虫刺されは気づかぬ間に私たちに忍び寄る、小さくも多大なストレスを与える厄介事です。
「あの気味の悪い虫に刺されたことがない」という人を探すほうが難しいくらい、全世界で誰もが経験していることでしょう。とりあえず、掻いて忘れてしまいたいところでしょうが、実は何に刺されたのかしっかり確認しておいたほうがよさそうです(中には爪で十字の爪痕をつけたり、両親指で刺されて注入された毒を絞り出す…などと、独自の対処法を行っている方も多いでしょうが…)。
と言うのも、比較的無害な虫刺されもあるのですが、中には早期に適切な治療しないと深刻な健康被害をもたらす虫刺されもあるからなのです。多くの人がおそらく経験したことのある虫刺されと、病院に行くべきか見分けるポイントについて、ここで確認しておきましょう。
南京虫(トコジラミ)
日本でも近年再び被害が増えているという南京虫は、寝ている間に人を刺して吸血します。刺された経験がなくても写真を見るとぞっとしますが、アメリカ疾病管理予防センター(DCD)によると南京虫は健康に及ぼす被害もさることながら、駆除することが非常に厄介な虫だということです。
南京虫に刺された場合の主な症状は、夜も眠れないほどの激しいかゆみになります。この虫の何が厄介かと言うと、とても速いスピードで増え、いたるところにまん延し、駆除に手間とお金がかかるということ(それから、寝ている間に虫に血を吸われていると考えたときの精神的苦痛もあります…)。
エールリヒ・ペストコントロール社の認定昆虫学者、ナンシー・トロヤーノ博士によれば、南京虫に刺されたときの症状は人によって異なるそうです。
「まったく症状が出ない人もいますが、ほとんどの人にかゆみを伴う赤いミミズ腫れのような蚊に刺されと似た症状が出る」と言います。
「虫が複数いた場合は、線状に皮疹(ひしん)が出ます。体のどの場所にも現れる可能性がありますが、皮膚が露出している場所が被害を受けやすいです」と、トロヤーノ博士は言います。
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多くの人が誤解してしまいがちですが、南京虫は部屋の汚さや不衛生さとは関係ありません。「バッグや服などに付着して持ち込まれるため、予防は難しい」と、ターミニックスのテクニカルサービス部門マネージャーのアンジェラ・タッカー博士は言います。
「これを踏まえてできる予防としては、旅行先では特に注意すること。また、家の掃除をこまめにすることです」と、タッカー博士は続けて話します。
南京虫の成虫は、形・色・サイズがりんごの種によく似ているので、そのような虫がいないか気をつけてみましょう。他にも、「シーツに赤茶の血の跡を見つけたら、南京虫が潜んでいるサインだ」とタッカー博士は話します。
カリフォルニア州サンタモニカのセント・ジョンズ医療センターのデヴィッド・カトラー家庭医療医師によると、運悪く南京虫に刺されてしまった場合、「ヒドロコルチゾン」や「コルチゾン」を含有するクリームなどを塗ってかゆみを抑えるといいそうです。そして、専門家に駆除を依頼することにしましょう。
「どこで南京虫に刺されたのか、これを特定することが重要です。そして、これ以上刺されないように駆除業者を呼びましょう」と、カトラー医師は言います。
蜂(ハチ)
蜂に刺されたら…、これは誰もがすぐに気づくでしょう。ものすごい痛みを感じるからです。
「初めは皮膚上には、何も見えないかもしれません。しかし数分も経つと、刺された部分の周りに腫れと赤みが現れます」と、トロヤーノ博士は言います。また熱を帯びたり、腫れの中心あたりに小さな白い跡(実際に針が刺さったところ)が見えることもあるそうです。
蜂毒アレルギーの人は、すぐに病院へ行きましょう。しかし、アレルギーでない場合でも処置はしたほうがいいでしょう。
ミツバチは刺すと針が体から抜けてしまいます。「もし皮膚に針が残っている場合は、抜いたほうがいいです」と、ボルチモアのマーシー医療センターの救急医であるデヴィッド・ガッツ医師は話します。それは蜂の針が残されていると、蜂の針の根元にある毒嚢(どくのう)から体内へと、さらに毒が入ってしまう可能性があるから。できるだけ早く抜くことが望ましいのですが、針をつまむとその圧迫で毒液を注入してしまうことになるので毛抜きを使用するか、指などで弾き飛ばす(横に払って落とす)ようにするといいそうです。また、刺されたあとの対処法としては、「抗ヒスタミン剤やステロイド入り軟膏を塗布すると良い」と、岐阜大学保健管理センターのリリースで述べられています。
では、刺されないようにするための方法とは何でしょう。それは唯一、蜂と関わらないようにすることです(アウトドア好きの人には難しいかもしれませんが…)。
蜂が近寄ってきた際は手で叩いたりせず、そのまま飛ばせておきましょう。「こちらから攻撃しなければ、蜂から人間を襲ってくることはあまりありません」と、タッカー博士は言います。
より用心したい人は、「フローラル系の香水をつけないこと。そして、近くにある飲食物にふたをしておく」といいそうです。
疥癬(かいせん)
CDCによると、疥癬はヒゼンダニが皮膚に寄生して起こる感染症です。メスのヒゼンダニが卵を産みつけるために、表皮に穴を開けるのです。
疥癬は通常、小さく膨れた膿疱(のうほう)や水疱(すいほう)の発疹という症状が現れ、「激しいかゆみがある」とトロヤーノ博士は言います。
