cat_11_issue_oa-president oa-president_0_27b5df7f5349_月額5800円「洋服レンタル」にハマる人の正体 27b5df7f5349 27b5df7f5349 月額5800円「洋服レンタル」にハマる人の正体 oa-president 0

月額5800円「洋服レンタル」にハマる人の正体

2019年8月17日 12:00 PRESIDENT Online

音楽や動画の定額制サービスが相次いで誕生するなか、「洋服の借り放題」が会員数を増やしている。ユーザーは主に、働く女性や子育て中の母親だ。なぜ彼女たちは、返却前提のレンタルサービスを支持するのか――。

サブスク乱立時代に生まれた「洋服借り放題」

“サブスク”が百花繚乱だ。サブスクとは、買い切りではなく、定額で一定期間利用できるサブスクリプションサービスのこと。定額制はヘビーユーザーほど割安になり、事業者側も安定的な売り上げが見込めるメリットがある。

音楽配信のスポティファイや動画配信のネットフリックスといったデジタル系サービスをきっかけに注目され始めたが、今年2月にはトヨタが新車を3年間使えるサービス「KINTO」を発表、6月にはキリンがクラフトビールのサブスク「CLUB BTG」を始めるなど、いまやリアルワールドにもサブスク化の波が押し寄せている。

アパレル業界も無縁ではない。「アース ミュージック&エコロジー」といった人気ブランドを抱えるストライプインターナショナルは、2015年9月に、ファッションのサブスクサービス「メチャカリ」を開始。スタート以来、サービスは順調に拡大し、4年目の現在、会員数1万3000人の規模に成長している。

なぜファッションのサブスクを始めたのか。メチャカリ事業を立ち上げた澤田昌紀・メチャカリ部部長は、自社の事情を明かしてくれた。

「わが社は13年にグループ連結で売り上げ1000億円を超えました。ただ、アパレル市場そのものは縮小傾向にあり、既存事業だけでは成長に限界があります。1兆円企業を目指すには、新規事業が必要でした」

店舗事業との“利益の食い合い”も予想されたが

新規事業のヒントをくれたのは、社長の石川康晴氏だった。

「トヨタは作って売るだけでなく、リースや中古車の買い取りもしている。アパレルも製造販売にとどまらず、川上から川下までもっと広く手掛けられるはずだ、とアドバイスをくれまして。売る以外のビジネスを検討した結果、ファッションのサブスクに行き着きました」

実はメチャカリが事業化される7カ月前に、他社が洋服の定額レンタルサービスを始めている。ただ、自社でデザインし、製造するアパレルメーカーのサブスクはメチャカリが日本初。澤田氏は、メーカーである強みをこう強調する。

「自社で作るので当然、仕入れコストは抑えられる。また、洋服ははやり廃りのあるナマモノ。新品新作をいち早く提供できることも強みです」

ただし、メーカーが行うサブスクにはデメリットも存在する。既存事業とのカニバリゼーションだ。安く借りられるなら、顧客は自社製品を買わなくなるのではないか。そんな不安から、社内で抵抗が起きるケースも珍しくない。

「カニバリは当然、懸念しました。そこでわが社の会員基盤を使って100人を対象に3カ月、テストマーケティングを実施したのです。その結果、多くのユーザーはメチャカリを使いつつ洋服も買っていました。このデータがあったので社内も説得できました」

利用者は「流行好きな若い女性」ではなかった

メチャカリのベーシックプランは、月額5800円(税別)で3アイテムを借りられる。3アイテムの枠内であれば、何度借り換えてもいい(返却手数料1回380円)。ストライプの主要ブランドの価格帯は4000~7000円前後なので、1~2着を買う料金で3着以上のアイテムを着ることができる。スポーツブランド「プーマ」など他社製品も多く展開しており、いろいろな洋服を着てみたいヘビーユーザーには、魅力的なサービスだ。

澤田氏が当初想定していたターゲットも、「洋服大好きな若い子たち」だった。一般的に若い層ほどファッションに関心が高い一方、経済的には余裕がない。ファッションを安く楽しむことができるサブスクは、その層にとって垂涎のサービスであるはずだ。しかし、実際にサービスを始めると、中心になっていたのは想定外の層だった。

「データを取ると、過去に店舗やECサイトで私たちのブランドを購入した経験のある人は3割しかいませんでした。7割はメチャカリ独自のお客様で、中心は20~30代前半の働く女性やママさん。メチャカリで初めて私たちのブランドを着たという方も多いです」

働く女性やママさんは仕事や子育てに忙しく、ファッションの優先順位は必ずしも高くない。なぜ借り換えるほどお得になるサブスクを利用するのか。澤田氏の分析はこうだ。

「メチャカリはアプリで簡単に借りられて、返却時のクリーニングも不要。衣替えをして、冬のコートを保管しておく必要もありません。その手軽さが、忙しくて洋服選びやメンテナンスに時間をかけられないお客様の生活にフィットしたのでしょう。サブスクのコスト面より、手間がかからないというベネフィットが注目されたようです」

試着感覚で借り、気に入れば買い取れる

働く女性やママも、洋服に興味がないわけではない。おしゃれはしたいが、他に優先すべきことがあるから後回しになっているだけだ。本当は洋服好きであることは、買い取りサービスの利用者がいることからもうかがえる。

メチャカリには、借りたアイテムを返却せずに60日間がたつと、そのアイテムをそのままもらえる仕組みがある。それに加えて、2016年8月、借りたアイテムを気に入れば60日待たずとも割引価格で買い取りできるサービスも始めた。割引率は登録しているプランによって異なるが、「ベーシックプラン」(月額5800円)の場合は表示価格より5%オフとなる。

「60日経てば追加料金を払うことなくもらえるのだから、わざわざお金を払って買い取りするニーズはないと考えていました。しかし、お客様の声を参考にして買い取りの仕組みを導入したら、利用される方が想定以上にいらっしゃった」

このことから読み取れるのは、試着代わりのサブスク利用だ。洋服好きの人は、実物を試着してチョイスしたいと考える。しかし、忙しくて店舗に足を運ぶ暇はない。そこでサブスクを使って自宅で試着して、気に入ったものを買うという使い方が現れ始めたのだ。

「試着感覚という意味では、ECサイトで購入して、気に入らなければ返品するというやり方もあります。しかし、日本人は真面目で、一度買ったものを返品するのに抵抗感を持つ人が多い。欧米や中国のECサイト返品率は2~3割ですが、日本は1割以下。そうした国民性に、最初から返却することが前提のサブスクは合っている」

コーデを代わりに決めてくれる新機能も好調

コスパより、時短につながるベネフィット。顧客が求めるものは当初の想定と違ったが、メチャカリは新たに分かった顧客ニーズに合わせてサービスの改善を続けてきた。

例えば今年6月から、QRコードを利用してファミリーマートやオープン型宅配便ロッカー「PUDOステーション」から返送できるサービスを開始。送り状を書く必要はなく、時間を気にせず返却できるのはありがたい。

18年10月に導入した「パーソナライズスタイリングAIチャットボット」にも注目だ。これはアプリ内の行動履歴を基に、ユーザーに合わせたコーディネートをAIが提案するというもの。「メチャカリのアイテムは1万点以上で、借りたいものがない状況は考えにくい。ただ、忙しい人にとっては、借りたいアイテムが目の届くところにあることが重要。じっくり選ぶ時間がない人も、これならすぐに好きなアイテムを見つけられます」

チャットボットを使っている人の会員継続率は、未使用の人より高いという。これもメチャカリが“ショッピング大好き”派より“時短”派にウケている証左だろう。

時間と資源のムダを嫌う価値観にフィットした

メチャカリの利用が広がる中で、澤田氏が感じている消費のトレンドがもう一つある。倫理的に正しいことを重視する「エシカル」だ。

「1980~90年代は高級ブランドの時代でした。その反動として2000年代はファストファッションが隆盛して、安く買って使い捨てにする文化が広がりました。その罪悪感から、いまは資源をムダにしないエシカルな価値観が広がり始めており、メチャカリもその文脈で利用されています」

メチャカリで貸し出すのは新品だが、返却後は中古品として二次流通市場に回される。その売り上げはメチャカリ事業に計上され、アイテムの補充やサービス改善に使われる。資源としてもビジネスとしても、エコサイクルができている。

メチャカリが人気を集める背景には、効率的にファッションを楽しみたいニーズと、資源のムダを嫌うエシカルな価値観があった。消費者がサブスクに求めるものは何か。サブスク化に乗り出すなら、それを見誤らないことが重要だ。

[ジャーナリスト 村上 敬]

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cat_11_issue_oa-president oa-president_0_47ffeb69ce85_北朝鮮が中国を捨てトランプを選んだワケ 47ffeb69ce85 47ffeb69ce85 北朝鮮が中国を捨てトランプを選んだワケ oa-president 0

北朝鮮が中国を捨てトランプを選んだワケ

2019年8月17日 12:00 PRESIDENT Online

北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長が、中国を見限り、アメリカのトランプ米大統領との関係を優先しつつある。なにが起きているのだろうか。危機管理コンサルタントの丸谷元人氏は、「これまで北朝鮮を支援してきた『上海閥』が中国国内の権力闘争に敗れつつある。このため金正恩氏は中国を見限り、地下資源開発などの利権を狙うトランプ氏と手を組むことを決めたのだろう」という――。

故・金正男氏の中国人脈

建国の父・金日成につながる北朝鮮の「ロイヤルファミリー」は、習近平派対上海閥という中国国内の激しい権力闘争の中を懸命に泳いできた。

例えば現在の最高指導者である金正恩氏の実兄で、2017年に暗殺された金正男氏は生前、習近平政権の完全な監視下にある北京のほかに、旧ポルトガル領のマカオにも生活拠点を持ち、そこに妻子を住まわせていた。マカオは香港とともに長年上海閥が大きな勢力を維持していた地域であり、だからこそ正男氏とその妻子はそこで一応は安全に暮らすことができたのだろうとも言えるが、見方によっては習近平政権(北京)と上海閥(マカオ)の間をうまく泳ごうとしていたようにもとれる。上海閥としては、正男氏の妻子を事実上の人質として手元に置いていたのかもしれない。

