cat_2_issue_oa-ginza oa-ginza_0_fd4b63bef3c8_レディの肖像 市川実日子の軌跡 文・山内マリコ fd4b63bef3c8 fd4b63bef3c8 レディの肖像 市川実日子の軌跡 文・山内マリコ oa-ginza 0

レディの肖像 市川実日子の軌跡 文・山内マリコ

2018年5月28日 03:00 GINZA

雑誌『オリーブ』の専属モデルから始まった、市川実日子の軌跡。
スタジオへは、1人で現れた。

グレンチェックのジャンプスーツに、襟や裾を切りっぱなしにした古着っぽいジージャンを羽織って、足元は臙脂色のキャンバス地スニーカー、手にはマルシェかごを提げている。難易度の高いコーディネートながら、髪はラフだしほとんどノーメイク。それがとてもさまになっている。散歩の途中にぶらりと立ち寄ったようなリラックス感だ。撮影を終え、テーブルについたのはちょうどお昼どき。用意されたお弁当をいただきつつ、みんなで談笑しながらのインタビューとなった。

この連載の第1回を飾るのが市川実日子であるのはとても正統なことだと、読者の多くが納得しているはず。『ギンザ』にとって年の離れた姉妹のような関係だったティーン誌『オリーブ』。そこで1994年から98年までの4年間、彼女は専属モデルをつとめていた。

テーブルに広げられた自分のページを見て、「よくわたしを専属にしようと思ってくれたなぁ。これを可愛いっていう感覚が、みんなすごいと思う!」と、他人事のように笑っている。誌面に写る16歳のころの彼女は、少女モデルにありがちなロングヘアーのお人形タイプとは真逆。中性的で、ちょっと野性味も感じさせるかっこいい顔立ちだ。モデルデビューしたのはたしか中1か中2のときだったかなと、記憶をたどる。

「編集者の方から電話がかかってきたんです。お姉さん(市川実和子)からうかがったんですけど、『オリーブ』に出てみませんかって。そのときは声も出なくて、首振ってガチャンって切ってしまった。何回目かのときに、じゃあお姉さんと一緒だったらどう?って」

姉妹で『オリーブ』に登場したのが94年1月のこと。緊張しながら撮影にのぞんだ彼女が目にしたのは、働く大人の姿だった。

「スタジオで働いている大人たちが、かっこよかったんです。みんな真剣に、メイクしたり、洋服選んだり、撮り方を考えたり。わぁ、なんかカッコイイって思ったのが、わたしのはじまりです」

その年の秋には、2万7000人の中から専属モデルに選ばれた。撮影は月に1度か2度。

「自分がなんなのかもわからない、石ころみたいなときから仕事をはじめてたんですよね。モデルって、1人でスタジオに行くんです。当時はFAXで撮影場所の住所が送られてきて、地図を持って、会ったことのない大人が大勢いるところに1人入っていく。わたしはどちらかと言うと怖がりだし、人見知りもはげしかったから、最初が『オリーブ』という守ってもらえる環境じゃなかったら、今ここにいないと思います。『オリーブ』を作ってる大人たちの真剣なまなざしを、自然に見れた環境だったんですよね。またあのかっこいい大人たちに会いたいっていう気持ちで、スタジオに行ってました。気がついたらそこで培われたものが、わたしのものさしになってる。ゆっくりゆっくり育てていただきました」

専属モデルは特殊なロールモデル(お手本となる人物)だ。雑誌側からすれば、ほかとは違う個性を持った彼女を選んだこと自体が、『オリーブ』はこういう雑誌ですという意思表明みたいなものだったのだろう。それを読者も支持した。市川実日子という原石が磨かれていく過程を追体験し、自分もこんなふうに輝きたいと、あこがれを重ね合わせる。専属モデルと読者との、蜜月関係。とりわけ『オリーブ』は、熱い信者が多い雑誌だった。

「わたしは、なんというかのん気で。読者のみなさんの方が、熱心に読み込んでくれていて、それにびっくりしました。人が人に惹かれるって、うれしいことじゃないですか。でも若い時は、『もーわたしなんかがとんでもないとんでもない!』という感じが特に強かった。相手も夢を見たいだろうなぁって」

当時のページをめくるうちに、ファッションも実用重視の、今の時代の雑誌の話題になった。

「わたしは、雑誌にはちょっと夢を見たいんです。実用的な雑誌もいいけど、夢を見られる雑誌があってほしいなって、ずっと思っています」

『オリーブ』卒業後は他誌にも登場した。ネットが今ほど盛んではなく、とりわけあの時代の若者にとって、雑誌は絶対的な存在だった。加えて、時はサブカル全盛期。時代の空気と彼女のとがったビジュアルはこの上なくマッチして、雑誌をめくればその姿があった。