疥癬にかかったことがない人は、ヒゼンダニに刺されてから数週間は症状が現れない可能性があります。しかし、一度かかると二度目以降は1〜4日で症状が出るようになるそうです。
疥癬は「長期にわたる直接的な皮膚の接触」によって伝染し、 「感染力が強い」とタッカー博士は話します。医師による診断を受けて治療する必要があります。
蚊
周知のとおり、蚊に刺されは健康に大きな被害を及ぼすことはほとんどありません。かゆくてイライラすることはあるでしょうが、あまり心配することはありません。
蚊による虫刺されの痕を見たことがない人はいないと思いますが、念のためトロヤーノ博士に聞いたところ、皮膚に赤い腫れがあって、かゆみを伴う可能性があるそうです。
人によっては腫れの中心部に水ぶくれができ、液体が入っているように見えることもあるそうです。
厚生労働省によると、病原体を保有する蚊に刺されて起こる感染症である「蚊媒介感染症」には、ウイルス疾患である「デング熱」、「チクングニア熱」、「ジカウイルス感染症」、「日本脳炎」、「ウエストナイル熱」、「黄熱」、原虫疾患である「マラリア」などがあります。
「日本脳炎」以外は海外からの輸入感染症としてみられており、主に熱帯・亜熱帯地域で流行しているものです。このうち日本では、2014年にデング熱が国内感染例が報告されており、国立感染症研究所によると「日本脳炎」も2017年7月時点で患者の報告はないということです。
蚊媒介感染症にかかると、発熱のような症状や発疹、関節の痛み、目の充血などを引き起こす可能性があります。蚊に刺されて体調が悪くなり、上記の症状が出た場合はすぐに病院へ行きましょう。
そして、蚊に刺されを治すのに一番の方法は、掻かないことです。「掻くと刺された部分が感染症を起こす可能性がある」と、カトラー医師は言います。かゆみの軽減には、「ヒドロコルチゾン」や「コルチゾン」を含有するクリームを塗るとかゆみを抑制する効果が期待できます。
蚊に刺されるのを防ぐためにできることは限られています。ですがタッカー博士は、「家や庭に雨水などが溜まっているところがあれば、蚊が卵を産みつけるのに格好の場所なため、取り除くこと」とすすめています。そして長時間外にいる予定の場合は、強力な虫除けスプレーをつけることが重要となるそうです。
蜘蛛
トロヤーノ医師によると、蜘蛛にかまれるケースは少ないものの、起こり得るそうです。よくある虫刺されのように見えるので、蜘蛛が逃げていくのを目撃しない限り、咬まれたとすぐに気づくのは難しいと言えるでしょう。
「もし蜘蛛と虫刺されのような跡を見つけたら、石鹸と水でよく洗い、触らないようにするのがいい」とカトラー医師は言います。(特定の蜘蛛の)毒は皮膚を破壊する可能性もあるそうなので、蜘蛛かどうか確信がなくても、石鹸と水でよく洗っておくに越したことはなさそうです。
「炎症が大きくなったり異常に赤くなったり、触ると熱い、潰瘍になっている、熱や関節痛があるといった場合は、すぐに病院に行ったほうがいい」と、トロヤーノ博士は話します。
家の内外にある蜘蛛の巣をこまめに取り除くことで、蜘蛛に咬まれる危険性を減らすことができます。
タッカー博士によると、「外やあまり使っていない物置などでは、長袖長ズボンに手袋をして作業し、芝生や雑草の手入れをこまめにするといい」ということです。
ダニ
ダニに刺されてた場合、それに気づかない人も多いそうです。なぜなら、必ず跡が残るとは限らないからです。
刺された時にダニがまだ皮膚に付いている場合、「無理に引き抜こうとすると頭部が皮膚に残り、炎症を起こすことがある」と日本皮膚学会のFAQでは述べられています。
しかし、すぐにでも取り除きたい場合や自分で対処しなければならない際には、以下のことを注意しながら行うことをトロヤーノ博士は推奨しています。
●ピンセットを使って、皮膚の近くでダニをつかむ
●上に向かってまっすぐに引っ張り、ダニを捻(ひね)らないようにする
●ダニを取り除いても、潰そうとしない
●ダニを消毒用アルコールに沈め、医者や獣医にかかる必要がある時のために、封のできる透明なビニール袋に入れて保管する。もしくは、はっきりと分かる鮮明な写真を撮ってからトイレなどに流す。
ガッツ医師によると、「ダニが除去できたら刺されたところは、石鹸と水で洗ったほうがいい」ということです。
「アーチェリーの的のようなカタチの発疹が体に出たり、手首や腕、足首にピンク色の発疹が出たり、刺された箇所の周りに潰瘍(かいよう)ができるようであれば、病院に行ったほうがいい」と、トロヤーノ博士は言います。
これらの症状はダニに刺されただけでなく、ライム病などのダニ媒介疾患に感染した可能性があることを示しています。熱や寒気、体の痛み、筋肉疲労が現れた場合も病院で診てもらいましょう。
しかしながら、「すべてのダニが疾患を媒介している訳ではない」ということも認識しておいてください。
では、ダニから身を守るには、どうすればいいのでしょうか?
タッカー博士のおすすめは、「外から帰ってきたら、さっとシャワーを浴びること」ということです(刺される前に洗い流せるかもしれませんので…)。また、「森の中などダニが多い場所には、長袖長ズボンで行くこと。そして、虫除けスプレーなどをすることを徹底するといいでしょう」とのことです。
これからの季節は特に、皆さん気をつけてください。