昨年に続き、2年連続で紅白歌合戦への出場が決定したLiSA(33)。アニメ『鬼滅の刃』の主題歌『紅蓮華』が引き続き注目を集め、さらには劇場版『鬼滅の刃』無限列車編での主題歌『炎』も話題となっている。
「実は、LiSAさんと『鬼滅の刃』には浅からぬ縁があります。というのも、彼女の地元には“鬼伝説”が存在するんです」
そう語るのは、LiSAを知る芸能関係者だ。
彼女の生まれ故郷は、岐阜県関市。実は、そこに「鬼の大石」伝説なるものが存在するという。また関市旧武儀町にある多々羅地区には、その鬼が落としたといわれる巨大石が残っているというのだ。
実際、その場所をたずねてみた。関市の中心部から車で北東へ約30分。県道58号線のバス停「多々羅」から県道を挟んで、川と反対側の山側に広がる畑の中の農道を数分歩くと、山裾に標識らしきものが見えてくる。
そこの木々で茂った辺りをよく見ると、囲まれるように高さ幅ともに3~4メートルほどありそうな巨石が2つ並んでいた。近づいて標識を見てみると、「鬼が落とした大石」と書かれている。
この大きな石はかなり古くからあるようで、表面には苔がびっしり。上半分には草だけでなく、木の根っこがめり込んでいた。
別の標識には、この2つの大石と「鬼が落とした大石伝説」の内容が以下のように書かれてあった。
《子どもたちが腹をすかした大鬼に食べ物を与えた。満腹になった大鬼は、そのお礼にと腰につけている石の威力を借りて『御館野』から『から山』へ飛んでみせた。勢い余って飛び過ぎ不思議な石を落とした。その時の石がここに残っている》
標識を立てた「武儀の昔はなし『伝説ロマンウォークの会』」の丹羽政則会長はこう語る。
「この関市の武儀地区には、おじいさんやおばあさんが孫を寝かしつけるときに寝間で話していたような昔話がたくさん残っています。しかし高齢化や過疎化が進み、このままだとその昔話が伝わらずに消えてしまいかねない。なんとかせねばと、昔話を聞き取って『武儀町のむかし話』という本にまとめました。そして、その昔話に関わる実際の場所などをいっしょに訪ね歩くという『伝説ロマンウォークの会』も作ったのです」
『鬼がおとした大石』という話も、この本に収められていた。そこにはもう少し詳しく“鬼の大石”の話が。内容は、以下のようなものだった。
《寒い冬の日、山から食べ物がなくなったことでお腹を空かした鬼が村に下りてきた。突然現れた大きな鬼に驚いた村の子どもたちは、一目散に逃げた。
しかし鬼は『待ってくれ、何か食べるものを持ってきてくれ』と目に涙を浮かべながら、手を合わせてお願いする。そこで子どもたちは『怖い鬼だけど、今はかわいそうだ』と言って、家から芋などの食べものを持ってきて鬼に与えた。
次に鬼が『もっと食べものを持ってきてくれ』とお願いすると、子どもたちは『鬼の腰についているピカピカ輝いている石をくれるなら、食べ物を持ってくる』と言った。鬼は『この石はワシのお守り。やるわけにはいかない。その代わり、石の力を見せることはできる』と提案。石の威力を見せるため、「御館野(みたちの)」の峠から川をはさんだ反対の「から山」まで軽くジャンプしてみせた。
ところがあまりにも一気に飛びすぎたため、途中で腰についていた石を落としてしまった。その石がいま、多々良の畑の中にどっしりと残っているーー》
【スライドショー】
この物語について、丹羽会長が解説する。
「このあたりで同じような大石が2つ並んで落ちているのは、ここだけ。まるで誰かが落としたかのように、ここにだけ落ちているんです。
また、話に出てくる『御館野』も『から山』も実在します。『御館野』は、石のある場所から北側にある小高い峠。『から山』は、『御館野』から川をはさんで反対側(南側)にある高さ約300mほどの山。石が落ちている『多々羅』は、『御館野』から『から山』まで跳ぶ途中の位置にあります。
つまり、鬼が山から山へジャンプする途中に石を落としたという伝説のとおりになっているのです」
また、この物語には“子どもたちに伝えたい教訓”が込められているようだ。丹羽会長が続ける。
「“困っている人がいたら、たとえどんな人であろうとも助けてあげましょう”ということです。たしかに、鬼は体も大きくて恐ろしい存在かもしれません。でも困っていて助けてほしいと言ってきたわけです。そういうときは逃げるのではなく、手を差し伸べてあげるべきという “優しい心を持つことの大切さ”を伝えたかったのだと思います」
ちなみに関市はかつて著名な刀鍛冶が名刀を生み出し、今も多数の刃物メーカーが本社や工場を置く“刃物の町”だ。また鬼の大石がある「多々羅」はもともと、刀などをつくるときに風をおくる装置の名前でもある。
関市はもちろん、巨石がおちていた場所の地名も刀と関係する名前。そこに鬼が石を落としたのだから、まさしくリアル「鬼滅の刃」。LiSAが主題歌を担当したのも、もしかするとそうした“奇縁”が結び付けてくれたものなのかも!?