「サブカルっぽいとか、いまが旬だねとか、よく言われましたね。でもそれが、自分ではわからないんです。旬ってなんだろうって。相手からすると、褒め言葉として言ってくれたと思うんですけれどね。サブカルも、実はいまだによくわかっていなくて」

2001年の映画『とらばいゆ』以降は、女優として映画やドラマへの出演がつづく。

「若い頃からベースとして仕事が当たり前にあるから、ないとどうなるんだろう。仕事のことをいつもどこかに漂わせてるというか、やっぱり仕事中心なのかな。仕事は、生きてることの一部ですね」

2016年の映画『シン・ゴジラ』で演じた尾頭ヒロミは、ノーメイクにぼさぼさ髪ながら、男臭い世界で清涼な存在感が際立っていた。ネットで似顔絵イラスト祭りが起こるなど、一躍人気キャラに。モデルとしては長年スターだったけれど、世間的なブレイクは、尾頭ヒロミ役ということになる。

「わたし的には、あまり変わってないんです。どの仕事も、自分なりの真剣さでやっていて。こういうインタビューのお仕事も、『シン・ゴジラ』も。反響はうれしさもありますが、面白いなぁって、どこか客観的に見ている自分もいますね」

それからじっくり言葉を選んで、ぽそりとこう付け加えた。

「ずーっとやってきたことを、それでいいんですよって、言ってもらえたような気がして」

映画デビュー間もない2002年。『blue』でモスクワ国際映画祭の最優秀女優賞を受賞しているが、尾頭ブームはそのときを彷彿とさせる騒ぎだった。

「ありがたいと思っています。うれしくもあります。でもどこか、自分が歩いたあと、撮影したあとに咲いた花というか。自分のことのようでいて、みんなで作った役のことでもあるというか。『blue』の時は、モスクワから帰ってきてすぐ、たくさんの新聞へコメントくださいって言われたりして、少し混乱してしまったことがありました。うれしさと、ありがたさ、でもいちばん大きかったのは、困惑でした。外に出たら世の中が変わってるんじゃないかと思ったりして。そんな時、ふいに友達が、『ミカおめでとう。世の中なんにも変わってないよ』ってメールをくれて、それでちょっと安心しました」

今年もヒット作に恵まれている。1月〜3月クールで放送されていたドラマ『アンナチュラル』の東海林夕子役は、かなり素に近いんじゃないかと思わせる、自然かつ抜け感のある演技が光っていた。死体を扱うラボで、東海林のひゃっひゃと響く特徴的な笑い声は、一気に場を和ませる。ちょうどこのインタビューでも、何度もそんな場面があった。初対面の筆者が、「そのまんまですよね」とたずねると、「そうかなぁ?」と首を傾げる。

「だんだんそうなっていったところもあるのかもしれないですね。ドラマの中では、明るくいるべきパートだったから、地の笑い声も、監督が入れてくださいと。ドラマの面白さって、キャラクターが育っていくところですよね。自分と役は、影響し合う。振る舞いも含めて、役に近づこうとずっと考えてるから。撮影期間中は共演者のみんなが、それぞれの役や関係性を探りながら接してる気がします。そこもチームワークというか、みんな現場中は、ちょっとだけ役が混じってる」

ドラマの撮影現場、カメラが回っていないときも、与えられたキャラクターをにじませて過ごす役者たち。華やかに見えても、地道な努力の積み重ねなのだ。

思わず「変わった仕事ですね」と感嘆を漏らすと、こんな言葉が返ってきた。

「でも、あるときに、どの仕事も一緒なんだなって思ったんです。結局は、人なんだなって。人が人と一緒に仕事をしているんですよね。あと、人がそこにいて、なにかをしようとすること、それ自体がクリエイティブなんだなって思うんです。今ある中で自分はどうしたいか、なにがたのしいかって考えることが大事なのかもしれないなって」

ここで彼女はちょっと声のボリュームを上げて、意思表明のように言った。

「わたし、みんながたのしいのがうれしいんです。みんないい気持ちでいるかな?みんなたのしいかな?って、どうも気になってしまうんです。仕事する上でも。みんなにとってそれって素敵なことなのかな?っていう考え方が、自分の基本にあります」

話していて感じたのは、他者への寛容さだ。言葉の端々に、「いろんな人がいていい」「それはそれで、その人の道だから」と、さらりと付け加える。ダイバーシティ的な配慮というわけではなく、本当にそういう考えの持ち主なんだということが、伝わってくる。