しかし今やそのマカオや香港は、北部戦区に吸収された旧瀋陽軍区一帯とともに、上海閥の最後の砦となりつつある。例えば金正男氏と親交のあった江綿恒氏(江沢民氏の長男)は、正男氏が暗殺される直前には上海郊外において軟禁状態にあったとも言われていたし、正男氏殺害の直後に彼の長男の金漢率(キム・ハンソル)氏がマカオから忽然と姿を消し、台湾経由で米国に脱出したという事実は、マカオがもはや上海閥にとって安全な場所ではないことを意味するのかもしれない(この金漢率氏の脱出には、上海閥の持つ米国+台湾コネクションが使われたのであろう)。

こんな中国国内の権力闘争の行方にもっともあたふたしてきたのは、実は北朝鮮の権力者たちであったに違いない。例えば金正男氏にしても、一昔前であれば、米国エスタブリッシュメント(旧支配層)と関係の深い上海閥の傀儡であろうが、その次に権力を握った胡錦濤政権のそれとしてであろうが、いずれは本物の権力者として北朝鮮に戻りたいという下心も少しはあったはずだ。

実際、2012年には金正恩政権初期の実力者であった叔父の張成沢が、中国の胡錦濤国家主席に対し「金正男を北朝鮮の後継者にする」という政権転覆計画を秘密裏に示している。これも正男氏本人のある程度の了解なしにはあり得ないことだろう。

「金正男擁立計画」を金正恩に知らせた男

しかし、浦安のディズニーランドに行って日本当局に逮捕されたこともある、本来享楽的な金正男氏にしてみれば、2013年に国家権力を掌握した習近平氏によって上海閥の人々が次々と粛清され、同年暮れには自分を中国に売り込んでいた張成沢氏が金正恩氏によって処刑され、さらに自分の命まで狙われるようになったことで、元々そこまで熱意のなかった権力者への道を諦めたのかもしれない。

ちなみに、張成沢氏による胡錦濤国家主席への「金正男政権擁立」という密談を盗聴し、それを金正恩に通報したのは、胡錦濤政権で中国共産党中央政治局常務委員を務めた周永康氏(上海閥)であった。同氏は当時、習近平政権による粛清のターゲットとなっていたため、この情報を正恩氏に渡すことで北朝鮮支配のための便利なカードを習近平政権から奪うと同時に、「自分の背後には核を保有する北朝鮮(=旧瀋陽軍区)があるのだ」ということを誇示し、粛清から逃れようとしていた可能性がある。実際、習近平氏が国家主席に就任する直前の2013年2月、北朝鮮は核弾頭の小型化を目指した3度目の核実験を行っている。

この上海閥重鎮の密告は、張成沢氏と金正男氏にとって完全な裏切り行為であり、これによって張成沢氏は極めて残忍な方法で処刑された。一方で金正恩氏にとっても、この一件は「上海閥の連中は、いざという時に自分をも売るのではないか」という疑いを持たせたことであろう。

つまり、北朝鮮の権力者たちは、ここでも中国国内の権力闘争に、単なる政治カードとして利用されていたにすぎないのである。

中国を見切りトランプに走った金正恩

そんな金正恩氏にとって、崖っぷちに立たされた上海閥や、北部戦区の一部となった旧瀋陽軍区の力が、もはや以前ほど当てにならないことは明らかであった。かといって、上海閥の力を借りて習近平氏に喧嘩を売ってきた以上、いまさら習近平政権に許しを乞うこともできない。そこで正恩氏が頼ろうとしているのが、習近平政権と激しく対立する米トランプ政権である。

金正恩氏の持つ武器は二つある。一つは、みずからが開発している核ミサイルであり、もう一つが数百兆円相当にも上るという北朝鮮国内の手付かずの地下資源だ。そこで、一方では核やミサイルで脅威を煽りつつ、もう一方では地下資源を餌に外国投資を呼び寄せようとしている。

そんな正恩氏は、米国や国連による厳しい制裁によって窮地に陥った状況を打破するため、2018年5月にシンガポールで初の米朝首脳会談をやってのけた。そうしてアメリカとも対等に話ができることをアピールした上で、2019年1月に北京を訪問。習近平氏に直接、米国に対北朝鮮制裁緩和を働きかけてほしいと依頼したようだ。しかし、習近平氏は正恩氏に対して「非核化が先だ」と願いを一蹴したと言われている。

この冷たい態度は、習近平氏にとってみれば当然のことであった。2016年から17年初頭にかけては、不倶戴天のしぶとい仇敵・上海閥との暗闘がまだ予断を許さない時期だった。そうした状況のもとで習近平氏は、旧瀋陽軍区の後ろで荒ぶる金正恩氏を少しでもなだめるため、お近づきの印として金正男氏の暗殺を容認した可能性がある。

だが正恩氏はそれにまったく感謝しなかったばかりか、同じ2017年の夏には中国本土のほとんどを射程に収める長距離ミサイルを立て続けに発射(実際は北海道上空を飛行)。9月には核実験まで実施し、北京を十分に核攻撃可能だとする能力を改めて誇示した。つまり、習近平氏としては顔に大きく泥を塗られた格好で、2019年1月に金正恩氏が会いに来た際にも、そのときの屈辱は忘れていなかったはずだ。「一体どの面を下げて」とでも言いたかったのが本音であろう。

こうして習近平氏に突き放された金正恩氏は、単独でトランプ政権と交渉をする以外にないと感じたに違いない。正恩氏は北京から帰国してすぐ、トランプ政権との秘密交渉を開始。それから数週間後の2月5日、トランプ大統領は一般教書演説の場で突然、「2月27日と28日に金正恩氏と再び会談する」ことを発表したのであった。

金正恩氏にとっては願ったりかなったりの展開だったろうが、このことは同時に正恩氏自身が、上海閥や旧瀋陽軍区といったかつての中国人脈の大半と、反トランプで固まる米国エスタブリッシュメント層を、完全に敵に回した瞬間でもあったに違いない。

日本にとっての二つの懸念

拉致問題の解決を目指す日本政府にしてみれば、安心確実な後ろ盾であった上海閥が力を失い、藁をもつかむ気持ちでトランプ政権に接近している今の金正恩政権の状況は、絶好の機会ではあるとも言える。その一方で、朝鮮戦争の終結と北朝鮮大規模開発を目指すトランプ政権は、日本に対して「拉致問題解決を手伝ってやるから、北朝鮮のインフラ復興整備のカネを出せ」などと言いかねない。日本政府もひそかに警戒はしているだろうが、実際に要請されれば断ることはできないだろう。

日本には、かつて江沢民政権が米クリントン政権とともに行った「ジャパン・パッシング」という名の対日包囲網によって、大変な経済的痛手を受けたという苦い記憶がある。それをふまえれば、現在米国内でも優勢になりつつあるトランプ政権に追従し、その力を使って孤立無援の金正恩政権に対し、今のうちから影響力を行使した方がはるかに得策であるかもしれない。

北朝鮮が改革開放路線に舵を切った暁には、北は未曾有の好景気に沸く可能性がある。その際に、その経済発展の下支えをするインフラを日本のカネで作れというのなら、いずれ日本にも利益がきっちりと回ってくるような賢い算段をすればよいのだ。

「戦後補償」より低金利貸付で開発にからめ

ただここで日本が注意すべき点は二つある。一つは、そのカネの出し方だ。日本としては、(最近韓国からも声が上がり始めている)北朝鮮に対する「戦後補償」などではなく、可能な限りの低金利ローンという形態でカネを出すのが最善の形だろう。

そうなれば、朝鮮半島は場合によっては日本円通貨圏になる可能性すらある。もし朝鮮半島が日本円通貨圏になれば、巨額の地下資源開発ビジネスに参加する日本にとっては為替リスクも減り、ビジネスの機会も増えるのではないか。人口減少による経済縮小が予測されるなか、成長の起爆剤にすらなりうる。

朝鮮半島にとっても、これは決して悪い話ではない。国内開発を信用度の高い日本円で行うことで通貨リスクの分散ができ、経済基盤の安定を通じて大いなる繁栄に至る可能性も出てくる。

それは日本が北東アジアにおける経済的覇権を握ることにもつながるだろう。第二次大戦以来、時には中国をも使って敗戦国日本を永遠に封じ込めておきたいと考えている米国エスタブリッシュメント層にしてみれば、これは許し難いことであろう。だがその一方で、米国債の最大保有国である中国がその保有量を減らし始めている今、強い経済をベースに日本が米国債を買い支えるのなら、商人気質のトランプ大統領には魅力的に映るに違いない(もちろん、米国は日本を引き続き「忠実な番犬」と見なし、対中監視の前線基地として使おうとするであろうが)。

北朝鮮の核が「放置」されるリスク

もう一つ日本が深く注意すべき点は、北朝鮮の非核化がおざなりになってしまう可能性だ。北朝鮮の核問題にそれほど強いこだわりを持たないトランプ大統領が、金正恩氏を完全に手中に収めれば、北の核はそのまま放置されてしまうことになりかねない。

この可能性は決して低くない。なぜなら、トランプ大統領にしてみれば、北朝鮮の核兵器は中国・習近平政権の喉元に突きつけた匕首(あいくち)のようなものであり、まさに理想的な中国への交渉カードになりうるからだ。一方の金正恩氏にしても、長年自分を侮蔑し、腹の底ではいまだに信頼しようとせず、非核化だけをうるさく迫ってくる習近平政権よりも、その習政権と厳しく対立し、核保有を大目に見てくれるトランプ政権の方がはるかに付き合いやすい相手であるに違いない。

このような状況で、もし今の日本が北朝鮮に対して何ら積極的に関与しないまま、本心では日米安保の破棄さえ願っているトランプ政権によって南北融和が成立し、米国その他の国が北の復興資金をカバーするのみならず、北の核兵器が温存されるような事態が起きたとしたらどうなるか。核ミサイルを持ち、エネルギーや地下資源の多くを自給自足可能な人口7000万の強力な反日統一国家が、やがて朝鮮半島に現れることになる。これは日本にとって安全保障上の死活問題だ。つまり日本は今、国の将来を左右する大きな選択を迫られているのである。

