新劇場版『序』のゲームPS2版『ヱヴァンゲリヲン:序』
去る2020年8月26~28日までNHKにて『新劇場版』が3夜連続で放映され、現在も7月4日から9月26日の間で毎週土曜の深夜1時30分より視聴者投票による12話が『地上波補完計画』として放映中のアニメ、『新世紀エヴァンゲリオ(ヲ)ン』。新劇場版の『序』、『破』、『Q』に続く最終作である『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』が2020年中での劇場公開が予定されている同シリーズですが、その第1作である『序』を題材にし、プレイステーション2(以下、PS2)をプラットホームにゲーム化した作品があります。それが、ここでご紹介する『ヱヴァンゲリヲン:序』です。
発売は同劇場版の第1作が公開されてから2年後である2009年。バンダイナムコゲームスよりPS2版とPSP版が同時にリリースされたのですが、数ある“エヴァ・ゲーム”のなかで「汎用人型決戦兵器」である「エヴァ」を操る感覚が最も堪能できる1本がコチラの作品であることは間違いないと思います。
ストーリーは基本、『序』の「ヤシマ作戦」まで劇場版を踏襲し、それ以降はテレビ版に沿った内容となっています。ゲームの流れは、主人公の碇シンジが「ネルフ本部 第一発令所」や「第3新東京市の市街地」などのマップ間を移動し、他のキャラクターと会話したり、戦闘準備を行ったりする「日常パート」と、出現した使徒を殲滅する「戦闘パート」で進行。数ある「リアル・ロボット系」ゲームのなかでも、なかなかに原作の世界観を忠実に再現したものとなっています。
特に「使徒」との戦闘パートは、かなり凝った作り。その流れを説明すると、葛城ミサトとの会話で「使徒迎撃要塞都市」である「第3新東京市」に「電源ビル」や「武器庫ビル」などのマップギミックを配置。日向マコトとの会話でエヴァの武器を調達、赤木リツコとの会話で「浸食」や「回避」などエヴァの性能を向上させる「スキルプログラム」を開発&実装し、戦闘に移るというものになっています。
このあたりの準備を怠ると、使徒との戦闘もかなり苦戦を強いられます。基本は伊吹マヤに声をかけ、「模擬戦闘訓練」を繰り返し、シミュレーターで勝利して「予算」を獲得。「初号機」の装備やスキルプログラムを強化し、ストーリーを展開するという流れになるのですが、これら“前段階の準備”がこのゲームでは何より重要です。
また「模擬戦闘訓練」ではなく実際の戦闘で「初号機」や「第3新東京市」の設備がダメージを負うと「修理」や「パイロットの治療」、「都市の復興」などが必要となり、使徒との戦闘のダメージ如何によっては「パイロットへの注目度」が悪化。シミュレーションでコツコツと使徒を倒し、日常パートで色々な登場人物と会話し、キャラクター(碇シンジ)への態度を「ポジティブ」に変えていく必要に迫られます。
数あるアニメ作品のなかでも屈指の“コミュ障”であり“陰キャ”のイメージが強いシンジですが、戦闘に勝利し、マメに会話を繰り返せば、多くのキャラクターの態度が「ポジティブ」に変化し、日常パートでの通常の会話に「イチャイチャする」というコマンドも出現。レイやミサト、リツコと“イチャイチャする”というエヴァ・ファン垂涎の展開はもちろん、父の碇ゲンドウや冬月コウゾウともイチャイチャすることが可能な謎展開も、このゲームでは味わえます。
ちなみに、この『序』のゲーム版ではアスカも「惣流」のままで『破』から登場した真希波・マリ・イラストリアスも登場しませんが、数ある“エヴァ・ゲーム”のなかでは完成度の高さもなかなかのもの。初号機の動きもアニメに忠実なものとなっており、要所、要所の戦闘で登場する「QT(クイックトリガー)」というボタン早押しシステムも『エヴァ』の世界観を忠実に再現することに一役買っています。「戦闘パート」はかなりアツいです。
また最後の「量産型エヴァンゲリオン」との戦闘に勝利すれば、今までの『エヴァ』のストーリーのなかで最もポジティブなエンディングが味わえることウケアイ。新劇場版の『Q』以降、ガラリとストーリーが変わったゆえ、どんなエンディングを迎えるのか予想がつかない同作ですが、新たに公開される『シン・エヴァ』では、今までのような「モヤッと」した感じではなく、このゲームのようなスッキリとした最後になってくれることを期待します。
(渡辺まこと)
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