究所)という本を出しました。本書の中で「2020年代を通じて一番日本経済に打撃が大きいのはトヨタの衰退だ」と予言しています。

これから衰退するのはトヨタだけではありません。あらゆる自動車メーカーがそうなります。

今、自動車業界は過去100年間とはまったく違う構造変化に見舞われていると言われています。その結果、今から20年後、2040年頃には自動車産業から時価総額200兆円企業が3~5社誕生すると予測します。

上位3~5社の中に、トヨタ、フォルクスワーゲン、GM、フォード、メルセデス、ルノーといった旧来の自動車メーカーの名前は1社ないしはゼロでしょう。そのほかの上位企業はグーグルやアリババといった異業種の企業となるはずです。

今後は電気自動車への移行と、自動運転技術の実用化により、乗用車を製造販売するという伝統的なビジネスの収益性が下がります。既存の自動車メーカーの時価総額は、過去に紡績メーカーや化学メーカーなどがその道をたどったようにトップ企業でも時価総額1兆円を切るような水準に下がるはずです。

トヨタは「コーポレートメッセージ」を見直さないと衰退する

これから自動車業界に起きることは、かつてのパソコン業界と同じです。2000年に日本には6社の大手パソコンメーカーがありましたが、2020年現在そのほとんどが衰退しました。

一方で、2020年には広義のパソコン産業から時価総額100兆円企業が4社誕生しています。アップル、マイクロソフト、グーグル、アマゾンです。そこには数年以内にフェイスブックの名前も加わるでしょう。富士通、NEC、東芝、ソニー、パナソニック、シャープの名前が加わる可能性はありません。

それと同じで、20年後、トヨタが自動車産業に出現する時価総額200兆円企業の一角に食い込むためには自動車メーカーのポジションのままでは難しい。これがトヨタ危機の本質です。いや、トヨタだけではありません。日産、ホンダ、スズキ、三菱、マツダ、スバルといったすべての自動車メーカーに共通する未来の危機なのです。

この議論については「トヨタの対応が遅れている」「いやトヨタは遅れてはいない」という水掛け論に陥りがちです。しかし、トヨタ危機の本質は対応の遅れではなく、未来の変化のすべてに少しずつ手を出している一方で、20年後のゴールが見えていないことだと私は思います。

その観点から、今回は「トヨタはコーポレートメッセージが定まらないから出遅れているのだ」という問題提起をさせていただきます。

時価総額200兆円企業となるための3つの選択肢

トヨタの経営理念には「トヨタはクリーンで安全な商品の提供を通じて、豊かな社会づくりに貢献し、国際社会から信頼される良き企業市民を目指しています」と書かれています。その下位概念に「創業からの基本理念」「2001年からの行動指針」「トヨタ生産方式」と「グローバルビジョン」の4つの理念や哲学、ビジョンがある。未来にかかわることはグローバルビジョンで語っており、そこでは「モビリティ社会をリードする」という言葉に力点が置かれています。

トヨタの一番有名なコーポレートメッセージは2010年代に使われてきた「Drive your dreams」です。そこから2020年代をリードするコーポレートメッセージをいろいろ打ち出していますが、まだ定まっていない段階だと私は感じています。

このコーポレートメッセ―ジというものは企業のあるべき未来を従業員に指し示すために作られます。そして、コーポレートメッセ―ジが変われば企業は変わります。

かつてNECが電電ファミリーの通信機メーカーだった昭和の時代がありました。当時は、電話の一般回線は通話のためにあるからコンピューターをつないではいけないという規制があったのです。

そういった時代にNECのトップは「これからは通信とコンピューターが融合する時代になる」と考え、あの有名なC&C(Computer and Communication)というコーポレートメッセージを打ち出しました。

これは極めて変革のメッセージ性が強いコーポレートメッセージで、この言葉によってNECは旧来の通信機メーカーからコンピューターと通信の融合領域へとビジネスを広げていくことができたのです。

では、2040年に自動車業界で時価総額200兆円企業となる会社はいったいどのようなコーポレートメッセージを掲げることになるのでしょうか。次のように3つの可能性があると私は考えます。

1.電力インフラのリーディング企業
2.トラフィックネットワークのリーディング企業
3.物流と人の移動のソリューションのリーディング企業

これらを順に説明していきましょう。

破壊的イノベーションで世界最大の電力会社へ

1つ目はコーポレートメッセージ的に言えば21世紀のC&C、つまりCar and Clean energy(自動車とクリーンエネルギー)のことです。これはパリ協定の温室効果ガスの削減目標達成のために自動車産業が破壊される流れの中で、新たに誕生すべき重要な社会インフラになります。

そもそも地球温暖化の抑制のためにやり玉に挙がっているのはガソリン車だけでなく、日本が誇る石炭火力発電所など化石エネルギー産業全般です。それに代わって世界的に増加していくクリーンエネルギーは電気自動車と極めて相性がいい。

社会的に見て効率が良いのは、自家用車と自宅の太陽光発電といった小さな対応ではなく、世界中の自動車と世界中のクリーンエネルギーを1つの都市、あるいは国家単位の電力ネットワークとしてつなげることです。

そして既存の電力会社はこういった新しいエネルギーインフラの構築には後ろ向きのため、この分野のリーダーとして革新的なスマートグリッド(次世代送電網)を構築できるのは電力産業の部外者である可能性が高いと考えられています。

トヨタのような自動車業界の大資本はこの新規機会との相性がよく、本気でこの領域に参入すれば既存勢力を破壊的イノベーションで攻めることができる立場にあると考えられています。

2040年代には自動車産業のリーディング企業が世界最大の電力会社になる可能性がある。これが自動車産業から生まれる未来の時価総額200兆円ビジネスの1つ目になります。

交通インフラ上で付加価値サービスを展開する

2つ目は中国でアリババが先行しているように、5Gの技術を使って都市の中を走りまわる無数の自動車のビッグデータを収集・分析しながら、街全体、広域圏全体の交通ネットワークを最適化運営する領域です。

これは一見、公共サービスが行えばいいように思えますが、実現には大規模な資本とR&Dが必要なため民間向きのイノベーション領域です。しかもそのインフラに付加価値サービスを加えられるという点で、プラットフォームビジネスのような特徴がある未来分野です。

たとえば、アリババのようなIT企業が運営する都市交通プラットフォーム上を自動車で走行する場合、アマゾンのお急ぎ便のように特急レーンでより早く到着する有料サービスが考えられます。

アメリカのフリーウェイの場合、一番センターライン寄りの車線は誰でも入れるわけではありません。しかし、そのような車線規制を入れることで一部の車を優遇する、あるいは一部の車は前方の信号がすべて青になるようにコントロールすることが未来にはできるようになる。そこを付加価値サービスとして売るイメージです。

