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茂木健一郎「学校へ行きたくない子は、脳科学的に学校へ行かせるべきではない」

2021年2月6日 12:00 PRESIDENT Online

子供が「学校に行きたくない」と言い始めたら、どう応えればいいか。脳科学者の茂木健一郎さんは、「つらいなら行かなくていい。子どもの成長のために必要なのは、自分を受け入れてくれる居場所だ」と説く――。

※本稿は、茂木健一郎・信田さよ子・山崎聡一郎『明日、学校へ行きたくない 言葉にならない思いを抱える君へ』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

不登校を「脳科学」から考えてみると…

日本では学校に行くことが重圧となり、苦しむ子どもや不登校の子どもがいます。かつては誰もが一定の基準の教育を受けられ、学校に行けることがありがたい、という時代がありました。しかし時が流れ、時代とともに学校への価値観が変わる中、コロナ禍でさらに教育環境は激変しています。

不登校を脳科学から考えてみましょう。

理屈では学校に行かなくてはいけないと思っていても、どうしても体が動かなくなってしまうことがあります。これは脳の側頭葉の内側の奥にある、感情を司っている偏桃体の反応によるもので「フリージング」と呼ばれています。

苦しいことがあっても、最初のうちは我慢して学校に行けるけれど、あるところで脳の感情の回路が無理だという結論を出してしまうのです。ですから、子どもが「学校に行けない」と言っているときは、脳がそのような答えを出しているため、親は本人が言っていることを受け止めることが不登校の第一原則なのだと思います。

「人生そのものが大学だ」という考え方

学校に行きたくないときは、あせらないで休むことが大切です。あせってしまうと、脳はかえって疲れてしまいますから、極端なことを言えば一年間寝ていたっていい。人間の脳は元気になればやる気が出てくるので、それを待つのがいいと思います。

でも本当は、いろいろな生き方がありますよね。発明王のエジソンとか、文学者のヘルマン・ヘッセとか、偉大な天才たちが独学です。能力の高い人が、必ずしも偏差値の高い学校に行っていたというわけではないんです。

英語ではユニバーシティ・オブ・ライフという言葉があり、人生そのものが大学だといいます。いろんなことを経験して、それが学びだという考えもあり、志をともにするものが集まって学び合うという場もある。学びは人の数ほどあるのではないでしょうか。

海外では認められているホームスクーリング

実際に、世界にはさまざまな学びがあります。たとえば、学校に通う代わりに自宅で学習する学び「ホームスクーリング」があります。「ホームエデュケーション」「ホームスクール」とも呼ばれていて、自宅で親や家庭教師に教わる方法や、インターネットの講座を利用して学びます。

残念ながら日本ではほとんど認められていませんが、アメリカ、カナダ、イギリス、オーストラリアなどでは、学校の授業の代わりとして法律で認められているんですね。私の知り合いから聞いたケースですが、あるハーバード大学の教授の子どもは、ホームスクーリングでオンラインの戦略ゲームをしていて、成績も良いということです。

つまり、学校に行かないことは引け目に思うことではないんです。

オンラインで学ぶ、自らプロジェクトを立ち上げて取り組んでいく、家でいろいろな教材を用いて学ぶ、そういった工夫を子どもの個性に合わせて展開していくことで、子どもだけでなく大人もまた成長していくことができるのです。

このような非典型的な学びの環境で育つことは、今後は当たり前のこととなっていくでしょう。

学校は選択肢の一つと捉える

日本でも、最近ではユニークな授業をオンラインで受けられる通信制の高校や、自然の中で家畜を育てたり、ツリーハウスをつくったりしながら学ぶ学校が、文部科学省から学校として認められるようになりました。学校の形はどんどん変わっていますから、情報を集めて、自分や我が子にあった学校を見つけてほしいと思います。

それでも、学校は単に選択肢の一つとして捉えればいいと、ぼくは思います。学びの場は学校以外にもたくさんあるのですから。ぼくは学校には行っていましたが、小学一年生のときからチョウの研究をして、それが自分の糧になりました。学校の外で学べることは大きいんです。習い事やスポーツのクラブチームなども、学校の枠組みをこえて、同世代や上の世代とのつながりができる、よい学びの場だと思います。

不登校の背後には「ありのまま」の豊穣さがある

不登校の問題は、子どもたちの「ありのまま」を受け入れるという、教育における根本思想につながります。子どもたちの個性は、もって生まれたものであると同時に、その経験を通して育まれていくものでもあります。その個性の成長の軌跡において、「今、ここ」のありようを「安全基地」としていったん受け入れてあげることが、何よりも大切なことなのです。

不登校は、個性の一つの現れ方に過ぎません。その背後には、とても豊かな「ありのまま」の豊穣があります。その奥深い個性のあり方を伸ばすために、さまざまな工夫を大人たちがしてあげるべきだと思います。

それでは子どものありのままを受け入れる「安全基地」とは、どういう場所なのでしょうか。

それは自分が自分でいられる場所、つまり「居場所」です。脳科学では「セキュアベース」といって、気を張ったり、何かを演じたりしなくてもいい、リラックスできる場所を指します。

本来、家庭は子どもにとって居場所であるはずです。しかし親からの要求が強くて、親がいる間はゲームを我慢して勉強をしているふりをしなくてはいけないとなると、親がいる間は、その子にとって家に居場所がないような状況といえますね。

「居場所」は人間の脳を成長させる

一方で、自分が役に立つ場所というのも居場所になります。お手伝いができるとか、自分が必要とされている場所です。人間の脳には他人のために行動しようと考える思考の回路があるので、誰かのために何かしたいと本能的に思うのです。

子どものころに居場所があるかどうかで脳の発達が変わることが、科学的な研究で証明されています。

居場所をつくることは、とても創造的な行為です。子どもにとって居場所を得るということは、長い生涯全体にわたってかけがえなのない財産になり、また成長の礎になってくれるのです。

居場所をつくることは子どもだけでなく、大人を含めた社会全体にとっても大切な課題になります。

たとえば現代では、インターネット上のさまざまなプラットフォームや、ソーシャルメディアは、多くの人にとっての「居場所」になっています。テクストや動画をシェアし、おたがいにやりとりすることで自分を表現し、さまざまな「他者」に出会うことができる。そのような行き交いを通して、少しずつそれぞれの個性を活かすことができますし、さまざまな創造も生まれます。

現代において、社会や経済が発展するための基礎は、巧みな居場所づくりにこそあるといえるでしょう。その際、さまざまな個性を包摂するような仕組みが必要です。子どもの学びから大人の活動まで、「居場所づくり」は鍵となります。

居場所こそが、人間の脳を成長させるのです。

自分の個性を伸ばせる学校づくりを

人工知能が発達して、世の中が大きく変わっていくと、大人も自分たちが学校で学んだスキルだけでやっていけるわけではありません。日本の教育の未来は、ホームスクーリングを含む「もうひとつの学び方」の方にあるといってよいと思います。

これからの学校に居場所として期待することがあるとすれば、もっと個性と創造性を伸ばせる学びの場になってほしいということです。そして子どもたちだけではなく、大人たちも通える学校ができていくといいですね。

どんな人も年齢に関係なく、自分の個性を伸ばし、創造性を発揮できる学校ができて、学びたい時に学べる社会ができたらいいなと思います。

[脳科学者 茂木 健一郎]

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「批判ばかりで中身がない」菅首相を追及する蓮舫氏が自爆した根本原因

2021年2月6日 12:00 PRESIDENT Online

新型コロナ対策で論戦が続く通常国会が荒れている。検査体制の強化、ワクチン接種のスケジュールなど国民の生命、健康に直結する議論は脇に置かれ、国会議員の不適切な行動や発言ばかりが俎上にのせられる。いまや論争の主役は「上級国民の乱行」になっている――。

「SNSで『国会議員は上級国民』と拡散されている」

テレビなどで繰り返し報じられているように、1月27日の参院予算委員会での菅義偉首相と蓮舫氏(立憲民主党)の論戦は特筆するべきものだった。

質問に立った蓮舫氏は冒頭、与党2議員の「不祥事」を取り上げた。自民党の松本純国対委員長代理、公明党の遠山清彦幹事長代理が、緊急事態宣言発令下に銀座の高級クラブを訪れていた問題だ。

「あのね。SNSで『国会議員は上級国民』と拡散されているんですよ。えらい迷惑ですよ、私たち」

民主党政権時代、事業仕分けで官僚たちをやり込めた、あの口調で迫る蓮舫氏。緊急事態宣言で国民の行動を縛り、さらに新型インフルエンザ特別措置法と感染症法改正案では、さらに、休業に応じない事業者や、入院に応じない感染者に罰則を科す議論が始まっている中、国会議員が夜の銀座に出入りしているのは示しがつかない。蓮舫氏が言うようにSNSでは「上級国民」に対する批判の声があふれた。

「私自身は精いっぱい取り組んでおるところであります」

「申し訳ない」と繰り返す菅氏に蓮舫氏は「怒りは感じないのか」と挑発。さらに菅氏の語りに「熱意」が感じ取れないことを指摘し続ける。そして、クライマックスを迎える。

「そんな答弁だから、言葉が伝わらないんです。国民に危機感が伝わらないんですよ。あなたには総理としての自覚や責任感、それを言葉で伝えようとする、そういう思いはあるのですか」

これに対して菅氏は「少し失礼じゃないでしょうか」として、こう言い放った。

「私は、少なくとも総理大臣に昨年の9月に就任してから、なんとかこのコロナ対策、1日も早い安心を取り戻したい、という思い出全力で取り組んできた。できることはさせていただいている。私自身は精いっぱい取り組んでおるところであります」

立川志らく氏は「そんな議論は飲み屋でやってくれ」

このやりとりで潮目が変わった。SNSでは、蓮舫氏の追究が、あまりにも礼を失していた、との非難が多く見られるようになった。28日以降のテレビ情報番組も、与党議員の銀座通いや、頼りない答弁をする菅氏ではなく、蓮舫氏の「無礼な」質問の方をフォーカスする内容が増えた。

いくつか例をあげると、フジテレビ系「バイキング」ではMCの坂上忍氏が「正直、失礼だなと思った」と、菅氏に肩入れ。TBS系「グッとラック!」では立川志らく氏が「そんな議論は飲み屋でやってくれ」と斬って捨てた。志らく氏は「言葉が国民に伝わるかどうか」というパフォーマンスについての議論は、志らく氏自身も含めたコメンテーターや、サラリーマンの居酒屋談義に任せておけばいいのであって、政治家は政策論を戦わせるべきだ、という考えだ。

31日のTBS系サンデー・ジャポンではテリー・伊藤氏が「(蓮舫氏は)政治家としてよりも、人間として未熟」と発言。MCの爆笑問題・太田光氏は「(蓮舫氏は上級国民ならぬ)追及国民と言われている」と言って笑わせた。

蓮舫氏は「謝罪ツイート」、また起きたブーメラン現象

異彩を放ったのは29日の衆院本会議でのできごとだ。日本維新の会の足立氏は「長らくコロナを取り上げてこなかった蓮舫議員や維新以外の野党がなぜ、急にコロナ対策に奔走する菅総理や閣僚を偉そうな口ぶりで糾弾できるのか。総理にうかがいます。彼らはなぜそうも偉そうな態度を取る事ができるのでしょうか」と質問した。

曲がりなりにも野党の一角を占める議員が、野党議員を批判してその感想を首相に求める、という異例の事態に、議場は沸いた。

集中砲火を浴びた形の蓮舫氏は28日、自身のツイッターで「いつも反省するのですが、想いが強すぎて語気を張ってしまうことを。提案した内容がきちんと皆さんに伝わるよう、引き続き取り組みます」と「謝罪」に追い込まれた。

2012年に安倍氏が首相に返り咲いて以来、野党勢力は、政府・与党の問題を追及していくうちに、自分たちにも問題が発覚。逆に批判を受ける「ブーメラン現象」が続く。今回も、その典型例といえる。

「一生懸命やっているからしかたない」と開き直り?