この選択を誤らないためにも、激動する今の米朝・米中・中朝の三角関係を、日本がただ黙して座視することは許されない。将来の日本の繁栄と安全のためにも、この三角関係の裏で今まさに進行中の、米中両国内における凄まじい権力闘争と、その間で生き残りを図る金正恩政権の実相を注意深く観察しなければならない。そして、現在の状態をチャンスと捉え、外交力とそれを担保する国防・軍事力とを一層強化し(そのために必要であれば憲法改正も行い)、この三角関係に積極的に関与していく必要がある。

[危機管理コンサルタント 丸谷 元人]

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cat_11_issue_oa-president oa-president_0_5cfa190de166_橋下徹「表現の不自由展が失敗した本当の理由」 5cfa190de166 5cfa190de166 橋下徹「表現の不自由展が失敗した本当の理由」 oa-president 0

橋下徹「表現の不自由展が失敗した本当の理由」

2019年8月17日 12:00 PRESIDENT Online

愛知県知事が実行委員長を務める大規模な現代アート展の一部、「表現の不自由展・その後」が中止に追い込まれた件で、批判派・擁護派の議論が過熱している。言論の自由・芸術の自由とその制限はどうあるべきか。大阪市長時代にヘイトスピーチ規制条例を制定した橋下徹氏が見解を述べる。

何が「ヘイト」か? 事前に判別するのは難しい

あいちトリエンナーレ「表現の不自由展・その後」に関する今回の騒動は、芸術の自由、表現の自由とその限界を考えるには絶好の教材だ。

これに類することとしてよく問題になるのが、役所が設置するホール等において政治集会を禁じることの是非である。特に、憲法9条改正反対などの集会が禁止されて、表現の自由の侵害だ! と問題になることが多い。

大阪市が設置する区民ホールは政治集会を禁じていなかった。基本的にはどんな政治集会でもOKである。後述するように、大阪市では全国初のヘイトスピーチ規制条例を制定したが、その過程における徹底した議論を基に、たとえヘイトスピーチの集会である疑いがあっても、事前に区民ホールの利用を禁止するわけにはいかないという結論に至った。

この点、朝日新聞的インテリたちからは、「ヘイトの集会なんだから、そんなの事前に利用禁止にしろ!」という声が上がった。

ヘイトかどうかを誰がどのような基準で判断するのか?

しかし、彼ら彼女らは、表現「内容」による判断が難しいことを知らない。そして「内容」による判断を許してしまうと、今度は自分たちの表現行為も事前規制される恐れが高まることに頭が及ばない。

その表現行為がヘイトかどうかを誰がどのような基準で判断しろというのか。評論するだけの人は、「ヘイトは事前に禁じろ」と簡単に言うが、それを実際にやろうとすれば困難極まりないのである。

基準が不明確なまま事前に禁じることを認めれば、何も問題ない表現まで禁じられる危険性が出てくる。そして場合によっては「ヘイト」という概念を巧みに使って、時の政治権力が、自分たちに都合の悪い表現行為を「ヘイト」として禁じてしまう恐れも出てくる。

ゆえに大阪市のヘイトスピーチ規制条例は、「内容」による事前判断はできないとして、たとえヘイトの疑いがあろうとも、事前に区民ホール利用などを禁じることはしないという結論に至った。表現の自由を尊重したのである。その代わり、ヘイトの表現行為であれば審議会の審査によって事後的にヘイト認定し、公表することにしたのである。事前に規制するのではなく、事後の対応である。もちろん、場合によっては刑法犯として処罰される場合があるし、民事上の賠償責任を負わされる場合もあるが、これらも裁判所によって事後的にヘイト認定された場合であり、時の政治権力が事前に規制するのとは異なる。

表現行為の是非を「内容」によって判断することには、慎重でなければならないのである。常日頃、表現の自由を声高に叫ぶ者に限って、ヘイトは事前に規制しろ! と叫ぶが、表現内容による事前規制の恐ろしさを分かっていない。

したがって、政治的要素を含む表現行為については、判断権者の裁量でどうにでもなるという事態を防ぐために、「内容」によって個別にその是非を判断するのではなく、「認めるなら全て認める。禁じるなら全て禁じる」というように、「画一的・機械的に」アウト・セーフのラインを設定することがポイントとなる。

問われるのは展示物決定の「プロセス」が公平だったかどうか

他方、政治的要素の入った集会やイベントなどに、大阪府・大阪市が協賛や後援をすることは、厳格に一律に禁じた。

平和集会や教育的集会、人権集会などであっても、政治的要素が少しでも感じられるものには、大阪府・大阪市が協賛者、後援者として名前を貸すことを一切禁じたのである。これまで長年、府・市が協賛者や後援者として名前を貸していたものも、一斉に禁じたので、それらの主催者からは、猛反発を食らった。

特に、集会やイベントの「内容」が、朝日新聞的インテリたちが好みそうなものであれば、なおさらこれらインテリたちから猛批判を食らった。大阪府・大阪市は、平和や教育や人権から距離を置くのか! とね。

違う。

基準があいまいなまま、政治的要素の入った集会やイベントに大阪府や大阪市という公権力が協賛者・後援者として名前を連ねることを許すと、今度は公権力が、自分たちに都合のいい集会やイベントを後押しする危険も生じてくる。大阪府や大阪市に好かれれば、府・市の協賛・後援をとることができ、嫌われればとることができないという不平等も生じてくる。実際、大阪市は、市長選挙戦に伴ってそのようなことをやっていた。

では、大阪府や大阪市は、政治的要素の入ったあらゆる集会やイベントに名前を貸すことを一律に禁じるのではなく、全てに貸したらいいではないか、という意見もあるだろうが、大阪府や大阪市内での政治的要素を含む集会やイベントは無数にあり、府や市が申し出のあった全ての集会やイベントに協賛者・後援者として名前を貸すことは事実上不可能である。

このような考えから、大阪市設置の区民ホールにおいては、政治的要素が入ったとしても「全ての」集会(表現)活動に利用を許し、他方、政治的要素が入った集会・イベント(表現)活動には、大阪府・大阪市が協賛者や後援者として名前を貸すことを「一律」禁止としたのである。

政治的要素の入った表現行為については、一律に認めるか、一律に禁じるかの二者択一の判断。

これが、表現の「内容」によって個別判断するのではなく、プロセスや公平性によって判断する手続き的正義の考え方だ。

展示物の内容でその是非の判断をしてはならない

あいちトリエンナーレ「表現の不自由展・その後」に話を戻すと、政治的要素の入った「表現の不自由展・その後」のイベントにおいては、政治的要素の入ったあらゆる展示物を「全て」認めるか、政治的要素の入った展示物は「全て」禁じるかの二者択一で判断するしかなかった。展示物の内容でその是非の判断をしてはならない。

全てを禁じるというなら、「表現の不自由展・その後」は中止。それはある意味、楽だし、役所が主催するイベントの本来のあり方だと思う。混乱を避けるというのが役所の本質的な役割なのだから。

しかし、もし、愛知県や名古屋市などの実行委員会や芸術監督である津田大介氏が、混乱を招いたとしてもこのイベントにあえてチャレンジする、というのであれば、政治的要素の入ったあらゆる展示物を「全て」認める方向でやるしかない。

ありとあらゆる政治的要素の入った作品を全て展示していく。「表現の不自由展」と銘打つ以上、至る所で猛バッシングを食らった、また食らうであろう作品、すなわち本来であれば日の目を見ない、表現の場が与えられないであろう作品を全て並べなければならない。

そしてこの際、重要なのは、あらゆる表現者にチャンスを平等・公平に与えたかというプロセスの部分であり、作品の取捨選択のプロセス、抽選方法等が厳格に行われたかどうかが一番のポイントとなる。表現の中身ではないのである。

[元大阪市長・元大阪府知事 橋下 徹 写真=時事通信フォト]

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cat_11_issue_oa-president oa-president_0_a1fa5bc7de5c_どんなに炎上してもホリエモンが信頼される訳 a1fa5bc7de5c a1fa5bc7de5c どんなに炎上してもホリエモンが信頼される訳 oa-president 0

どんなに炎上してもホリエモンが信頼される訳

2019年8月17日 12:00 PRESIDENT Online

「尖っているほうがかっこいい」「破滅的なものが偉い」というのは本当だろうか。脳科学者の茂木健一郎氏は「堀江貴文さんなど尖っているイメージの人でも、実際は仕事相手や仕事自体には礼を尽くしている。そろそろ『円熟』に目を向けたほうがいい」という――。

※本稿は、茂木健一郎『ど忘れをチャンスに変える思い出す力』(河出書房新社)の一部を再編集したものです。

年を重ねるほど「キレにくくなる」理由

若い人の脳と年を重ねた人の脳とでは、どういうところが違うと思いますか。

若いときは、神経回路の中で何かが突出しているものです。たとえば、若い人は感情が突出しやすいところがあります。

脳の司令塔である前頭葉が発達の途中にあり、感情を抑制する回路が比較的弱いから、不快なことがあったら、ついその場でキレてしまったり、人間関係を壊してしまったりします。

年を重ねていくと、「そういうことをやると、いいことにならない」と経験し反省するから、感情を抑制したり、うまく発散したり、ぶつからないよう迂回したりできるようになります。経験と反省により、脳の抑制回路が育ち、バランスがよくなっていく。つまり「円熟する」のです。

円熟とは、「あいつ、円くなっちゃって、つまらないよな」と悪い意味で言われることがありますが、実は、突出した感情を失ってしまうことではなくて、むしろ強い感情はそのまま持っていて、それに加えて前頭葉の抑制回路が育った、両方向にバランスよく育った脳ということができます。

「円くなる=つまらない人になる」のではない

私は以前、松本人志さんを揶揄するような発言をして、ツイッターを炎上させてしまいました。振り返ると、若いときから私は少し言いすぎてしまうことがあったようです。

言いっぱなしで、相手に本当には届けようとしていないところもあります。大事に思うことを、その場でぶちまけるだけで、説明やカバーが足りていなかったのです。言いっぱなしにしていた後は、必ずと言っていいほど、いいことにはなりません。

昔を振り返って、「言うだけ言ってちゃんと説明しないことは、いいことにつながらない」と今ごろ反省しているわけですが、たくさんの間違いを重ねて、「穏やかであることが大事だ」と、ようやく考えられるようになりました。