別の例ですが、スマートな交通プラットフォームであればウーバーやウーバーイーツのように、走行中のそれほど急いでいないときに何かを載せることで車をシェアして収益を稼ぐこともできるでしょう。ルート検索の履歴を学習してグーグルや食べログのように広告をリコメンドするようになるかもしれません。

一度、都市全体に交通インフラのネットワークを手にした企業は、そのプラットフォーム上で自動車に関わるさまざまな付加価値サービスを展開できるようになるのです。

車が移動する意味に着眼して、生産性を上げる

そして3つ目はソリューションです。人やモノが車で移動すること自体は手段であって、目的はビジネスで儲けたり、用事を済ませたりするためです。

その前提で考えれば、自動車ユーザーのニーズは移動の生産性を上げることです。

具体的に言えば、5Gデータを駆使して宅配で再配達のない最適な一日の配達ルートをAIが提案してくれるようなサービスイメージです。そういったデータを自前で用意できないような中小の運送会社は喜んでインフラへの付加価値コストを支払うはずです。

同じエリアに存在する大半のユーザーのカレンダー情報、GPS情報、移動情報などがクラウド上でビッグデータとして解析され、ソリューションとして提供されることで、ビジネスや生活の一日の行動はずっと効率的になり生産性が上がる。特にアメリカのような車社会での恩恵は大きいでしょう。

このように「なんのために人々が車で移動しているのか」に着眼した新しいタイプのソリューションを提供する企業が、2040年代の自動車産業のリーディングカンパニーになる可能性は高いのです。

あえて私が外した4つ目の可能性としては「未来の車を創る」という領域がありえます。人工知能とLiDAR(ライダー)やミリ波レーダーなどを使う完全自動運転車をクリーンな電気エネルギーで創り出す。

これは自動車会社と競合IT企業の多くが目指している未来です。しかし、ここをゴールだと捉えると2020年代の競争には勝ち残れても、2030年代の競争からは置いていかれて沈没する危険性がある。そのため私は「未来の車を創る」というコーポレートメッセージは危険だと考えています。

トヨタはそろそろ「DD」から「CC」へ

さて、これらの可能性が目の前にあるとしてトヨタ、日産、ホンダといった既存の自動車メーカーはどうすべきなのでしょうか。

私は先ほど挙げた3つの領域から、どれか1つに絞り込む時期がきていると思います。

これまで自動車業界では、Connected(コネクテッド)、Autonomous(自動運転)、Shared(シェアリング)、Electric(電動化)の頭文字をあわせた「CASE」と呼ばれる新しい領域を総花的に語られてきました。

日本の自動車メーカーは、自動運転や電動化という領域で、世界の最先端ではないにしろ辛うじてトップグループに追いついていたような状況でした。しかし、ここから時価総額の高いグーグル(ウェイモ)やアリババが次の領域へスパートをかけると、引き離される局面に来ています。

自動車危機の最大の問題点は、新たな異業種競合であるグローバルIT企業が50兆円から150兆円というトヨタの数倍の資本規模をもち、かつ「CASE」の中のコネクテッドの領域で圧倒的な経験量を持っているという点なのです。

そして実は、2つ目のプラットフォームと3つ目のソリューションの領域は自動車業界のビジネス文化には合わないという欠点があります。トヨタにフェイスブックやIBMみたいになれといっても難しい。そのような自動車会社から見て遠い領域なのです。

一方で、1つ目の電力インフラのドメインは比較的製造業のビジネス文化とは親和性が高い事業ドメインだと私は思います。

そう考えると、そろそろトヨタはコーポレートメッセージを2010年代のDD(Drive your dreams)から2020年代に向けたC&C(Car and Clean energy)に変える時期に来ているのではないでしょうか。

「CASE」という業界全体の未来を語りながら「モビリティ」というあいまいな未来を語るのではなく、具体的なひとつの未来を選ぶべきタイミングです。それなのにいつまでたっても選ばないというのが、トヨタ危機の本質ではないでしょうか。

[経営コンサルタント 鈴木 貴博]

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cat_11_issue_oa-president oa-president_0_vcckbmfs0mrf_「毎日通院するお爺さんが今日は病院にいないワケ」英国人が驚いた日本のジョーク vcckbmfs0mrf vcckbmfs0mrf 「毎日通院するお爺さんが今日は病院にいないワケ」英国人が驚いた日本のジョーク oa-president 0

「毎日通院するお爺さんが今日は病院にいないワケ」英国人が驚いた日本のジョーク

2020年10月15日 08:00 PRESIDENT Online

秋田県は日本で初めて人口の半数以上が50歳を超えた「超高齢社会」だ。ロンドンの経済学者はその事実に驚き、世界で9つの「極限経済」のひとつに取り上げている。俊英を驚かせた秋田の現状とは――。

※本稿は、リチャード・デイヴィス『エクストリーム・エコノミー 大変革の時代に生きる経済、死ぬ経済』(ハーパーコリンズ・ジャパン)の一部を再編集したものです。

個人にとっては足りないが、国にとっては過大な日本の年金

日本の年金は平均で月額14万5000円ほど(厚生労働省年金局「平成年厚生年金保険・国民年金事業の概況」調べ)だが、現役時代に払い込んだ額がベースになっているため、平均を大きく下回る高齢者──とくに女性──も多い。

国際水準に照らせば手厚いが、日本の生活コストの高さを考えれば、そうとも言えなくなる。しかも、日本の年金受給者の半数以上が、ほかに現金収入の手段をもっていない。行政の福祉に頼っている年金受給者の人数はこの10年で2倍に増え、ある調査によると、年金受給者のうち1000万人に近い人が貧しい暮らしをしているという。

多くの人が充分な個人貯蓄をもっておらず、日本の高齢者の17パーセントが、ライフサイクル仮説の言う「資産のこぶ」を使い果たし、新たに貯金をする余裕もない。厳しい気候にもかかわらず、秋田の年金受給者のうち、一部の人は、現金収入のなにがしかの足しにと、育てた野菜を売っていると高杉が教えてくれた。

問題は、日本の年金は個人にとって足りないのと同時に、国にとっては過大なことにある。秋田の高齢者が節約を心がけ、野菜を育てて「リタイア期」を乗り越えようとしているのと同時に、日本全体の長寿が、政府の財政を厳しく圧迫している。社会保障費と医療費が日本の税収に占める割合は、1975年には22パーセントだったが、2017年には介護費用や年金負担が重くのしかかり、55パーセントに上昇した。2020年代の前半には60パーセントに到達する見込みだ。

