J-WAVE(81.3FM)×「MUSIC FUN !」連動企画である、深夜の音楽座談プログラム『WOW MUSIC』。“すごい"音楽をつくるクリエイターが“WOW"と思ういい音楽とは? 毎月1人のクリエイターがマンスリープレゼンターとして登場し、ゲストとトークを繰り広げる。
11月のマンスリープレゼンターはNulbarichのJQ。11月20日(金)のオンエアでは、King Gnuのドラム・勢喜 遊がゲストに登場した。ここでは、勢喜がドラムをはじめたきっかけやKing Gnuのターニングポイント、12月2日(水)にリリースする両A面シングル『三文小説 / 千両役者』について語った部分を紹介する。
ドラムを叩くフォームに活きる、ダンスの経験
Nulbarichのギターを通して知り合い、親交が始まったというJQと勢喜。トークは勢喜の音楽ルーツの話題から始まった。
JQ:どんな学生時代を送ってたの?
勢喜:小学5年生くらいからダンスをやりはじめて、その頃は単純に自分が踊りたくなるヒップホップとかを探していました。そういう聴き方を経て、中学校に入りバンドをやり始めるんですけど。
JQ:なぜドラム?
勢喜:父親がドラムをやってまして、いわゆる音楽一家でした。
JQ:サラブレッドじゃない。最高だね。
勢喜:いやいや、そんなんじゃないですけど(笑)、小さい頃から音楽は身近な存在でしたね。
JQ:なんにせよ、僕は遊くんがドラムを叩くときのストロークっていうかフォームが超好きなんですよ。めちゃめちゃ絵になるのに、あれだけ動いて、よくビートのキープができるなって。それで、元ダンサーって言ってて、なるほどって思いました。たぶん、日本一ストロークがカッコいいんじゃない。
勢喜:マジっすか! 俺はストロークについて、悩んだりしたことって一切なくて。友だちのドラマーの話を聞いてると、悩みってほぼフォームとか構え方とかストロークだなと言ってて、そうなんだと思って。俺は一切気にしてない(笑)。
JQ:気にしないってことが答えかもね。
勢喜:体に負担がなければって話ですけど、今のところ俺は体にきてないんで。
JQ:そのうちバキバキきそうだよね。
勢喜:きたら考えます(笑)。
ドラマーの父は、ソウルやラテンをやっていたそうだ。
JQ:じゃあ、遊くんもラテンを通ってきたの? 家でよく鳴ってたとか。
勢喜:鳴ってましたね。そういうラテンの社会人バンドにもちょっとだけいたこともあります。
JQ:小さい頃からお父さんがドラムをやっているから、ドラムをやるにはもってこいの環境だったんだね。
勢喜:自然とですね。
踊らせる音楽をやりたいならば、踊ることに挑戦してみてほしい
勢喜がミュージシャンを志すようになったのは、高校時代だったという。
勢喜:高校のときにバンドをたくさんやっていて、毎日音楽に密接に関わっていたので、目の前のことをただひたすら一生懸命にやっていたら、そうなるしかなくなってた感じですね。
JQ:一番理想的な感じだね。遊くんはセッションとかもやってるじゃん。すごく熱心で、ドラムが好きなんだろうね。
勢喜:そうですね。頑張ってるって意識は全くないですね。
JQ:いろんなミュージシャンからすごく愛されてるよね。それこそ、Nulbarichのドラムとセッションをしたこともあったって聞いて、「あいつはヤバいよ」って。セッションでできてる人って、いろいろ制作するときもそうだけど、引き出しや共通言語が多かったりするから、僕らからすれば助かるというか。King Gnuでガシガシやっているドラムが、セッションでおじさんたちとやってるとは思わないから、そういうのけっこう大事だぞって言っておきたいよね。
勢喜:ありがとうございます。
勢喜は、これからドラムをする人やプロを目指す人に向けて、こんなアドバイスを送る。
勢喜:僕が好きなのはダンスミュージックであり、ダンスを一度通った人間だから言えることかなとは思うけど、踊らせる音楽をやりたいならば、踊ることに挑戦してみてほしいなと思います。