円熟とは、多くを見渡し、制御がきくようになる。つまり、強い感情に釣り合うほどに抑制回路が成熟するから、円く見えるだけなのです。

それが人格的強さや徳が高まるということ。

必ずしも穏やかな人が、若者と同じような感受性をなくしたとは限りません。円くなるとは、決して人間がつまらなくなることではないのですから、安心して円熟のほうへ向かっていくべきなのです。

落合陽一さんは「会ってみると好感度が高い」

クリエイティブなのは、尖った人で、円い人は、成功などしない。道徳的な人はつまらない。そう思う人のために補足しておきましょう。

成功している人は、イメージは確かに尖っていても、実際はそうでないことが多いものです。たとえば、研究者であり、アーティストであり、実業家でもある落合陽一さんは、とても尖った存在感を出していますが、実際に会ってみると、好感度の高い人です。宇宙開発事業をしている堀江貴文さんや、アーティストで実業家の猪子寿之さんも、フレンドリーです。

彼らは常識外れで、とんでもないことを言ったり、やったりする人に見えるけれども、実際の仕事の相手や、仕事自体に対しては、大変礼を尽くします。周りも見えているし、自分の欲望に対しても忠実という生き方をしているのだと思います。本当に素でも尖っているという人は、だんだん仲間も仕事も減ってしまうのではないでしょうか。

「尖っているほうがかっこいい」は時代遅れだ

そういう人は、おそらく世間の人々の目には入ってきません。目立っている落合さん、堀江さん、猪子さんはイメージだけは尖っているけれども、実際には協調性があるのに、実績があるから目立ってしまうだけです。本当に素でも尖って、他人をばかにしているような人は、愛されないし、仕事ももらえていないはずです。

もうそろそろ「尖っているほうがかっこいい」という見方から離れ、「円熟」の効用を真剣に考えなくてはならない時期に来ています。尖っていて、華やかで、ぱっとその場で目を引くようなものが偉いというより、地味に見えるかもしれないけれど、本当に味わい深いもの、一生持っていけるような深い知恵とは何なのかと見直していくことで、多くの人が救われるのではないかと思います。

「人間の徳」は高めていくことができる

ポジティブ心理学の創設者マーティン・セリグマンと、クリストファー・ピーターソンが提唱した「キャラクター・ストレングス・アンド・バーチューズ」という人間の徳の指標があります。

長い間、心理学では人間のポジティブな心理状態よりも、ネガティブな心理状態を対象にしてきました。生活に重大な影響を及ぼすからこそ、ネガティブな心理状態の研究が必要だったのです。

セリグマンらは、人格的強さや人間の徳という人間のよい面についても同様に基準を作り、研究する必要があると考えて、「キャラクター・ストレングス・アンド・バーチューズ」を提唱しました。

この基準は「DSM」と呼ばれる精神障害の診断と統計マニュアルに対照し、頭文字を取って「CSV」と呼ばれています。CSVによれば、人間には24種類の人格的強さ(勇敢であること、愛情があること、リーダーシップがとれること、創造性があること、思慮深いこと、審美眼があることなど)があるとされ、それらが6つの徳(勇気、人間性、知恵、正義、節度、超越性)に分類されています。

さまざまな経験を積み、積極的に「思い出す力」を高めることによって、このCSVも高めていくことができます。

「破滅的なものが偉い」は嘘

クリエイティブな仕事をする人たちの中には、「破滅的なものが偉い」という思想が根強くありますが、それは昔のことです。文明的にも文化的にも発達の途中で、とにかく駆動力が必要だった時代には、尖ったものが必要だったでしょうが、物があふれて、何もかも飽和状態の今は逆に、円熟の思想こそ求められています。

当たり前なことですが、破滅したら、少なくとも幸せにはなれません。「破滅的な人格の人が描く小説が面白い。破滅的でないと芸術家にはなれない」というのは、噓なのです。

私は『論語』の中にある孔子の言葉がとても好きです。

「子曰く、吾十有五にして学に志す、三十にして立つ、四十にして惑わず、五十にして天命を知る、六十にして耳順(したが)う、七十にして心の欲する所に従えども、矩(のり)を踰(こ)えず」

特に興味を持つのは、最後のところです。「70歳では、思うままに生きても人の道から外れることはなくなった」という意味です。

70歳になってやりたい放題しても倫理に反しないようになったとは、すごいことです。「一体どのように年齢を重ねていくと、そんなふうになれるのか」と、私は人生の中で繰り返し考えてきました。

これは、経験・反省・学習の繰り返しによって脳の回路のバランスが、ちょうどワインが熟成するみたいに円熟するようになることだと私は理解しています。円熟は、欲求がなくなることではなくて、すべてがバランスよく育ったために、脳の中に特に突出した回路がなくなることです。

しっかり「鏡」を見る人は徳が高まる

威張ったり、他人の意見を聞かないようになったりしてしまう人は、他人に自分を認めさせるために、自分から「私は偉いのだ」と激しくアピールして、かえって他人からうとまれてしまうところがあります。

意欲を持ち、過去の成功体験にこだわらず、自分がどういう状況にいるのか、どういうふるまいをしているのか、周りはそれをどう思っているのかを鏡に映すように把握して、「こういう行動をするとこういう結果になるのだ」と、しっかりフィードバックすると、脳は、悪い結果につながった行動を今後は抑え気味にして、いい結果につながった行動は強めようという形で学習し、徳を高めていきます。

しっかり鏡を見ることができれば、「マイナス」は刈り込み、「プラス」を強めて円熟していくのですが、徳が高まっていかない人は、鏡をうまく見ることができていないのです。今の現実世界に対する意識と、過去の経験に対する意識とを広げていくことが、徳を高めることなのです。

「円くなること」こそが個性を作ること

それぞれの人が自分で経験して、反省して、学びを続けて、円くなるのですが、円くなるとはまた、誰かと同じになってしまうことではありません。

何もかも受け入れて、にこにこして、穏やか。——そんなのは個性をなくすことだ、突出したものもなく、誰も彼も似たようなものになる、と思うかもしれませんが、本当は、円くなることこそが個性を作ることなのです。自分の中の記憶という宝物だけは、他の人が完全に同じものを持つことができません。

それを頻繁に思い出して、自分のやり方で長年耕すならば、あなたは誰とも違う、真の意味で個性的な人間になるのです。

[脳科学者 茂木 健一郎]

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40代会社員は「退職金1000万円未満」を覚悟せよ

2019年8月17日 12:00 PRESIDENT Online

老後の家計を支える会社の退職金や企業年金。運用の重荷から、廃止や削減をする企業が増えている。これからどうなるのか。「プレジデント」(2019年8月30日号)の特集「役所も医者も、誰も教えてくれない『認知症の全対策』」より、記事の一部をお届けします――。

企業の退職金制度は、危機的状況にある

「じつは以前に会社の役員会議で退職金制度の廃止の是非について議論が行われたことがあります。一時は廃止にしてその分を毎月の給与に上乗せする前払い方式が優勢になりました。結果的に退職金を減額して存続することになったのですが、いまでも社内では廃止論がくすぶっています」

こう語るのはある東証一部上場企業の人事部長だ。国が公的年金の補完として期待する企業の定年退職金もいま、危機的状況に陥っている。

「退職金」は退職一時金と定年後に年金として受け取れる退職年金(企業年金)で構成される。

厚生労働省の就業構造基本調査によると、会社員(大学・大学院卒)で勤続35年以上の場合、平均退職金額は1997年では3023万円だったのに対し、2017年の調査では1997万円と1000万円以上減少している。だが、あるだけまだましだ。同調査では、退職金制度を廃止したという企業も08年の16.1%から18年は22.2%に増加。退職年金を廃止し、退職一時金のみにする企業も増加している。

だがじつはこの退職一時金、もらえないリスクもある。NPO法人金融・年金問題教育普及ネットワークの植村昌機事務局長は「退職一時金はあくまでも自社内での積み立てなので、定年時にはいくら払いますと社員に約束していても、業績が悪化すれば払えなくなる可能性もある」と指摘する。退職一時金の先行きには不安が残る。

もう一方の企業年金についてはどうだろうか。企業年金(確定給付年金)は企業が外部の金融機関に積み立てを行うので、会社が倒産しても受給権は保護され、利率も企業が保証する。こちらは大企業に優位な制度とされている。一方で中小企業では廃止する企業が増加中だ。本来は公的年金を補完するものとして、国が推し進めてきたが、いったいなぜこんな事態が起きているのか。植村事務局長はこう指摘する。

「国は中小企業の多くが加入していた企業年金にあたる『適格年金制度』や『厚生年金基金制度』を00年以降廃止し、新たに制度化した安定的な企業年金制度に移行するよう誘導しました。ところが適格年金廃止に伴い、何らかの制度に移行したのは6割にすぎず、4割が移行していません。その結果、企業年金制度を廃止して退職一時金のみの企業が増えたのです」

政府の誘導策の失敗といえそうだが、じつは大企業でも積立金額の減少を余儀なくされる地殻変動が起きている。その要因は2つだ。1つが低金利と運用難による企業年金の積み立て不足。前述したように企業年金は会社が外部に委託して運用し、積み立て不足が発生すれば不足分を会社が補てんしなければならない。あるいは約束した企業年金を減らすしかない。実際に企業は補てんと並行して企業年金の給付額を減額してきた。

給付額の減少を生み出すもう1つが00年の「退職給付会計」の導入だ。決算書に新たに退職給付債務や積み立て不足などを記載することが義務づけられ、積み立て不足が大きいと業績にも悪影響を与え、株価の低迷や社債格付け降格のリスクをもたらす。そのため、経営サイドとしてはできるだけこの確定給付年金をやめる、もしくは減額したいというのが本音だ。

401kは2%で運用できないと損をする

企業年金減少の解消策として脚光を浴びているのが「確定拠出年金(401k)」。会社が拠出した掛け金を社員が自分で運用する年金だが、最大のメリットは、運用損失が発生しても不足を穴埋めする必要がなく、財務リスクがない。02年の制度運用開始以来、導入企業が年々増え続け、18年3月末には3万312社に達している。近年では確定拠出に全面移行する企業が徐々に増え、製造業ではパナソニックに続いて19年の10月にはソニーが全面移行を予定。博報堂も19年4月から移行した。いずれの企業も導入目的に「財務上のリスクの軽減」を掲げている。

