J-WAVEで放送中の番組『ANA WORLD AIR CURRENT』(ナビゲーター:葉加瀬太郎)。7月4日(土)のオンエアでは、アーティスト・松田ゆう姫がゲストに登場。高校時代を過ごしたカナダでの出来事や、松田優作と松田美由紀の娘という芸能一家に生まれた苦悩などについて語った。
■カナダに留学するも、英語が話せず「みんなサーッといなくなっちゃった」
松田は、2012年からエレクトロニックユニット・Young Juvenile Youthのボーカルとして活動している。今回の放送では、松田が高校時代を過ごしたカナダ生活を振り返った。
松田:カナダの公立高校に3年間通っていました。
葉加瀬:日本じゃなくてカナダの学校を選んだ理由はなんだったんですか?
松田:中学校で3週間のカナダ留学プログラムがあったんです。それがすっごく楽しくて、「また行きたい!」と思ったんです。
葉加瀬:なるほど。だけど3週間と3年間とじゃ感覚が違うと思うんだよね。けっこうな決断だったんじゃない?
松田:そうですね。だけど母親の後押しが大きかったと思います。母親の夢が「留学して英語を話せるようになること」だったので、夢を託されたんでしょうね。
葉加瀬:なるほどねえ。留学前の時点で英語はしゃべれたの?
松田:中学生レベルの英語力でしたね。
葉加瀬:不安はなかったですか?
松田:現地で暮らしだしてから不安になりました(笑)。
葉加瀬:あはは(笑)。
松田:中学までは、わりと派手なグループにいたので、言葉が話せないことでクラスメイトの輪に入れないことに気付いたら、学校に通えなくなっちゃったんです。徐々にしゃべれるようになってから楽しくなりましたね。
葉加瀬:どこの街で暮らしていたの?
松田:ナナイモという場所です。バンクーバーからフェリーで2時間かかる田舎の街でした。
葉加瀬:じゃあ島暮らしだったんだ?
松田:当時はそれが最悪でした(笑)。中学校は新宿にあったので、ギャップが大きかったんです。お店が全部17時に閉まるんですよ。「自然とか知らねえよ!」みたいな(笑)。
葉加瀬:そうだよね。15歳ぐらいの子にとっては自然ってそこまで魅力にならないもんなあ。学校は世界中からいろんな子が集まっていたの?
松田:ううん。完全に公立高校で、幼稚園ぐらいから一緒の人たちばかりで、コミュニティがすでにできあがってるんですよ。当時は日本人のクラスメイトも何人かいたけれど、「留学しているのに日本人と交流したくない」ってプライドがあったので、頑張ったんですけど(笑)。
葉加瀬:(笑)。そうか、カナダでもモントリオールやトロントにいるならいろんな人種がワーッといるだろうけど、そうじゃないよね。
松田:そうなんです。留学当初は「東京から来たの?」と持て囃されるけど、会話ができないって知ると、みんなサーッといなくなっちゃったんです。ランチタイムも「教室でとる」と決まっているわけじゃないから、ひとりでトイレで食べようかな……と思ってしまうくらい。そのくらいつらい時代ではありましたけど、電子辞書を片手に友だちが言ったことを調べて、とにかく英語を勉強しましたね。
■母・美由紀との旅行はグルメめぐり
留学中には、母とバンクーバーなどでの旅行も楽しんだ。旅行ガイドをたくさん持参し、「ここに行きたい!」と提案されるのが「全部、ごはん屋さんなんですよ」と話すと、葉加瀬も大笑い。
松田:朝6時からブレックファースト。メニューを全部並べないと気が済まなくて、店員さんに「ふたりじゃ絶対食べられないわよ」と言われながら頼んだら、ポーションサイズが大きいじゃないですか。
葉加瀬:そうだよねえ。テーブルの上に乗らないんだよね。
松田:乗らない感じになって、ブレックファーストから(笑)。一日五食くらいレストランを回って大変でした。
カナダの食べ物はなんでもおいしく、「パンもチョコもおいしいし、太るものは全部おいしい(笑)」と振り返った。
■芸能一家に生まれ「ユニークじゃないといけない」プレッシャーも
高校卒業後は一度帰国し、悩んだ末にアメリカ・ピッツバーグの大学に進学。ニューヨークやLAなどの大都市は日本人が多いだろうという予想から避け、アメリカの大学が載った本をパラパラとめくって決めたのがピッツバーグだったそうだ。
葉加瀬:あはは! ちゃんとしようよ(笑)!
