(写真:時事通信)
「早ければ年末には接種できるようになるかもしれない」
安倍首相は6月14日、米国・モデルナ社や英国・アストラゼネカ社と新型コロナウイルスのワクチンの交渉中と高らかに語った。
「安倍首相はワクチンの開発が順調に進んでいると認識して、18日に予定どおり、移動自粛の全面解除を表明しました」(全国紙記者)
だが、東京の感染者数は連日40人を超えるなど、コロナウイルスの脅威は全く収まっていない。
「ウイルスは人が運んでいるものなので、人の往来が増えればまた流行するでしょう。本当に東京五輪を開催するなら、世界中から人が日本に来ます。それを受け入れるためには集団免疫が重要。その鍵がワクチンなのですが、このワクチンに重大なリスクがあることはあまり知られていません」
そう語るのは、『人類対新型ウイルス 私たちはこうしてコロナに勝つ』(朝日新書)の日本語版補遺を執筆した、科学・医療ジャーナリストの塚崎朝子さんだ。
「各国がワクチン開発に急ピッチで取り組んでいますが、実は抗体依存性感染増強(以下、ADE)という現象が重大な問題となる可能性もあります」
そもそも、ワクチンとは発症や重症化を予防するために投与する、弱毒化または無毒化した抗原のこと。あらかじめ投与して病原体に対する抗体を獲得しておき病原体が侵入してきても感染あるいは重症化を抑えられるという仕組みだ。
「しかし、本来はウイルスから体を守るはずの抗体が逆に細胞への感染を促進し、重症化を引き起こしてしまう現象がADEなのです。同じコロナウイルスが病原体のSARSやMERSでは、ワクチンの動物実験でADEが確認され、ワクチン開発は断念されました。
ワクチンを打ったにもかかわらず、ウイルスに感染して、より重症化するということが起きたのです」
ADEのメカニズムはまだ不明だが、今回の新型コロナウイルスのワクチンの実用化に向けても、ADEが懸念されているという。
「通常、ワクチンの開発には何年もかけて効果と安全性の検証を行います。今回のワクチンは世界中で臨床試験に入っており、信じられないスピードです。日本でもいろいろハードルを下げ短期決戦で挑んでいますが、安全性の担保とのせめぎ合いでもあります」
また、病気の治療薬とは違って、ワクチンは“健康な人”に打つ点も十分に考慮されるべきポイントだという。
「今後、新型コロナワクチンが開発されれば、高齢者や基礎疾患のある人から投与が始まるでしょう。効果的で安全なワクチンならいいのですが、有害なワクチンを使ってかえって健康を害するということだけは避けなくてはなりません」
ADEを引き起こすなど、ワクチン接種で重症化という副反応が生じる恐れがあるのだ。
東京五輪に向けワクチン開発を急ぐあまり、国民の安全を置き去りにしてはいけない。
「女性自身」2020年7月7日号 掲載