導入企業が増える一方で、社員にリスクがのしかかる。401kは運用次第で老後の資産を増やせると喧伝されているが、実態は異なる。401k加入者の19年3月末までの平均運用利回りは1.86%(格付け投資情報センター)。悪くないように見えるが、じつは企業が設定している想定利回りの平均は2%なのだ。

「想定利回りは、会社が拠出した金額を2%で運用すれば退職金目標額に達するという前提です。したがって2%で運用できなければ定年退職時の目標額に達しない。しかし実際は、景気の好不況に関係なく0~1%の利回りの人が4割程度います」(植村事務局長)

いまの運用実態が続けば退職金はますます減っていくことになる。

退職金が減ること以上に企業が問題視しているのは、退職金の存在意義だ。前出の一部上場企業の人事部長は「退職金は役職によって異なりますが、20年前から減少し、いまは平均2000万円弱です。いまの40代半ばの定年時は1000万円を切っている可能性がある。しかし、最も大きな問題は退職金が終身雇用を前提にしていること。いまは中途採用も積極的に増やしているし、会社に長くいるから退職金も多いというのは平等とは言えない」と指摘する。

競争激化で退職金見直しを図る

複数企業の人事責任者を兼務するティーブリッジェズカンパニー高橋実社長もこう指摘する。

「本業の競争激化で退職金見直しを図る企業がさらに増えています。とはいえ、長年勤務している社員の既得権益を阻害するので、退職金撤廃ではなく、401kなどで代替し、緩やかに企業負担を減らす方向に進むでしょう」

実際、毎月の退職金への充当額は月給の6%程度に当たる。高橋社長は設立が浅く変化に富む企業に対しては「退職金制度の導入ではなく、優秀な社員に退職金充当分をプラスして給与体系を上げるとともに、非金銭的報酬によるモチベーション維持策に重点的に投資すること」をアドバイスしているという。今後、退職金ではなく、在職中の給与を増やす企業はさらに増えそうだ。

[人事ジャーナリスト 溝上 憲文]

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cat_11_issue_oa-president oa-president_0_56f180cc9e3b_空気の読めない人には適切な治療が必要だ 56f180cc9e3b 56f180cc9e3b 空気の読めない人には適切な治療が必要だ oa-president 0

空気の読めない人には適切な治療が必要だ

2019年8月17日 12:00 PRESIDENT Online

「あの人、アスぺだから」。空気が読めない、あるいはコミュニケーションが極端に苦手な人に、こんな言葉がぶつけられることがある。しかし「発達障害」と「アスペルガー症候群」は違う疾患だ。そもそも「発達障害」とはなにか。症状とどう向き合うべきなのか。精神科医の岩波明氏が解説する。

※本稿は、岩波明著『うつと発達障害』(青春新書)の一部を再編集したものです。

「大人の発達障害」は何歳くらいに発症するのか

「大人の発達障害」という言葉は、多くの誤解を生んでいます。

第一に、発達障害は生まれつきのものであり、大人になってから発達障害になるわけではありません。

子供の頃は症状が目立たず、社会的な適応に問題がない場合もまれではありません。ケアレスミスが多い、忘れ物が多いなど、何らかの症状はあっても、それが大きなトラブルに発展しない限りは、放置されることがほとんどでしょう。

また、発達障害の症状そのものは、進行性のものではありません。長年にわたり、同じ状態が安定的に続くのが、発達障害の特徴です。

しかし、子供の頃は目立たなかった症状が、大人になって就労し、ストレスの強い状態で「顕在化」することがみられます。

「大人の発達障害」とは、「成人期に達した発達障害」なのです。

症状がなくなるわけではなく、目立たなくなるだけ

これまで医学の世界では、最近までは、発達障害といえば児童期の病気だと考えられていました。医療の対象というより、福祉や教育の対象として捉えられることが多かったのです。

また、小児期の症状は、思春期以降次第に改善すると考えられていました。

ところが近年、成人においても発達障害の症状によって苦労している人が多いことが少しずつ認識されるようになってきました。

特に職場での問題がクローズアップされるようになり、ジャーナリズムも注目するようになり、「大人の発達障害」に関する記事が一気に増えて、専門外来への受診者も急増しているのです。

つまり、「発達障害は、大人になったからといって、症状がなくなるわけではない」のです。本人がうまく対応していて目立たないだけなのです。

誤った診断は、二次障害を引き起こす

ADHDについても、かつては児童期の病気と見なされていました。そのせいで、まだまだ「ADHDは子どもの病気」「大人になるにつれて、自然に多くが改善する」という誤解が多くみられます。

確かに思春期以降に、一見すると症状が目立たなくなるケースもあります。これは多くが、本人の努力によるものです。

しかし、多くのケースでは、大人になってからも何らかの症状が続き、生活に支障が出ています。

例えば、会社において、普通なら考えられないようなケアレスミスをする、段取り下手でスケジューリングを守れない、突発的なことが起こると動揺してパニックを起こす、などがよくみられます。

ADHD特有のこうした傾向が、周囲からは本人のやる気の欠如や、能力不足、不真面目さとして、否定的に評価されることもしばしば起きています。

そのため、ADHDの当事者も自己否定的になりがちで、その結果、うつ病やパニック障害などの不安障害を二次的に起こすことも珍しくありません。

このような二次障害に隠れてしまい、大人のADHDが正しく診断されないことは、現在でも珍しくありません。

専門である精神科医ですら、いまだに正しい知識を備えているとは言えないのです。「よくわからない」と言って診断を断る医師も存在していますが、このような状況は変えていかないといけません。

「発達障害かも」と思ったときの判断基準

私の診察室にやってきた患者の事例です。東京六大学に在学中の方で、本人は「ストレスを感じやすい、自分に自信がない、他人がどう思っているか気になる」といった自覚症状を訴えました。

しかしこれらは二次的に出現した症状です。診察を進めるうちに、主な症状は、「忘れっぽい、無自覚な行動が多い、スケジュール管理が苦手、対人関係が苦手」、さらに「2つのことを同時にできない、集中力がない、優先順位がつけられない、落ち着かない」といったものであることがわかりました。

いずれもADHDに典型的な症状です。ここまでの症状がそろっていて、以前から連続していれば、明らかにADHDだと診断がつきます。

なお、彼は行動上の失敗の例として、「羽田空港に向かわなければいけないのに成田空港に着いてしまった」というエピソードを話してくれました。

通常ではまずありえない間違いですが、これはADHDの特性である不注意からくるものと考えられます。彼は正常以上の知能を持ち、ある有名証券会社に就職が決まっているのですが、これから苦労しそうです。

ADHDとASDの混同は今すぐ修正すべき

夫婦関係の問題でやってきた男性患者の事例もあります。彼の自覚症状は「妻に対して自分勝手な発言が多い、妻の話をちゃんと聞けない、暴言を吐いてしまう」というものでした。

詳しく話を聞いていくと、こうした問題の背景にあるのは自分の衝動性をコントロールできないという特性であることがわかってきました。これも、ADHDによく見られる症状です。

この患者は妻に連れられて受診しました。妻の訴えは夫の暴言よりも、「自分の話をちゃんと聞こうとしない、スルーする」といったことが中心でした。誰しも多かれ少なかれこういうところはあると思いますが、ADHDでは極端に表れます。

アスペルガー症候群などのASDと比較して、ADHDの場合は自己診断が比較的正確です。私は烏山病院でADHDの専門外来を担当していますが、「自分はADHDではないか」と自己診断してやってきた人の7~8割は、その通りADHDの診断がついています。

一方、「自分はアスペルガーではないか」と言ってやってくる方が正しい診断であるのは3割程度です。実際は、他の疾患であることが大部分です。

繰り返しになりますが、「人付き合いが苦手=発達障害=アスペルガー」といった誤解、思い込みは、修正する必要があるでしょう。

「発達障害」は病名か

「発達障害」は、いくつかの疾患を含んだ疾患の総称です。発達障害という独立した疾患があるように語られることがありますが、それは誤った考え方です。

あらためて整理しましょう。発達障害とは、注意欠如多動性障害(ADHD)、アスペルガー症候群などの自閉症スペクトラム障害(ASD)、限局性学習障害(LD)などの疾患を全体的に指す言葉です。他にも、さまざまな疾患が含まれます。

そのうち症例が多いのはADHDとASDであり、特に多いのはADHDです。本書においても、ADHDとASDの2つを中心に扱います。

ADHDは「不注意」と「多動・衝動性」を主な症状としています。落ち着きがないことや、ケアレスミスや忘れ物が多いことなどが、特徴として挙げられます。

一方、ASDの症状は「コミュニケーション、対人関係の持続的な障害」と「限定された反復的な行動、興味、活動」です。人の気持ちがわからないこと、場の空気が読めないことなどに加えて、電車などの乗り物や列車の時刻表など、特定のことに強いこだわりを持つことが特徴です。

このこだわりの症状については、他に自分自身の行動パターンについてのこだわりも含んでいます。そのため、極端な「マイルール」を持っていると言い換えることも可能です。

病名や定義の変化に注意が必要

総人口に占める割合を示すデータはさまざまですが、成人においては、ASDは多くて人口の1%、ADHDは5%前後と言われています。発達障害といえば、ASDに含まれる「アスペルガー症候群」をイメージする人が多いかもしれませんが、実際にはASDよりもADHDのほうが、かなり多くの当事者が存在しています。

前述したように、「発達障害」を個別の疾患と捉える誤解は、医療関係者にも少なくありません。これには、やむをえない事情があります。

その原因のひとつとして、ある疾患の呼び名が複数あったり、その呼び名が時代によって変化したりと、診断名自体も時代とともに変化していることがあげられます。

DSM-5(※)は「神経発達障害」という大カテゴリーを設けており、ASD、ADHDのほか、LD、知的能力障害(精神遅滞)、コミュニケーション障害などが含まれています。

※DSMはアメリカ精神医学会による「精神疾患の診断・統計マニュアル」。精神科の診断基準として世界的に用いられており、2013年に第5版が発表された。

しかし、この診断基準における名称も、時期により変化しています。以前に用いられていた「アスペルガー症候群」という病名も、DSM-5になってから使われなくなりました。現在のところ、アスペルガー症候群はASDに含まれています。今後も、疾患の定義や名称が変わる可能性は十分にありますので、注意が必要です。

