全日本選手権、フリープログラムでの羽生(写真:アフロ)
「コロナ禍のなか、われわれは羽生君が元気にリンクに立っているだけで、大きな勇気をもらっているということを、改めて感じました」
こう“教え子”への感謝を語るのは、早稲田大学人間科学部人間情報学科の西村昭治教授だ。昨年12月、長野で開催されたフィギュアスケート全日本選手権で5年ぶりの優勝を飾った、羽生結弦(26)。
今季の羽生は新型コロナの影響で、全日本まですべての試合を欠場してきた。前例のないシーズンのなか、羽生を10代のころから知る西村教授はどう見ていたのか。
「彼は本当に繊細なんです。コロナ禍で、彼は世界的な大打撃を自分のことのように感じてつらかっただろうと思います」
そんな羽生はどのような思いで全日本に臨んでいたのだろうか。
「感染拡大を心配し、悩みながら出場を決断した背景には、閉塞感漂う世間へ全力の演技で勇気を与えたいという思いもあったのでしょう。しかし、出場したとはいえ、コロナには“国をあげて取り組むべき”だとし慎重な態度。来年の北京五輪開催について今は『考えてはいけない』と語っています」(フィギュア関係者)
しかし、フィギュア評論家の佐野稔さん(65)は、羽生の胸中についてこう推察する。
「全日本で、非常に完成度の高いプログラムを滑りきりました。本人も『試合の緊張感が好き』と言っていますが、フィギュアの最高峰である“五輪へのアピール”とも受けとれるでしょう」
実は全日本の直後、羽生は意外な場所へ足を運んでいた――。
「朝9時過ぎ、羽生さんが来られました。優勝後のお礼参りに来られたようです」(地元住民)
大会の翌朝、羽生が訪れたのは、長野にある長田神社だ。石段のいちばん上には、羽生の名前が書かれた赤い幟が立てられていた。
「'14年のソチ五輪前に羽生は知人を介して長田神社のお守りをもらい、見事金メダルを獲得しました。その後も、定期的にお守りを作ってもらっています。また`15年11月に、羽生選手はご両親とお参りに来ていました。そのときは長野で開催されたNHK杯で世界最高得点を獲得。羽生ファンの間では“聖地”と呼ばれるほど有名なスポットです。
今回の参拝では、全日本優勝を感謝し、コロナ収束による北京五輪の開催、そして3度目の金メダルを祈願したのではないでしょうか」(前出・フィギュア関係者)
前出の西村教授は、新たな目標に向けて走りだした羽生にこんなメッセージを送る。
「全日本のエキシビションで、彼は『春よ、来い』を演じましたが、そこに込められた思いを強く感じました。コロナが落ち着き“みんなが平和になった春”“笑顔が戻った春”が来るはず……。そんな希望を与えてくれました」
その“希望”がかなえば'22年、羽生は3つ目の金メダルを手にする悲願に近づく――。
「女性自身」2021年1月19日・26日合併号 掲載