しかし、冷静に考えると27日の質疑は、蓮舫氏も問題だが、菅氏側も問題があったことを指摘せざるを得ない。

菅氏の「言葉が伝わらない」という批判は首相就任以降、しばしば指摘されてきたことだ。時として感情をあらわにし、野党を挑発するような発言もした安倍晋三前首相とは違い、菅氏は官僚が用意した紙に目を落とし、淡々と読む展開が延々と続く。蓮舫氏が指摘したことは、多くの国民も同意するはずだ。

そして「失礼ではないか」とした後、「私は、少なくとも総理大臣に昨年の9月に就任してから……」と続く答弁は、言い換えれば「一生懸命やっているからしかたない」と開き直っているともとれる。政治は、結果責任が問われる。一生懸命やっているから、休んでないから、成果が出なくてもいいという話にはならないだろう。

かつて集団食中毒を起こした企業の社長が、記者会見の後、質疑の続行を求める記者団に「私は寝ていないんだ」と発言して世論の批判を一身に浴びたことがある。そういう事態になりかねない発言だった。

「政治への信頼を深く傷つけてしまった」と議員辞職に

自民党内には「蓮舫氏の自爆のおかげで、批判は野党に向かう。菅内閣の支持も上向くだろう」という見方もある。しかし、それはあまりにも楽観的すぎる。

「銀座通い」問題の余波は続く。松本、遠山の両氏は1月29日、責任をとって役職を辞任。遠山氏には新たに公設秘書がキャバクラなどの飲食費を政治資金から支出していたことも発覚した。クリーンを標榜している公明党にとっては大変なイメージダウンだ。

話はこれで収まらない。遠山氏は2月1日、「政治への信頼を深く傷つけてしまった」と議員辞職に追い込まれた。

松本氏の銀座訪問には、大塚高司国対副委員長、田野瀬太道文科副大臣も同席していたことが判明。3人は離党届の提出に追い込まれた。

これまで、国会議員の出席は自分1人と説明してきた松本氏は「事実と違うことを申し上げ、心からおわびしたい」と謝罪。菅氏は首相官邸に報告に来た田野瀬氏に対し「あるまじき行為だ」と叱責した。

銀座訪問問題は、辞任ドミノの様相を呈してきた。

国会議員を監視する「自粛警察」の様相

新型インフルエンザ対策特措法と感染症法の改正案は、修正協議で、大幅に野党に譲歩。主導権は野党側が握っていた。この修正協議でも「銀座問題」は与党に重くのしかかっていた。

自民党内では金田勝年元法相が国会近くのホテルで秘書らと4人で会食をしていたことも明らかになった。金田氏の場合は、昼食で人数も4人ということで、どこまで問題視すべきかについては、議論もあるだろう。

ただし、国民世論や、マスコミは国会議員を「上級国民」として監視し、何かあればただちにやり玉にあげ続けるのは間違いない。コロナ第1、2波のころに問題になった「自粛警察」に似ている。

31日投開票の東京都千代田区長選では、自公推薦の候補が小池百合子東京都知事が推す候補に苦杯を喫した。1月26日の配信記事「『コロナ禍の選挙は投票率が高い』地方選で自民党が負け続ける根本原因」で紹介したように地方選での与党の苦戦は続く。この問題での逆風は、与党側に強く吹いていると考えた方がいいだろう。

[永田町コンフィデンシャル]

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cat_11_issue_oa-president oa-president_0_d2xq6kq5u9fa_食、運動、睡眠、ストレス…新型コロナも遠ざける「免疫力」を高める新常識 d2xq6kq5u9fa d2xq6kq5u9fa 食、運動、睡眠、ストレス…新型コロナも遠ざける「免疫力」を高める新常識 oa-president 0

食、運動、睡眠、ストレス…新型コロナも遠ざける「免疫力」を高める新常識

2021年2月6日 12:00 PRESIDENT Online

新型コロナウイルスなどの病気を遠ざけるには「免疫力」を高めることが重要だ。一体なにをすればいいのか。東京医科歯科大学副学長の古川哲史氏は「医学の常識はどんどん更新されている。たとえば野菜が健康にいいのは『毒だから』という説が有力だ」という——。

※本稿は、古川哲史『最新研究が示す 病気にならない新常識』(新潮新書)の一部を再編集したものです。

野菜が健康に良いのは“抗酸化物質”ではなかった?

「野菜を食べることはどうして健康に良いの?」と訊かれて、きちんと答えられる人は少ないようです。これは無理からぬことです。なぜなら、専門家の間でも答えが一致しているわけではないからです。

今まで最も信じられていた考え方は、「野菜に含まれる“抗酸化物質”のおかげだろう」というものでした。ヒトに限らず生物は生きていくうえで、酸素が必要です。このなくてはならない酸素ですが、多すぎると害になります。過剰な酸素からは「フリーラジカル」と呼ばれる有害な物質が出るからです。

野菜に含まれるビタミンC、ビタミンE、ビタミンAなどは、フリーラジカルの有害な作用を抑える力があります。これを「抗酸化作用」といいます。だから、野菜は健康に良いのだろう、とこれまで専門家も含めて多くの人が信じてきました。

ところが、これを証明しようとして多くの研究者が、動物実験やヒトの臨床研究で、ビタミンC、ビタミンE、ビタミンAなどの抗酸化物質を投与したところ、確かに抗酸化作用があるものの、到底食べきれないほどの大量のそれらを摂取しない限り、フリーラジカルによる障害を予防することはできないことがわかりました。

野菜に含まれる抗酸化物質は身体に良いのだけれども、日常的に食べている量の野菜によって健康を維持できるのは、どうも抗酸化作用が理由ではないといえるようです。

では、どうして野菜は健康に良いのでしょう?

七草粥の「苦味」=「毒」が身体によい

今では、野菜を食べることによって身体に入ってくる少量の毒物が健康に良い、という考えが有力です。

「えっ、私達って、野菜を食べることによって毒物を食べているの? ウソでしょ」と思った人も多いのではないでしょうか。

生物は敵から身を守るために、走って逃げたり、隠れたりすることができます。

ところが植物は根が生えているので逃げたり、隠れたりすることができません。

でも植物もしたたかです。何千万~何億年もの年月をかけて、身を守るための防御策を編み出したのです。それは、植物が作り出す苦味のある化学物質です。これがあたかも「天然の殺虫剤」のような役目をはたして害虫から身を守っているのです。

ピーマンやゴーヤなどの野菜を食べた時、「苦い!」と感じる、あれです。私たちが植物由来の食品を食べる時、これらの少量の殺虫剤も一緒に摂取してしまい、私たちの身体の中にある細胞が軽いストレスを受けるのです。

この軽いストレスにさらされることによって、あとから強いストレスを受けても、これに対抗できる抵抗力を身につけることができるのです。

日本には古くから、1月7日に無病息災を願って七草粥を食べるという風習があります。七草粥に含まれる春の七草は、特にこの苦味が強いようです。きっと昔の人は、この苦味が無病息災に良いということを経験から知っていたのでしょう。

睡眠不足だとワクチンの効果が半減する

野菜の毒のように、弱いストレスにさらされた際に、それに対応することで、強いストレスに対する抵抗力を得ることを「ホルミシス効果」といいます。

ホルミシスは、言葉こそ最近使われるようになりましたが、その概念自体は何も新しいものではありません。毎年、冬になる前にインフルエンザのワクチンを注射する人が多いと思いますが、このワクチンも、ごく弱い病原体や死んでしまった病原体、すなわち、ある種のストレスを体内に注射することによって、抗体を作って、実際にインフルエンザウイルスが身体に入ってきた時にこれを排除する仕組みです。

このインフルエンザワクチンの効果と睡眠時間に関する、面白い研究があります。健康な人を2つのグループに分けて、一方のグループは7時間半~8時間半の睡眠、他方のグループは4時間の睡眠を6日間続けてもらい、6日目にインフルエンザの予防接種を受けてもらうのです。そして数日後に血液検査を行い、抗体の産生具合を調べると、7時間半~8時間半の睡眠グループに比べて、4時間睡眠グループでは、抗体の産生量が約50%しかありませんでした。

睡眠不足は、病原菌に対する免疫力が弱くなって、風邪やインフルエンザになりやすくなることも判っていますが、予防接種の効果も半減させるのです。

カレーがアルツハイマー病を抑える理由

もう一つ、ホルミシス効果によって、身体の中でどのようなことが起こっているのか、カレーの香辛料のクルクミンを使った研究をご紹介しましょう。

インド人にはアルツハイマー病が少なく、アメリカ人の4分の1の発症率であることが昔から知られています。

カリフォルニア大学ロサンゼルス校のコール博士はこれに注目して、カレーの香辛料に含まれるクルクミンがアルツハイマー病に効果があるのではないかとの仮説を立て、マウスを使って調べました。

その結果、クルクミンが直接フリーラジカルを除去するのではなく、クルクミンが軽いストレスとなり、脳細胞がみずから持つフリーラジカルに対する抵抗力を強化することによって、脳細胞のダメージを予防していたことがわかりました。

このように、ストレスにも「良いストレス」と「悪いストレス」があるのです。えてしてストレスは身体に悪いもの、と決めつけられがちですが、まったくのストレスフリーな環境に置かれると、ヒトは自律神経失調症状態となることも研究によって判っています。

ストレスの性質、それがかかる時間の長さなどにもよりますが、「良いストレス」は自分を高めてくれます。よきライバルと切磋琢磨しあって、互いに実力を伸ばしあうことなどが典型例でしょう。

一方、悪いストレスは「やらなくてはいけない」「頑張り続けなくてはいけない」と自分を強制的に追い込み、自らの意思とは無関係にある行動を続けることにより受けるストレスです。この悪いストレスが続くことによって、さまざまな身体的な異常が現れます。首や肩の凝り、頭重感や頭痛、耳鳴りやめまい、などです。また、長時間のストレスにさらされると、がんになりやすくなることも研究結果から判っています。

孤立のストレスは心疾患・脳卒中リスクを3割増しにする

では、ヒトにとって最大の「悪いストレス」とは何か。それは、「社会的孤立」です。

米国ブリガム・ヤング大学のジュリアン・ホルト・ランスタッド教授たちは、1980~2014年に行われた研究で「孤独」、「社会的孤立」、「1人暮らし」のいずれかの言葉と「死」、「生存」のいずれかの言葉の組み合わせ、すなわち「孤独」と「死」の両方をもつ、あるいは「1人暮らし」と「生存」の両方をもつ、等の1384件の研究の中から、70の研究を選んで調査を行いました。