デビューのきっかけにもなり、カリスマ的な人気のあった市川実和子さんとは、今でも友達みたいに仲がいいそう。

「姉と比べることですか?でも、姉は先を歩いてて当たり前だから、自分と比べないんです。もともと、あんまり人をうらやましがるほうではなくて。それより自分を責めてしまうというか」

今後どうなっていたいかとたずねると、「いい作品に出合いたいと思っています。規模の大きい小さいより、自分の心がどれだけ震えられるかというところが、大事だと思っています」という答え。世間的な評価ではなく、自分のものさしの精度を上げることの方が、彼女にとっては大事なのだ。

「他の誰かの価値観ではなく、自分が本当に望んでることに気づきたいというか。自分の自意識を守るために、外を否定するのは違うな、というのは思っていて。だからもうちょっと自分で俯瞰できるようになりたいなって思っています。忙しがってないで、もっと〝今〟に集中したい。自分がなにを感じてるのか、その時その時で、ちゃんと感じたいんです」

感覚的に、心の赴くままに喋る人だ。つかみかね、何度もしつこくたずねると、彼女はたとえを並べて、「言葉にするの難しいですね」とはにかみながら、親身に伝えてくれる。気がつくと予定をオーバーし、スタジオを出なければいけない時間。スタッフも三々五々帰っていく中、ギリギリまで話してくれた。

「自分のアンテナに引っかかるものが大事。みんなと同じことをしなくていいというか、みんなのしてることが必ず自分もたのしいわけじゃないというか。ちょっとあまのじゃくなのかもしれないですね。理屈なしで惹かれるもの。わくわくする感じ、感覚を、大事にしたい」

それは、仕事を含めた生きること全体へのスタンスにもつながっている気がした。借り物の価値観に惑わされない人。そうありたいと思っている人。思えば、彼女が登場する雑誌が発信していたメッセージも、まさにそうだった。

「中学のころから、小舟が流れるように来てしまっているんですよね。お会いした方に、39ですって年齢言うと、すごい驚かれるんです。年齢とか数字とかに縛られたくないって昔から思っているほうだけど、今年40歳になるのは、ちょっとだけドキドキしてます(笑)」

市川実日子

1978年、東京都生まれ。雑誌の専属モデルを経て、2000年に『タイムレスメロディ』で長編映画デビュー。16年に出演した映画『シン・ゴジラ』では第71回毎日映画コンクールで女優助演賞を受賞。ドラマ『アンナチュラル』での好演も記憶に新しい。19年公開予定の映画『お父さん、チビがいなくなりました』に出演。




インタビュー・文
山内マリコ
作家。デビュー作『ここは退屈迎えに来て』が映画化され今秋全国公開予定。新刊『選んだ孤独はよい孤独』が5月に発売される。


Photo: Yasuhide Kuge Styling: Tamao Iida Hair&Make-up: Chinone Hiromi (Cirque) Interview&Text: Mariko Yamauchi

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サンドイッチと本を携えて 1人ピクニックのすすめ

2018年5月25日 22:00 GINZA

ああ、せっかくの休みだというのに寝坊してしまった。窓からあふれんばかりの光が差し込んでくる。外はとてもいい天気だ。公園でごはんでも食べたら気持ちいいだろうなと考えるが、友だちを誘うにも急過ぎるし、あまり大掛かりになってしまうのも違う気がする。よし、1人ピクニックを決行だ。

ピクニックとは何か?について考える。

ピクニックはいつから始まったのか。語源は諸説あるようだが、17世紀のフランスの辞書に「持ち寄りで食事をする」意味で「pique-nique」と書かれたのが印刷物として残っているという。貴族が屋外で食事を楽しむ文化はイギリスへと渡り、19世紀になるとイギリス社交界に「ピクニック・ソサエティ」というグループが誕生。上流階級の間で大流行し、絵画のモチーフにも多数登場している。そして一般の人々にも普及していった。

イギリス人の作家ルイス・キャロルがリデル三姉妹とピクニックに行った際、後に世界中で読み継がれることになる『不思議の国のアリス』を口頭で語り聞かせたのが1862年のこと。三月うさぎと帽子屋がアリスとヘンテコなお茶会を繰り広げるのも、庭の1本の木の下である。ピクニックで生まれたのだ。

現代におけるピクニックとは──思い立ったら1人でさくっと道具をバッグに詰めて、屋外で気持ちよく食事をすること。さらにあったらうれしいのは、おいしいサンドイッチとコーヒー、1冊の本も……あれ、だんだん欲張りになってきた。

 