「年長者を尊重する」という考えが相容れなくなっている

別の見方をすると、教育、交通、インフラ、防衛、環境、芸術など日本の他の公共サービスは、1975年には税収の80パーセント近くが充てられていたのに、高齢者関連の支出が増加したためにいまでは税収の40パーセントしか残っていないということになる。予算の観点では、高齢化が日本をのみ込もうとしている。

これは日本に限らず、韓国、イタリアなど、日本のあとを追って超高齢化の道を進んでいるすべての国々が直面する普遍的な問題だ。個人での準備が間に合わず、年金の上乗せを希望する高齢者世代にとって、自分たちの老いはたしかにショッキングな出来事だ。一方、若者世代はそのための費用を払わなければならず、世代間の緊張が高まっている。

日本は、世代間の連帯がどうなるかを観察できる興味深い場所だ。というのも、ふつうなら日本人の多くが無意識にもっている「年長者を尊重する」という考えが、高齢化問題では相容れない場面が出てくるからだ。伝統的な文化では長老が大切にされる。「親孝行」や年長者への敬意、先祖伝来の品を大切に護るというような、古代からの規範も残っており、そのなかでは親に感謝し、高齢者の世話をすることに大きな比重が置かれる。年長者への敬意がたんなる礼儀ではなく、大昔から歴史と哲学に密に織り込まれてきた国なのだ。

病院の待合室はおしゃべりに来る高齢者でいっぱい

秋田のような超高齢化の進む地域では、高齢者に敬意を示す機会は多数ある。地元の大学で会った学生グループとは、老いることへの考え方について話し合った。彼らのなかには、祖父母と同居していたり、大学に毎日通うかたわら、祖父母の介護に時間を割いていたりする者がかなりいることを知った。路線バスには座りたい高齢者に席を譲る「シルバーシート」があり、秋田の高齢者はバス代100円で県内のどの停留所までも乗っていける「コインバス」の制度を利用できる。

だが、年齢層のあいだには軋轢も生まれはじめている。不平の一部は、高齢者は通行の邪魔だなどという些細なものだが、一方でシリアスなものもある。

「病院の待合室はただおしゃべりのために来る高齢者でいっぱいだ。それにかかるコストのことなんて考えていない」とある学生は言う。これはあまりにもよくある指摘で、ジョークにまでなっているそうだ(質問:あのおじいさん、なぜきょうは病院にいないんだろう? 答え:病気になったので家で寝ています)。

学生たちは、世代間の軋轢を示す「世代間格差」という漢字を私に教えてくれた。秋田の若者は、高齢者にはコストがかかり、その勘定が自分に回ってくることに気づいている。

賦課方式の年金は世代間の約束のうえに成り立っている

ほかにも高齢にまつわる日本語を教えてもらった。かなり古いものや、高齢者への敬意からはかけ離れたもの、ユーモア漂うものもあった。高齢者特有の体臭やふるまいを意味する「Kareishuu(加齢臭)」「ojinkusai(おじんくさい)」、元気のない様子を指す「shobukure(しょぼくれ)」。

女性もやり玉にあがる。厚かましい中高年女性の「obatarian(オバタリアン)」は、デパートのセール会場では人を押しのけて突進し、帰りの乗り物では「シルバーシート」を奪い取って座るのだそうだ。深刻なことばに「kaigo jigoku(介護地獄)」がある。家族による介護がときに数十年の長さに及び、その重荷の多くは女性が担っている。

特定の年齢層にまつわるこうした用語の多くはふた昔以上まえに生まれ、普及したもので、世代間の結束を、社会の高齢化が揺るがしている徴候のひとつとも言える。別の徴候として、年金制度の仕組みもあげられる。日本の年金制度は1942年に施行され、ほとんどの国と同様に賦課方式を採用している。個人が将来の自分のために金を貯めておくのではなく、いま現役で働いている世代が供出した金をただちにいまの高齢者に支払う仕組みだ。

賦課方式の年金は世代間の約束のうえに成り立っている。若い就業者がいま年金料を負担するのは、将来、自分がリタイアしたときに同程度の手厚さで支給が受けられるとの期待があってのことだ。

世代間格差のために年金制度が行き詰まりを見せはじめている

しかし、日本でよく議論になる世代間格差のために、この年金制度が行き詰まりを見せはじめている。40~50代の人たちもすでに上の世代ほどは手厚くない状況に置かれていて、私が会った若年就業者たちは、自分がリタイアしたときに予定どおりの恩恵が得られるのか疑いつつ、毎月決まった額を支払っていた。

疑いの気持ちが生じるのも無理はない。先進国の大部分は、支給額のカットや支給年齢の引きあげなどで年金の財源負担を減らそうと計画している。ヨーロッパが最も早く動き、イタリア、スペイン、ドイツは年金の支給額を減らした。チェコ共和国とデンマークはいまの若者世代が将来、年金を受給しはじめる年齢をそれぞれ70歳と72歳に引きあげている。

自分たちが年金を受け取る2050年ごろには、いまよりもっと事態は悪化しているだろうと思っている若年就業者に、今後30年かそれ以上、国は資金を供出しつづけてもらわなければならない。とても年金政策への信頼を充分に醸成できるとは考えにくい。

若者世代は高齢世代よりも自国についてのポジティブな感情が低い

日本の公的な統計によると、国民の3分の2が、いまの年金制度が自分のリタイア後の生活をカバーしてくれるとは信頼していないという結果が出ている。不安の度合いは若い人ほど強い。いまのところ、イギリスやアメリカで年金のことを真剣に考えている学生は少ないが、私の出会った秋田大学の学生はつねにうっすらと不安を感じていた。20歳の佐々木佳音も「年金のことはいつも頭にあります」と言っていた。

深刻なリスクは、多くの人が年金制度からの離脱を選択することだ。日本では、会社員の年金保険料は給料から天引きされるが、自営業者は自分で直接支払う。1990年の納付率は85パーセント以上あったが、2017年には60パーセント台に低下しており、若者世代に限れば、50パーセントを下回る。

社会貢献や世代間の調和などの設問をつうじて社会の連帯意識を追跡している長期的な政府の調査によると、若者世代は高齢世代よりも自国についてのポジティブな感情が低いことが判明している。国民の義務と集団の利益が国にとって重要な理念であることを考えると、これは心配される傾向だ。

[経済学者 リチャード・デイヴィス]

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日米関係の悪化をたくらむ文在寅大統領には辞めてもらうしかない 読売新聞のスクープが意味すること

2020年10月15日 08:00 PRESIDENT Online

菅義偉首相がポンペオ国務長官と首相官邸で会談

菅義偉首相が10月6日午後、この日の未明に来日したアメリカのマイケル・R・ポンペオ国務長官と首相官邸で会談した。菅首相にとって就任後初めての対面による外交だった。