その対象となった人はトータルで340万7134人、平均年齢は66歳、経過観察期間は平均7年間でした。その結果、「社会的孤立」によって29%、「孤独」によって26%、「1人暮らし」によって32%、死亡リスクが高まることが示されました。これは肥満の約2倍、タバコに換算すると、なんと1日15本喫い続けた死亡リスクに相当します。

日本でも18歳以上の男女、約18万人を対象とした複数の研究から、孤独や社会的孤立と心血管疾患、脳卒中との関連が解析されています。その結果、孤独で社会的に孤立している人は、心筋梗塞や狭心症の発症リスクが29%高く、脳卒中リスクも32%高いことが示されました。

「1人暮らし」が悪いのではなく、「社会的孤立」が健康に悪影響を与えるという研究結果も出ています。要介護率において、独居老人と非独居老人では差がないのですが、ネットワークの少ない老人は、そうでない老人に比べて高かったのです。1人暮らしでも他人と接触をとっている人は要介護になりにくいのです。

孤独が死亡リスクを高める理由として、シカゴ大学のジョン・カシオボ博士は、他の人々から隔離されているという感覚は、ストレスホルモンであるコルチコステロンを上昇させることを示しています。

病気を防ぐために医学の新常識を知る

そもそも進化の過程において、我々ホモ・サピエンスが生き残ったのは、言語機能を得たことにより、コミュニケーション能力を発達させて、大人数による狩りが出来るようになったこと、と言われています。

言葉による「社会的つながり」「コミュニケーション能力」こそが、ホモ・サピエンスが現存する唯一のホモ属である土台であり、これが妨げられることは人にとって最大のストレスとなるのです。それゆえ、新型コロナウイルスによる外出自粛のストレスによる、免疫力の低下も危惧されるところです。

こうしたストレスを含め、それらに対応するために、今すべきことについて、本書では「食」「運動」「睡眠」「ストレス」に絞って、判りやすく解説しました。皆様の健康の一助となれば幸いです。

[医学博士・東京医科歯科大学副学長 古川 哲史]

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cat_11_issue_oa-president oa-president_0_y5r9yl19a5je_「格安スマホ業界はこれで終わり」大手3社を追いかける楽天プランの破壊力 y5r9yl19a5je y5r9yl19a5je 「格安スマホ業界はこれで終わり」大手3社を追いかける楽天プランの破壊力 oa-president 0

「格安スマホ業界はこれで終わり」大手3社を追いかける楽天プランの破壊力

2021年2月6日 12:00 PRESIDENT Online

「格安スマホにしないと損」と言われていたが…

会社にとっての死刑宣告には2種類あります。ひとつは経営破たん。経営が行き詰まって銀行の支援も得られず経営者が頭をかかえて倒産の判断をせざるをえないケースです。そしてもうひとつのケースが世の中のルールが変わって「あれ、これだとうちは生き残っていけないよね」と気づいてしまうパターンです。

今、後者の状態にあるのが格安スマホのサービス事業者かもしれません。「OCN モバイル ONE」「mineo」「BIGLOBEモバイル」「IIJmio」「イオンモバイル」「BIC SIM」といった独立系の格安スマホサービスの市場は過去5年間で急成長しました。

少し前までは、携帯大手3社のスマホの通信料が月額で7000~8000円ぐらいかかるところ、格安スマホなら月額3000~4000円になる。あまりデータを使わないライトユーザーなら2000円ぐらい。だから格安スマホにしなければ損だというイメージがありました。

複数持ちをしている人も結構いるので契約台数だけ見ても実情はわからないのですが、世の中の調査でみると、大手3社とスマホ契約をしてメインで使っている人が75%ぐらい、格安スマホをメインで使っている人が25%ぐらいというところまで格安スマホの勢力が拡大していました。

MVNOにとって、値下げは収益圧迫に直結する

そこに出現したのが、昨年秋に誕生した菅政権の目玉政策である、スマホ料金の引き下げの動きです。NTTドコモが20GBで月額2980円という新プラン「ahamo」を発表し、あわててソフトバンクとKDDIがこれに追随する形になりました。これらの新プランはこの3月から提供を開始します。

そうなったら7GBで月額3000円といったこれまでの格安プランは生き残ることができません。3万件以上の契約数がある格安スマホ事業者は少なくとも50社以上あるそうです。それらの格安スマホ各社からもつぎつぎと値下げプランが発表されていますが、損益的にはぎりぎりのプランになるはずです。なぜならその大半が大手から借りた回線の利用料を支払ってサービスを提供するMVNOという事業形態ですから、値下げは収益圧迫に直結します。

業界の大幅再編淘汰は必至という状況の中で、今後、格安スマホの業界はどうなっていくのでしょうか。可能性をまとめてみたいと思います。

格安スマホの会社には「3つのタイプ」がある

そもそも格安スマホの会社は3つのタイプに分かれます。ひとつはUQモバイルやY! mobileのような大手の系列子会社です。LINEモバイルも今回の流れでSoftBank on LINEという新サービス名に移行して完全にソフトバンク携帯の系列会社としてのサービスに生まれ変わります。

2つめのタイプに楽天モバイルがあります。これは第四の携帯電話会社として独自回線での新規参入を模索中の新興勢力で、データ利用料無制限で月額2980円のサービスで業界に殴りこみをかけた途上にあります。全国ネットワークの敷設に1兆円を超える設備投資が必要な最中で、いきなり持ち上がった価格大幅引き下げの動きは、楽天にとっては試練といえる状況でしょう。

そして3つめの勢力が先ほど挙げたMVNOです。主にNTTドコモから回線を借りている企業が多く、それをドコモよりも安い価格帯で再販するビジネスモデルだったのですが、大本のドコモから月額2980円のサービスが始まることでの打撃が大きく、今、その存続の危機にある状況です。

約半数の人たちは、月間2GB以下しか使っていない

さて、その格安スマホ業界の未来を占う前に、そもそも読者の皆さんはご自分が毎月どれくらいのデータ数をお使いか、ご存知でしょうか? 調査によると大半の消費者は、キャリアと契約したデータ量(いわゆるGB)を使いこなせていないようです。私とその家族の例で説明しましょう。

まず私ですが、経済評論家で仕事では当然のように携帯はよく使います。外出先ではメール、ニュース、SNSのチェックは欠かせませんし、オンラインショッピングや外食のデリバリーサービスの利用もよくします。ただし動画と音楽のダウンロードは使いません。これで月間ほぼほぼ2GB以内です。わたしの両親も高齢者ながらスマホを使っていますが、こちらはほぼほぼ1GB以下です。

そして調査によると月間2GB以下しか実際に使用していない利用者は実は我が国全体で約半数にのぼります。

つぎにちょっと後出しじゃんけんっぽくて恐縮ですが、私はもう一台、サブのスマホを持っています。実はこちらをテザリング目的で使っていて、たとえば外出先の喫茶店でパソコンで作業をするときなどにはデータ契約の多いこちらの携帯を使います。動画のチェックなどもこちらの携帯でするのですが、月間の使用量は多くて5GB以内です。

私とは違ったライフスタイルのユーザーで、たとえばSpotifyなどと契約して毎日2時間音楽をダウンロードして聴いている人も、だいたい月額の使用料は5GBあたりになります。

20GB以上が必要なユーザーは25%だけ

このようなライフスタイル、ワークスタイルのユーザーはこれまで月額7GBぐらいの契約が必要だったわけですが、このユーザー数が全体の25%ぐらい。つまり現在のデータの使い方だと75%の人は7GBか3GBの契約で十分で、20GBの容量が必要な人は人口全体の残りの25%だけなのです。少なくとも現状のスマホの使い方であればの話ではありますが。

さて、この「残りの25%の人」は実は20GBで十分かどうかはわかりません。オンラインゲームを四六時中楽しむとか、動画ばかり見ている人はそれでは足りません。

私も実験的に自宅の光回線の代わりに楽天モバイルの無制限プランを2カ月ほど使ってみたことがあります。私の場合、データの利用量が多かったのはNetflixの視聴のせいだと思いますが、この時期は1カ月目が96GB、2カ月目が70GBを使用しました。そのうち一日は楽天の一日のデータ制限上限の10GBを超えたために動画が見られない日があった。そんな感じでした。

世の中にはこういった規模のユーザーが10%ほどいて、これはahamoの2980円の20GBプランではだめで、その上の各社6600円程度の無制限プランを契約することになります。

UQモバイルが打ち出した「3GBで1480円」

つまりざっくりとまとめると、潜在市場としては50%のユーザーが3GB以下で十分、25%のユーザーが7GBプランで十分、15%のユーザーに20GBプランがフィットして残り10%が無制限プランを必要とするわけです。そう考えるとドコモの月額2980円プランに対抗するためには、これらの、どの土俵でどう戦うかが、格安スマホにとっての戦略となるわけです。

ここで先ほど分類した格安スマホ会社の3パターンが関係してきます。最初のカテゴリーである大手キャリアの子会社系の格安スマホ会社は、20GBもいらないという75%の消費者に向けたプランに実質的に注力することになると思われます。その際の基準がこの2月からKDDI系列のUQモバイルが打ち出している3GBで月額1480円のプランになるでしょう。

「最強のプラン」を出してきた楽天モバイル

一方で2番目の勢力である楽天モバイルは、これまでのプランでは市場の10%であるデータ無制限需要に特化する形になりそうでした。他社が6600円近辺の価格設定なのに対して、楽天は2980円でデータ無制限ですから、生き残りやすいのはこのハイエンド市場ということになります。

実際は「それでは生き残りは難しい」という判断でしょう。1月29日に楽天は新しい料金プランを発表しました。それはデータ容量無制限で2980円という現行プランは維持しつつ、20GB以下の場合は自動的に1980円、3GB以下なら980円、1GB以下は無料になるという新料金です。これは市場が一番大きい3GB以下ユーザーにとってほぼほぼ最安値プランになるはずです。

しかも発表では「使用量に合わせて料金が引き下がる」ということなので、これまで契約を多めに設定しすぎていた大半のユーザーにとってもこれが最良のプランになります。つまり楽天携帯は大手3社対抗について最強のプランで対抗する姿勢を見せたことになるのです。

最大の弱点は「基地局が建設中なこと」だが…

そう考えると、一番生き残りが難しいのが三番目の勢力であるMVNO勢です。ahamo発表後、関西電力系のmineoは5GBで1380円、1GBで1180円の新価格を発表しています。それ以外のMVNO勢も基本的な考え方は同じで、UQモバイルよりもお得な価格を打ち出すことでなんとか需要を引き留めようと考えていたようですが、楽天の価格変更で雲行きがあやしくなってきました。

ただ楽天の最大の弱点は基地局がまだ建設中だということです。無制限プランが適用されるのは自宅が楽天の基地局につながる消費者だけであって、そうでない場合はKDDIの基地局経由での月額5GBプランになるというのが楽天携帯の弱点です。

楽天携帯の基地局はまず東京23区に集中して建設が始まり、結果23区ではそれぞれ3桁の数の基地局の建設が完了しています。実際、都内で利用する分にはまずまず楽天モバイルは快適です。

