MTVが斬新なリアリティー番組のフォーマットを定着させるよりも前、ミュージックビデオを放送する初のネットワークとなるずっと前の1969年、人類は初めて月に降り立ち、その様子は全世界に生中継され、5億人もの人々が固唾をのんだ。
それから12年後––MTVはポップカルチャーを世間に浸透させるパイオニアとして誕生した。“まだ見ぬ世界へ足を踏み入れる先駆者”という点からアポロ11号にインスピレーションを受け、1984年に初めて開催されたアワード「MTV Video Music Awards」では、MTVのロゴのフラッグを月面に突き刺す“ムーンパーソン”をかたどったトロフィーが各受賞者に与えられた。以来、今日まで、ムーンパーソンのトロフィーは新しい一時代を築き上げてきた数々のアーティストたちの手にわたっている。
そんな歴史を祝福するため、MTVは今年の8月1日、アメリカ出身の肖像画アーティスト=ケヒンディ・ウィリーが再考したムーンパーソンの限定トロフィーを発表した。
ケヒンディは自身の作品の中で、伝統的な絵画様式を黒人の若者たちの再現描写に転用してみせ、「歴史」「富」「権力」「地位」といった、肖像画が可視化してきた慣習を都会の街から切り取られた黒人男性にあてはめる。バラク・オバマ氏が米大統領に就任した際にはオバマ氏の肖像画を手掛け、米国大統領の公式の肖像画を描いた初のブラック・アメリカ人となった。
この特別エディションのムーンパーソンは、緑が美しいツルとピンクの花で覆われた彫刻で、包括性と多様性を表現している。
「ケヒンディ・ウィリーのムーンパーソンの彫刻は、植物の歴史的、環境的、そして自然的関連性によって特徴づけられる包括性と多様性を表現しています」と、MTVはRolling Stone誌に対して語っている。
「ムーンパーソンの脚、体、そして腕を流れるように這い上っていくツルは、アメリカを取り巻く民族史の記録を意味しています。それぞれの絡み合ったツルや葉は、アメリカのタペストリーに織り込まれているアフリカ人奴隷のシードなど、異なる歴史的関連性を意味しています。この彫刻は、ウィリーの今後の一連の肖像画を補完するものであり、彼は、横になった被写体の体にツルが巻き付いているという肖像画を制作する予定です」
今回発表となったケヒンディのムーンパーソンの彫刻は、フロリダのケネディ・スペース・センター・ビジター・コンプレックスにて一般向けに公開される予定だ。
MTV NEWS