プロよりおいしく作れる 野菜料理の“ちょっとしたコツ”365 身近な野菜で、プロよりおいしい野菜料理を作ってみませんか? 銀座の日本料理店「六雁(むつかり)」の店主・榎園豊治(えのきぞの・とよはる)さんに、家庭だからこそ実践できる“ちょっとしたコツ”を毎日教わります。
枝豆ととうもろこしのかき揚げ
「昨晩のつまみの枝豆が半端に残っている。もう香りもなくなっているし……」そんなことってありますよね。茹でたとうもろこしも同様で、「大粒のおいしいところばかり食べてしまい、先端の実が小さいところは残ってる」。
そんなときは、かき揚げにしてみませんか。今は冷凍でもおいしいとうもろこしもありますので、枝豆が残ったら冷凍のとうもろこしと合わせて、かき揚げにしても立派な一品になります。
通常、天ぷら衣は全卵を冷水で溶きますが、卵黄だけを料理に使って卵白が残っていたら、卵白でも大丈夫です。ベジタリアンの方で卵を避けたい場合は、卵なしでもいいですし、山の芋をすりおろして少量加えてもいいですね。
家庭では使う油の量も少ないですし、専門店の味の再現はなかなか難しいと思われるかもしれません。それならば割り切って市販の天ぷら粉を使うのも手です。カリッと揚がるように上手に工夫されています。
かき揚げだけに、気持ちを“揚げて”野菜料理を楽しみましょう。
ちょっとしたコツ
・「枝豆ととうもろこしのかき揚げ」は野菜料理をおいしくする7要素のうち5つを取り入れている。
旨み ◎塩分 ◎甘み ◎油分 ◎食感 ◎香り 刺激
・かき揚げのコツは衣液をできるだけ薄くし、かつバラバラにならないよう成形すること。衣液が濃いとぼってりしたかき揚げになる。
・既に火が入っている材料の場合は、先に小麦粉をまぶしほんの少しおくと、水分を吸って表面に皮膜ができる。そこに薄い天ぷらの衣をつける。
・生の材料のかき揚げは低めの温度で揚げるが、火が入っている材料の場合は衣が揚がればいいので、少し高めの温度でよい。
「枝豆ととうもろこしのかき揚げ」
【材料(2人分)】
〈天ぷら衣〉
・薄力粉 100g
・冷水 100cc
・卵 1個
〈具材〉
・枝豆(塩茹でしてさやから出す) 適量
・とうもろこし(茹でて粒にする) 適量
・生姜(みじん切り) 適量
〈天出汁(美味出汁)〉
出汁4:濃口醤油1:日本酒1:みりん0.8の割合
※かつお節と昆布の出汁でも、ベジタリアン用に昆布出汁でも。
・揚げ油 適量
【作り方】
1.冷水に卵を加え、泡立て器でときほぐす。薄力粉を加えて粘りが出ないようにさっくりと混ぜる。
2.とうもろこしの水分をクッキングペーパーで取る。すべての具材をボウルに入れて混ぜ合わせ、少量の薄力粉(分量外)をまぶす。
3.2に1の天ぷら衣を適量加え、全体が均等になるよう混ぜる。
4.180℃に熱した揚げ油の中に、3を小さなお玉にのせ、静かに入れていく。
実際はかき揚げを170℃前後で揚げたいので、最初は180℃にしておき、ネタを入れた後に170℃になるように火加減を調整する。
5.揚げ油の中でネタが広がってきたら、箸で寄せながら形を整える。しばらくしたら、裏返して揚げる。枝豆もとうもろこしも火が入っているので、衣だけをカラッと揚げるという感じでよい。
6.油をよくきって、塩(材料外)または天出汁で食べる。
ひと目でわかるプロセス&テクニック
混ぜ合わせた具材に薄力粉を薄くまぶす。
天ぷら衣を加える。
全体を均等に混ぜる。
一口大ほどの具を揚げ油に静かに入れていく。
鍋縁に沿って順に入れていくと、裏返す順も油から上げる順もわかりやすく、均等に揚がる。
私たちプロの料理人の中には、色や見た目を味より重視する者もいます。薄味信仰?なのか、本当は少し濃いめの味にしたほうがおいしいものでも、それは恥と、濃いめの味つけを避けます。また、味を素材にしっかりと含ませることがプロの料理と、無理に味をつけなくてもおいしい素材に味をつけて台無しにしてしまうこともよくあります。何より、皆さまがおいしいと思う味にしてください。人の味の好みは様々です。ご自身・ご家族の好み、体調に合わせた味に調整しましょう。レシピに示す調味料などの分量は一例に過ぎません。注目していただきたいのは素材の組み合わせと料理手順、どんな調味料を使うのかということです。味の加減は是非お好みで。
六雁(むつかり)
榎園豊治さんプロフィール
銀座並木通りにある日本料理店「六雁」初代料理長であり、この連載の筆者でもある榎園豊治さんは、京都、大阪の料亭・割烹で修業を積み、大津大谷「月心寺」の村瀬明道尼に料理の心を学ぶ。その後、多くの日本料理店で料理長を歴任、平成16年に銀座に「六雁」を立ち上げた。野菜を中心としたコース料理に定評がある。
銀座ポニーグループビル6/7F
電話 03-5568-6266
営業時間 (昼)12時〜14時 (夜)17時30分〜23時 ※土曜日のみ17時〜
(営業時間は変更になることもあります。事前に店舗にご確認ください)
文/榎園豊治 撮影/大見謝星斗