一方で直近の総務省の電波利用ホームページで確認すると、同じ東京でも武蔵野市の基地局数は9、立川市が11とまだ建設途上の状況です。横浜も神奈川区84、西区79、鶴見区65あたりの建設ペースはいいのですが、相模原市の基地局は3区合計で6、藤沢市は5、逗子市は3といった具合で、場所による差が大きいという加入者にとってのリスクが存在しています。

とはいえ楽天モバイルの基地局の増強が進めば進むほど、この弱点は解消されるわけで、格安スマホの第三勢力にとっては楽天の存在は時限爆弾のように重たくなっていくことでしょう。

ひとつの産業を消し去ろうとする流れ

そうなったとき、格安スマホの最後の砦となるのがバンドルサービスということになるでしょう。たとえばヤマダ電機のy.u mobileの場合、家族で使うシェアプランに動画配信サービスのU-NEXTの月額利用料に加えて、動画や書籍のレンタルに使えるポイントまでついてきます。つまりU-NEXTのユーザーだったらy.u mobileに入ったほうがバンドルでお得になるわけです。

同様に電気代やガス代が安くなるなど、格安スマホ各社は親会社のサービスなどとのバンドルを通じた生き残りの可能性は残ると思います。今回の再編で新規の加入は3月末で停止が決まりましたが、LINEモバイルの提供してきた月額プラス480円でLINE、Twitter、Instagram、Spotifyなど主要SNSサービスのデータが契約容量にカウントされないデータフリープランは、格安スマホの会社としてはよい着眼点の差異化プランだったと思います。

とはいえ50社すべてが生き残るというのは現実的には難しいでしょう。私の予測ですが最終的に生き残れるのは実質的に数社ぐらいになってしまいそうです。これが国の推進する政策の余波なのだとはいえ、格安スマホというひとつの産業を消し去ろうとする大きな流れ自体はもう止めることはできないのではないでしょうか。

[経営コンサルタント 鈴木 貴博]

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cat_11_issue_oa-president oa-president_0_8dvbi6fg34pi_「SAやPAの飲食も20時閉店」一律時短でトラック運転手が食堂難民になっている 8dvbi6fg34pi 8dvbi6fg34pi 「SAやPAの飲食も20時閉店」一律時短でトラック運転手が食堂難民になっている oa-president 0

「SAやPAの飲食も20時閉店」一律時短でトラック運転手が食堂難民になっている

2021年2月4日 08:00 PRESIDENT Online

コロナ禍の物流を支えるトラックドライバーたちが深夜の食事に困っている。元トラックドライバーでライターの橋本愛喜氏は「高速道路のサービスエリアなども20時には閉まってしまう。普段から一人で行動し、『黙食』が当たり前だから、感染リスクはほとんどない。業態を無視した一律の時短要請より、やるべきことがある」という――。

飲食店事業者の倒産件数は過去最多に

昨年1年間、コロナ禍の中を耐えに耐えてきた飲食業界。

GOTOイートで一瞬光を見たものの、最繁忙期であるはずの年末年始を前にして「第3波」が日本列島を襲い、同キャンペーンは休止に。業界からは悲鳴が上がった。

帝国データバンクの調査によると、2020年1月から12月における飲食店事業者の倒産件数は780件で過去最多。なんとか生き延びてきた飲食店も感染リスクを抑えようと、これ以上ないほどの対策を取って日々営業してきた。

そんな状況の中で発出された2回目の緊急事態宣言。これに伴い、11都道府県の飲食店には、20時までの時短営業要請が出された。

「できることは全てやってきたが、もうダメかもしれない。これ(緊急事態宣言)が“とどめの一刺し”になると思う」

都内の駅前で30年もの間飲食店を経営してきた知人は、力なくこうつぶやいた。

飲食店はもはや限界の状態にある。コロナウイルスそのものに「夜型」の特性があるならともかく、どうして飲食店だけが一律に20時までの時短営業を強いられなければならないのだろうか。

「一人焼肉も時短営業」一律20時までの謎

コロナ禍の直前、人気だった飲食店に「焼肉ライク」という「ひとり焼肉」の専門店がある。

焼肉店は、強力な換気システムが整っていることから感染リスクが他飲食店より低いといわれており、コロナ禍の中でも比較的ダメージが少ない業態だ。外食大手のワタミが、居酒屋店舗を次々に焼き肉店へ改装していることからも、その安定ぶりがうかがえる。

さらに「焼肉ライク」の店舗には、1人1台のロースターとタッチパネルが付いているため、店員との接触すらもほとんどなく、飛沫感染のリスクはかなり低いといえる。

しかし、「焼肉ライク」のウェブサイトを見てみると、同社では「政府の緊急事態宣言を受けて対象地域の店舗を時短営業している」とのことだった。

ひと口に飲食店と言っても、このようなひとり焼肉店やファミレス、居酒屋、立ち食い店など、実にさまざまな業態や特徴があり、感染リスクや対策すべき方法にも、それぞれ大きな違いがあるはず。

にもかかわらず、一律20時に一斉に店を閉めさせるのには、何のメリットがあるのだろうか。

「食堂難民」になるトラックドライバー

この一律の時短営業の影響を受けるのは、飲食店側だけではない。

現在、この一律時短営業によって、物流を支えるトラックドライバーが「食堂難民」と化している実態がある。高速道路にあるサービスエリア・パーキングエリア(SA・PA)の多くの飲食店までもが20時で閉店しているためだ。

仕事柄、その日のうちに帰宅できず車中泊する長距離トラックドライバーたちには、翌日の仕事まで最低8時間、クルマを動かさず休息を取らねばならないというルールがある。

また、20時という時間は、0時からの「深夜割」を待つトラックドライバーがSA・PAに滞在し始める時間でもあり、大型車専用駐車場は、マスに停まり切らないトラックで溢れ返っている。

そのため、1日中運転し、ようやく到着した休憩地点で何とか確保した駐車スペースにクルマを停めても、SA・PAの店が閉まっていれば、夕食だけでなく、下手すれば朝食すらも取れなくなる。別のSA・PAに移動しようにも、前出の「8時間ルール」があるため、それもかなわないのだ。

緊急事態宣言の中、SA・PAを利用する団体旅行者がどれほどいるだろうか。基本1人で行動し、そばうどんを背中丸めて黙々と食べている彼らトラックドライバーに、誰1人として大声張り上げながら食事をする者はいない。

テナントの営業利益の兼ね合いで店を早めに閉めなければならないという事情があるならば、それこそ減った利益を国が援助するべきで、店の営業を後押しこそすれ、物流を担い手が利用するSA・PAの飲食店を閉めさせることはあってはならない。

役所のように「9~17時」の仕事だけで世の中が動いていると思ったら大間違いなのである。

悪客に対する制限を作るべき

さらに強い違和感を覚えるのは、「命令」でもないその「要請」に従わなかった場合、店名を公表すると国が示唆したことだ。日本はいつから国民を晒し者にするような国になったのだろうか。

先日、コロナ患者を受け入れない医療機関も病院名を公表すると発表があったが、このSNSの時代、当該者を世間に総攻撃させようとする国の方針は、ただの「大人のいじめ」でしかない。

このように、時短営業要請に応じても逆らっても報われることのない飲食店だが、そこで1つ思い浮かぶ疑問は、「どうしてこれほど努力している店側だけにこれだけの負担を強いるのか」だ。

各現場取材をして毎度痛感するのが、この国にある「お客様至上主義」だ。

筆者は「客が神」とするこの日本の社会的構造が大嫌いである。根がひねくれているのだろう、相手が誰であれ、人間同士の付き合いには一定の節度が必要だと思う一方、店員に対してはそれ以上のモノもそれ以下のモノも求めない性格が大きいところだが、現場で働く「エッセンシャルワーカー」たちから、これまでさまざまな「神話」を数多く聞いてきたのも大きな一因になっている。

全て飲食店側のせいにされる不公平さ

日本には実にさまざまな“神”がいる。

運送業界には、到着時間帯を「17~19時」に指定した荷物が17時1分に届いた際、「なんでこんなに早いんだ。17~19時だったら普通18時だろ」と怒鳴る神、また飲食業界には、バイキングのパンをハンカチに包んで持って帰ろうとする神なんていうのも存在する。

余談になるが、筆者が「客が神ではない」と認識したのは、外国に住んでいた時だ。

日本で0円で売られていた某ファストフード店の「スマイル」を、現地の同列店で同じように注文してみたところ、店員のスマイルどころか、これまで見たことがないほど深い眉間のシワと対峙し、初めて笑顔にも対価が必要だということに気付かされた。

国のガイドラインに従い、飲食店がいくらこまめに店内を消毒し、アクリル板を立て、時短営業しても、来店客が好き勝手やれば全ての努力が水の泡。にもかかわらず、こうしたマナーの悪い客に対しては「マスク」「検温」「消毒」以外、何の決まりも基準もペナルティも科されず、いざ店内でクラスターが発生すれば全て飲食店側のせいされるのは、非常に不公平ではないだろうか。

「おもてなし」や「お客様至上主義」で思い上がる店側のルールに従わない「疫病神」に対しては、強制退店させるくらいの権限を店側に持たせてもいいのではないかと、筆者は強く思っている。

同調圧力が、知らぬ間に誰かの首を絞めている

国からの要請以外にもう1つ、飲食店自身に時短営業をさせている要因がある。

世間に漂う「同調圧力」だ。

昨年の緊急事態宣言時、多くの飲食店が休業し、車体の大きなトラックが行き場を失う中、営業を続けていたあるラーメン店は、文字通り彼らのオアシスだった。

現場から届いた感謝の思いを記事化しようと同店に取材した際、「店を紹介させてほしい」と打診したところ、こんな答えが返ってきた。

「気持ちは嬉しいし、是非と言いたいところだが、周囲の飲食店が自分のところだけ店を営業していることに対してのやっかみがあるから、今回はお受けできない」

現場の状況をろくに知りもしない人によって作られた杓子定規なルールに、何の事情も知らない人間たちが「ナントカ警察」と化して監視する社会。そんな日本の中にある「みんな一緒でなければならない」という感覚は、知らぬ間に誰かの首を絞めていることもあるのだ。

客が本当の「神」ならば……

そんなルールに縛られ続ける飲食店から、最近ある言葉が登場して話題になった。「黙食」だ。

「その2文字を店内に掲げる際は、批判覚悟だった」という店主の心からの訴えは、現在多くの飲食店や商業施設、利用客の共感を呼び、店の入り口に同店が作成したPOPを掲げる店が増え続けている。

今後しばらく続くであろう「ウィズコロナ」の生活。感染対策と経済活動の両立を目指すなら、この先やるべきは、店に対する一律の時短営業要請や、子どもじみた「店名公表ペナルティ」の設置ではなく、「各業態や店舗に合ったルール作り」と、この「黙食」や、時にはそれ以上の「客への強い要請」だ。

客が本当の「神」ならば、むしろ店の願いをかなえてやるのが本当の姿だと筆者は思う。

[フリーライター 橋本 愛喜]

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「糖質ゼロでも危ない」歯科医が警鐘、むし歯リスクが高まる"ある飲み物"