松田:だってわからなかったんだもん(笑)。アンディ・ウォーホルの出生地とか書いてあったから、「いいじゃん! アートじゃん!」って。
葉加瀬:ピッツバーグって、ウォーホルとケチャップだよね(笑)。
松田:たしかに!
ふたりは「ハインツ!」と声を合わせて爆笑。大学ではビジュアルアートをメインに学び、楽しく過ごしたそうだ。
葉加瀬が「大学生のときは夢を見始めるころだと思うんだよね。作りたいものとかやりたいことって18歳ぐらいで全部決まっちゃう気がする」と水を向けると、「マジですか。私は逆にそういったものがなくて、ひとりで焦ってました」と心境を語った。両親に松田優作と松田美由紀を持ち、兄は松田龍平と松田翔太。芸能一家に育ったことで、幼い頃からコンプレックスを抱えて生きていたという。
松田:小学生ぐらいのときから、「何者かにならないといけないのに、私はなんて普通なんだろう」と、普通であることにコンプレックスを抱えていました。親がそうだからというのもあると思うんですが、ユニークじゃないと許されない気がしていたんですよ。
葉加瀬:でもユニーク過ぎるからな、パパとかな(笑)。
松田:そうなんですよね。だからこそ、ユニークな子なんだろうなって思われちゃうんですけど、いたって普通の子なんですよ。……って、自分で言うのも変ですけれど(笑)。
葉加瀬:言っていることはわかるよ。
松田:当時はいろんなことを求められているって勝手に思ってしまって、「将来何になりたいの?」って聞かれたときに言葉が出てこなかったんですね。全然わかんなかったです。
葉加瀬:でもそれ、素直な気持ちだよね。お兄ちゃんたちはどうだったの?
松田:おにいちゃんたちは、龍平は大島 渚さんにスカウトされて15歳で芸能界デビューをしたし、二番目のおにいちゃん……翔太は、私がカナダにいる間にイギリス留学をしていて、芸能の道を志していたんですね。「私だけが取り残されてるなあ」みたいな感じがあったんですよね。
葉加瀬:なるほどねえ。大学時代は楽しかった?
松田:本当に楽しかったです。輪に入れない経験をしたカナダの高校と違って、アメリカの大学はみんながはじめましてだったから、一気に友だちができました。私はもう二十歳を超えていたんですけど、ほぼ毎日、誰かしらの家でパーティをしていて。ケグという大きな容器に入ったビールをホストが買ってきて、エントランスで5ドルのカップを買わせてビール飲み放題というシステムで。パーティに行くと誰かしらがテーブルでドラムを叩きはじめて、そうすると誰かがラップしてラップバトルになってとか、もう「最高! 楽しい!」って感じで。
毎週、何かしらのメニューが25セントになるバーにもよく足を運び、「タコスが25セントなら、食べ放題。ビールだったら飲み放題ですよね。ベロベロになって(笑)。めちゃくちゃ楽しくて。その日だけ友だちと行ってました」と青春時代の思い出を明かした。
葉加瀬:おもしろいねえ。その頃の経験は、今のゆう姫さんにどんな影響を与えていますか?
松田:なんですかねえ。潜在的にいろいろ活きているなと思うんですけど、そのなかでも英語をしゃべれるようになったのは大きいですね。たまに日本語って言語とアイデンティティと相違している感じがあるんですよね。そういう人たちって意外と多いんじゃないかと思うんですけど。
葉加瀬:バイリンガルってみんなそうだと思うよ。うちの娘に訊いたことがあるの。メインは英語で生きていて、日本語も喋るから、「英語で喋っているときと日本語で喋っているとき、性格は違う?」と訊いたら「ぜんぜん違う」と。
松田:どっちもあると思います。1つの言語を知っているだけでも、私の世界や、言語に紐づけされた宗教とか文化とかが知らない間に染みつくじゃないですか。それを1つでも多く持ってるほうがいいなと思います。
葉加瀬:いや本当に。憧れます。
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「松田優作・美由紀の娘に生まれて」音声版(radiko.jpタイムフリー)