[精神科医 岩波 明 写真=iStock.com]

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cat_11_issue_oa-president oa-president_0_462c600bea60_「トゥミ」の出張バッグ「三段活用法」 462c600bea60 462c600bea60 「トゥミ」の出張バッグ「三段活用法」 oa-president 0

「トゥミ」の出張バッグ「三段活用法」

2019年8月15日 08:00 PRESIDENT Online

その出張が終始スムーズに進むかどうか。それは総じてバッグに懸かっていると言っても過言ではない。とりわけ出張は通常出勤とは異なり、持ちだしたアイテムのみですべての日程を消化しなければならないイベントだ。ゆえに積載量から収納の種類、耐久性や機動性、それにそもそも自分のテイストに合うかどうかなど、万全かつ納得のバッグを用意しておかないと、ハプニングやストレスのリスクが増えてしまうもの。


以上の観点から本メディアは、出張を快適にこなすためには“3バッグ体制”こそが合理的とする立場をとってきた。大量運搬に適した「トロリー」。個別収納や携帯性に優れた「ブリーフケース」。それにオフタイムをスマートにフォローする「多目的バッグ」。この3点を揃えて活用することで、出張のあらゆるシーンも無駄なく円滑に進めることができるのだ。さらに理想となるのが、その3点の鞄がチグハグでなく、社会人としての統一感を備えたセットであること。そこで機能性バッグの実力派ブランドから、昨今の出張事情に適した3点を選び出して提案する。

今回は、機能性ビジネスバッグの完成型として世界のビジネスパーソンから信頼を得る米国の「トゥミ」を取り上げる。

世界のビジネスパーソンが愛用する最強ブランド

ビジネスバッグにおいて“タフ”で“機能的”という項目は、やはり世界共通のニーズだ。海外を含め空港などを行き交うビジネスマンの多くが「トゥミ」を携えていることからもそれが分かる。

同ブランドを象徴する素材として名高いFXT®バリスティックナイロンは、防弾ベストに用いる強化素材をベースに、業界最高水準の耐久・耐摩耗性に加え撥水性も兼備させた最強素材。昨今では高機能に加えエレガントな風合いも兼備する、HTSLポリエステルを開発し一層の注目を浴びている。

そもそも一般的な合繊系バッグは、数年で型崩れや故障を起こしてしまうもの。しかし、同ブランドの鞄はその心配がない。無彩色であるブラックという色合いと相まって、確実に任務を遂行する寡黙な“仕事人”を想起させるルックスもポイントだ。出張をはじめ、すべての業務においておごらずに、着実かつ冷静な態度を貫くビジネスパーソンに、華美で軟弱なバッグは似合わない。最強の機能鞄こそ理想の相棒なのである。

都会的な美観を放つ独自素材を使用

優れた耐久性に加え、優雅な光沢感をも備えた独自のHTSLポリエステル素材をメインに、パンチングレザーをスタイリッシュにあしらった「アリーヴェ」は、新時代の「トゥミ」を体現する注目すべきコレクション。なかでもハイエンドなトロリーは、立てたままフロントからもメインコンパートメントにアクセスできる先進構造を採用した新作。内部はジップの開閉にて仕切りができるディバイダーを擁しており、衣類と仕事道具などを細かく分けて収納可能。また、ジッパー開閉による拡張機能付きなので、出張先で荷物が増えても安心だ。各ジッパーのメタルの引き手が不用意にバタつかないよう、ジップエンドのプラーにマグネットを内蔵するなど、細部に込めたこだわりも同コレクションならではの特徴といえる。

荷室の一部にモバイルバッテリーを格納するポケットを装備。付属コードにバッテリーを接続することで、トロリー外装部に設置されたUSBポートから充電することができる。

随所に施されたラウンドデザインが個性を主張

優雅な質感を持つHTSLポリエステルに、パーツには上質なパンチングレザーを用いて、有機的なラウンドデザインにて仕上げた「アリーヴェ」コレクションのブリーフケース。トロリーや小物バッグと揃えて持つことで、よりスマートな印象に。このブリーフは、シンプルなルックスながらそれぞれPC・タブレット用に加え、収納物を保護するマイクロファイバー張りのポケットも装備する。また「トゥミ」の十八番である多彩なポケット類もきちんと踏襲されており、使い勝手に優れたフロント収納の他、ハンドル付け根にも便利な小型ポケットを隠し持つ。

トロリーの項目でも言及したマグネット内蔵のジップエンドのプラーは、このブリーフにも採用されており、移動時もジップのプラーが不用意にバタつかない仕様。また、脱着式のショルダーストラップは、一般的なばねフック式ではなく、スマートに取り付けられるオリジナル構造を採用している。

ボディにフィットする縦型&薄マチ

上掲のトロリー、ブリーフと同様「アリーヴェ」コレクションのショルダーバッグは、スタイリッシュなラウンドデザインも共通事項。容量のわりに邪魔にならない縦型の荷室もひとつのポイントだ。メインコンパートメントは大きく開きながらも脇マチを備えているので、サイドから内容物がこぼれ落ちる心配もない。ブリーフ同様にフロント収納内部には多彩なポケットが取り付けられている。

ジップ式フロント収納の内部には、スマートフォンなどに適したマイクロファイバーポケットを備えている。その他、タブレット用の収納ポケットもあり、ペンホルダーやメタルフックを備えた脱着可能なキーリングも配置する。

[styling:Mariko Kawada、edit & text:Zeroyon Lab.、photograph:Tatsuya Ozawa(Studio Mug)]

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cat_11_issue_oa-president oa-president_0_77c7e6879681_進次郎氏が「入閣→育休」という極秘シナリオ 77c7e6879681 77c7e6879681 進次郎氏が「入閣→育休」という極秘シナリオ oa-president 0

進次郎氏が「入閣→育休」という極秘シナリオ

2019年8月15日 08:00 PRESIDENT Online

小泉進次郎衆院議員とフリーアナウンサーの滝川クリステルさんが結婚した。マスコミは尋常ではない騒ぎ方をしているが、「妊娠」というサプライズまであったのだから無理もない。この騒ぎの裏で、進次郎氏が9月の内閣改造で入閣し、そして第1子の誕生と合わせて「育休」を取得するという説が浮上している。「進次郎劇場」はまだまだ続く――。

超異例ずくめだった「官邸での結婚会見」

「私ごとで大変恐縮ですが……」

7日午後2時ごろ、首相官邸でクリステルさんとともに記者団の前に立った進次郎氏は、慎重に言葉を選びながら結婚の発表を始めた。多くの記者は、東京五輪関連で、新しいイベントの話でもするのかな、というぐらいに考えていたため、仰天の発表だった。

そもそも首相官邸での結婚発表など前代未聞。発表前には2人そろって菅義偉官房長官、安倍晋三首相に結婚を報告している。安倍氏は同日夕、わざわざ記者団の質問に応じ「大変驚きましたが、令和時代の幕開けにふさわしいカップルだなと思いました。30数年前に私が結婚の報告を、(進次郎氏の)お父さんの小泉純一郎先生にしに行った時のことを思い出しました」と笑顔で語っている。

発表以降、テレビは2人の結婚話一色になった。それまでワイドショーの主役は、日本選手として42年ぶりのメジャー制覇を果たした女子ゴルフの渋野日向子選手だったが、彼女は画面から一瞬のうちに消えた。渋野選手が「話題がそっちに行ってくれて(ゴルフに専念できて)助かる」とコメントしたほどだ。

近い将来のファーストレディーが決まった?

2人の結婚は、なぜここまで注目されたのか。事前に一切報道されない「サプライズ婚」だったこと。政治とマスコミの世界で誰もが知る有名人カップルだったこと。いろいろあるが、最大の理由は「近い将来総理になる人物」が結婚したからではないか。

産経新聞とFNNが6月16、17両日に行った合同世論調査によると、「9月の自民党総裁選で選出される次期総裁にふさわしい人物」では、小泉進次郎氏が26.9%でトップだった。2位は安倍首相の25.2%、3位は石破茂元幹事長の24.1%だった。この結果をみる限り、国民のなかでは「首相候補」の筆頭にあるといっていいだろう。

通常、政治家は選挙に出る前に家族を持つ。国会で当選を重ねて「首相候補」になる頃には、子どもも大人になっているのが常識だ。一方、進次郎氏は38歳にして立派な「首相候補」だが、これまで独身だった。「首相候補」が結婚するのは日本では極めて珍しいことなのだ。

多くの国民は2人が結婚するというニュースを見て、進次郎氏とクリステルさんが近い将来、2人で政府専用機のタラップを上り、ほほ笑みながら手を振る姿を想像したことだろう。今回の結婚を「将来のファーストレディーが決まった」という意識で受け止めたのだ。

さらに言えば、年明け早々に生まれる予定の子どもが、数十年後に首相の座についているかもしれない。進次郎氏は国会議員としては4世議員。クリステルさんのおなかの中にいる子が5世として政界で活躍する可能性は高いのだ。どちらに似てもビジュアル的には魅力的な政治家になるだろう。

そう考えるとロイヤルファミリーの結婚に近いインパクトがあるのだ。

進次郎氏の入閣「いいと思う」と菅氏

進次郎劇場は、結婚で終わりそうにない。月刊誌『文藝春秋』(9月号)で進次郎氏は菅氏と対談しているが、菅氏の発言が興味深い。

司会のジャーナリスト・田崎史郎氏が、9月の内閣改造、党役員人事を念頭に「進次郎さんはもう閣僚になっていい?」と質問すると、菅氏はすかさず「私はいいと思います」と回答。さらに「次の自民党総裁選で進次郎さんはポスト安倍の有資格者だと思いますか」と聞くと「ええ、私はそう思いますよ。早すぎるということはない」。思いっきり進次郎氏を持ち上げている。

2人が対談した段階の菅氏は、進次郎氏の結婚話を知らなかったようだが、結婚により進次郎氏の「商品価値」は、さらに高まった。安倍氏や菅氏が、人事の目玉として進次郎氏の白羽の矢を立てようとしないほうがおかしい。

