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地元紙は追い続けた 〝復興の灯〟三陸鉄道が一つにつながるまで【3・11特集】

2019年3月10日 10:00 岩手日報社

 

期待と緊張感 リアス線開通見据え続く訓練


 三陸鉄道(中村一郎社長)は3月23日、JR山田線(釜石-宮古間、55・4キロ)の移管を受け、大船渡・盛-久慈間の163キロがリアス線として一つにつながる。

 鉄路復旧を強く望んだ沿線自治体や住民の声が実り、まちに再び列車が走る。

 津波で破壊された橋や駅は復旧した。「ひょっこりひょうたん島」の蓬莱島をモチーフに建設された大槌駅をはじめ、ユニークな駅舎も完成。魅力あふれる移管区間のレールでは連日、緊張感が漂う訓練が続いている。

 運転士たちの士気も上がる。三鉄3人目の女性運転士、田母神夏美さん(25)は「運転士として、新しい区間を運転できることは楽しみ」と、全線開通を心待ちにする。「北リアス線と南リアス線にはない景色を楽しんでもらえるはずだ」と期待する。


津波で鉄路寸断 社員の熱意で早期復旧


 三鉄は、全国初の第三セクター鉄道として1984年に開業した。乗客数は同年に268万8千人を記録し、開業初年度からしばらく黒字経営が続いた。

 しかし、その後は乗客の減少が続き、2010年度は85万1千人まで落ち込んでいた。1994年度からは赤字に転落。苦しい経営が続く中、2011年3月11日に東日本大震災が発生した。路線各所で駅舎や線路が流出。車両16両のうち3両が水没する甚大な被害に見舞われた。

 大津波の直撃を受けて高架が消え、橋脚の損傷やレールのゆがみも広範囲にわたった。宮古駅の宮古本部は停電で使えなくなった。電気が回復するまでの3日間、駅にあった車両のエンジンをかけて事務所代わりにしてしのいだほどだ。

 同社が試算した全面復旧費用は180億円。復旧への道筋は見通せない。しかし、三鉄が動き出すことが被災地を元気づけると信じた社員たちの思いは熱かった。

 「全線は無理でも部分的に通せるところはないか」と、応急工事をスタート。震災からわずか5日後、北リアス線の久慈-陸中野田間で「復興支援列車」を運行させた。料金は無料。わずかな区間の運行だったが、被災者に大きな勇気を与えた。

 被害が小さかった他の区間でも、次々と運転を再開。沿岸部の大動脈・国道45号が分断された上、容易にガソリンが入手できなかった当時、三鉄は住民の足として大きく機能した。



「あまちゃん」も後押し 待望の全線復旧


 公共交通としての使命感や心意気は、人々の胸を打った。

 三鉄社員の思いに応えるように、オリジナル商品や切符販売による支援の動きが、全国の鉄道会社や鉄道ファンにも広がった。第三セクター鉄道等協議会に加盟する同業者や大手私鉄が三鉄グッズを代行販売したり、売り上げの一部を義援金に充てる企画商品を販売した。

 いすみ鉄道(本社千葉県大多喜町)は復興応援切符と銘打ち、復興への繁栄を願った「盛駅」(三鉄南リアス線)、困難に打ち勝つ「勝田駅」(茨城・ひたちなか海浜鉄道)、大きく多くの喜びをもたらす「大多喜駅」(いすみ鉄道)の入場券を3枚セット販売した。

 絵本やコミックなど、三鉄を紹介する書籍も出版された。

 三鉄利用者を増やすための営業努力も怠らなかった。オリジナルキャラクター「鉄道ダンシ」で女性ファンの開拓を目指すユニークな取り組みも注目を集めた。

 震災からの沿岸復興をけん引するように、三鉄のレール復旧は、国や県、沿線自治体の支援を受けながら加速する。

 13年にはNHKのドラマ「あまちゃん」がスタート。久慈を訪れる観光客が急増した。ロケで使われた「お座敷列車」が完売するなど、全国の三鉄ファンが続々と乗車した。

 14年4月6日、全線が復旧した。「三鉄おめでとう」。駅舎やレールが流出した島越駅周辺では、住民が小旗や大漁旗で一番列車を歓迎。乗客も笑顔で手を振り返し、喜びを分かち合った。

 三鉄にとって「第二の開業」となった14年。4~6月期の経常損益は、震災後初の黒字となった。


全国最長路線誕生へ 外国人観光客どう対応


 三鉄にJR山田線が移管され、第三セクター鉄道として全国最長の路線が間もなく誕生する。

 線路が一本につながるメリットは大きい。これまで北リアス線と南リアス線に分断されていた車両や運転士の融通が利き、効率的な運用が可能になるからだ。

 久慈から盛までの直通列車も、毎日3本の運行が予定されている。久慈駅に併設されている「三陸リアス亭」で人気の「うに弁当」を販売している工藤クニエさん(78)は「これまで以上に、たくさんの人が三陸を訪れてくれるはずだ」と喜ぶ。

 山田線区間は、急勾配やカーブが、既存の2路線に比べて多い。めまぐるしく変化する車窓からの眺めは鉄道乗車の楽しみの一つだ。

 三鉄は、橋上の絶景ポイントでは車両のスピードを落としたり停車させる乗客サービスを行っている。新しい路線でも中村一郎社長が「何かできないか考えている」としているだけに、鉄道ファンには、こちらも楽しみの一つになりそうだ。

 9月のラグビーワールドカップ(W杯)釜石開催も控え、交流人口拡大に三鉄が果たす役割や期待も大きい。

 中村社長は「試合だけではなく、ゆっくり三鉄の旅を楽しんでもらいたい」と、駅の外国語表記を英語や中国語などを中心に増やす考えだ。「乗務員も基本的な受け答えができるくらいにはしていきたい」と社員のスキルアップも目指す。


課題は山積 魅力的な企画列車運行へ


 一方で課題も多い。中村社長は「まずは安全運行が第一だ」と、語気を強める。宮古-釜石間はカーブが多い上、踏切が49カ所ある。

 これまでは南リアス線と北リアス線合わせてわずか3カ所。地域住民の協力も不可欠だ。沿線では、小学生の交通安全教室などの取り組みが始まっている。

 沿線人口は減少が続き、観光客以外の輸送人員増加は大きく望めない。中村社長は「通学定期の利用者を維持したい」と、沿線自治体の支援を受けながら乗客確保に努める考えだが、視界は決して明るくない。

 しかし、三鉄を愛し応援するファンは全国各地にいる。19年は夜行列車やプレミアムランチ列車など、魅力的な企画列車が続々登場する。JRやIGRいわて銀河鉄道などと連携した周遊列車も検討中だ。

 これまでもさまざまな困難に打ち勝ってきた三鉄は、これからの苦しい道のりも一つずつ乗り越えていくだろう。三鉄にとって「第三の開業」は、間もなくだ。

出典: YouTube

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