会談では日本とアメリカが提唱する「自由で開かれたインド太平洋」構想について話し合われた。これによって日米同盟、つまり日本とアメリカの関係はより強固なものとなった。

この日夕方には日本とアメリカ、オーストラリア、インドによる「4カ国外相会談」も行われた。新型コロナの感染拡大後、日本で初めて開かれた多国間の閣僚級会議となった。茂木敏充外相が議長を務め、4カ国の外相は、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けた結束を確認し、今後、会談を定例化することで合意した。

また、この4カ国外相会談でポンペオ米国務長官は、中国が軍事的介入を強めている東シナ海や南シナ海の現状を踏まえ、「中国共産党の脅威から地域を守るため、4カ国がこれまで以上に連携していくことが重要だ」と求めた。

なぜ韓国は日米豪印の4カ国外相会談から外されたのか

4カ国外相会談の目的は中国の脅威に対抗するところにある。対中国外交に関して事情が異なり、しかも会談開催国の日本との関係が悪化している韓国は参加していない。

ポンペオ氏の来日に先立ち、アメリカの国務省は10月3日、ポンペオ氏が予定していた日本、韓国、モンゴルのアジア歴訪に関し、韓国とモンゴルへの訪問を取りやめる、と発表した。トランプ大統領が新型コロナウイルスに感染して入院したことで、万一に備えた対応だというが、日本は例外だった。アメリカは間違いなく韓国よりも日本に期待している。

国防省はポンペオ氏が10月中に改めてアジアを訪れ、韓国とモンゴルを訪問できるよう再調整しているというが、韓国よりも日本を重視するアメリカ政府の姿勢に、韓国政府は大きなショックを受けたことだろう。

とりわけ文在寅(ムン・ジェイン)大統領は、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長とトランプ氏の間に入って史上初の米朝首脳会談(2018年6月にシンガポールで開催された1回目の会談)を実現したことを誇りに思っているだけにかなり落胆しているはずだ。

読売が「文在寅政権が金与正氏訪米の仲介図る」とスクープ

ところで、10月7日付の読売新聞が国際面にこんなスクープ記事を書いている。主見出しが「与正氏訪米の仲介図る」で、サブ見出しが「韓国、米大統領選前に」と「ポンペオ氏 訪韓せず時間切れ」である。

この記事では、韓国の文在寅政権が北朝鮮の金与正(キム・ヨジョン)朝鮮労働党第1副部長の訪米の仲介を図っていたと、複数の日米韓協議筋が明らかにしている。金与正氏は金正恩委員長の実の妹で、彼の権限の一部を譲渡されているとされ、事実上、北朝鮮ナンバー2の地位にある。

米朝首脳会談の次は米朝トップ級会談を狙う。韓国もなんとかアメリカ政府の信頼を得ようと、懸命なのだろう。

韓国は良好な日米関係を切り崩そうとしているのではないか

読売の記事によると、文政権はオクトーバー・サプライズを狙ったが、トランプ氏の感染によってポンペオ氏の訪韓が中止となった。暗礁に乗り上げている米朝非核化協議を再開させるため、韓国は米朝のトップ級会談の実施を検討した。韓国は「苦戦するトランプ氏に外交で点を稼がせ、恩を売れば北朝鮮に有利になる」と北朝鮮を説得した。

韓国は当初、大胆な決断ができる首脳会談を考えた。しかし、物別れに終わった2019年2月のベトナム・ハノイでの首脳会談のようになると、南北関係がさらに悪化すると判断。正恩氏の妹の金与正氏を代わりに訪米させる案に差し替えた。ナンバー2の金与正氏ならばトランプ氏やポンペオ氏との会談相手になるうえ、実務者協議の積み上げを主張するアメリカの理解も得やすいだろうと、韓国は考えたのである。

オクトーバー・サプライズを単純なトランプ氏は喜ぶかもしれないが、文氏は何としてでもアメリカに気に入られたいのだ。そのために作戦を練りに練る。策略家である。もしかしたら強固な日米関係を切り崩し、日本に取って代わろうと画策しているのかもしれない。文氏は日本にとって危険な人物である。沙鴎一歩は繰り返し主張しているが、文氏には大統領を辞めてもらうしかない。

間違っているのが韓国で、悪いのも文在寅政権だ

「コロナ禍の中、隣国との門が少し広がった。日本と韓国は今日から水際対策を緩和しビジネス目的の往来を再開する。この成果を、徴用工問題をはじめとする両国間にある課題の解決につなげたい」

こう書き出すのは10月8日付の東京新聞の社説だ。見出しは「日韓往来再開 合意重ねて信頼回復を」である。

東京社説は「日韓合計で実に年間一千万人を超えていた人的交流は、新型コロナウイルスの感染拡大により、約七カ月間ほぼ途絶えていた。ビジネス目的に限定されたものとはいえ、再開実現は朗報だ」と書いた後にこう指摘する。

「一方、両国間には難題が多い。まずは、韓国大法院(最高裁)が日本企業に元徴用工への賠償を命じた判決と、これに対する日本の対韓輸出規制問題だ」
「判決に従い、韓国で差し押さえられた日本企業の資産売却手続きも進んでいる。この問題に関して、日本と韓国の立場の差は埋まっておらず、平行線のままだ」
「今回の往来再開は、あくまで経済回復が目的だろう。しかし、両国とも局面打開の糸口として期待をかけているのは間違いない」

「局面の打開」「両国間にある課題の解決」は外交上、あるいはお互いの経済的利益上、重要なことではある。しかし、韓国は条約で日本と決めたことを無視した。国際ルール違反を犯していることは明白だ。間違っているのが韓国政府であるとの認識を、日本政府は堅持するべきだ。悪いのは文在寅政権なのである。

外交の基本は「自国の利益を優先すること」である

東京社説はさらに指摘する。

「先月二十四日に行われた日韓首脳の電話会談で基本的に合意してから、時間を置かずに実現したことからも分かる」
「茂木敏充外相は、今回の措置を発表する際、韓国をわざわざ『極めて重要な隣国』と呼び、『厳しい状況だからこそ国民の交流が大切だ』と強調してみせた」

10月8日に再開された日韓の往来は、確かに菅首相と文大統領による電話会談からすぐに実施された。しかし、だからといって元徴用工の問題が即座に解決できるとみなすのは甘すぎる。東京社説は策略に満ちた文在寅氏をどう見ているのだろうか。

