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「今、この難局にあって、人々が将来への確固たる希望を胸に、安心して暮らせる日が必ずや遠くない将来に来ることを信じ、皆が互いに思いやりを持って助け合い、支え合いながら、進んで行くことを心から願っています」
天皇陛下は1月1日、新年にあたってビデオメッセージを公表された。陛下は新年のあいさつとともに、新型コロナウイルスの感染拡大に苦しむ国民を心配し、医療従事者への感謝と敬意を伝えられた。
雅子さまも「今年が、皆様にとって少しでも穏やかな年となるよう心からお祈りいたします」と述べられた。
新年のあいさつを映像で配信することは皇室初の試みであり、また天皇陛下と雅子さまがそろってお言葉を述べられるのは、'02年12月に行われた会見以来、18年ぶりとなった。
「昨年、両陛下は何度も専門家や、医療や教育の現場のご説明を受けられるなど、国民の状況を把握するための活動をされていましたが、国民への直接的なメッセージは控えられてきました。宮内庁幹部には、政府がコロナ禍への対応に追われているなかで天皇陛下がメッセージを出すと、政治的な発言として受け止められかねない、との懸念があったようです」(宮内庁関係者)
“政治的発言”になりかねないとの懸念から見送られてきたビデオメッセージ。一方で、イギリスのエリザベス女王が昨年4月に配信したビデオメッセージは大きな話題を呼んでいた。
エリザベス女王のメッセージはイギリス国民にどのように受け止められたのか。女王の欧州の王室に詳しいジャーナリストの多賀幹子さんはこう語る。
「エリザベス女王のメッセージは、ロックダウン下で家族にも会えず不安な国民に寄り添う内容でした。女王の《We will meet again(また、会いましょう)》という言葉は、しばらく合言葉のように国民同士がお互いに励まし合う時に使ったほど、国民に受け入れられました。感染防止のためにビデオの撮影は、女王と、事前に2週間隔離したカメラマンの2人だけで行われたそうです。メイクも女王自身が行ったほどの厳戒態勢で、93歳(当時)の女王がリスクを取ってメッセージを発した、その覚悟が、国民を励まし勇気づけたのです」
さらにイギリス王室はSNSやさまざまなツールの活用にも積極的だという。
「クリスマス・スピーチは毎年12月25日の午後3時にBBCで放送されますが、今年はAmazon EchoやGoogle Homeといったスマートスピーカーにも配信されました。女王が好奇心旺盛であるだけでなく、より多くの国民や英連邦の人々に聞いてほしいという気持ちがあるのだと思います。Zoomもすぐに取り入れ、懇談や会議、英連邦のイベントなどを行っています」(多賀さん)
コロナ禍により、皇室外交も昨年からストップしている状況だ。昨年5月には両陛下のイギリス訪問が予定されていたが、延期となっている。
「今年の夏に予定される東京オリンピック・パラリンピックも開催が危ぶまれ、外国から賓客を招くことは難しい状況です。長引くコロナ禍で国際親善の在り方も変わっていくかもしれません。Zoomなどを用いた、イギリスをはじめとする海外の王室とのオンライン会談も検討されるのではないでしょうか」(前出・宮内庁関係者)
天皇陛下は新年のメッセージを「我が国と世界の人々の安寧と幸せ、そして平和を祈ります」と、世界平和を願うお言葉で締めくくられている。
出入国制限が続き、世界の分断が懸念されるなか、2021年は皇室外交においてもオンラインの活用が進む1年になりそうだ。