京都の老舗漬け物店を舞台に、舅、嫁、娘3世代にわたる葛藤を描いた『京、ふたり』(’90年10月〜’91年3月)で畠田理恵(51)とWヒロインを務めた山本陽子(79)。
「共演者の茂山逸平くんは当時9歳で、いまや42歳で狂言方の能楽師でいらっしゃる。今でも家族ぐるみの交流があるんですけど、『お母さんボケたんじゃないの?』なんて言われてます(笑)。畠田理恵ちゃんもお人形さんみたいにかわいくてね。ドラマが終わったら羽生善治さんと結婚しちゃって驚きました。そのときも母親みたいな気持ちになりましたね」
山本は約30年間暮らした東京の家を離れ、10年ほど前から関東近郊で暮らしている。
「デパートも映画も見られないし、そういう不便さはありますけど、食べ物は地元のおいしいものをいただけますから、困ることはないですね。地元の食材を生かして料理もしますよ。仕事があれば東京に行きます。自分のリズムで四季を感じられる今の環境がストレスなくて合っているんです」
今、楽しみにしているのは長年の仲間たちとの再会だという。
「コロナ禍で延期していましたが来年こそは会いたいと。もともと証券会社に3年間勤めていたので、当時の同僚たちとはもう五十数年の付き合い。別番組のスタッフさんたちとは42年間、毎年旅館で集まっています。もうなんでも言える仲です(笑)。演者、スタッフかかわらず、つながっていけるのがこの仕事の醍醐味かもしれません」
■渡辺梓は美術家の夫とリノベーション業を
「今でも年上の方々からは『和っこちゃん!』とお声がけいただくこともあり、朝ドラは“文化”なのだなとありがたく思います」
と、『和っこの金メダル』(’89〜’90年)主演を務めた渡辺梓(52)。
「’20年の春に長年お世話になりました『無名塾』を離れて独立しました。舞台に出演したり、ワークショップに参加しています」
現在は女優業のかたわら、美術家の夫とともに建築物のリノベーション業も行っている。
「30年くらい前、主人の仕事の手伝いで行った建築現場で家がつくられる過程がとても新鮮でした。最初は掃除から始め、エアコンの配管のテープ巻き。徐々に少しずつ工具も使わせてもらえるようになり、実際のリノベーションに関わるようになりました」
’10年に横浜・若葉町にある元銀行のビルをリノベーション。アートプロジェクト「似て非 works」として運営活動を始めた。
「私たちの空間づくりは、そこに住む方と一緒につくる作品と捉えています。解体していく中で発見がたくさんあり、それをまた利用し、新たな価値をつけていく。それがとても楽しいんです」
思わぬハプニングもあったそう。
「重たいコンクリートミキサーを主人と運んでいたら、足の親指に誤って落としてしまって爪が剥がれ、予定していたお仕事にピンチヒッターを頼んだことが……(苦笑)」
以前より視野が広がり、多少のことでは動じなくなったと渡辺。女優業にも生かされているようだ。