羽田空港の国際線ロビーに詰めかけた、50人近い報道陣は、IOCのトーマス・バッハ会長の到着を今か今かと待ちわびていた。
だが、飛行機の到着から1時間が過ぎても姿を現さないバッハ会長――。なんと、到着ロビーを通らず“裏口”から空港を脱出していたのだ!
「バッハ会長は、先に到着したコーツ調整委員長と同じく5つ星ホテル『The Okura Tokyo』に向かいました。来日する『IOCファミリー』のために4つ星~5つ星のホテル計1千600室が確保されているといわれています」(社会部記者)
バッハ会長が来日した7月8日、菅義偉総理大臣は東京都に4回目となる緊急事態宣言を出すことを発表。同日、1都3県は無観客開催とすることも決定した。近著に『美智子さま いのちの旅―未来へ―』(講談社ビーシー)がある皇室ジャーナリストの渡邉みどりさんは、前回の東京五輪を振り返りながら語る。
「'64年は、戦後の焼け野原状態から19年しかたっていませんでした。開会宣言に臨まれた昭和天皇は《この度のオリンピックにわれはただことなきをしも祈らむとする》という歌を詠まれています。令和の天皇陛下は、大会による新型コロナの感染拡大を懸念されていますが、どうか無事に開催できるようにというお気持ちは、昭和天皇と同じかもしれません。世界的なイベントですから、本来であれば世界の王族や要人を迎えて、両陛下による国際親善ができたはずでした。無観客で行われる状況ではそれも難しく、とても残念です」
宮内庁の西村泰彦長官は8日の会見で、五輪への皇室の関わりについては「調整中で、今申し上げることはない」と述べている。天皇陛下が開会式で開会宣言をする際の文言や、各国元首らを招いての祝宴、皇族方の競技観戦などはすべて未定だという。皇室担当記者は危機感をあらわにする。
「開会式は無観客といっても、バッハ会長らIOC委員や各国のVIPは国立競技場に集結するでしょう。両陛下も出席せざるをえなくなる可能性が高いです。しかし、都民に自粛が呼びかけられている中で“お偉方”と一緒に両陛下が出席されることは、“国民に寄り添う”という皇室の基本姿勢とまったく相いれません」
■なぜ天皇陛下だけが接種を公表されたのか?
いま皇室にとって危惧されるのはIOCからの“接待要求”なのだ。6月17日の首相会見では、フリージャーナリストの江川紹子氏が「バッハ会長らIOC幹部が、天皇陛下への面会を求めた場合、総理は面会に同意されるお考えでしょうか」「(両陛下に)IOC関係者のおもてなしなどもしていただくのでしょうか」と書面で質問しているが、首相側は無回答。
ノルウェーのオスロが'22年の冬季五輪の開催地に立候補した際には「開会式前に国王と面会」「開会式後のパーティ費用はノルウェー王室か組織委員会が持つ」との要求もあったのだ。
「エリート意識が強く、ミーハー気質なIOC委員たちは、王族や貴族が大好きだといわれており、開催都市の招致でも各国がこぞって王族を駆り出していたほどです。バッハ会長は、大ひんしゅくを買っているにもかかわらず、平和希求の取り組みを訴えるとして16日に広島を訪問する予定です。日本国民の反感はいっさい意に介していない様子ですから、皇室にもどんな要求を突きつけてくるか、予想もつきません」(前出・皇室担当記者)
天皇陛下は7月6日、お住まいの赤坂御所で、1回目のワクチン接種を受けられた。ワクチン接種が公表されたのは陛下お一人だけだった。
「おそらく雅子さまも同時に接種されたはずですが、公表されませんでした。ワクチン接種は『個人情報』であり、天皇陛下だけは象徴としての地位にあることから公表に至ったとの説明でした。しかし、上皇ご夫妻の接種はすぐに新聞社に報じられており、このときは宮内庁も隠し通そうとはしていないのです。あえて雅子さまがワクチンを接種されたかどうか、わからないようにしているように思えてなりません。今回、宮内庁病院ではなく赤坂御所での接種でした。両陛下が宮内庁病院のある皇居へ車で移動すれば報道陣に知られてしまうため、赤坂御所での接種になったのかもしれません」(宮内庁関係者)
そこまでして、なぜ雅子さまのワクチン接種を公にしないのか。そこには陛下の深い配慮があるのではないかというのだ。
「原則的に、政府から要請があれば両陛下はIOC幹部らとの面会に応じざるをえません。しかし、ワクチン接種が済んでいないとなれば話は別。感染の危険性を回避する必要があります。すなわち、もしIOC側が頑強に“国民の理解を得られないような”接待要求をしてきた場合に抵抗するための“最後の手段”として、雅子さまの接種を非公表とされたのではないでしょうか」(前出・宮内庁関係者)