一切れのパンとハム、チーズがあればさらにいい。

「こんなお天気のいい日に、散歩に出かけるクマも多いが、ちょっとひと口やるものをもってくるなんてことかんがえるものは、まずあるまいな」(『クマのプーさん』より)と言ったのはクマのプーさんで、ひと口やるのはハチミツだけれども、もうちょっとゴージャスに、お腹が満たせるものがいい。簡単に調理ができ、持ち運びができて、手軽で、でも満足感があり、お皿もフォークもいらない食事といえば……、サンドイッチです。

材料はシンプルにパンとチーズとハム、以上。冷蔵庫からバターを出して常温で置き、パンに薄く塗ったらマスタードとマヨネーズを少々。ハムとチーズを挟んだら、はい出来上がり。もちろん美味しくしようと思えばコツは際限なくあるだろうが、逆に簡単にしようと思えば、バターやマスタードでさえなくったっていい。パンにハムとチーズを挟めば立派なサンドイッチだ。ああ、なんて簡単な料理。サンドイッチを発明した伯爵に再敬礼し、こんな簡単な料理を考案してくれてありがとうと叫びたい。いや、ちょっとまてよ、本当にサンドイッチ伯爵がサンドイッチを考案したのだろうか。伯爵が、長年の実験により失敗を繰り返し「短冊形のハム数片を2枚のライ麦パンで上と下からはさんだものが完成。霊感にうたれて、さらにマスタードをあしらう」(『これでおあいこ』より)そんな、サンドイッチが発明された歴史的瞬間があったのだろうか。答えは否、これはウディ・アレンが妄想でサンドイッチ伯爵の伝記を書いた短編小説の一節にすぎない。

それ以前にも存在していたであろう薄切りのパンに冷肉を挟んで食す食べ物がサンドイッチと呼ばれるようになったのは1762年のこと。第4代サンドイッチ伯爵ジョン・モンタギューの名に由来する。ギャンブル好きでポーカーに興じながら食べたという説もあるけれど、どうやら執務に忙し過ぎてデスクで激務をこなしており、片手で食べられるパンに肉を挟んだものを夜食に持ってこさせていたのが上流階級の間で広まったという話が有力説。サンドイッチは貴族の狩猟会やピクニックに最適な料理であったのだ。その後、鉄道の発達とともに民衆にまで浸透するのにそう時間はかからなかった。

 

家にパンがなければ、お店で買えばいいじゃない。

ピクニックに話を戻そう。サンドイッチをワックスペーパーに包み、食器をカゴ製のハンパーに詰めれば、完璧な英国スタイルのピクニックの完成!それができればいいのだけれど、こちらは思いつきの1人ピクニックだ。もっと気軽に気楽にピクニックしたい。公園に行く途中にパンとハムとチーズを調達すればよい。なんなら、美味しいサンドイッチを買っていくのもいいだろう。だって、公園の側には美味しいパン屋が待ち構えているのだから。

公園からパン屋を選ぶか、パン屋から公園を選ぶか。皇居の南側、銀座にもほど近い日比谷公園に行くなら、日比谷シャンテ1階にオープンした「ル・プチメック HIBIYA」(東京都千代田区有楽町1-2-2/03-6811-2203)。硬すぎも柔らかすぎもせず、パリッと一口ほおばったあと、ふんわりとした生地の間に各種具材がこれでもか!というくらいたっぷり入った名物バゲットもいいし、ローストビーフや野菜がぎっしり詰まったサンドイッチも捨てがたい。ええい、両方買ってしまえ。

有栖川公園に行くなら「DEENEY’S(ディーニーズ)」(東京都港区南麻布4-5-2/03-5656-9569)へ。広尾駅から公園へと向かう途中、ナショナル麻布スーパーマーケットの前に止まっている黒のヴィンテージトレーラーが目印。ハギスのハーブ、チーズの香りがたまらない。迷わず看板メニューの「マクベス」という名のトースティをオーダー。カリッカリになるまでプレスされた薄切りパンの間に、羊の内臓とオートミール、スパイスやハーブなどを混ぜて作られるスコットランド伝統のハギスとキャラメルオニオン、チェダーチーズ、ルッコラなどをぎゅっとサンド。飲み物はスーパーで調達して、いざ公園へ。出来立て熱々をがぶりとやろう。

代々木公園へ向かう時、パン屋に困ることはない。駅の周辺には「365日」や「Path」、「ル・ヴァン」……むしろたくさんあり過ぎるのではしごしてもいいくらい。だが、ふらっと立ち寄るならパン屋ではなく公園から目と鼻の先の「リトルナップ コーヒーロースターズ」(東京都渋谷区富ヶ谷2-43-15/03-5738-8045)が重宝する。ハンドドリップで丁寧に淹れたコーヒーとマフィンやサンドイッチを手に入れて、公園でゆっくり味わおう。