JQ:なるほど。ダンスをやるってことだ。
勢喜:ダンスをやれとも言いませんけど……。
JQ:いや。やれ(笑)。
勢喜:(笑)。振り付けとかじゃなくていいと思うので、ダンスのノリを体で感じて表現できることがけっこう大事なのかなと思いますね。
JQ:それは一番大事かもしれないですね。僕はけっこう手順がどうのこうのとか、そういうことからドラムを始めてきたんですけど、体感で感じているビート感みたいなのが表現できている人とできてない人ってかなり分かれるなってイメージがあるから、確かに自分でダンスをやってみるってありかもしれないですね。
King Gnuのターニングポイント
King Gnuの結成やその後を紐解いていくと、バンドのターニングポイントが浮かび上がってきた。
勢喜:僕はセッションとかを毎日やってたけど、ある日、ベースの新井和輝が、どこからともなくうわさを聞きつけて、俺に会いに来てくれて。初めて合わせたセッションがすごくいい感じで、俺的にはすごくビビッときて、それからふたりでいろんなことをやっていたんです。
そんな活動をする中で、セッションを通じて出会ったのが常田大希だった。
勢喜:彼は当時、けっこうアバンギャルドな音楽をやっていました。今はmillennium paradeで俺とツインドラムをやっている石若 駿とふたりでプロジェクトをやってたんです。駿の思考的には、すごくジャズマンなので固定のドラムみたいな感じではなくて、でも大希は固定のドラムを探していて、「俺もバンドみたいなものをやってもいいのかな」と思って。当時の俺には、大希はあんまり会ったことがないタイプの人間だったからすごく輝いて見えて、新井に「すげえおもしろいヤツがいる」って紹介して、そこからですね。その後、常田が長野時代からの知り合いの(井口)理を連れてきてバンドを結成しました。
バンド結成当時はKing Gnuではなく、「Srv.Vinci」というバンド名で活動をしていた。
勢喜:そのときは「誰にウケるんだろう」って音楽をけっこうやっていて、それはそれで楽しかったんですけど、常田が「今後やりやすくなるために、売れる音楽をやりましょう」って感じになって、名前もKing Gnuに変えました。
JQ:名前が変わってから、今の流れができたんだ。
勢喜:方向性もそうですね。
JQ:名前が変わって、思考回路的にも変化があったわけだね。
勢喜:そうですね。常田の中でも整理がついたんだと思います。常田以外のメンバー3人が固定になったということが彼の中ではターニングポイントだったんじゃないですかね。
『三文小説』と『千両役者』は相反するシングル
King Gnu は12月2日(水)に両A面シングル『三文小説 / 千両役者』をリリースする。
(YouTubeチャンネル「King Gnu official YouTube channel」より)
勢喜はこの2曲のドラムのポイントについて、こう表現する。
勢喜:今回の『三文小説』と『千両役者』は如実に相反するシングルで、『三文小説』は初心者でも叩けるみたいなところはありますね。
JQ:叩けないけどね(笑)。
勢喜:大サビのビートがあって、それを個人的に「初心者ビート」って呼んでるんですけど、ベロシティ100みたいな。そういうのはサウンドの大きさにけっこうつながっていくのかなと思いましたね。フルスイングだし。
JQ:逆に『千両役者』のほうはソリッドだよね。
勢喜:そうですね。手数が多い曲ですね。
JQ:でも初心者ビートっていうのがカッコよく叩くの一番難しくない?
勢喜:そうなんですよ(笑)。取っつきやすいけど深いっていう。ドラムがそうじゃないですか。
JQ:楽譜上はみんな同じことを叩いているのに、本当に一人ひとり違うしね。
King Gnuの最新情報は、公式サイトまで。
「King Gnu・勢喜 遊のドラムに活きるダンスの経験」音声版(radiko.jpタイムフリー)