東京社説は書く。

「菅義偉首相は、日本人拉致問題の解決に意欲を示し、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長との対話の機会を探っている」
「韓国の文在寅大統領は、その正恩氏と直接対話してきた仲だ。韓国の協力も必要になるはずだ」
「まずは今回のような小さな合意を積み重ね、当局間の信頼を深めていくことが大切だ」

日本政府は北朝鮮との会話の機会を探ってはいるが、いまの歪んだ韓国政府から協力を得てまで北朝鮮と対話しようとは考えていないはずだ。「合意を重ねることによってお互いの信頼感を高める」ことができれば、これほど素晴らしいことはない。しかし、外交はそんなに単純ではない。自国の利益を優先するのが、外交の基本である。

地域の安定をはかる動きに、中国が反発するのは筋違い

今回の日本、アメリカ、オーストラリア、インドの4カ国会議については新聞の社説はどうみているのか。

たとえば、10月8日付の朝日新聞の社説は「米中対立が激化するなか、この枠組みを米国の覇権争いの道具としてはならない」と書き出す。見出しは「日米豪印会合 覇権争いの具とするな」である。

朝日社説は指摘する。

「この枠組みは、台頭する中国を意識し、安倍前首相が第1次政権の時に提唱し、第2次政権で本格的に取り組んできた」
「豪印両国はこれまで、中国との関係に配慮し、ときに慎重姿勢を示してきた。ここにきて連携強化に応じ、外相会談の定例化にも合意したのは、中国の度重なる強引な行動への危機感からだろう。南シナ海や東シナ海での海洋進出などを受けて、地域の安定をはかろうとする動きに、中国が反発するとすれば筋違いだ」

斜に構える傾向のある朝日社説も、真っすぐにものをいうときがある。中国への危機感。まったくその通りだと、沙鴎一歩は思う。

朝日社説の主張はなんとも小難しい「机上の空論」だ

しかし、読み進めてがっかりさせられた。朝日社説は書く。

「とはいえ、参加国の間にも、なお考え方に差異がある」
「米国のポンペオ国務長官は会談で『4カ国が連携し、国民を中国共産党の腐敗や搾取、威圧から守る重要性は増している』と強調した。11月の大統領選を前に中国に対抗する強硬姿勢をアピールし、対中包囲網につなげる狙いをあらわにした」
「だが、米国の同盟国であるとともに、経済では中国との関係も深い日豪にとって、米中の確執は好ましくない。『非同盟』の伝統をもつインドはなおさらで、中国ともバランスをとる外交を続けるだろう」

国家にはそれぞれ固有の立場がある。それゆえ、条約や会談によって立場を越えて協力し合い、均等に利益を分け合う。韓国についてはすでに前述したが、対中外交ひとつとっても国によって異なる。朝日社説は当然のことを複雑に指摘しているだけなのである。

最後に朝日社説は主張する。

「既存の秩序に挑む中国の行動を抑えつつ、時間をかけて変化を促し、協調による共存をはかるほかない。米政府には、多国間の安全保障の枠組みに発展させたい考えもあるようだが、地域の緊張と分断を深める恐れがある。軍事とは切り離し、外交的な協力関係とすべきだ」
「法の支配や人権の尊重といった普遍的な価値を、この地域に根付かせることが重要だ。日米豪印の各国も、それにもとる振る舞いをするようでは、連携を呼びかけても説得力を欠くことになるだろう」

現実離れした主張だ。なんとも小難しく、そしておもしろくもない社説である。こういうのを「机上の空論」というのだ。

[ジャーナリスト 沙鴎 一歩]

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荻原博子「もし住宅ローンが返せなくても、絶対にやってはいけないこと」

2020年10月12日 08:00 PRESIDENT Online

※本稿は、荻原博子『コロナに負けない! 荻原博子の家計引きしめ術』(毎日新聞出版)の一部を再編集したものです。

コロナ禍で住宅ローンを払えなくなる家庭が急増

新型コロナウイルス感染拡大による経済の悪化で、今後私たちの生活で大きな問題となるのが住宅ローンです。

住宅ローンサービスを運営するMFS(東京・千代田区)によれば、新型コロナウイルスの影響で、すでに住宅ローンの返済が苦しくなっている人が約4割、今後、苦しくなっていくだろうと予想している人まで含めると、約7割の人が住宅ローンの返済に不安を抱いているようです。

住宅金融支援機構の住宅ローンの支払いに関する相談件数も急激に伸びていて、今年2月には15件だった相談件数が3月は214件に、4月は1158件となって、現状では電話がつながりにくくなっています。

相談は、「今月分の支払いができない」という切羽詰まったものから、「収入が減りそうなので、ボーナス払いをやめたい」などという今後を案じてのものまで、さまざまなようです。

困った時は金融機関に相談を

こうした中で、金融機関も住宅ローンの返済相談に積極的に乗り出しています。

住宅ローンは、借りている側にとっては「返せなくなる」リスクがあります。一方、貸している側の銀行などにとっては、「貸したお金が回収できなくなる」リスクがあります。

リーマンショックの時もそうでしたが、最終的に返済できずに借主に自己破産されてしまうと、金融機関は貸したお金を回収ができなくなってしまいます。

お金を借りているほうの立場が弱いわけではなく、貸主である金融機関にとっても「返済されない」ということは大きな打撃になります。だからこそ、「とにかく相談してください。悪いようにはしません」と、大々的に呼びかけています。

住宅ローンには、政府の支援はほとんどありません。控除などを受けることで、多少は税金が安くなる人もいるでしょうが、今借りている住宅ローンを返済できないという人は、借りている金融機関と話し合いながら、各金融機関が打ち出している対策に沿って対処していくしかありません。

返せなくても、絶対にやってはいけないこと

給料や売り上げが減ってしまって、住宅ローンが払えない人が増えているせいか、銀行の窓口では相談する人の順番待ちで混み合っているところが出てきました。

住宅ローンは、返済が1日遅れただけでも、借りている銀行からは催促の電話がきます。督促状も届きます。これらの催促をそのまま放置しておくと、後々、大事になることは覚えておいたほうがいいでしょう。

銀行では、普通2カ月間支払いがないと、事故情報(延滞情報)が登録され、ブラックリスト入りしますが、中には1カ月支払いがなかっただけでも事故扱いになるケースもあります。

そうなると、「なんとかしなくては」と思い、自力でお金を工面しようとする人がいます。特に、年配の会社員の場合、体面もあるので「返せなくなりました」と銀行にはなかなか言えず、手軽に借りられるキャッシングなどでお金を都合して返すケースもあります。

「住宅ローンが返せない」からといってキャッシングに走ることは、絶対にしてはいけません。なぜなら、今月はなんとかそれで無事返済できても、来月、再来月とコロナ禍が長引けば、そのたびにキャッシングの残高も増えていくことになるからです。