サンドイッチで小腹を満たした後は、ごろんと横になってリトルナップしてしまう前に、本でも読むことにしよう。自然の中で読みたい本。ふと、トーベ・ヤンソンを思い出した。

 

日差しを浴びながら遠い国の夏を想う。

『少女ソフィアの夏』は、おばあさんと、母親を亡くした少女ソフィアと、ソフィアの父の3人が、フィンランド湾に浮かぶ小さな島の夏の家で過ごした様子を描いた短編小説。おばあさんはトーベの母。電気もガスも水道も電話も店だってない、文明とは無縁の島は、トーベが夏を過ごしていたクルーヴ・ハル島がモデルになっている。島の夏は短い。凍てつく厳しい冬を越え、夏は一気に島中の生命が芽生える。そんな束の間の生命を慈しむように生き生きと描く。トーベが描く自然は、むっとした匂い、頭の中にまで響いてくる音、肌にザラっとくる触感までが感じられる。

「虫の羽音に耳をかたむけると、虫たちはつぎの瞬間、何千億にもなって、高く低くおしよせてくる音の波で、この世を、あふれる夏の喜びでみたした」(「牧場にて」より)

「風向きのいい、ころあいの日に、エゾノウワミズザクラの木の下に寝ころがると、花びらがいっせいに散るのを見る幸運に出合える。ただ、こまかいアブラムシをあびないように、気をつけなければならない」(「洞穴」より)

物語の中では、大きな事件は起こらない。荒々しく、厳しい自然の中で、おばあさんとソフィアの関係は育まれていく。

 

半径数メートルの木々や鳥を愛でる。

トーベ・ヤンソンの世界に浸り、少し自然が身近に感じられたら、リアルな周囲を見回してみよう。東京にだって小さな自然はたくさんあるのだから。

植物は見て、色やかたち、感触や匂いを感じるだけでも十分楽しいのだけど、好きな樹木や花の種類が覚えられたら、さらに喜びは増すし自慢もできる。自然観察をする際に手助けとなるアプリをいくつか紹介したい。

最新の画像認識技術を用いたアプリ「Leafsnap」なら、葉っぱを撮影するだけで、それが何の植物か、どんな実をつけるのか、どういう花が咲くのか、樹皮のテクスチャーなどを教えてくれる。現在のところ北米中心のデータしかないのが残念だが、スミソニアン協会によるデータベースのうっとりするような美しい写真を見ているだけでも浸れる。フランスの研究機関がリリースした「PlantNet」も同様。スマホで撮影した写真で植物や花が同定できる。

「ツピィツピィツピィ」「ギーギーギー」「ジジジジジジジジ」公園の中にいると、いつもは聴こえない鳥の声が耳に入ってくるだろう。鳴き声から鳥の種類を教えてくれるのが「さえずりナビ」だ。マップでポイントをマークし、時期、環境、声がした場所、時間帯や鳴き声などを入力し検索すると複数の鳥の候補が現れ、鳥の種類を絞り込んでいくことができる。鳥の名前からも検索可能だ。

春から初夏にかけて、都内の公園ではたくさんの野鳥が見られるので、いくつか覚えておこう。白い体で頭と胸のあたりに黒い線が入り、美しいさえずりを披露するシジュウカラ。樹の高いところにいるキツツキの一種で、背中のボーダー模様と「ギーギー」という鳴き声が特徴のコゲラ。水場にいる冴えた美しい翡翠色でオレンジ色のお腹、長いくちばしを持ったカワセミ。

鳥のさえずりは、一度意識し始めると、日常でもふとした瞬間に聴こえてくるようになる。自然への解像度が上がると、都会にいても、小さな生命に気づくことができるようになる。

ソフィアのおばあさんはある時こう言った。「孤独ねえ……。それはまあ、最高のぜいたくですわ」  友だちと一緒にわいわい行くピクニックもいいけれど、時間を気にせずのんびりと過ごし、さっと撤収する1人ピクニックも捨てたもんじゃあない。思い立ったら、さあ近くの公園へ。

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フリーランスモデル・咲月さんのヘビーユースアプリ3選

2018年5月25日 14:00 GINZA

あの人のスマートフォンの中ってどうなっているの?どんな風に活用しているの?気になる人に愛用アプリを聞いてみました。第一回目は幅広く活躍しているフリーランスモデルの咲月さん。