2021年2月4日 08:00 PRESIDENT Online

むし歯の予防といえば歯磨きを思い出す人が多いのではないでしょうか。ところが、ある研究では、原始人の食生活なら4週間歯磨きをしなくても歯周病にならなかったのだそうです。歯科医の堀滋さんが指摘する、むし歯リスクを高める現代人の食生活とは——。

※本稿は堀滋『歯のメンテナンス大全』(飛鳥新社)の一部を再編集したものです。

「何を食べているか」が問題

ブラッシングも大切ですが、甘い物好きは食べ方を変えないと不十分。

歯磨きをしないで4週間、原始人と同じような生活を送ったところ、歯周病にならなかったという興味深い研究報告があります。実際、あまり歯を磨いてなくてもむし歯にならないという人もいます。食事とむし歯の関係が注目され、最近では、歯を磨かないことよりも何を食べているかのほうが、むし歯に関係しているのではないかという意見も出ているくらいです。

むし歯をう蝕といいますが、これは糖を食べたときにつくる酸によって、歯のエナメル質が溶けて穴があいてしまった状態のことです。糖質の多い食事や甘いおやつを食べる習慣がある人ほど、口の中に糖がある状態が長く、酸がつくられる時間も長くなるため、むし歯になりやすくなります。つまり、食事の糖質を減らし、間食をしなければ、口の中に糖がとどまる時間が少なくなるのでつくられる酸の量が減り、むし歯になりにくくなるといえます。

ごはんやパン、麺、スナック類、加工食品に含まれる発酵性糖質(フルクトースやスクロースなど)は、すべてむし歯菌のエサになります。糖質をダラダラ食べないことが大事です。

「無糖」でも炭酸水はむし歯リスクに

糖質がゼロでも酸性度が強いものは歯を溶かす心配があります。

甘い炭酸水はむし歯になるからと、糖質の入っていないシンプルな炭酸水を飲んでいる方がいるようですが、実は甘くない炭酸水もむし歯のリスクとなります。歯の表面のエナメル質は口の中が㏗5.5を下回り、酸性に傾くと溶け始めることがわかっています。口の中の酸が増えるのはむし歯菌がつくる以外に、酸性の飲食物も影響します。酸性の飲料は、炭酸水・チューハイ・梅酒(㏗2~3)、黒酢ドリンク・ワイン(㏗3程度)、スポーツドリンク(㏗3~4)、ビール・日本酒(㏗4程度)など、ふだんから口にしているものに多くなっています。

一気に飲みきってしまって、口の中に滞在する時間が短いのであれば、それほど心配することはありませんが、炭酸飲料を水代わりに飲んだり、ダラダラ飲んだりするのは、口の中が酸性に傾き、エナメル質が日に日に薄くなる原因になるのでおすすめできません。砂糖が入った甘い炭酸水は糖質と酸のダブルパンチになるので、むし歯予防のためには飲まないのがベストです。チューハイや梅酒などの甘いお酒も、酸がつくられるので注意が必要です。

食事は「大きく口を開ける」ことがむし歯予防に

健康長寿のためにはよく噛んで食べましょうといわれます。よく噛んで食べると認知症予防になりますし、歯を守るだ液の分泌が促されるので、それ自体はとてもいいことです。ただし、「噛む」ことを意識しすぎると余分な力が入り、かえって負担になることもあります。私たちがものを噛むときには、30~60kgの力が歯やあごにかかっているといわれています。ものを噛むためにはある程度の力がいりますが、必要以上の力がかかると、歯がすり減ったり割れてしまったり、詰め物が取れたりして、歯を失う要因となります。あごにもよくありません。食事をするときには「噛むこと」を意識するのではなく、「大きく口を開ける」ようにしましょう。口を大きく開けてから自然に閉じると、歯やあごの骨の重さが適度な圧となって食べ物を咀嚼できるので、過度な力がかかることを避けられます。

現代人の咀嚼回数は弥生時代の約6分の1といわれますが、それでも1食で600回は噛んでいます。1日3食だと1800回以上噛んでいることに。歯への負担が少ない噛み方をマスターしましょう。

歯を守るなら、口呼吸より鼻呼吸

ふだん呼吸するとき、鼻からしているか口からしているか意識したことはないかもしれません。もし、口を開けている時間が長く、口呼吸をする習慣があるのなら、いますぐ鼻呼吸に切り替えましょう。口呼吸のデメリットはカゼをひきやすい、酸素の摂取量が減る、睡眠時無呼吸症候群を招きやすいなどが挙げられますが、なんといっても大きいのが「むし歯や歯周病、口臭のリスクになること」です。

口呼吸をしていると口の中が乾いてだ液の分泌量が減ってしまいます。だ液には歯や歯ぐきを守り、悪玉菌の増殖を抑える働きがあるので、だ液が減ると口の中の状態がどんどん悪化してしまいます。口呼吸をしている人は鼻呼吸に切り替えるだけで、むし歯や歯周病、口臭予防になります。鼻炎などで鼻がつまって口呼吸が習慣になっている場合は、耳鼻科で鼻づまりの治療をしましょう。習慣やくせで口呼吸になっている場合は、舌の位置を整える必要があります。

マスクが口内環境を悪化させる

2020年、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が流行して、働き方や生活様式がずいぶん変わりました。なかでもマスクの着用は、今後も感染症対策のために継続することでしょう。ただ、マスクには口腔環境を悪化させるデメリットもあるので要注意です。マスクをすると息がしづらくなるので口呼吸になりがちですし、口の中の温度が高くなります。

口呼吸を続けていると口の中が乾燥して免疫力が低下してしまいます。また、温度が高いと病原菌が増殖しやすい環境になってしまいます。二重の意味で病原菌が増殖しやすく、感染症にかかりやすくなるのです。

私もコロナの自粛期間明けに診察していて、患者さんの口の中の状態が以前より悪化していると感じました。むし歯菌や歯周病菌などが多いと口の中の悪玉菌が優勢になって、病原菌に感染するリスクが高くなります。感染症予防のためには歯のケアが必要ですし、マスクをつけている時間が長くなるほどバイオフィルムがたまりやすくむし歯や歯周病のリスクが高まるので、定期的なメンテナンスが特に重要になります。

むし歯予防にはキシリトールガムが効果的

キシリトールとは甘味料の一種で、白樺や樫の木からとれるキシランヘミセルロースからつくられた天然の甘味料です。だ液の分泌と歯のエナメル質の再石灰化を促す作用があり、むし歯菌が酸をつくるエサとならないことから歯を守る甘味料として知られています。その効果には確実なエビデンスがあり、WHO(世界保健機関)もキシリトールのむし歯予防効果を認めています。

キシリトールが口の中に長くあったほうがむし歯予防効果が高まるため、キシリトール入りのガムやタブレットがすすめられます。購入するときは、使用している糖質のキシリトールが占める割合をチェックして購入しましょう。100%に近いほうがむし歯予防効果が高くなります。キシリトールは1日5g以上でむし歯予防になるといわれています。キシリトール100%のガムの場合4個程度でクリアできます。一気に噛むのではなく、毎食後と夜寝る前など回数を多くしましょう。

[サウラデンタルクリニック院長(旧堀歯科診療所院長) 堀 滋]

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証券会社40年のベテランが断言、絶対に買ってはいけない投資信託の特徴

2021年2月4日 08:00 PRESIDENT Online

証券会社で40年近く投資のアドバイスをし、現在は経済コラムニストとして活躍する大江英樹さんは、「一見時流を捉えたように見える金融商品を、流行や話題に乗って買うのは非常に危険」と指摘します。気を付けたほうがいい投資信託とは――。

流行りものは短命で終わる

投資信託には、様々な種類がありますが、そんなジャンルのひとつに「テーマ型投信」と言われるものがあります。例えば、ロボット、5G、AI、ESG、といった様々なテーマを通じて特定の業界や企業に投資をするというタイプの投資信託です。こうしたテーマ型投信というのは別に最近出てきたわけではなく、かなり昔からありました。でもこういう“流行りもの”の多くはだいたいにおいて、短命で終わっています。

典型的なのは2000年前後のいわゆる「ドットコムバブル」です。当時のIT企業の株価が大幅に上昇しました。そんな時代にはそういう企業に投資するファンドが林立しましたし、更にもっと前だと1984年頃にはバイオブームでこうした企業に投資するファンドもたくさん出ていました。

時代が変わってもテーマを変えて売り出される

いずれのケースもあまり良い結果とはならずに終わっていますが、相変わらずこうしたテーマ型投信は時代が変わってもテーマを変えて売り出されています。

株式投資の場合は、その時代の流れに乗ることが大事ですからこうしたトレンドを見極めることはとても重要なことですが、投資信託の場合は、こうしたテーマ型投信を買うというのは決してお勧めできるものではありません。その理由は大きく言うと3つあります。

①テーマ型投信は合理的とは言えない

株式投資信託というのは複数の企業の株式に投資をするものです。投資信託の種類は様々で、その分類方法も色々ですが、一番基本になるのはパッシブ型かアクティブ型という分け方でしょう。パッシブ型は例えば日経平均やTOPIXといった市場の指数に連動を目指すタイプなのでとてもシンプルですが、アクティブ型の場合はどういう投資対象に投資をするのか? というのが重要なポイントになります。大型株か小型株か、あるいは割安株を中心に選ぶバリュータイプか、成長性を重視して銘柄を選定するグロースタイプか、といった具合です。

ここで注意しなければならないのは、アクティブ型は独自のポリシーの下に運用することになりますが、それは投資する基準を明確にしているということであって、選択する銘柄の母集団を最初から小さくするという意味ではありません。例えばグロース株に投資をするというファンドであれば、業種や規模は関係なく、中長期的な視点で成長するかどうかという基準で選ぶべきものです。そういう銘柄を数多い上場企業の中から選ぶことが大切ですから、選ぶ対象の母集団が大きいほど、良い銘柄を発掘できる可能性が高くなるのは当然だと言えます。

だとすれば、テーマ型投信のように投資する対象を最初から狭めてしまうというのはあまり合理的な投資方法であるとは言えないでしょう。

②「わかりやすいこと」が「儲かる」とは限らない

にもかかわらず、なぜ多くの人はテーマ型投信を買おうとするのでしょうか? その理由は“わかりやすい”ことと“売りやすい”ことにあります。買う顧客側から見れば最大の理由は何と言ってもわかりやすさでしょう。AIやロボット、5Gなどというテーマはテレビやニュースでもよく取り上げられていますので、投資信託のことをよく知らない人でもなじみがあります。

これは販売する側から見るととても売りやすいということになります。ただ、いくら言葉を聞いたことがある、或いはそれについてよく知っていたとしても、それらに関する企業の株価が必ずしも上がるとは限りません。「わかりやすいこと」と「儲かること」はまったく別問題なのです。

話題のものほど「上がりそう」と勘違いしてしまう

行動経済学では「利用可能性ヒューリスティック」と言われる心理があります。これはどういうことかと言うと、身近なものやわかりやすいものは、起きる確率が高くなると勘違いすることを言います。どうやら投資信託を選ぶ際にもこの「利用可能性ヒューリスティック」が影響を与えているように思えます。具体的に言うと、知っているもの、最近話題になっているものは上がる確率が高そうに思えるということなのです。

