全国的に猛威をふるう新型コロナウイルス。1月7日には、東京都での新規感染者数が2千447人を記録。1日当たりの新規感染者が2千人を超えたのは、初めてのことだった。また14日には全国の重症者数が934人を記録するなど、事態は悪化の一途をたどっている。
そんななか、特に専門家が危険視しているのはランチだ。帝京大学大学院公衆衛生学研究科の高橋謙造教授が語る。
「これまで、政府は“夜の会食”の危険性ばかりクローズアップしてきました。しかしそのせいで、逆に昼間の会食が増えたのではないかと思っています。明らかなミスリードです。
昼間ならお酒を飲む機会も少ないし、気の緩みもないから大丈夫だろうと考えたのかもしれません。しかしどれだけ注意しても、人と接触する機会を増やせばそれだけ感染リスクは上がります。重要なのは、“とにかく集まらないこと”なんです」
実際、政府は14日から緊急事態宣言を11都府県にまで拡大。さらに当初は外出の自粛を20時以降としていたが、「日中も控えるようお願いしたい」と軌道修正し始めた。
元WHO専門委員で医学博士の左門新氏が言う。
「昨年11月にアメリカの学術雑誌『PNAS』で掲載された論文によると、もっとも感染リスクの高いイベントの1つとしてランチがあげられていました。
これまで発生した大規模クラスターを分析して出された結論で、ほかにはコーラスイベントや誕生日パーティなども。“感染率がもっとも高いのは食事を共にすること、歌を歌うこと、マスクなしで話すことだ”と指摘されていました。
論文内での“ランチ”は個室で開かれた大人数での宴会を指していたので、日本の一般的な昼食と同じとはいえません。
ただ1つ確実なのは、ディナーでもランチでも感染リスクに差はないということです。飲食の場でマスクをつけず会話すれば、飛沫による感染リスクは高まる。“昼なら大丈夫”という考えは大きな間違いです」
つまり、同僚やママ友とのランチにも危険は潜んでいるということだ。では、具体的にはどんなことに気をつけるべきなのか。左門氏はこう続ける。
「論文では、逆に家族での食事は感染リスクが高くないという結果になっています。これは人数の問題だけでなく、家族同士であれば感染の有無も比較的わかりやすいからです。
3密のなかでもっともリスクが高いのは “密集”です。人がたくさん集まれば、その分だけ感染者が交ざってしまう確率も高くなります。そういう意味で、今回の“ランチは危険”という結果につながったのだと思います。
ですので、お店には一人で行って黙々と食べるようにすること。または、ふだんからいっしょにいる人たちと少人数かつ短時間の食事会にすること。そして飲酒を控えること。そうやって気をつけていれば、ランチでもディナーでもリスクはそこまで高くはないはずです」
危機に立ち向かうためにも、改めて正しい認識を持つ必要がありそうだ。
「女性自身」2021年2月2日号 掲載