Let’s Draw

「展示で『こういうデザインが良い!』や『レイアウトをこうしたい!』と伝えたい時にダウンロードしたアプリです。最近は、電車の中でのラクガキ帳にもなっています。人差し指で書く “キャバ嬢ポテコさん”という4コマ漫画をインスタのストーリーに載せたことがありました。私がポテトのスナック菓子を普段食べないようにしていることと、約8年ぶりに再会した友人が驚いたことにキャバクラ嬢になっていた話とが混ざり”キャバ嬢ポテコさん”というキャラクターができました。──その日は金曜日。今夜も彼女は働いて、 お客さん(50代後半)にプレゼントでフルーツバスケットをもらって『キャバクラは病院じゃないんだから』とか 『意外とそのフルーツバスケットが似合う部屋だな』なんて思いながらシガレットを吸い化粧を落とします。 そんなポテコさんと私の金曜日、重なるところがあるなと空想しながら電車を降りました。 ちなみにこのアプリ、写真にもラクガキできます」

Spotify

「ジャンルごとや関連アーティストなどで曲がまとめられていて、ランダムに流していると好みの曲や初めて聴く曲に出合えたりしてお気に入り。楽曲は80sと90sとDream pop, Electronicをよく聴きます。日本人では中森明菜が一番好き。ザ・ベストテンでTatooを歌うアキナちゃんの全部が好きです(アプリとまったく関係ない!)」

GarageBand

「このアプリは音楽を作るときに、特にヘビーユースしています。  スマホひとつで簡単に音楽を作れてしまうし、もともとiphoneに入っているのでフリーです。Logicとか他にも曲を作れるアプリがありますが、わたしは断然これ。操作が簡単で、興味本位でも始めやすい!!朝起きるときの目覚まし音を自分で作るなんていうのもよいかもしれませんね」

 

咲月

SATSUKI
女優とアーティストとして活動ができるよう日々奮闘中。基本的なもの作りの編集や企画などはすべてスマホのアプリで行っている。

「Yummy Mart Harajuku 2f(東京都渋谷区神宮前6-­6-­9 2F)のギャラリーで、犬や猫などのペットの里親探しをアートやファッションを交えて行います。6月1日まで。今回紹介したガレージバンドを使用して作った曲も出すので、遊びにきてください」


Cover photo: Instagram

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cat_2_issue_oa-ginza oa-ginza_0_7bafd4458ebf_新連載アノコノオハコ第1回♥高橋ひとみ 7bafd4458ebf 7bafd4458ebf 新連載アノコノオハコ第1回♥高橋ひとみ oa-ginza 0

新連載アノコノオハコ第1回♥高橋ひとみ

2018年5月25日 09:00 GINZA

歌手♥︎高橋ひとみ

曲名♪キューティハニー

酔っ払うとみゆきが降臨する。 お別れできない彼女の正体とは?

「私、カラオケが苦手なんですよ」

誰にだってカラオケに行ったら必ず歌う1曲、すなわち〝オハコ〟があるはず。でもって、その曲が〝オハコ〟となるまでにはいろんな歴史やら物語やらがあるはず。その辺のサムシングを、今『ギンザ』が気になる女性たちに語っていただこうというこの新連載……のはずが、初回ゲストである高橋ひとみさんへの取材は、いきなり企画の存続を脅かしかねないそんな発言から幕を開けた。不安に駆られる我々をよそに、高橋さんは続けて言う。

「でも、お酒を飲んだら別。私、酔っ払うとみゆきっていう別人格が現れるんですよ(笑)。彼女はむしろカラオケが大好き」

急転直下、カラオケと親和性の高そうな話題に突入して安心すると同時に、新キャラの登場で心をかき乱される取材陣。み、みゆき?聞けば、彼女の生存が確認されたのは、高橋克実さんらと食事をしていたときのことだった。

「酔った私がいきなり『私はみゆきよ!』って言ったらしくて。翌朝はそのときのことを覚えてないから、ブルーな気持ちでみなさんに謝罪の電話をするんですけど、その噂を聞きつけた人たちが、みゆきを見たいからってまた飲み会に呼ぶんですよ。だいたいワインを3杯飲んだ辺りから彼女が現れ始めて、4杯目でジントニックを飲んだらもうダメ(笑)。『カラオケ行こ行こ!』って言い出すみたいです」