テーマ型ファンドに当てはめて言えば「株のことはよくわからないけど、AIやフィンテックはブームだし、これからの時代はESGが大事だものなぁ」と言った具合に誰でも想起しやすいことから、関連する株も上がるのではないか? と感じてしまうのです。

③既に高値になっている場合が多い

ところが多くの場合、一般のニュースや話題で取り上げられているということは、既に株式市場でも相当関心が高まっているということですから、株価もかなり高値圏に来ていることが多いのです。

「これからの日本にとって重要なテーマだ!」「長期的に成長が期待できる分野だ!」……。それはそうかもしれませんが、株式市場というものは当面利益が上がっていなくても短期的には実態をかなり先取りして動く場合が多いものです。言わば関連するテーマの銘柄であれば何でもかんでも株価が上昇するということがしばしば起こります。したがってテーマ型ファンドが設定された時点では往々にして投資対象の銘柄が既に高値圏になっているという可能性が高いということなのです。証券会社での40年近い私の経験を振り返ってみてもテーマがもてはやされた時に設定されたテーマ型ファンドの多くは、その後悲惨な結末を迎えているのです。

急騰局面で売却しておいたほうが無難

ただし、こうしたテーマ型ファンドは短期的には儲かる可能性もあります。高値圏にいるということはそれだけ株価の動きも大きくなっているため、設定してごくわずかの間に急騰することもあり得るからです。そうなると一気に人気が高まり、更に売れるということになりますし、当然販売するほうも非常に強気で勧めてくるでしょう。

ところがそこで買うのは非常に危険だと考えるべきです。仮にテーマ型ファンドを既に購入してしまった人であれば、そうした急騰局面では売却しておいたほうが無難だと思います。先ほども述べたように私の経験から言えば、今までに設定されたテーマ型ファンドのその後を見ても、長期的に成長が続き、大きくなるとは到底思えないからです。

流行りに乗って「理想買い」しないように

株式というのは面白いもので、その会社が非常に優れたビジネスモデルを持っていたり、まだ開発の段階だけど画期的な新商品や新薬の開発が見込めたりする場合は、現実の業績が伴っていなくても先行きを見越して上がることが多いのです。これは「理想買い」といわれる局面です。ところがその後は業績が思うように伴わないために下がり、しばらく低迷しますが、後になって現実に利益が出て業績が伴ってくると上がるということもよくあることです。これが「業績買い」と言われるものです。

例えばソフトバンクが2000年の前後に株価が20万円以上をつけたのは「理想買い」の段階だったと言えるでしょう。そしてその後株価が大幅に下落し、しばらく低迷を続けたものの、その後に取り組んだ携帯電話事業が中核となり、着実にキャッシュを生み出す企業になってからは再び上がってきた。これは「理想買い」から「業績買い」に移行した良い例と言えるのではないでしょうか。

テーマ型ファンドにおいても本当にしっかりと長期に継続しそうなテーマのものであれば、長期投資として買っておくのも悪くはないと思います。ただしその場合でも理想買いで盛り上がっている最中にわざわざ高値を買いにいく必要はありません。理想買いの後に一旦株価が下がった時に買えばいいからです。

結論として、長期的に資産形成を目指す一般投資家は短期的な人気に左右されるテーマ型ファンドを買わないほうが賢明でしょう。“流行りもの”に飛びつくと、ろくなことはないというのは投資の世界でも真実だからです。

[経済コラムニスト 大江 英樹]

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「ワクチンまではこれで身を守れ」最新コロナ論文を追う免疫学者が訴える栄養素

2021年2月4日 08:00 PRESIDENT Online

コロナ研究の現場では「ビタミンD」による感染予防や治療の効果が注目されている。順天堂大学医学部の講師で、免疫学研究に20年以上従事してきた玉谷卓也氏は「ワクチン接種が全国民にいきわたるには時間がかかりそうだ。新型コロナの感染・重症化を防ぐために、ビタミンDの服用を検討してほしい」という――。

※本稿は、小林弘幸・著、玉谷卓也・監修『免疫力が10割 腸内環境と自律神経を整えれば病気知らず』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

免疫力を高める「栄養素」

栄養素には「抗炎症作用」という炎症の拡大を未然に防いでくれる機能を持つものが多く存在し、また、それぞれの免疫細胞はその分化や成長、エネルギー源として特定の栄養素を必要とします。

必要な栄養素が不足すれば、免疫力は低下し、防げた炎症が広がってしまうことになります。それは、新型コロナウイルスへの感染や、重症化の原因となる「サイトカインストーム」の抑止にも関係しています。

抗炎症作用を持つ栄養素には、魚介類に多く含まれるオメガ3脂肪酸を筆頭に、ビタミンA、ビタミンCをはじめとする各種ビタミン、そしてポリフェノールやカロテノイドなどの植物化学物質があります。また、食物繊維は腸内細菌の分解によって短鎖脂肪酸を生み出し、抗炎症作用や粘膜のバリア機能の強化などを含むさまざまな健康効果を生み出します。

免疫細胞の分化や成長、エネルギー源としての役割では、多種多様な栄養素が複雑に絡み合っています。

新型コロナに対する免疫力を高める「ビタミンD」

ビタミンのなかでも、新型コロナ感染症に対する免疫力を高めるという観点において、いま注目されているのが「ビタミンD」です。

ビタミンDはカルシウムを骨に取り込むのを助け、骨粗しょう症などにも関わる、骨の健康に欠かせない栄養素と知られています。また、膵臓に作用してインスリンの分泌を促進する働きがあることから糖尿病の予防に欠かせないほか、がんやうつ病の発症にも関係しています。

さらに、ビタミンDは呼吸器疾患に対して抵抗力を高める作用があるほか、免疫力を強化し、ウイルスへの抵抗力を強めることがわかってきたのです。そして最新の研究により、新型コロナウイルスに対しても同様の効果が確認されています。

ビタミンD不足の人は感染しやすく重症化もしやすい

新型コロナウイルス感染症の重症化患者では、ビタミンD不足の人が有意に多いことが、複数の研究で明らかになっています。またビタミンD不足の場合、感染リスクも高まるという報告もあります。

これまで新型コロナとビタミンDとの関係を調べた論文の約8割で、ビタミンD不足が新型コロナの感染・重症化に関連していると結論づけています(1)。そのような論文では、ビタミンDが不足している人では、感染リスクが約1.5倍増え、軽症以上の入院リスクが1.8~2倍になり、重症化するリスクが2~2.6倍高まると報告されています。

なぜビタミンDに新型コロナに対してこのような効果があるかについても、研究は進んでいます。ビタミンDの免疫系に対する効果を調べた研究から、ビタミンDには免疫系のウイルス反応性を高め、新型コロナの重症化にかかわるサイトカインストームを減少させることがわかっています(2)。

ビタミンDには新型コロナの「治療」効果も

さらに新型コロナウイルスの感染患者にビタミンDを投与したところ、重症化する人が著しく減るという、驚くべき結果がスペインから報告されました(3)。

新型コロナに対するビタミンDの治療効果を調べるために、50人の感染者にビタミンD代謝物(カルシフェジオール)を投与したところ、ICUへの入院を必要としたのは1人(2%)だけで、死亡した患者は1人もおらず、すべての患者が合併症もなく退院しました。一方、投与しなかった26人の患者では、13人(50%)がICUへの入院を必要として、2人が死亡し、残りの11人は退院したそうです。

ビタミンD代謝物を投与しなかった群に比べて、投与した群では重症化リスクが90%以上減ったということになります。俄かには信じられないくらいの著しい効果です。患者数が少なく、解析方法の不備も指摘されていましたが、詳細な検証の結果、ビタミンDの効果は明らかとなっています(4)。

世界中の200人以上の科学者が服用を推奨

ここまで述べてきたように、血中のビタミンD不足は、ほぼ確実にCOVID-19の感染、重症化、死亡を促進することが示されています。このことから昨年12月に、世界中の科学者・医師ら200人以上が、すべての政府、公衆衛生当局、医師、医療関係者に対して、ビタミンDの摂取量をすぐに増やすよう求める公開提案書を出しました(5)。

提案書の中では、具体的に以下のような推奨項目を挙げています。

・25-ヒドロキシビタミンD〔以下、25(OH)D〕の血清レベルが30ng/mL(75nmol/L)以上になるよう、すべての供給源からの摂取を推奨する。
・成人には、1日4,000IU(100μg)、あるいは少なくとも2,000IUのビタミンD摂取を推奨する。
・過度の体重、肌の色の濃い人、介護施設で生活している人などビタミンD欠乏のリスクが高い成人は、より高い摂取量(例えば、2倍)を推奨する。
・まだ上記の量を摂取していない大人は、2~3週間(または検査で測定する場合は30ng/mLを達成するまで)毎日10,000IU(250μg)を摂取してから、上記の毎日の量を摂取することを推奨する。
・すべての入院したCOVID-19患者については、25(OH)Dレベルを測定して、少なくとも30ng/mL(75nmol/L)以上になるように、カルシフェジオールまたはビタミンD3を投与する。

提案書では、「ビタミンDの不足は、新型コロナに大きな影響を及ぼすリスクの中で、最も容易に、かつ迅速に修正可能なリスク因子である。またビタミンDは安価である。」としたうえで、最後に「すぐに行動してください」と結ばれています。

ビタミンD不足の日本人

ビタミンDは人間が生きていくためには必須の栄養素です。そのため太陽光を利用して体内で合成できるように進化してきたと考えられます。例えば赤道に近いアフリカで誕生した人類は、高緯度に移住する過程で、太陽光を効率的に取り込めるように、肌のメラニン色素が減っていったといわれています。

ビタミンDを合成する能力は遺伝性が強く、その能力は人によって異なります。日本人は比較的ビタミンDの合成力が低く、欠乏症になりやすい人が多いことがわかっています。自分がビタミンD不足になりやすい体質かどうかは、DNA検査で調べることができます(筆者プロフィールにリンクがある「新型コロナ感染・重症化リスク検査」では、ビタミンD不足のリスクについても調べることができます)。

また特に女性では、美容のために日焼け止めや肌の露出の少ない衣類の着用などによるUVケアを徹底するようになってきたこと、さらに魚の摂取が少なくなっていることなどから、ビタミンD不足が深刻化してきています。

最近日本で行われた疫学調査によると、ビタミンD不足の割合は、年代を問わず70~90%にも達していたということです。さらにコロナ禍で外出を自粛している場合や、太陽からの紫外線が弱くなる冬場は、ビタミンDが不足している可能性が非常に高まっているのです。

摂取は食事と日光浴から

ビタミンDが欠乏しないようにするためには、日光浴とビタミンDが豊富に含まれる食品を摂ることが重要です。

ビタミンDは魚介類、卵、キノコなどに多く含まれます。牛乳などの乳製品にも多少含まれますが、野菜や肉類にはほとんど含まれていません。例えばビタミンDを10μg摂取するためには、魚であればサケ:半切れ、サンマ:1尾、カレイ:1切れ、マグロ:刺身15切れ、キノコ類なら乾キクラゲ:2.5g、干しシイタケ:65g、卵なら7個となります。

食事から十分量のビタミンDを摂取するのは難しい場合は、サプリメントの服用も有効です。欧米ではビタミンDのサプリメントを日常的に摂取することが、医者や政府からも推奨されています。1日のサプリメントによるビタミンDの摂取目安は、10~25μgです。ただしコロナ対策として科学者が推奨している摂取量は、1日100μgです(5)。

