ただでさえスマホに依存しがちなのに、巣ごもり生活が続くいま、“スマホ認知症”のリスクが忍び寄っているという。年齢層は、認知症には早い30代から中高年。特に、家事に多忙な女性は要注意だーー。
「暇さえあればスマホを触り、“写メ”をメモ代わりにしたり、出かけるときに地図アプリを使うなど、スマホに頼る生活を送っていませんか? こうした行為が、もの忘れや精神的な落ち込みなど認知症に似た症状を招いています」
そう話すのは、脳神経外科医でおくむらメモリークリニック院長の奥村歩先生。外出自粛の巣ごもり中、日に何度もネットニュースを確認するなど、スマホを触る時間が長くなってはいないだろうか。
奥村先生のクリニックの「もの忘れ外来」には、全国から毎日100人以上の患者が来院するが、その年齢層は、10年前とは様変わりしているという。
「以前は高齢者がメインでしたが、最近は患者さんの約半数が30〜60代で、認知症発症には早い年代。訴えを聞いていると、スマホなどIT機器に頼りすぎている人が多いことに気づきました。特徴的なのは、もの忘れのほか、うっかりミスが多発したり、イライラや落ち込みが激しくなるといった傾向。私はこれを『スマホ認知症』と呼んでいます」(奥村先生・以下同)
人間の記憶のプロセスは、大まかに「(1)入力、(2)分類・保持、(3)検索・取り出し」の3つに分かれる。スマホ認知症では、このうち(2)と(3)に問題が起きているそう。
「脳を図書館にたとえましょう。(1)は新刊の入荷、(2)は新刊の分類と保管、(3)は本の検索と貸し出しです。スマホ認知症では、(1)で入荷される新刊の量が多すぎ、(2)の分類が追いつかず、(3)で本の検索ができない状態。記憶があっても、その取り出しができなくなる。これが、もの忘れの原因です」
さらに冒頭で述べたように、自分で考える前にすぐに“ググる”など、本来自分の脳が行っていたことをスマホ任せにしていると脳の考える機能がさびついていき、思考力や集中力の低下につながる。そのため、家事の段取りがうまくできなくなり、ミスを繰り返して戸惑う女性も多いという。
「とくに女性は、家事に仕事、親の介護など、同時進行で複数のタスクを進めていて、ただでさえ脳がお疲れの状態。潜在的に脳疲労のある女性ほどスマホ認知症になりやすいといえるでしょう」
スマホ認知症から脱するには、「ぼんやりすること」がカギになるという。
「近年の研究で、ぼんやりしている時間にも脳の『デフォルトモード・ネットワーク』という機能が働いており、脳のメンテナンスや、集中・休息の切り替えをしていることなどがわかってきました。脳が休憩すべき時間にスマホを触っていると、この機能が正常に働かなくなり、イライラや不調をもたらすようになります。どうしてもスマホに手が伸びる場合は、代わりに床の拭き掃除や編み物など、無心になって一定のリズムで行える家事や趣味をすると、脳がぼんやりしているときと近い状態になります。日ごろからスマホに頼りすぎず、自分の脳で考える習慣も大切です」
スマホに翻弄されることのないよう、つき合い方を見直そう。
「女性自身」2020年5月12・19日合併号 掲載