奥ゆかしい印象のA面とはまるで異なる高橋さんのB面にド肝を抜かれつつ、聞きたいことはひとつ。そう、カラオケクイーンに豹変した高橋さんの〝オハコ〟だ。

「倖田來未さんの『キューティーハニー』ですかね。昔、古谷一行さんや泉谷しげるさんたちと、ある番組の打ち上げでカラオケに行ったんですよ。そしたら、先輩たちが率先して歌ってくれて、しかもとてもお上手だったんです。そのときは先輩方の手前、お酒は控えていましたけど、私も1曲くらい歌える歌があるといいなって思って。それで帰宅後、お友達と近所のカラオケに通って歌える歌を見つけていたときに、たどり着いたなかの1曲が『キューティーハニー』でした。他には、青春時代のアイドルソングや昔に見ていたアニメの主題歌も歌いますが、最近の曲は覚えられなくて(笑)。『キューティーハニーF』がアニメ放映されていたときは既に大人でしたけど、もちろん知ってはいました。それで、倖田來未さんがカバーしたのを機にあらためて聴いて、いい曲だなって」

意外すぎる。もっとしっとりめのバラードを選ぶのだろうと思っていたので、この選曲には驚きを隠せない。

「私ってそういうイメージがあるみたいですね。みなさん『え、高橋さんがキューティーハニー!? 』ってびっくりされます。でも、カラオケの最初のほうってみんな照れて歌わないじゃないですか。だから、私がこれを一発決めて、場を盛り上げたいって思いもあるんですよ。振り付けですか?私、踊りの才能が一切ないんですよ。だから、そこはオリジナルのダンスです。ひとみは体力がないんですけど、みゆきは体力が有り余っているので(笑)」

ここまでくると、ぜひ一度みゆきのご尊顔を拝してみたいと思うのが人情だろう。しかし、みゆきは必ずしもポジティブな存在ではないらしい。

「この前、番組のロケで地方の神社に行ったんですね。そこで『捨てたいもの』を書いた紙を川に流して水に溶かすということをやったんですよ。もちろん、私が書いたのはみゆき。でも、『絶対に溶けますから』って言われたのに、いつまで経っても全然溶けなくて(笑)。こんなにみゆきは私から離れたくないのかって怖くなりました。できれば、彼女とは早くお別れしたいんですけど……。まだまだできそうにありませんね(笑)」

「キューティーハニー」/作詞=クロード・Q/作曲=渡辺岳夫/歌=倖田來未

高橋ひとみ

女優。1961年生まれ。寺山修司に見出されて女優デビューして以後、テレビドラマ、映画などで幅広く活躍。すべてのスタイリングを自身で手がけた初のスタイルブック『高橋ひとみのスタイルブック Hitomi Bon!』が発売中。


Photo: Masahiro Sanbe Text: Keisuke Kagiwada

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FROM EDITORS ふつうの戦士の美容帖

2018年5月25日 03:00 GINZA

vol.1 ハリの正体

GINZA5月号「知的な服ってなんだろう」特集で、「知的な顔」ページを担当した。知的そうな雰囲気とか、知的な話し方というのはなんとなく想像できるが、「顔が知的」であるとはどういうことなのか。「○○に見せるテクニック」特集は時にブラックジョークすれすれになる。

知的な顔と聞いてまず私が思い浮かべたのは、緒方貞子さんだった。ガラスの天井を突き破らんとしてきたすごい女性なのは言うまでもない。上司にしたら厳しそうだけど、親戚の伯母さんにもったら頼りがいがあるし優しそうな、奥行きを感じさせる風貌に憧れる。

解明するヒントをくれたのが、相貌心理学の研究者である佐藤ブゾン貴子さんだ。

まず肌のハリ、そしておでこを見よと佐藤さんは言う。

佐藤さんによれば、外界(世間とかそういったものすべて)に立ち向かおうと決意するとき、顔の肉は緊張感を持って盛り上がるのだという。私たちが”ハリ”と呼んで年がら年中気にかけているあれだ。

考えてみれば、学生時代からの友人にしばらくぶりに会うと「顔、変わったね?」と驚くことがよくある。年齢を重ね、家族が増えたり仕事で重責を担ったりして、それに伴う覚悟のようなものが彼らの顔つきを変えたのだ。

単に狭いか広いかだけでなく、さまざまなおでこの見方があることも佐藤さんに教わった(詳しくは本誌で)。

眉間にシワを寄せている人というのも、何かをおかしいと感じたり思いあぐねたりしてそこをよく使っているからであって、知的な反応であることに変わりはない。いい歳をしてツルツルなだけのおでこというのも、なんともつまらない。

働き方関連法案が閣議決定されたこの春。勤怠表を眺めるよりもまず、同じチームのみんなの肌のハリやおでこを眺めてみるべきかもしれない。おでこと肌のハリは、日々の思考や生き方と直結している。アイメイクで目元の表情はいくらでも作れるけど、額とハリはごまかせないから。

なぁにリフティングやボトックスがあるさと言う人もいるかもしれない。でもその偽装の代償として手放さなくてはならない素の表情に、どれほど多くの情報が詰まっていることか。コミュニケーションの情報を失くした顔、それを人は揶揄を込めて不気味と呼ぶ。うさんくさい、でもいい。