ビタミンDは日光浴によって皮膚でつくりだすこともできる栄養素です。夏であれば、日焼け止めなしで日中に5分から10分、冬なら関東では20分から30分、北海道では1時間以上の日光浴が推奨されています。ただしガラス越しや日焼け止めを塗った場合は効果がなくなりますのでご注意ください。またこの目安の時間の2~3倍以上の紫外線を浴びてしまうと、シミやしわができやすくなり、発がんリスクが高まります。食事やサプリメントによる摂取と併せ、生活習慣に適度な日光浴を取り込むようにしましょう。

とはいえ、日光浴という習慣は北欧諸国ならともかく、日本人には慣れない習慣だと思います。そこで、もっとも効率がいいのは、散歩やウォーキングの習慣を取り入れることです。

これなら、太陽の光を十分に浴びながら、肥満にならないようエネルギーを消費することもできるでしょう。

新型コロナ対策としてビタミンD摂取を検討しましょう

多くの研究者が懸念していたように、昨年の11月中旬頃より、新型コロナの感染が急拡大しています。この原因の一部は、冬場の紫外線減少や外出機会が少なくなったことによるビタミンD不足によるものかもしれません。

世界的には新型コロナに対するビタミンDの効果については、認知されはじめています。アメリカのトランプ前大統領が新型コロナに感染した際も、最新の治療薬とともに、ビタミンDを服用していました(6)。またアメリカでコロナ対策を主導している、国立アレルギー感染症研究所のファウチ所長は、「ビタミンDが欠乏していると感染症にかかりやすくなる。そのため、摂取を推奨しても構わないと考えている。私自身も、ビタミンDのサプリメントを取っている」と話しています(7)。

ワクチンについては、春以降に一般の方への接種がはじまる予定ですが、全国民にいきわたるにはまだまだ時間がかかりそうです。新型コロナの感染・重症化を防ぐためにも、ビタミンDの服用を検討してもいいかもしれません。

参考文献
1)Risk Manag Healthc Policy.2021;14:31.
2)Front Immunol.2020;11:590459.
3)J SteroiD Biochem Mol Biol.2020;203:105751.
4)medRxiv preprint;this version posted December 21,2020.
5)#VitaminDforAll:Over 200 Scientists&Doctors Call For IncreaseD Vitamin D Use To Combat COVID-19
6)REUTERS「抗体カクテルを使用、トランプ氏のコロナ治療計画」(2020/10/3)
7)Forbes「新型コロナ死亡リスク、米国人は血中ビタミンD濃度と深く関連か」(2020/9/29)

[免疫学者・順天堂大学医学部講師 玉谷 卓也]

外部リンク

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「問われるのは読解力より忖度力」第1回共通テストは"国語"に致命的な問題がある

2021年2月4日 08:00 PRESIDENT Online

大学入試センター試験に変わって、今年から導入された「大学入試共通テスト」。それを受験した国際教育評論家の村田学さんは「日本教育のガンは国語だとわかった。国語の出題形式が変わらないと、思考力や表現力は育たない」と語る。国語試験で感じた問題点とは――。

共通テストをお試し受験

1月16日、筆者は受験生として、第一回大学入学共通テストの受験会場にいた。

現在47歳。過去にセンター試験を2回経験したことがある国際教育評論家として、国が進める大学入試改革の目玉である「共通テスト」をお試し受験してみようと思ったのだ。

ちなみに、試験中にマスクから鼻を出して失格になり、トイレに立てこもって逮捕された受験生(その後、釈放された)が私なのではと心配する友人が多数いたが、私ではない。試験中、ずっとマスクをしていると耳が痛くなって、ズラしたりしていたが、幸いに注意されることはなかった。

緊張感に包まれたコロナ禍の受験会場

私の受験会場は東京都立大学の南大沢キャンパス(八王子市)だった。当日、最寄りの南大沢駅から試験会場までの通路では、拡声器で「前の人と距離を空けて進んでください」という呼びかけがされていた。

正門前で受験生は、手を消毒し、さらに受験票チェックを受ける。その後、受験する教室へ向かうが、建物前で体温チェックと掲示されたコロナ対策を確認し、再度、教室前に置かれた消毒液で手指消毒を行った。

筆者は大講義室で受験した。扉を開けると200人ほどの受験生の姿が目に入ったが、物音はない。会場を沈黙が覆い、咳をすることもはばかれる緊張感が張り詰めていた。

30年前に受けたセンター試験では、休憩時間など同級生や予備校の知り合いと話し、キャンパスで昼食を共にしたものだ。しかし、コロナ禍の共通テストは消毒、マスク着用、会話なし。トイレに行く時以外、自分の席にいることが受験者に課せられて、一日中、お葬式のような雰囲気だった。

知識がなくても解ける問題が増えていた

私はこの日、「地理A」「政治経済」「国語」「英語」の4科目をお試し受験した。

地理Aや政治経済では、論理的な思考力や読解力があれば、知識がなくても解ける問題が多かった。

たとえば、地理Aの問題ではタピオカミルクティーという身近な題材をきっかけに、「なぜ、世界中からさまざまなものが集まり、食べたり、飲んだりできるようになったか」が問われた。問題ではこのテーマの研究事例として不適切なものを選ぶ。選択肢は次のとおり。

1 原産地を表示する制度により、地域ブランドを明示したフランス産のチーズが安価に輸入されるようになった。
2 自由貿易協定の締結により、オーストラリア産の牛肉が低い関税で輸入されるようになった。
3 輸送技術の向上により、ニュージーランド産のカボチャが日本での生産の端境期に輸入されるようになった。
4 養殖技術の確立により、ノルウェー産サーモンを一年中輸入できるようになった。

答えは1で、原産地を表示する制度が、世界中から食べ物が輸入されることの直接的な理由ではないことがわかれば小学生でも解けそうだ。

政治経済では、不良債権処理と貸し渋りの関係を、「経済不況以前」→「経済不況」→「不良債権処理」時の銀行のバランスシート(貸借対照表)を見て考える問題が出題された。高校生がバランスシートを見たことはないかもしれないが、答えはすべて図の中に書かれている(問題1参照)。知識偏重と批判されてきた日本の大学入試を、思考力重視に変えようとする意思を感じる問題が多かった。

まるで「ブラタモリ」。解くのが楽しかった

解いていて楽しかったのは、地理Aの第5問。

京都市に住むタロウさんが、京都府北部の宮津市の地質調査をする設定の問題。現在の地形図と江戸時代の絵図を比較したり、宮津湾と阿蘇海の間にある「天橋立」の調査では、タロウさんの撮った写真が示され、地図上のどこから撮影したかを問うたり(問題2参照)。筆者が試験の前の週に見た「ブラタモリ」でまさに同じようなことをしていて、解きながら番組を見ているような楽しさを感じてしまった。

文法・訳文中心から「実用英語」重視が鮮明

民間試験の活用が見送られ、何かと注目を浴びていた英語試験。「リーディング(80分)」「リスニング(60分)」に分かれていて、それぞれ比較的平易な英語ながら、文章量が多く、速読(速聴)能力が求められる内容になっていた。

これは大学入学後に、英語文献にあたって、レポートをまとめる能力があるかを問う内容。センター試験の文法や訳文、読解中心の出題から、実用英語に大きく舵を切っている。長年、インターナショナルスクールの経営に携わり、海外の教育を見てきた筆者としては、非常に喜ばしい変化だと感じた。

おもしろかったはリーディングの英文として、学生同士のメッセージアプリのやりとりがあったり、イギリスの学校の生徒会長が、校長に放課後の活動時間の変更について抗議する文章があったこと。新しい校長によって、放課後の活動時間が6時から5時までと短くなった。それは電気代を節約するためではないかと問い、自分たちは放課後の活動を非常に大切に考えているので元に戻すように主張している。イギリスやアメリカの学校では、校長によるルール変更も、その根拠を問い、自分たちの権利主張をするのが当たり前だ。受験生に対してこうした文化を紹介する内容になっている点も、非常に良い問題だったと思う。

国語だけ時が止まったようだった

受験した4科目のうち、唯一、変化が感じられなかったのが「国語」だ。筆者が30年前に受験した時と同じ、現代文2問、古文1問、漢文1問という出題に驚いた。現代文の小問題5問は、必ず漢字の問題だったが、それさえ同じだった。まるで時が止まったかのようである。

筆者の読解力の問題かもしれないが、出題内容もほかの教科に比べて難解で、ひらたくいうと、ひねくれているように感じた。

たとえば、妖怪の定義がテーマの第1問。

大ブームを巻き起こしたアニメ「妖怪ウォッチ」の妖怪定義に結びつくと期待して読んだが、江戸時代に妖怪がキャラクターになるまでの背景と分析だった。それはいいのだが、分析の方法としてフランスの哲学者、ミシェル・フーコーのアルケオロジー(考古学)の手法がとられる。

アルケオロジーの具体的な説明は紙幅の問題(と、筆力の問題)で避けるが、難解な哲学的な手法を理解しているか、それによって妖怪の定義が変わっていくことを理解できているかが、選択問題で問われていく。その文章がいちいち難解で、なんというか……「中二病」をこじらせた文学青年が書いたように思えたのだ(あくまで個人の感想です)。

そして、この選択問題で問われているのは、本人が論理的に読んだり、論ずる力よりも、こじらせた文学青年(出題者)の意図を読み取る、「忖度力」のような気がすると言ったら言い過ぎだろうか。読解力を選択問題で測ろうとすることに無理があると感じた。

もちろん、共通テストでは国語でも記述問題を導入しようとしていたが、採点が大変なことや不平等になるとの指摘によって見送られたことはしっている。苦肉の策で、妖怪の定義の変遷をまとめた「ノート」を登場させて、ノートに整理したときにどんな文言が入るかを選ばせる問題まで出ていた。選択問題でなんとか、記述力(ここではノートにまとめる力)を測ろうとする涙ぐましい努力の跡が見えた。

しかし、それでもお膳立てされた選択肢の中から出題者が考える正解を選ぶことには変わりはない。「忖度力」しか問わない試験で、自ら仮説を立てて検証し、論理的に組み立てていく「論文」を書ける学生がとれるのかは大いに疑問だ。

国語は、すべての学問の基礎である。その国語力を問う、日本の最高学府・大学の入学試験で、記述力が問われてこなかったことが、日本の教育では思考力や表現力が育たないといわれる最大の原因だったと痛感した。

欧米の大学の試験では、必ず記述がある。欧米でも採点者によって不平等になるという批判はもちろんあるが、それでも記述力を問うことの大切さを理解しているからこそ、入試では記述させるのだ。日本にマークシート方式が導入された共通一次が始まった1971年から42年間。毎年50万人以上もの受験生がマークシートを黒く塗りつぶす度に、学問の基礎である国語力を黒く塗りつぶしてきた。

一度は導入が検討された国語の記述問題。文科省は見送りを発表したが、どうか記述から逃げずに検討を続けてほしいと願っている。

[国際教育評論家 村田 学]

外部リンク

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「洗脳するまで目的は伝えない」起業を夢みてセミナーに通った20代女性の悲惨な末路

