体の調子が悪いと、表情どんより&仕事や勉強の効率が落ちて、心までダウナーに…そうならないために、日々何ができるの?そんなあなたに向けて、京都・左京区で鍼灸院を営む安東由仁さん、通称ゆにさんが東洋医学的見地から、季節ごとに元気を高める暮らし方のコツを教えます。「休む・食べる・動く」のシンプルな3ステップで、1年中ステイ・ヘルシー!
秋の養生は、夏に活発に動いて外へ発散していたエネルギーを、冬に向けて少し落ち着かせ、「内に収めていく」というイメージ。自分の内面に目を向け、過ごし方を「外に向かう」から「内に向かう」へ方向変換させる時期です。
東洋医学では、秋は「肺」の季節。これには「呼吸」を司る気管支や喉などの他に「皮膚」も含まれると考えます。どの部位も乾燥に弱く、「うるおい」が養生のテーマの一つになります。
最近の秋はなかなか一日中快適な天気の日がなくすっきりしませんが、深呼吸して、自分の体や気持ちに疲れが残っていないかよく感じてみましょう。
睡眠時間は長めに取る。
起床時間もゆっくりでOK
秋分の日(通例、9/22〜9/23頃のいずれか)を境に、昼間の時間よりも夜の時間が長くなっていきます。秋から冬は、春夏よりも睡眠時間を長めにとって、疲労回復にしっかり時間をかけましょう。夏、寝苦しくてよく眠れなかった間の疲れは、思った以上に体にたまっているものです。熱帯夜が終わって気持ちのいい秋の夜長ではありますが、夜ふかしして楽しむよりもまず、眠って夏の疲れを回復させるところから始めましょう。日の出も少しずつ遅くなりますから、起きる時間は早すぎなくて大丈夫です。もし出発ギリギリに起きても、自分を許すこと。
秋は天気の移り変わりが激しい季節。昼間と夜間、屋内と外で気温差があり、秋雨や台風など気圧や湿度の急激な変化も大きいのです。すると自律神経が疲れ、体温の調節やお腹の働きもうまくいかなかったりします。夜寝る前には湯船につかって、全身の体温を一定にリセットしてリラックスしてからベッドに入りましょう。
空気が乾いて、肌も乾燥しやすくなります。皮膚は外から入ってくるものから身を守る壁として大切です。お風呂上がりには間をあけず、しっかり肌を保湿することを忘れずに。
肉や魚の脂をよく摂って
血を補い、うるおいを増やす
食欲の秋、とは言いますがちょっと待って。まずは今のお腹の調子をよく観察してみて。あまり空腹を感じなかったり、お通じが順調になかったりする場合は、お腹が疲れているのかもしれません。食事の間をしっかり空けてお腹を休ませながら、夏のさっぱりした食事で不足しがちな「血」を補うたんぱく質を意識して摂りましょう。
乾燥する時期に体をうるおしてくれる食べものとしても、肉や魚の脂が合っています。乳製品もうるおいの増える食べものなので、例えば脂の乗った秋鮭のチーズ煮やクリーム煮は、とっても秋らしいメニューです。もし肉や魚はちょっと重いな…と感じるなら、食べやすく消化がしやすい卵や豆などがよさそうです。
また冷たいものは体を冷やしてしまいますから、野菜をサラダで食べるのは控え、温野菜やスープにして食べましょう。
ヨガなどでしっかり息を吐き
副交感神経を活発化させる
秋は「肺」の季節。東洋医学で肺の働きは「粛降(しゅくこう)」と言って、呼吸できれいな空気を外から取り入れ、汚れた空気を外へ出すこと、また体の中の老廃物を下へ降ろして外へ出す助けをすることを指します。「粛」という字には「ただす、ひきしめる」という意味があります。ですからこの時期に運動するなら、汗をかいて消耗するよりは、しっかり呼吸をして体内をクリーンにするものがおすすめです。
呼吸という動作は、自律神経と、自分でコントロールできる神経の両方が関わっている唯一の運動です。自律神経は通常、内臓の働きや体温の調節などの仕事をしていて、自分でコントロールすることは難しいとされます。でも実は意識して呼吸をし、特に「しっかり吐く」ことで、副交感神経に働きかけ、全身をリラックスさせることができるのです。
そのための運動としてぴったりなのはヨガやピラティスなど。また日常生活の中でも、力が入って息を止めてしまっていないかな?と点検し、気づいたらゆっくりと息を吐いてみてください。
以下は秋の養生をもっと詳しく知りたい方向けの、
体質にフォーカスした養生アドバイスです。
本来、気候が穏やかになり、美味しいものもたくさんあって実りを楽しめる、豊かな季節である秋。
なのですが、ここ数年はとにかく季節の勢いが激しく、特に梅雨の大雨から夏の猛暑、そして残暑などと厳しい時間が続いたあとであっという間に寒くなってしまい、秋の楽しみが少なくなっていますね。
体力があって夏を元気に過ごせた人は、涼しくなってくれば秋を快適に楽しめるはず。でも夏から残暑のあいだに「寝る」「食べる」がうまくできなかった人は、「気虚」や「血虚」になっています。まずはゆっくり休んで回復することから始めてください。
また今年はコロナ禍や、夏も暑すぎたために外出が憚られ、運動が足りていない人が多いのではないでしょうか。マスクをつけている時間が長くて呼吸も小さくなりがちです。体の中の「気・血・水」の流れが悪く、「血瘀」や「痰湿」の症状が出ている人は、湿気の少ない秋晴れの日にひろびろとした公園へ出かけ、大きく深呼吸をして。体の中に流れをつくりましょう。
安東由仁(あんどう・ゆに)
鍼灸師。京都生まれ。20年間アスレティックトレーナーとして勤めたのち、京都に戻り、左京区・鹿ヶ谷にある町家で「ゆに鍼灸院」(完全予約制)をオープン。治療だけでなく、暮らしの中でできる養生術も伝えるなど、“自分をバージョンアップ”するためのお手伝いをしている。
Text: Yuni Andoh Illustration: unpis Edit: Milli Kawaguchi