「まず隗より始めよ」で、「育休」か

臆測は臆測を呼ぶ。来年、2人の間に子どもが誕生するのを受けて、進次郎氏が「育休」を取るのではないか、という見方が出ているのだ。

進次郎氏は年金保険料に一定額を上乗せし児童手当の増額などに充てる「こども保険」を提唱するなど、子育て政策に力を入れている。子どもができるのを機に「育休」を取り、父親が子育てに参加しやすい社会に向けた旗を振ろうと考えても不思議ではない。

国会議員には、明確な育児休業制度が制度上ない。現実的には、本会議の欠席届をその都度出すというようなことになるのかもしれない。閣僚になればさらにハードルが高くなり「臨時代理」を置くというような議論になることも予想される。これらは、国民の暮らしのルールを定めるはずの国会が、子育て制度については遅れていることを示している。

元祖「育休」宣言議員は、あの「ゲス不倫」男

国会議員の育休というと、当時衆院議員カップルだった宮崎謙介、金子恵美両氏の件が記憶に新しい。2016年に金子氏が出産するのを前に宮崎氏は「男性の育児参加を推進したい」と、「育休取得を目指す」と宣言したのだ。これに対し当時の菅氏が「育休を取るための議員立法を目指せばいい」などと支援の動きが広がりつつあった。

ところが、金子氏が出産した直後、宮崎氏が不倫していたことが発覚。「イクメン議員」は「ゲス不倫議員」に転落。宮崎氏は議員辞職し、記念すべき育休国会議員の第1号は誕生しなかった。

国会改革を提唱している小泉氏が、自ら「新しく父となった国会議員」となった立場を使って身をもって国会の改革を提起することは十分あり得るだろう。

若い女性たちの支持を高める効果が期待できる

もし「育休」の取得を考えている場合、国政に支障が出るのを極力避けるために、入閣要請があっても断るとの見方もある。しかし、これは凡人の発想かもしれない。

進次郎氏は、父親の純一郎氏がそうであったように、問題を大きく見せて現行制度の矛盾を世間にさらけ出し、世論に訴える、という思考の持ち主だ。だからあえて入閣し「育休大臣」となるのを目指すことも十分あり得そうなのだ。

このシナリオは安倍政権にとっても都合がいい。男性の育児参加を進めるパフォーマンスは、若い女性たちの支持を高める効果が期待できる。

内閣改造や党役員人事は9月に予定される。麻生太郎副総理兼財務相、二階俊博党幹事長ら超ベテラン議員が続投するかどうかばかりに注目が集まっていた人事だが、大きな注目要素が加わった。

[プレジデントオンライン編集部]

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残業大好き昭和上司が「残業するな」という不毛

2019年8月15日 08:00 PRESIDENT Online

今年4月、「働き方改革関連法」の一部が施行され、残業時間に罰則付きの上限規制ができた。人事ジャーナリストの溝上憲文氏は「企業は長時間残業をする社員を監視していますが、よろこんでサービス残業をする“仕事大好き人間”は潜在的に多く、今後は企業が労基署に処罰されるようになる」という――。

「仕事大好き人間」がかける大迷惑の実態

今年4月、働き方改革関連法の一部が施行され、大企業の残業時間の罰則付き上限規制(※)と、年5日の有給休暇の時季指定付与が義務づけられた(中小企業も含む)。

※:中小企業は2020年4月1日施行。

もし違反者が出れば、罰則が科されるうえ、経済的損失や社会的ダメージを受けるだけに企業各社は懸命の対策に追われている。対策を主導するのは企業の人事部だが、彼らが最も目を光らせている対象が「仕事大好き人間」だ。

仕事大好き人間にはポジティブな印象があるが、会社という空間には想像を絶するタイプも存在する。普通に仕事が好きでたまらない人はまだいいが、仕事を頼まれたら嫌とは言えない真面目で責任感が強い人もいる。さらに“お客さま命”で長時間労働も厭わないカルチャーに染まった人物・部門・部署もある。

そうした人たちに対して、国が決めた働き方改革関連法だからと「残業抑制」や「定時退社奨励」を伝えても、ひとごととしか思わないようだ。多数のクリエイターを抱えるゲームソフト会社の人事課長はこう語る。

「不必要な残業をする人を会社から追い出すしかない」

「早く帰れ、と言ってもまず帰りません。なぜなら仕事が楽しくてしょうがないからです。逆に『仕事の期限が迫っているのに、会社から出て行けとは何事か』と、文句を言ってくる管理職もいます。あるいは早く帰ったら、自分のポジションが奪われてしまうのではないかと心配になる社員もいます。自分の地位をライバルに乗っ取られると不安になり、うつになった社員もいるぐらいですから」

こうなると当然、会社としては法的リスクに備えなければいけない。この人事課長は「本来なら長時間労働による健康悪化が創造力さえ奪うことを、時間をかけて丁寧に説明し、腹落ちさせる努力が必要ですが、もはや間に合いません。今は不必要な残業をする人を会社から追い出すなど、徹底した残業規制をするしかない」と嘆く。

1人も法違反者を出さないためには、社内の“残業大好き人間”をあぶりだす必要があるのだが、その効果的な手法に現場は頭を悩ませている。

限度時間を超えて1人でも働かせると刑罰の対象

その困窮ぶりをリポートする前に、今回の法律の「上限規制」の内容を簡単におさらいしておこう。

残業時間の限度時間は原則として月45時間、年360時間。ただし、臨時的な特別の事情がある場合、労使協定を結べばそれ以上働かせることができるが、上限がある。

労使協定を結んだ場合の具体的な上限は……。

(1)年間の時間外労働は720時間以内

(2)休日労働を含んで、2カ月ないし6カ月平均は80時間以内

(3)休日労働を含んで単月は100時間未満

(4)原則の「月45時間」を超える時間外労働は年間6カ月まで

――という制限を設けている。限度時間を超えて1人でも働かせると刑罰の対象になる。

とくに厳しいのが(4)の「月45時間」が年6カ月しか使えないことだ。週2日の会社なら月の出勤日は22日。1日平均2時間しか残業できないことになる。

そうでなくても新年度の4月、株主総会時期の6月、半期決算の9月、年末、年度末決算の3月など会社によって繁忙月が必ずある。「月45時間」超で7カ月働いた社員が1人でもいれば、労基法違反となり、罰則の対象になる。

また(1)の年間の残業時間の上限が720時間だと、月の平均は60時間までとなる。60時間を超える人はどれだけいるのか。

10人に1人が「時間外労働の上限規制」違反予備軍

エン・ジャパンの「企業の『時間外労働の上限規制』実態調査」(2019年6月5日発表)によると、従業員数300~999人の企業では61~80時間が9%、81~100時間が1%の計10%。つまり、ひとつの会社に30~100人程度の法違反予備軍が存在することになる。

その人たちをどうやってあぶりだすのか。最初に思い浮かぶのは社員が申告した残業時間だが、これは当てにはならない。なぜならサービス残業をしている可能性があり、もし労働基準監督署にばれたらサービス残業を含めた残業時間の合計で摘発されるからだ。

建設関連業の人事部長は2つの方法で実際の残業時間を把握していると語る。

「ひとつはIDで管理している入館・退館記録です。入口付近には監視カメラをつけているので誰が何時に会社に来て、帰ったかを確認できます。もうひとつはパソコンの起動時のログイン・ログオフの記録です。昔はタイムカードがありましたが、退社記録を印字してから残業する人もいるので役に立ちません」

長時間残業の“常習者”はほとんどが同じ人だった

ではどうやって残業の実態を把握するのか。この人事部長は今年4月の法律施行を前に次のことを実施したという。

「まず、申告した残業時間が60時間以上を超えている社員をリストアップします。次に、申告時間が60時間を超えていなくても、入館・退館記録やログイン・ログオフの記録で60時間を超えている社員を調べます。すると、残業の有無は別にしても社内に長くとどまっている人が相当数いました。所属長に何のために会社に残っていたのかを問いただし、残業していなのであれば早く帰るように指示を出しました。数カ月かけてチェックしていると、長時間残業の常連はほとんどが同じ人であることがわかりました」

その結果、60時間超えの社員を「要注意人物」に指定し、法違反を犯さないか、今も監視しているという。

「少しでも制限時間を超えそうになると、上司を通じて警告を発し、どんなことがあっても会社を出るように言っています。要するにモグラたたきです。そうやって一人ひとりをつぶしていかない限り、法律をクリアできません」(人事部長)

上司は昔風の仕事大好きのモーレツ社員……

一方、人事部だけで多くの社員の監視には限界もある。食品メーカーでは「内部監査部」が長時間労働社員の撲滅に乗り出している。同社の法務部長はこう語る。

「本社だけではなく、食品安全管理の観点から各工場にも入館ゲートを設置しています。いつもなら不審者の入場などをチェックしていますが、今年4月からは人事部と協力し、内部監査部が長時間、社員の入・退館記録をチェックしています。労働基準法違反というコンプライアンスの観点から違反者を出さないためです。会社が決めた残業の制限時間を超えて働いていた場合、それを見逃していた上司も管理責任が問われるという厳しい姿勢で臨んでいます」

だが、そうやって屋内の“仕事大好き人間”の残業を封じることができたとしても、屋外で働く営業職や地方の工場や支店などの監視は難しい。住宅建材メーカーの人事部長は不安を隠さない。

「じつは数年前に地方の工場で月100時間以上の残業をしている社員がいましたが、労基署の臨検を受け、是正勧告を受けたことがあります。もちろん責任者の工場長は役員会議で厳しい叱責を受けましたが、解任されていません。工場長は昔風の仕事大好きのモーレツ社員です。工場の統括安全衛生管理者でもあるのですが、そういう自覚が乏しい人。同じようなことが起きないように人事部員が出張してチェックしていますが、煙たがっている様子ですし、組織ぐるみで残業隠しをしないか不安です」

本社出身の工場長や支店長は地方での実績を上げて本社の枢要ポストに就きたいという上昇志向の人が少なくない。仕事大好き人間の典型的なタイプだが、こういう社員に限って部下に犠牲を強いる人も多い。

