報道陣が見守るなか、新型コロナウイルスによる肺炎のために逝去した千葉真一さん(享年82)の遺骨は千葉県君津市内の“わが家”に無言の帰宅を果たした。
この自宅にはトレーニングルームも完備されている。
「次男の眞栄田郷敦さん(21)が俳優としてデビューする前、千葉さんは、郷敦さんと同居して自分の所作を肌感覚で覚えさせることがベストだと考えました。君津市の家では体力作りやアクションの基礎をかなり厳しく教えていたのです」(千葉さんの知人)
“昭和の大スター”というイメージどおりの豪快な性格だった。'18年、本誌記者は千葉さんの女性関係について報じたことがあった。事前に所属事務所に連絡すると、意外なことに本人から編集部に電話がかかってきたのだ。
■「聞きたいことは僕に直接聞いてくれ」スターからの電話
「ほかの人間を介すと、うまく意図が伝わらないこともあるからさ。今度から聞きたいことがあったら直接聞いてくれよ。答えられることはきちんと話すから」
半信半疑で受話器を置いた記者だったが、千葉さんの言葉に嘘はなかった。その後、昨年末までに3回、千葉さんに連絡をすると、どんなに忙しいときでも丁寧に対応してくれたのだ。
'19年3月、すでに“国宝級イケメン俳優”とも呼ばれていた長男・新田真剣佑(24)に続き、郷敦の俳優デビューが公表された。
その当時の取材では“父子の約束”について教えてくれた。芸能界を志した次男に、こう言い聞かせたのだという。
「お前は日本でタレントになるという意味を理解しているのか? お前は俺や兄のおかげで真剣佑よりも、いい環境で仕事を始めることになる。日本には“二世タレント”という言葉がある。お前の場合は真剣佑の2倍は成功しないと、二世ではなく“ニセ者”と呼ばれてしまうんだ。“ニセ者俳優”と呼ばれたくなければ、俺のことも真剣佑のことも超える覚悟でやれ! それができずに負けるようなら、すぐに芸能界をやめろ!」
さらに千葉さんは、“本物の俳優とはどんな存在か”を突き詰めることを助言したという。
「台本を理解できない読解力のない俳優は絶対に大成しない。台本を何十回も読み込むことで、登場人物はどんな人間なのか? このシーンで人物は何を感じているのか? ……など、台本にはっきり書いていないことが理解できるようになるまで読み込め」
千葉さんの逝去が報じられた後、郷敦は事務所を通じてこんなコメントを発表した。
《一方的な約束をしてきました。それを守るだけです》
“父と兄を超える俳優になる”という決意をあらためて亡き父に捧げたのだろうか。
■繰り返し語っていた「ハリウッドでの親子共演」
千葉さんの長年の願いは、息子たちをハリウッドスターに育てあげることだった。さらに本誌に、ときには冗談めかしながらこんな夢も繰り返し語っていたのだ。
「親子共演? 具体的には言えないけれど、アメリカから(共演の)オファーも来ているし……」
40年以上の交流がある若山騎一郎(56)とは最後の食事でも親子共演の話題で盛り上がっていたそうだ。
「(まん延防止等重点措置で)お酒は飲めなかったのですが、息子さん2人の俳優としての成長ぶりをうれしそうに話していましたね。
実はオヤジは何年も前から水戸黄門をモチーフにした作品を計画していたのです。真剣佑と郷敦が助さん格さんで、自分は陽気な水戸黄門を……、そんな構想について、ずっと語っていました」
千葉真一版・水戸黄門は日本向け作品のようだが、千葉さんはハリウッド映画製作のためにも着々と準備を進めていた。
昨年末、千葉さんは本誌の最後の取材に次のように語っていた。
「いまは脚本作りに力を入れています。もちろん目指すのはハリウッドで通用する作品ですよ! いまも10本くらいはアメリカで映像化したい脚本があって、アメリカのプロデューサーたちとも話し合っているところです。
現代劇もあり時代劇もありますよ。僕は嘘っぱちが嫌いなので(笑)、実際にあった事件を基にしたストーリーが多いですね。
その作品に真剣佑が登場するか? それは彼自身が役に魅力を感じるかどうかだけど、今後、何らかの形で同じ作品に関わる可能性はあるよね。もっと将来的には(郷敦も含めた)3人でハリウッド映画に携わることも期待してもらっていいと思いますよ」
逝去するまで、映画製作や家族への情熱を失わなかった千葉さん。そんな父に真剣佑はインスタグラムで、“どこにいても、あなたは私の心の中にいる”と、英語でメッセージを送っている。
そしてもちろん千葉さんの熱い生きざまは、私たちの心の中でも生き続けるだろう――。