2021年2月4日 08:00 PRESIDENT Online

マルチ商法などの悪徳商法の手口が巧妙になっている。ライターの雨宮純氏は「街コンや起業セミナーなどあらゆるところに構成員がいる。洗脳するまで商材を見せないという点で、手口は非常に悪質だ。ある20代女性は、同じ組織の構成員と寝食をともにしながら毎月15万円を上納することになった」という――。

気づいたらそこは悪徳商法の巣窟

「最初はあのお店がそんな場所だとは、まったく知りませんでした」

繁華街にある、小ぎれいでリーズナブルなダイニングバー。カクテルは1杯300円。食事の味も悪くない。何も知らなければ、単にコストパフォーマンスの良い便利な店だろう。

ところが、私が取材したAさん(20代・女性)が出入りしていた店は、経営者から従業員、常連までが悪徳商法集団の構成員という、魔窟のような場所だった。

Aさんが「彼ら」と関わるきっかけは、ありふれた路上に潜んでいた。

「すみません、このあたりでおいしいラーメン屋を知りませんか?」

ある日、友人との食事から帰宅していた彼女は、路上で男女二人組に声をかけられた。親切心から近場のラーメン店を教えた彼女は、話の流れでLINEを交換したという。

その翌日、路上で声をかけてきた女性から、食事を誘うLINEが届いた。予定の空いていたAさんは、誘われるままに食事の約束をした。場所として指定されたのは、繁華街の中心地にあるダイニングバー。立地と店構えの割にメニューが妙に安かったが、格別味が悪いわけでもなかった。

Aさんはその後も食事に誘われ、気づくとその店で行われるパーティーに参加するようになったという。参加者には起業を目指している人が多く、店の経営者という男性を紹介された。男性は客にひどく慕われており、その周りには会話を求める人の輪が出来上がっていた。

しかし、パーティーに通うなかで、Aさんはある違和感を持ったという。

「何というか、店員と常連の仲が良すぎるんです。不思議に思って聞いてみたら、常連が店員として働いていることがあると説明されました。そんなものかと思っていたんですが、話を聞くうちに、常連も店員も、なぜか皆同じ場所に住んでいることが分かりました。本当の理由が分かったのは、入会後だったのですが」

セミナーには店員や常連が参加していた

誘ってきた女性との会話のなかで、経営者の高収入と時間の自由を強調されたという。話の流れで起業に興味を持った彼女は、その女性から「経営の師匠」を紹介された。その人物はパーティーにいた経営者の男性だった。Aさんは起業の勉強をしている団体があると説明され、起業の意思を確かめられた後に入会を認められた。

その後始まったセミナーで、彼女は驚愕した。

「あの店の経営者も店員も常連も、皆同じセミナーに参加していたんです。お店やパーティーにいたほとんどの人が同じ団体の会員でした」

その数カ月後に彼女を待っていたのは、シェアハウスで同じ組織の構成員と寝食をともにし、師匠に毎月15万円支払う生活だった。

個人情報はすべてスプレッドシートで管理

彼女が入会していた団体は「環境」や「事業家集団」などと通称されている。あくまで「通称」なのは、この団体に正式名称がないためだ。

違和感を覚える方もいると思うが、これにも狙いがある。彼らはネットで悪評を検索されないよう、あえて名前を付けていないのだ。いわば「逆SEO対策」である。以下、本稿では彼らを「環境」と呼ぶことにする。

「環境」の勧誘手法とビジネスは以下のようなものだ。

彼らはまず、街コンやボードゲーム会、あるいは主要駅の路上といった人が集まる場所に出向き、連絡先を大量に交換する。

その後、食事や飲み会、パーティーなどに誘い、属性を聞き出すとともに親交を深めていくという。ターゲットにされやすいのは独身の一人暮らしで、職場に不満を持っていたり、今の仕事とは他にやりたいことがあるなど、現状を変えたい志向を持つ人物だ。

ここで聞き出した情報はスプレッドシートで管理されるとともに「師匠」(上位階層メンバー)に報告されている。私が脱会者に見せてもらったスプレッドシートには、氏名や出身地、職業や生活形態といった個人情報がびっしりと書き込まれていた。

勧誘できそうだと判断すると、最初に接触した人物が師匠を紹介する。この時の組み合わせは、勧誘対象―構成員―師匠という、マルチ商法でもよく見る「ABC(A=アドバイザー:説明者、B=ブリッジ:勧誘しようとする人、C=カスタマー:勧誘される人)」である。

構成員は「起業で成功する方法を知っている」「何人もの弟子が独り立ちしている」といった言葉で師匠を持ち上げ、また師匠が経営している店舗や会社のウェブサイトを見せて信用させる。

こうして「環境」に心を許していると判断すると入会を勧め、師匠の近辺に引っ越すよう助言するのだ。

「自己投資」の正体は幹部への上納金

入会後はコミュニケーションやビジネスマインドに関するセミナーに毎週末参加させる。セミナーの内容で特徴的なものが「チームビルディング」と「自己投資」である。

「チームビルディング」とは、「起業するにあたってはチーム作りが重要なため、直下9人・総勢50人のチームを作り上げることが必要である。」と伝え、勧誘手法を叩き込むものだ。「環境」では、上記のチームを作り上げるとオーガニックショップの出店が「許可」されるが、これを実現する会員はほとんどいない。実現した場合も顧客のほとんどは「環境」の構成員である。

また「自己投資」とは、「起業のためには月15万円程度の『自己投資』が必要」と伝えるものだが、具体的な内容はまだ伝えない。

ひととおりのセミナーが終わると勧誘する側に回らせ、毎日深夜にまで及ぶ勧誘活動や師匠への報告を行わせて疲弊させていく。

そうして3カ月ほど経ち、完全に組織に染まった時、初めて「自己投資」の内容を明かす。15万円の自己投資の正体。それは、「師匠の店舗から15万円分のシャンプーやサプリメントを毎月購入する」ことなのだ。

一般的なマルチ商法ではないが…

構成員が勧誘した人物が自己投資を行った場合、「自己投資に使えるポイント」が付与される。このため構成員は自己投資の負担を下げ、チームを作って出店を許可されるため勧誘にいそしむこととなる。

つまり彼らは、構成員に勧誘を行わせ、商品販売を行うピラミッド状の組織を作るビジネスを行っている。これがマルチ商法、つまり特商法における連鎖販売取引にあたるかどうかは解釈が分かれるところだ。

彼らの特徴は月15万円もの買い込みを行わせることと、目標が起業=オーガニックショップの出店に置かれること、そしてビジネスの正体を徹底的に隠すことであり、筆者はこれが問題であると考えている。

一般的なマルチ商法であれば勧誘の早い段階で商品説明やデモを行うため、その企業の名前や業態を知ることができる(そもそも事前に企業名やマルチ商法であることを示さず勧誘するのは違法である)。

ところが「環境」の場合、単に起業を目指す集団であるとだけ伝えて入会させ、完全に染まりきるまで核心を伝えない。これは徹底しており、勧誘の場では組織で扱っている商品は絶対に見せず、自己投資の正体を明かす前にもその説明は行わない。勧誘の途中でターゲットから外れ、飲み会やパーティーの主催が「環境」だったと気付かないままの人も多くいるだろう。

勧誘の毎日で交友関係を「環境」周辺に限定させ、疲労で思考力を鈍らせてから初めて月15万円もの買い込みを勧める。この状態で15万円の自己投資を選択したとして、果たして「本人の意志」であると言えるだろうか。

知らないうちに「環境」の店舗を利用している場合も

私の手元には脱会者から集めた「環境」関連の店舗リストがあり、その数は60を超えている。全ての情報を集めきれているわけではないので、実際の数はさらに多いはずだ。

冒頭で示したような飲食店は東京都内や大阪市内に多数あり、この他にも前述したオーガニックショップやレンタルキッチン、貸し会議室などがある。事例としてよく聞くのは東京だと品川や五反田、大阪では福島だ。これは、都内でも山手線の南側に多くの弟子を持つ「師匠」が多いことと、この団体の発祥の地が大阪だったためと考えられる。

特に飲食店の場合、オーガニックショップとは異なり一般客もそれなりにいるため、それと知らずに使っていることも十分あり得る。筆者がグルメサイトを確認したところ、彼らの店舗も掲載されており、肯定的なレビューも付いていた。

彼らはとにかく勧誘機会を求めており、その代表が前述した街コンである。東京・大阪で数千人の会員が毎日活動しているため、一時は大抵の街コンに「環境」の構成員が入り込んでいる状況で、同じ街コンで仲間を見かけることが何度もあったという。

この他にも駅や路上での声かけ、各種交流会、読書会、朝活会、ボードゲーム会、IT系の勉強会、フットサル、パブリックスタンド、スタンディングバーなど、およそ人が集まる場所のほとんどに入り込んでいる。

読書会やボードゲーム会といった集まりに出向かなくても、路上で声をかけてきた相手が構成員だったとしたら。彼らと出会うきっかけは、何げない日常の中に潜んでいるのだ。

将来の不安を抱えても絶対に相談してはいけない

コロナ禍で街コンや交流会が激減している昨今だが、彼らの活動は衰えていない。相変わらず路上での声かけは行われており、またオンラインでの街コン、読書会、勉強会などに入り込み、勧誘機会を窺っている。

さらに筆者が取材した例では、オンラインビジネス講座サイトの講師が「環境」の構成員というケースもあった。リモートであっても人が集まる場所、特に参加ハードルが低い場所には彼らが潜んでいる。

ただ、怪しい場所や人物を判別し連絡を絶てば、このような集団に取り込まれることは防げる。そこで、人物や店舗が「環境」関連であると判断できるポイントをいくつか挙げる。

○人物編
・街コンで同性の連絡先を大量に集めている
・路上でおいしい店やおすすめの居酒屋を聞いてくる
・「友達が集まる飲み会」といったつながりの不明瞭な集まりに誘ってくる
・「自分が源」「過去は生ゴミ」といった言葉(彼らのセミナーで教え込まれる)を使う
・「起業や経営について学んでいる人物」を紹介しようとしてくる


○店舗編
・メニューが不自然に安い(好立地で小ぎれいなのにハイボールが300円台、カクテルが400円台など。構成員を無給で働かせている場合もあり、それでなくても月15万円回収しているため。ただし普通の価格帯のこともある。)
・一般名詞や地名など、店名が妙にシンプル(団体名と同様の逆SEO目的)
・休日が貸切営業になっている(勧誘パーティーに使っているため)
・店員と常連の仲が不自然に良い
・店員も常連も皆同じ場所に住んでいる(師匠の近所への引っ越しを勧めたり、シェアハウスで集団生活をさせているため)

現状や将来への不安から、誰しも現状を劇的に変える希望に心惹かれてしまうことはある。しかしその希望を見せてくる相手が、もしもあなたの財産を狙っているとしたら。筆者が取材したなかには、「環境に入会して、貴重な時間と資産を奪われてしまった」と悲痛な声で実体験を話してくれた元会員もいた。

不安を抱えることは誰にでもあるが、そんなときに上記のような特徴をもった人物や店舗に遭遇したら要注意だ。悪質な団体に時間と資産を奪われないよう気を付けてほしい。

[ライター 雨宮 純]

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