「私、料理を人に振る舞うときは、品数や栄養面などを考えて、わりと頑張れるほうなんです。でも、自分のことになると、そのへんにあるものを、ただ口に入れているようなひどいありさまで(笑)。自粛期間中は料理をする時間が十分すぎるくらいあったので、これを機に自分の食生活をあらためようと張り切りました」
そう話すのは、10月17日スタートの新ドラマ『さくらの親子丼』(東海テレビ・フジテレビ系にて土曜23時40分~、初回のみ23時50分~)で主演を務める真矢ミキさん(56)。エスニックや中華などあらゆるジャンルを一巡し、さて、と始めたのは“少ない食材で、簡単にできる、おいしい料理”だった。
「鶏のムネ肉だったら、落としぶたをしてフライパンでジーッと焼く。タレを作って、そこに、若くて新鮮なねぎや、旬の野菜を添える。一見、手が込んでいるようで、じつはシンプル。そんな料理を作っているときがいちばん楽しい、と気づいたことがおもしろかったですね。それって、母が作ってくれていた料理と同じだったので」
真矢さんが40歳になる誕生日に父親が他界。数年後にバレエダンサーの西島数博さんと結婚したのち、母親に認知症の症状が出ると、同居生活に踏み切った。仕事と介護の両立では大変なことも多かったが、そんなとき、母親とのコミュニケーションを円滑にしてくれたのも“食”だった。
たくさんの思い出を残してくれた母親も2年前、88歳で逝去。晩年は認知症が進行し、真矢さんのことがわからなくなることもあったが、その姿から学ぶことも多かったと振り返る。
「母が亡くなるまでの10年間は、多くの発見もあり、勉強にもなりました。まず、年齢を重ねるとはこういうことなのかと。母にとっての1年は、私たちの5年くらいの感覚で、老化のスピードは想像以上に速い。日に日に体が重くなるのに、心は反比例するかのように無邪気で、探求心も旺盛ですし、まだまだたくさんのことをやりたいという欲が見られました」
また、母親と一緒に暮らそうと言ってくれたパートナーには、あらためて感謝がこみ上げてきた。
「同居したときは、結婚して4年ほどたっていましたが、『この人でよかった』と再確認することができて、それがうれしかったなあ。老いというのは、誰にでも訪れます。大人になって、物事がわかったような気になっているけれど、まだまだ知らないことはいっぱいあって、老いもその一つなんだな、と思いました」
母親との生活では、「毎日のように奇想天外なことが起きて、シュールなコントのようでもありました」と真矢さんは語る。
「でも、そのおかげで『自分がいずれ老いたとき、どうしたらいいだろう?』とシミュレーションできたり、『趣味を始めるなら、老いるちょっと前がいいぞ』と考えられたり。それに、人間ってうまくできていて、亡くなったあとはいいことしか思い出さないんです。遺影の母は笑った顔がとてもきれいで、見ていると心が晴れやかになるし、一方で『不服そうな顔のときもあったよね』と思ったりもして(笑)。そんな自分を客観視しながら、人間っておもしろいなあと思うんです」
「女性自身」2020年9月29日・10月6日合併号 掲載