タレントの熊田曜子さん(39)が口論の末に夫から顔を平手打ちされ、体を蹴られたとして警察に通報。夫が暴行容疑で逮捕されました。
熊田さんは過去に夫が夕飯を食べてくれなかったことや、義母から理不尽なお説教を自分と実母が受けたことをSNSに投稿。また最近では、夫が気づいたら会社を辞めて起業していたことをテレビ番組でも話していました。
一部では“夫が熊田さんに不倫疑惑を突き付けていた”とも報じられていますが、熊田さんの所属事務所は“事実無根”と否定しているといいます。
夫はすでに釈放されていますが、熊田さんは被害届を取り下げていません。今後も弁護士による協議を続けていくといわれています。さらには、離婚協議に入っていることも公表。夫婦の亀裂は、決定的なものとなってしまいました。
たしかに熊田さんの投稿を信じると、これは旦那さんにかなり問題があると思わざるをえません。ただ、熊田さん側も適切な対応を取れていたのでしょうか。
この先を描き進めるにあたって前提として、どんなにパートナーに怒りを覚えたとしても、人格否定や理不尽な制裁、言葉や物理的な暴力にうったえることは絶対にいけないことです。暴力をふるったほうが悪いのは間違いなく、殴ったという夫側を擁護したいという意図はない。そのことを、先に書かせていただきます。
その上で今回の出来事を見てみると、筆者は熊田さんにも違和感を覚える部分があります。それはDV被害者である熊田さんも、見方によっては夫に対して同じ土俵でやり返しているように感じる点です。
例えば夫がご飯に手をつけない。実母からの理不尽なお説教があった。それ自体は当事者として怒る気持ちもわかります。
しかしだからといってそれをSNSにアップし、自身のフォロワー約40万人に暴露することは「妻の仕返し」としてやりすぎではないでしょうか。
当事者同士で話し合いはしていたようですが、「やられたから別の方法でやり返す」では本来の目指すべき解決の道からそれてしまうように思うのです。
ではパートナーからDV被害に合った場合、被害者側はどういった行動を取ればよいのでしょうか。大切なのは以下の3つだと考えます。
・当事者間での解決は困難と知る
・早期に冷静で安全な話し合いの場を設ける
・DVには「認知の歪み」があることを知る
■DVやモラハラの被害を感じたときにできること
以下、それぞれ説明していきます。
・当事者間での解決は困難と知る
まず被害に合われた方の多くは被害の度合いにもよりますが、当事者間での解決を目指そうとする人が多いです。
周りに知られたくないとか、自分がおかしいのではないかという気持ちが入り混じってのことかもしれません。しかしDVなどの問題はどうしても当事者意識があると、「している」「していない」の判断自体が曖昧になりがちです。当事者間で根本解決を図るのは非常に難しいと話す専門家も多いです。
そこでよくある次の手が、実家や義実家などの親を頼る方法です。第三者に相談するのは良い流れではあるものの、このときにポイントなのは“相談する相手が冷静に状況を見て、正しい判断をしてくれる存在であるか”という点です。
実家にモラハラ被害を相談したら「妻は夫に合わせるものよ」と母親に諭され、その通り我慢して被害が大きくなったという話も聞きます。逆に状況を冷静に判断せず、子どもに全力加勢する親もいるでしょう。
第三者や外部機関を頼ることは大切ですが、その相手は“冷静な第三者”である必要があるのです。
・早期に冷静で安全な話し合い(もしくは避難)の場を設ける
DVやモラハラなどの行為はクセになり、時間とともにエスカレートする傾向があります。だから被害に気づいたら早い段階で状況の改善に向かうためにも、話し合いや場合によっては避難といった選択も必要になります。
このとき感情的に話すと、結局はケンカになってしまって繰り返しになります。冷静さをお互いが持つためにも、“客観的に状況を見られる第三者が間に入ること”が非常に有効です。
・DVには「認知の歪み」があることを知る
DV加害者とはそもそも怒りや不満や悲しみといった感情を外に出す手段として、暴力を選択するようになってしまった人だと思っています。
またDV被害者側は相手から攻撃をされた際、「我慢する」ことや「自分が悪いと考える」などといった自罰的な対処パターンを身に着けている傾向もあります。
どちらも突き詰めれば、「認知の歪み」を抱えたことで起こしている行動といえます。
だから向き合ってパートナーのDVを改善させていきましょう、と筆者は言いたいのではありません。相手と向き合いたいか、離れて安全な自分の人生を歩むか。選択するのは当事者の自由です。
ただDVの問題と向き合うときにこうした心の構造について知っておくと、対処や判断もまた変わってくるかもしれません。
現在はDVについて相談できる窓口や団体も増えています。熊田さんは“警察に被害届を提出する”という選択を取ったわけですが、警察は事件(実際の被害)にならないと動きません。だから、対応としては最後の一手という印象があります。
これまで多くのことを我慢してきたであろう熊田さん。今後、彼女の口からどのような事実が語られるのか気になる部分です。
(文:おおしまりえ)