今月のアスリート王子:大野将平(柔道選手・73kg級)
りりしさが半端ない。東京五輪で金メダルに最も近いと言われる柔道男子73kg級の大野将平選手だ。
インタビューのときの一人称は、見た目の風格にぴったりとマッチする「ワタクシ」。平成4年生まれでありながら、明治・大正・昭和を感じさせる古きよきたたずまいがあり、話しぶりは堂々としながらもいたって謙虚だ。
国際大会を破壊力満点の大技で勝ち進んだかと思うと、インタビューでは知性と思いやりを感じさせる言葉が続々と出てくるのである。
2月下旬に東京五輪の代表に選出されたときの会見では、大野選手がライバルに感謝するコメントを発すると、筆者の隣の席にいた某テレビ局の男性アナウンサーが「カッコイイ…」と、かすかにつぶやいていた。男性をも魅了する男っぷりがあるのだろう。
大野選手が最も得意な技は「大外刈り」だ。相手の背中側に自分の足を回し入れて、すくい上げるようにして投げる豪快な技。これが難なくできるのは、成人男性の1・5倍ある左右70kgの握力と、綱のぼりや懸垂で鍛え上げた、とてつもない広背筋をもっているからだという。
そして、なんといってもご自慢なのは、背中以外にもたっぷりとまとっているムキムキの筋肉。気さくな笑顔も満載となっているインスタグラムのフォロワーはなんと17万人超え(!)だが、ときどきお宝的にアップされるサウナでのプライベートショットや、モンゴル相撲の体験ショットには、1万を超える「いいね!」がついている。
負けん気の強そうな目ヂカラも魅力の大野選手だが、子供のころは泣き虫だったというのだから人間、わからないものだ。小学生時代は大会で女子選手に負けて涙。ときには試合中からすでにべそをかいて、鼻をすすっていたそうだ。
香りに敏感という意外(?)な一面ももっていて、とくに洗濯で使う柔軟剤にはうるさい。チャンピオンともなれば、通常は付き人が身の回りを整えるのが柔道界のならわしだが、大野選手は基本的には、柔道着も自分で洗わないと気が済まない派。
柔軟剤はブランドにこだわらず、新製品が出れば一度は買って試すとのことで、家には常時10種類以上の柔軟剤がそろっているという。稽古相手にも、日替わりの香りは好評な様子だ。
強くてチャーミングな28歳の柔道家が目指しているのは、2016年リオデジャネイロ五輪に続く、2大会連続の金メダル。平成に続いて令和でも頂点に立つ姿をぜひ見たい。
Athlete data
大野将平選手
柔道選手
(おおの・しょうへい)1992年2月3日、山口県生まれ。2歳上兄の影響で7歳で柔道を始める。中学生になるときに兄を追って上京し、弦巻中学校、世田谷学園高校時代はバルセロナ五輪で金メダルの「平成の三四郎」古賀稔彦らを輩出した柔道私塾の「講道学舎」で鍛えた。天理大学3年生だった2013年に世界選手権73kg級で初優勝し、2015年、2019年も世界選手権優勝。2016年リオデジャネイロ五輪では金メダルに輝いている。身長170cm。血液型はO型。旭化成所属。趣味は風呂とサウナ。©千葉格/アフロ
矢内由美子さん
スポーツライター
(やない ゆみこ)取材歴25年のスポーツライター。オリンピック種目などをカバー。日本スポーツプレス協会会員。