安易なキャッシングの先には借金地獄が待っている

いったん下がった給料や収入は、よほどのことがない限り、すぐに元に戻ることはないと思ったほうがいいでしょう。

給料を下げるという決断に至るまでには、会社もかなりのダメージを受けているはず。また、取引先もコストカット意識が高まっているため、いったん取引を減らすと、すぐに従来どおりの仕事の発注はできないケースがほとんどだからです。

そうした厳しい状況の中で、住宅ローンが返せないからと安易にキャッシングに手を出すと、借金地獄にはまる危険があります。特にキャッシングの金利は15~18%と高利ですから、いったん借りると借金が雪だるま式に膨れ上がる恐れも。

一方、金融機関にとっても、「住宅ローンを返済するためにほかの金融業者からお金を借りて住宅ローンを払う」というのは、最もして欲しくないことなのです。

借りる相手が身内ならいいのですが、業者の場合、貸し付けの際に、住宅ローンの残っている家に二番抵当、三番抵当を付ける可能性もあり(一番抵当はお金を借りている金融機関が付けます)、そうなるとトラブルが起きやすくなって、のちのちの対処が難しくなるケースも。

余計なトラブルに巻き込まれないためにも、困ったらすぐに住宅ローンを組んでいる金融機関に相談する。今は、それがベストな方法です。

金融機関から提示される3つの方法

住宅ローンが払えなくなって金融機関に相談したら、どんなことを言われるのだろうかと心配な人は多いと思います。

金融機関には多くの方が相談に来るので、「返済が困難になったお客様には、こう対処しよう」というノウハウが蓄積されています。主に次の3つに集約されます。

①返済期間を延ばす
②一定期間だけ、返済額を減らす
③ボーナス返済を見直す

本当に大変な状況にある人に対しては、①と②を組み合わせるなどして臨機応変に対応しているので、困ったら相談してみましょう。金融機関が返済猶予などの条件変更に迅速かつ柔軟に対応するよう、金融庁からの強い要請も出ています。

③については、現状では困っていない人も、いざという時のために知っておいたほうがいい方法です。詳しく説明しましょう。

ボーナス返済は即刻やめるべき

「①返済期間を延ばす」を選んだ時のリスクは、住宅ローンの総返済額が増えてしまうこと。「②一定期間だけ、返済額を減らす」方法を採った時のリスクは、将来の返済総額が増えてしまうこと。これらについては、拙著『荻原博子の家計の引きしめ術』も参照していただきながら、なるべくリスクを回避しつつ、効果的に活用する方法を検討してください。

とりわけすぐに実行したいのが、「③ボーナス返済額を見直す」です。

会社経営が苦しくなると、真っ先に減らされるのが残業代やボーナス。次が基本給で、それも限界となれば、いよいよリストラということになります。これからは、こうした事態が起きる可能性があります。

残業代については、安倍政権の働き方改革によって減っているという会社も多いかもしれません。ただし、ボーナスについては、減額されながらも一応は支給されていたのではないでしょうか。

ところが、これからはボーナスもかなり減りそうなので、住宅ローンをボーナス払いにしている人は、ボーナス時の返済を見直してみる必要があります。

実は、住宅ローンではボーナス併用払いが多く、半数以上の人はボーナス払いを併用しています。銀行で住宅ローンを組む際に、「月々7万円、ボーナス払い30万円なら、返せますか?」と聞かれると、それなら何となく払えそうな気がする人が多いからです。

返済してはじめて気づく、ボーナス払いの落とし穴

ただ、実際に支払いが始まると、通常月の返済は7万円でも、ボーナス月は月々の7万円に加えボーナスの30万円を支払わなくてはならないので、支払額は37万円となります。30万円支払えばいいと思っていたものが37万円なるのですから、かなりの負担です。

しかも、今後ボーナスがカットされてしまうと、この額は払えません。ですから、なるべくボーナス払いをやめるようにしましょう。

「ボーナス払いをなくして、月々の支払い額を増やす」というのは、年間の支払額の配分を変更するだけなので、金融機関も簡単に応じてくれます。

たとえば、3000万円を金利1.5%、35年ローンで借りた場合、2000万円を月々返済にし、1000万円をボーナス返済にすると、月々の返済額は6万1236円ですが、そのかわりボーナス月の返済額は24万5382円(内ボーナス加算は18万4146円)と、かなり大きくなります。

これを、すべて月払いにすると、月々の返済額は9万1855円で、3万円ほど返済額が増えます。ボーナス払いをやめれば、その分、月々の支払額は増えます。

「8割家計」を実現すればリスク対応力UP

それでもなんとか家計をまかなえるように、無駄を省いてコストダウンしておけば、ボーナスをカットされても、それほど慌てずにすむかもしれません。私が「生活費をそれまでの8割にしましょう」と提案しているのは、家計のリスク対応力を上げるためです。

また、ボーナス払いがなければ、ボーナスを貯金に回すこともできます。貯まった分を住宅ローンの繰り上げ返済に回せば、ますます安心感が高まります。

今の状況でも、家計をやりくりすれば月々に支払う住宅ローンの額を増やせるという人は、できる限りボーナス払いをなくす努力をしましょう。

[経済ジャーナリスト 荻原 博子]

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「ガラケー女」に間違われた女性に殺到した着信300件とDM1000件超

2020年10月12日 08:00 PRESIDENT Online

2019年8月、常磐道でのあおり運転をめぐって、「ガラケー女」という言葉がネット上を飛び交った。東京都内に住む30代の女性は、その「ガラケー女」に間違われて、さまざまな誹謗中傷を受けた。不審な着信は300件、メッセージは1000件を超えたという——。

※本稿は、毎日新聞のWEB連載「匿名の刃 SNS暴力考」をまとめ、加筆した、毎日新聞取材班『SNS暴力 なぜ人は匿名の刃を振るうのか』(毎日新聞出版)の一部を再編集したものです。

30代女性を襲った、電話とメールの嵐

誹謗中傷の被害者となるのは、著名人だけではない。多くの人がインターネットで広くつながっている時代。誰であっても突然、匿名による卑劣な攻撃にさらされる危険性はある。

「ガラケー女」という言葉が盛んに飛び交う事件があった。

2019年8月、茨城県の常磐自動車道で、後方からあおり運転をした男が、相手の車を停車させ、運転席の男性を殴ってけがをさせた事件だ。男が暴行を加えた際、「ガラパゴス携帯」と呼ばれる折りたたみ式の携帯電話を持つサングラス姿の女性が、笑いながら暴行の様子を撮影していたのだ。「ガラケー女」と名付けられたこの女性の姿を収めた動画がSNSで拡散され、テレビのニュースでも繰り返し報じられた。男の粗暴ぶりもさることながら、男と同乗していた非情な「ガラケー女」にも世間の関心が集まった。

