「ドラマのなかでポルトガル語を話す場面がたびたび出てくるんですよ。僕自身は、日本語をしゃべっているときよりもしっくりきて(笑)。サンバのリズムに乗せて踊ったりしていると、この役は僕に当てて書いてくださったのかなという気がしてならないです」
そう語るのは、ドラマ『ドクターX~外科医・大門未知子~』(テレビ朝日系・10月17日、21時~)の新シリーズに出演する市村正親(70)。彼が演じるのは、“今世紀最大のコストカッター”の異名を持つ日系二世のブラジル人投資家、ニコラス丹下。財政難の病院や会社を再建してきた彼の決めゼリフは、「私に救えない企業はない!」。
「市村正親で言い換えるなら、『私を使って失敗はありません!』とか、『私の芝居にハズレはありません!』って言うようなものですよね(笑)。僕は、そんなことを口に出して言いませんけど」
また、奨学金で医学部に通うなど、人知れず苦労した過去を持つ丹下に自身を重ねる。
「僕の両親は父が新聞記者で母は飲食店のおかみという本当に普通の家庭で、決して裕福ではなかった。役者の道に入ったとき、ある種の劣等感があって。学歴やコネとか自分にはないものを持っている人を見ると嫉妬したものですよ」
実は、11歳と7歳になる2人の息子さんが今、俳優になりたいと言っているそうで。
「そう考えると、今度は自分の子が特別扱いされたら、それはいかんと思います。人間、楽して進むよりも下積みの経験や挫折を味わったほうがいい。そのほうが自分の身になりますからね」
劇団四季の舞台でデビューしたのは今から46年前。これまでの舞台出演作品数は100本以上にわたる。
「たかだか2~3時間の舞台で激しい人生を生きられる。舞台は一つの旅だと思っています。いい作品だと毎回いい旅ができるんですよね」
70代に入り、ますます精力的に仕事に取り組む市村。日ごろの体づくりに余念がない。
「有酸素運動にマグマヨガ、とにかく汗をかいて新陳代謝をよくすることと体幹を鍛えることを心がけています。もちろん肉体的にはだんだんキツくなってきている。でも気力の衰えは全く感じません」
モチベーションはどこから?
「それはもう、やはり見にきてくださるお客さんがいるからですよ。家族が来るとまた変な張り切り方をしちゃうんだけど、僕、人が見ていないとダメなの。だから舞台稽古が嫌なのかな(笑)」