「大谷選手、すごい活躍で大騒ぎですね。本当にうれしく思います」
こう目を細めるのは、同愛記念病院顧問の土屋正光先生(78)だ。今季、“二刀流選手”としての真価を発揮し、勢いが止まらない米メジャーリーグ・エンゼルスの大谷翔平(26)。
日本時間7月1日時点で28本の本塁打をかっ飛ばし、投げては3勝1敗。7月開催のオールスターゲームの出場選手を決めるファン投票得票数は、中間発表時点で指名打者部門のダントツ1位。
“メジャー史上初の快挙”を連発するほどの活躍は、全米に一大旋風を巻き起こしている。
冒頭の土屋先生は、大谷の北海道日本ハムファイターズ時代にチームドクターとして関わった人物。大谷は土屋先生に信頼を寄せ、18年に米国に渡った後も、現地で右ひじの手術を受ける前に「土屋院長の再診察を受けたい」と話していたという。
結局、セカンドオピニオンは実現しなかったが、そんな縁の深い土屋先生に、大谷の大活躍の背景、知られざる素顔を聞いた。
大谷は3年前の右ひじの靱帯再建手術以降、投手としては思うような活躍ができなかった。ところが今季は一転、ついに二刀流の本領を発揮している。
「大谷選手が手術を受けた米国の病院は、メジャーリーガーも多くかかっているところです。こんなにパフォーマンスが元に戻るというのは、手術は大成功だと言っていいと思います」
■元主治医語る今後の懸念
昨季はコロナ禍で試合数が少なかったのも、大谷には功を奏したのではないかと土屋先生は指摘する。
「昨季からしっかり筋トレに励んできたのが、いま実を結んでいるのでしょう。ひじも手術から2年以上経ち、不安なく投げられるようになったので、今まで鬱屈していたものを一気に爆発させている感じがします」
とはいえ、今後については心配もある。
「あまり過信して、無理が重ならないようにしてほしいです。移植したひじの靱帯というのは知覚神経がないので、痛んでも自覚しにくいんです。いま全力を出し切って負担がかかり、夏過ぎに疲れがたまってけがをしないか心配です。
特にピッチング。投げると必ずダメージがきますから、投球の後は十分にアイシングして、局所の炎症を取るのが鉄則だと思います」
昨季は開かれなかった、待望のオールスターゲームが目前だ。大谷は、前日のホームラン競争に参戦することを表明済み。当日も指名打者としての出場が確定的で、投手としても登板する可能性が報じられている。
7月13日には豪快なアーチを描き、14日の球宴では打って、走って、投げて、ファンの熱い視線を独り占めすることだろう。