事件から1週間後、お盆の終わりの週末だった。東京都内に住む30代女性は午前6時ごろ、枕元に置いたスマートフォンの着信音で目が覚めた。早朝にもかかわらず、電話とメールが鳴り止まない。寝ぼけ眼で手に取ると、知らない電話番号や番号非通知の着信が大量に表示されていた。その中にあった友人からのメッセージを見ると、「ネットに情報がさらされている」という知らせだった。

「人違い」と発信しても炎上は収まらない

添えられていたアドレスをクリックして、飛び起きた。

あるウェブサイトに自分の名前や顔写真が掲載されていた。〈犯人だ〉という言葉も目に飛び込んできた。女性があおり運転事件の「ガラケー女」だという指摘だった。

全く身に覚えがない。サイトは、事件などに関する情報を集積した「まとめサイト」と呼ばれるブログで、〈捕まえろ〉〈自首しろ〉と責め立てる言葉が並んでいた。

知らせてくれた友人からは、SNSで否定するよう勧められたものの、焦りと混乱で何を書けばいいのか分からない。女性は当時、事件についてあまり関心がなく、サイトで自分の写真と一緒に並べられた加害者の男が誰なのかも分からなかった。

女性が個人経営する会社のウェブサイトが画像として出回っていたため、会社に電話やメールが殺到し、転送先のスマートフォンに届いたのだった。女性のインスタグラムにも「早く自首しろ」などという書き込みが相次いだ。匿名で利用していたにもかかわらず、なぜか女性のアカウントだと特定されていた。人違いだということを発信しても、〈そんなことを投稿する暇があるなら、早く警察に行け〉というコメントがつき、さらに炎上した。やがて〈詐欺師〉〈ブス〉などと、事件とは無関係の中傷も交じるようになった。

2日間で300件の電話と、1000件のメッセージ

幸い、翌日に、あおり運転の加害者の男と「ガラケー女」は傷害や犯人隠避などの疑いで逮捕され、SNS上の攻撃は一気に収束した。しかし、約2日間で、不審な電話の着信は約300件に上り、インスタグラムに届いたダイレクトメッセージは1000件を超えた。ツイッターの中傷投稿は、代理人の小沢一仁弁護士(東京弁護士会)が確認しただけでも100件以上のアカウントから届いていた。リツイートを含めると、その何倍もの人が誤った情報を拡散したとみられる。

誤認された理由はこう推測される。女性は匿名でインスタグラムを利用していたが、趣味の旅行や食事のほか商品紹介などで注目され、フォロワーが約1万人もいた。加害者の男もその一人で、そのつながりから男の交際相手と一方的に決めつけられたとみられる。

インスタグラムは一方的にフォローが可能で、女性はフォローされていることも知らなかった。

まとめサイトに載せられた女性の写真は、一緒に写っている友人がフェイスブックに掲載した写真を切り取ったものだった。事件当時の「ガラケー女」の服装と似た、帽子とサングラスを着けた写真も出回った。匿名のインスタグラムのアカウントから、どうやって実名のフェイスブックにたどり着いたのかは、その後も謎だ。ちなみに女性は、「ガラケー」は使っていない。

暴言を吐いていたのは「普通の人」たちだった

あおり運転関与の男女が逮捕されたと伝わると、インスタグラムやツイッターには、謝罪の言葉が届くようになった。目立ったのは「デマを信じて暴言を吐きました」と釈明する内容のもの。しかし、女性は「デマを信じることと、暴言を発信することは全然違う。許されないでしょう」と憤る。「すみませんでした」という言葉の後に絵文字を付けてくる人もいた。自身の痛みに比べ、あまりの「軽さ」に驚いた。お詫びのメッセージを送ってきた後、アカウントを消して逃げる人もいた。

約1週間後、女性と小沢弁護士は東京都内で記者会見した。中傷投稿した人物に対し、損害賠償請求や刑事告訴をすると明らかにした。損害賠償請求の準備のため、ツイッター社やSNS事業者に対し、発信者情報の開示請求を始め、小沢弁護士は「請求対象は百件単位の規模になる」と話す。

自ら名乗り出て来た人とは和解に応じているが、「普通の人」が多かったという。未成年から年配者まで年齢層は幅広く、住んでいる地域も全国各地に及んだ。子どもに代わって平謝りする保護者、「家族に知られて肩身が狭い」と連絡してくる男性……。幼い子どもを持ち、普段は「良いママ」として暮らしていそうな人もいた。

友人からの「生きていてくれてありがとう」

一方で、女性が訴え、判決が出たケースもある。愛知県豊田市議(当時)の50代の男性は、自身のフェイスブックに、女性の写真を転載し、「早く逮捕されるよう拡散お願いします」などと投稿。2020年8月17日、東京地裁は、男性の投稿が「原告(女性)の社会的評価を低下させる」として、男性に33万円の支払いを命じる判決を言い渡した。ネット中傷に振り回された「激動の日」から、ちょうど1年を迎える日だった。

木村花さんが亡くなったことが報じられた後、女性はある友人に「同じようなことをされたんだよね。生きていてくれてありがとう」と言われた。改めて、自身の被害の大きさを実感した。その一方で、ネット上には、引き続き匿名による悪意が渦巻く。事件や裁判に関連する報道が出る度、SNS上には〈謝っているんだから許してやれよ〉〈しつこい女〉〈金の亡者〉などの心ない中傷が相次ぐ。

ネット中傷問題では、被害者本人だけでなく、代理人になる弁護士に火の粉が降りかかることも少なくない。小沢弁護士も一連の事件対応に関連し、SNS上で身の危険を感じるような中傷を受けたり、画像を面白おかしく加工されたりしたという。

「被害を受けるリスクを考え、ネットトラブルの訴訟を引き受けたがらない弁護士もいると思います」

[毎日新聞取材班]

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20年ぶりに厚生年金保険料が大幅アップ「稼ぐ人ほど損をする」は本当か

2020年10月12日 08:00 PRESIDENT Online

最近、手取りが減ったような……と思っている人はいませんか? 一部の人については、2020年9月から厚生年金の保険料がアップしました。保険料を決めるベースとなる「標準報酬月額」が約20年ぶりに引き上げられたためです。引き上げは損なのか、得なのか。詳細や影響についてチェックしておきましょう。

月収63万5000円以上では保険料がアップ

2020年9月から、一部の人の厚生年金の保険料が引き上げられました。保険料が引き上げられたのは、標準報酬(月収)が63万5000円以上ある高所得の人で、それ以外の人の保険料は変わりません。