長時間残業上等で有休は取らない昭和上司が働き方改革指揮する不毛

残業時間の上限規制は管理職など管理監督者には基本的に適用されない。だが、4月に施行された「年5日の有給休暇の時季指定付与義務」は管理職も適用される。年5日を下回る社員がいれば1人につき30万円の罰金を支払う必要がある。じつは企業が最も恐れているのは一般の社員よりも管理職が有休を5日取得しないことだ。

前出の食品メーカーの法務部長はこう語る。

「一般社員の有休取得率は徐々に高くなっていますが、管理職になると、5日以上取得している人は半分もいません。今の40代以降の管理職は長時間残業なんて当たり前、有休という文字はないという働き方をしてきた人が多い。また、そういう働き方をしてきた人が今は役員になって『働き方改革』の旗を振っている。そういう人の言うことをまともに聞くとは思えません」

同社では現在、管理職を含めて、上司が本人の希望を聞いて年5日の休みを取る時期を指定し、取得を推進している。だが、それだけで5日取得がクリアできるとは考えていない。

「絶滅危惧種」一掃するには、まだ時間がかる

「10月から12月、そして翌年のバレンタインにかけて繁忙期を迎えます。工場では人手が足りないために、いつも本社の管理職が土・日を含めて総出で応援にいくのが習わしになっています。それはそれで良い企業文化といえますが、土・日に出勤すると他の日に代休を取らなくてはいけません。法的期限である来年の3月末にかけて有休取得者が少なくなる可能性もあります。そうならないように取得日数が不足している管理職は『出社禁止』の業務命令を出すことを検討しています。それでも出社すれば、就業規則上の罰則も適用されます。最後は非常手段に訴えるしかありません」

休め、と会社が言っても聞かずに出社してくる。そんな昭和的な社員がまだいることに驚く人がいるかもしれない。だが、彼ら・彼女たちは決して「絶滅危惧種」ではない。そういう人たちを一掃するには、まだまだ時間がかかるだろう。

[ジャーナリスト 溝上 憲文]

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学歴・収入により女性の朝食摂取率は全然違う

2019年8月15日 08:00 PRESIDENT Online

妊娠・出産経験のない20~30代女性の「朝食欠食率」を調べたところ、4大卒ではなく、仕事を持たず、世帯収入が低い女性ほど、朝食をとらない傾向が強いことがわかった。調査にあたった日本総合研究所の小島明子氏は「健康のためにも朝食をとってほしい」と訴える――。

20、30代女性は食塩と脂肪の摂取過剰で、朝食を抜くことも多い

近年、生産年齢人口である15~64歳の女性の就業率は上昇傾向にあり、さまざまな分野で活躍する女性が増えてきました。しかし、気になることが一点。20~30代の女性の中には日々の仕事や家事、育児に追われ、自身の健康に配慮する余裕のない人が少なくないのです。

女性が若いうちから健康を意識することは、仕事と生活の両立のみならず、妊娠や出産のための身体づくり、あるいは健康で生き生きとした生活を送ることにもつながります。

本稿では、日本総合研究所「妊娠・出産に当たっての適切な栄養・食生活に関する調査(※)」(以下、「栄養・食生活に関する調査」)と、同調査と同時に製作した「働く女性のためのヘルスケアブック」を元に、妊娠経験のない若い女性の食生活の課題について述べます。

※厚生労働省平成30年度 子ども・子育て支援推進調査研究事業

20代、30代女性の半数は「1日3食」だが……

「栄養・食生活に関する調査」によると、妊娠経験のない20代、30代の女性の食生活の理想と現実には大きな乖離があることがわかっています。

妊娠経験のない20代、30代の女性の多くが「現在の食生活を向上させたい」と考えながらも、実践できている女性の割合は3割未満であるのが現状なのです。つまり、実践できていない女性が7割~8割に上るのです。

具体的に食生活のどのような点に問題があるのでしょうか。「栄養・食生活に関する調査」によると20代から30代前半の女性を中心に、下記の食行動の実践度が低いことがわかっています(図表1参照)。

・「不足しがちなビタミン・ミネラルを含む『前菜』たっぷりとること」
・「牛乳・乳製品などの多様な食品を組み合わせ、カルシウムを十分にとること」
・「食塩は控えめにすること」
・「脂肪は質と量を考えて摂ること」

「1日3食をしっかり摂る」ことを実践できている女性は約半数に達しますが、野菜やカルシウムの摂取が圧倒的に不足し、逆に食塩と脂肪の摂取が過剰になっている傾向が顕著なのです。

非4大卒、非就労、低収入の女性ほど朝食をとらない

また、同調査は妊娠経験のない女性の「朝食の摂取状況」も聞いています。それによると、「家庭食」が6割程度を占め、「外食」をする女性は少数派です。朝活という言葉が一時期流行し、朝食が外食となっている女性が多いようなイメージがありますが、現実には家庭食が主流のようです。

ただ、気になるのは「朝食を取らない」比率が15%以上となっていることです。

友人との付き合いやスマートフォンなどの利用による夜更かしなどで体内リズムが狂い、朝は食欲がない、ダイエットに気を使い朝食を抜く(あるいは軽くする)、といった若い女性のライフスタイルも、健康的な食生活の維持を難しくしていると考えます。

朝食欠食率:世帯年収300万円未満20.6%、同600万円以上10.8%

同調査で得られたデータを元に、妊娠・出産経験のない20代から30代の女性を属性別に見て、朝食欠食率を確認すると、下記の特徴が挙げられます。

①「働いている女性」では14.6%、「働いていない女性」では21.7%であり、働いている女性ほど朝食を摂っている女性が多いこと

②学歴が「高卒・短大以下の女性」では19.7%、「4大卒の女性」では14.1%であり、学歴の高い女性のほうが朝食を摂っている女性が多いこと

③「世帯年収が300万円未満の女性」では20.6%、「同300万円以上600万円未満」では18.1%、「同600万円以上」では10.8%であり、世帯年収が高くなるにつれて、朝食を摂っている女性が多いこと

未婚・既婚に関係なく、4大卒で、仕事を持ち、年収が高い20代、30代の女性ほどしっかり朝食を摂っているようです。逆に言えば、4大卒ではなく、仕事を持たない、もしくは収入が比較的低い女性は朝食を摂らないケースが多いということになります。

同調査とは別に、筆者らが、現在、妊娠・出産経験のない働く20代、30代の女性を対象に、朝食の状況について聞いてみると下記のような意見が出ました(いずれも4大卒)。

「朝は時間も食欲もないのでヨーグルト程度しか食べない」(20代・既婚)
「休日の朝は長めに寝ているので食べない。平日で朝食を食べる日は、白ごはん+納豆+キムチが基本。食べない日は、コーヒーのみ、コンビニの焼き菓子1個の日もある」(20代・未婚)
「冷凍ご飯を温めてお茶漬けなど簡単に済ます」(30代・既婚)
「朝食を食べる日は冷凍しておいたご飯と卵。余裕がないときは、会社に行くときにコンビニでパンやおにぎり、野菜ジュースを買う。最近は余裕がない方の朝食が続いている」(20代・未婚)
「毎日必ず何かしらは口に入れる。食べられる日はご飯、納豆、常備菜、ヨーグルト、食べられない日はコーヒー、ヨーグルトorフルーツで済ます」(20代・未婚)

今回、個別に聞き取り調査した女性のなかには、毎日欠食をしている人はおらず、手軽な朝食を食べている女性が多い印象を受けました。特に、働いている女性ほど朝食を食べているというデータの背景には、午前中の活動の生産性や健康のために重要であると認識しているのだと考えられます。

多忙な女性向け、簡単朝ごはんレシピ&おやつ食材

「働く女性のためのヘルスケアブック」では、管理栄養士監修のもと女性がキレイになるための食生活に向け、不足している栄養を補う方法を紹介しています。「働く女性のためのヘルスケアブック」はどなたでもご覧いただけるので、ここでは同書より要点をご紹介します。

【キレイになるためのポイント1:朝食を習慣づける】

キレイになるために欠かせないのは、やはりバランスのとれた食事です。3食しっかり食べて、適度に運動することで健康的な身体づくりを心がけることが大切です。朝食の習慣がない人は、1日に必要な栄養が不足する可能性があります。ヨーグルトやバナナなど、調理なしで食べられるものから試してみましょう。朝食を作れる余裕ができたら、例えば簡単な手作り朝食(さけフレークをのせたご飯、ヨーグルト、水に顆粒だしと乾燥野菜などを入れて作る野菜スープ)にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

【キレイになるためのポイント2:朝食メニューを工夫する】

1から作らなくてもいい市販の食材を上手に利用すれば時短にもつながります。例えば、納豆や小分けの豆腐、チーズなどを活用すると便利です。また、口にするものをできる限り「白」から「茶」にすることも健康的な食生活の基本。白米を雑穀米や玄米に替える。食パンをライ麦パンに替える。そうした工夫で、ビタミンやミネラルといった栄養価をより多く摂ることができます。

【キレイになるためのポイント3:おやつで補う】

3食で十分に摂取できなかった栄養は、おやつで補うことができます。例えば、イチゴやキウイ、グレープフルーツなどの果物はビタミンCやカリウムを多く含み、美容効果や疲労回復に最適です。ドライフルーツなら手軽に摂取できます。その他、低カロリーのこんにゃくゼリー、カルシウムや乳酸菌の摂取につながり、満腹感を得やすいチーズ・ヨーグルト、さらに、アンチエージング効果のあるビタミンEが豊富なアーモンドナッツ類などもお勧めです。

ただ、食事バランスガイドに基づくと、菓子・アルコールは1日200kcalまでが目安になっているので、栄養表示を確認するようにしてください。

健康な身体は1日や2日でつくれない

同調査では、妊娠経験のない女性のうち、子どもを持ちたいと考える女性は6割程度であることも明らかになっています。少子化対策の重要さと共に、企業が多様な価値観への配慮がますます求められていることを示しています。

健康な身体は1日や2日でつくれるものではありません。妊娠経験のない女性が、高齢になった時はもちろんのこと、将来子供が欲しいと思った時に健康な身体であるために、早いうちから食生活を整えておくに越したことはありません。女性自身の意識向上に加えて、企業などが女性の食生活改善のためにつながる支援などを増やしていくことが望まれます。

[日本総合研究所 創発戦略センター 小島 明子、日本総合研究所 リサーチ・コンサルティング部門 リサーチアナリスト 青山 温子]

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