厚生年金の保険料は、「標準報酬月額」によって計算されます。

4~6月に会社から受け取った報酬(基本給、残業手当や通勤手当、住宅手当などを含む)を合計し、それを3で割った金額を、「報酬月額」と言います。

この報酬月額がそのまま保険料の計算に使われるわけではなく、「標準月額39万5000円~42万5000円では27等級・標準報酬月額41万円」など、「等級」と「標準報酬月額」が決まります。

こうして求めた標準報酬月額が、その年の9月~翌8月の分まで適用され、厚生年金と健康保険の保険料が計算される仕組みです。

厚生年金を決める標準報酬月額は、2020年8月分まで34等級が最高でしたが、9月分から、35等級が新設されました。報酬月額60万5000円以上の人は一律34等級・標準報酬月額62万円だったのが、標準報酬63万5000円以上では35等級・標準報酬月額65万円にアップしたのです。

保険料引き上げは全体の数%?

標準報酬月額の上限は、全被保険者の平均標準報酬月額の2倍になるように決められています。ここ数年、年度末の平均給与の2倍が上限(64万円)を上回る状態が続いており、9月から政令で改正されることになったというわけです。標準報酬月額が引き上げられるのは、約20年ぶりのことです。

2017年度末時点で約4400万人いる厚生年金加入者のうち、約290万人(約6.8%)が上限の62万円に達しており、その多くが新しい上限に変わると見込まれています。ちなみに、標準報酬月額の平均は、2017年3月末では31万8656円、2019年3月末では32万2404円です。

また標準報酬月額の分布は、図表1のようになっています。

月額約2700円アップ。将来の年金も増える

では、実際に保険料はどの程度上がったのでしょうか。

保険料は標準報酬月額の18.3%で、本人と会社が折半で負担しています。これまでの最高(標準報酬月額62万円)は11万3460円でしたが、新設された標準報酬月額65万円では11万8950円となりました。1カ月当たり5490円、本人負担はその半分の2745円アップとなっています。年間では約3万3000円の負担増です。

気になるのは年金額への影響です。

あくまで目安ですが、51歳~60歳など、保険料が増えた期間が10年間の場合、年金は年額で2万円弱増える見込みです。保険料が増えた期間が20年なら、同4万円弱の増額です。

10年間で保険料を約33万円多く払うことになりますから、単純計算では、16年半受け取ればモトがとれる、ということになります。

ちなみに、35歳女性の平均余命は53年、40歳女性は48年、45歳女性は43年、50歳女性は38年です(令和元年簡易生命表より)。あくまで平均ですが、35歳女性では65歳から88歳まで23年間、年金を受け取ることが想定され、保険料が増えるのも悪い話ではありません。さらに公的年金は死亡するまで受け取れる終身型ですから、長生きするほど、受取総額は多くなります。得をするかどうかに目がいきがちですが、公的年金は保険ですから、増えた年金額を受け取れるということは、老後生活の安心につながります。

また公的年金には、障害を負った場合の障害年金、死亡後に遺族に給付される遺族年金があります。

いずれも納めた保険料が年金額を決めるベースになりますから、標準報酬月額が高いと、障害年金、遺族年金とも多くなります。

保険料にも年金にも上限がある

1つ、知っておいてほしいのは、稼げば稼ぐほど年金が増えるわけではなく、上限がある、ということです。

前述のとおり、標準報酬月額は65万円が上限であり、それを超えると、いくら収入が多くても標準報酬月額や年金保険料は増えません。したがって、年収1000万円の人も、年収2000万円の人も、年金保険料も同じ、年金の額も同じ、ということです。

一般的な収入の人でも、公的年金だけでは老後資金は足りないと考えられますが、高収入でリッチな暮らしが身についている人、老後も生活水準を保ちたい人では、一層、「年金では全然足りない」ということが起こりがちです。収入が多い人は多いなりに、老後資金を準備するのが望ましい、というわけです。

健康保険の保険料は変わらない

標準報酬月額は、公的年金だけでなく、健康保険の保険料を計算にも使われます。

ただし、厚生年金に使われる標準報酬月額が35等級までなのに対し、健康保険では50等級まであり、62万円を超える人(65万円以上の人)にも従来相応の保険料がかかっています(今回、保険料の引き上げはありません)。

健康保険の保険料は、40歳未満の人では標準報酬月額の9.87%(東京都協会けんぽ)、40歳以上では介護保険の保険料が加わるため、同11.66%となります。例えば標準報酬月額が30万円の人は40歳未満なら2万9610円(自己負担は半額の1万4805円)、40歳以上では3万4980円(同1万7490円)です。標準報酬月額が65万円の人は40歳未満なら6万4155円(自己負担は半額の3万2077円)、40歳以上では7万5790円(同3万7895円)となります。

給付については医療機関の窓口で支払う自己負担分は一律3割負担ですが、傷病手当金や出産手当金については、標準報酬月額によって給付額が変わってきます。

傷病手当金とは、病気やケガで一定期間働けない場合、4日目から最大1年半、給付されるものです。支給額は標準報酬月額÷30日×3分の2です(給料は支払われている場合は、給料との差額を給付)。

出産手当金とは、産休を取得し、産休中の給料が減額になったり、ゼロになったりした場合に、健康保険から支給されるものです。産休中の給料がゼロの場合で、標準報酬月額÷30日×3分の2の額が、原則98日分、支給されます。産休中に給料が減額された場合の支給額は、標準報酬月額÷30日×3分の2から給料の日額を引いた額(支給日数は98日分)となります。

つまり、保険料を多く払うことで給付も手厚くなる、というわけです。給付を受ける機会がなければ負担が増えるのみですが、「保険」という性質上、この点は仕方ありません。

たくさん稼いで年金を増やす

厚生年金の保険料は標準報酬月額の18.3%、健康保険の保険料は同9.87%(東京都協会けんぽ。介護保険料を含めると11.66%)と、負担は小さくありません。しかしその半分は会社負担ですから、保障を半額で買っているとも言えます。また社会保険料負担が増えると、年末調整で受ける社会保険料控除も増え、所得税や住民税の負担は軽減されます。

前述のとおり、年金や給付金が増えるメリットもあり、とくに男性より長生きの傾向がある女性は、終身で受け取れる公的年金額を多くしておくほど、安心感が高まります。負担が増えるのはいやだと思いがちですが、たくさん稼いで、たくさん保険料を払って、年金を増やす。そういった前向きな姿勢が大切だと思います。

[ファイナンシャルプランナー 井戸 美枝 写真=iStock.com]

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