ああ、そうか、私たちは顔の中に”信頼”を探して歩いているんだ。そうふつうの戦士は思ったのだった。

今月の武器

噴射系UVはまず香りが良くなければ。アンプルールのUVスプレーはつむじにも、デコルテにも、外出の前にとにかくシュっ。

サンローランのサマールックから、限定発売中のパレット アーバンエスケープ。新しいカラーは一番疲れている日に試してみる(調子のいいときは何をつけてもお値段以上に見えてしまう)。疲れを蹴散らしてくれるならば、それは本当にドレッサーに迎え入れるべき色だと思う。

美しいとかツヤがどうとかの前に、凹まない強い肌になりたいと思うのはきっとみんな同じ。資生堂の最新テクノロジーを配した名美容液 アルティミューン(6月1日リニューアル発売)を毎朝欠かさない。武器というかお守りに近い。

今月の戦士メモ

1.  働き方、どうなる。高プロ、インターバル。ざわついている。理想の従業員の条件って15個もある。

2. 『わたしは、私』。美しく、楽しく生きてる大人の女性をたくさん見たい。

3. 私たちを取り巻く環境って今やこういうもの。情報がどんどん増えちゃったら世界はどうなる。

 

Keiko SUZUKI
2009年からGINZA編集部に在籍。今春からデジタルチームへ。赤い口紅コレクター。食育指導士®



Cover Photo: Yuri Manabe Photo(product): Hiromi Kurokawa

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古い角質とはおさらば!ギンザレディの肌支度

2018年5月25日 01:00 GINZA

美容に精通したドクター・髙瀬聡子先生に初夏のスキンケアについて教えてもらいました。ヘルシーな素肌があれば、 メイクアップはほんの少しで十分!それが、ギンザレディの肌支度。ヌーディな肌で出かけましょう。

ピュアな素肌は角質除去から

この時季、肌が黒ずむのは日焼けのせいだと思いがち。でも実は、余分な角質がたまって肌色をくすませていることもあるんです。頬がザラついたり化粧水が浸透しづらくなっていたら、それだって角質層が厚くなっているせいかも?そんな角質の正体は、表皮から剥がれ落ちる寸前の核を失った細胞。皮膚の内側の基底層で生まれた角化細胞は分裂を繰り返しながら肌の表面に押し上げられていくのですが、その最後の姿が角質です。“彼ら”は皮膚を捨て身で守る一方、スムーズに剥がれ落ちなかった場合は肌細胞の生まれ変わりを阻害する、厄介なストッパーに。表皮をこわばらせるので、もちろん、見た目にもよろしくありません。

 

大人ほど“掃除上手”にならなきゃ

さらに問題なのは20代以降になると角質が剥離しにくくなり、肌の生まれ変わりのサイクルが緩慢になること(いわゆるお肌の曲がり角ですね)。救世主はピーリングコスメ。酸や酵素の力で角質同士の接着力を弱めるものと、スクラブのように研磨効果で外側から剥がすタイプがあります。後者は1回の使用で変化を実感できるけれど、刺激にもなりうるので週に1、2回の使用がベスト。そうそう、角質がたまりやすくなるのは年齢のせいばかりではないんです!掃除をしない部屋に埃が積もるように、洗顔を怠るのもNGだし、保湿不足もこびりつきの原因に。フレッシュな美肌は1日にしてならずってこと、ぐーたらさんも心の片隅に。

さらば古い角質、お肌すっきり ITEM

【DAILY】1.

【DAILY】2.

【DAILY】3.

【SPECIAL】4.

【SPECIAL】5.

【SPECIAL】6.

髙瀬聡子

Akiko Takase
皮膚科医。ウォブ クリニック 中目黒総院長。美白・紫外線ケアに定評がある〈アンプルール〉のコスメの開発も手がけている。

タンクトップ ¥3,000(プチバトー | プチバトー・カスタマーセンター 0120-190-770)

Photo(model): Syunya Arai(YARD) Photo(product): Satoshi Yamaguchi Styling: Arisa Tabata Hair: NORI(YARD) Make-up: UDA Model: Shizuka jasmin Text & Edit: Chihiro Horie

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cat_2_issue_oa-ginza oa-ginza_0_9bfbffb5c135_フィッツジェラルドの小説が香水に 9bfbffb5c135 9bfbffb5c135 フィッツジェラルドの小説が香水に oa-ginza 0

フィッツジェラルドの小説が香水に

2018年5月24日 09:00 GINZA

イギリスのメゾンフレグランス〈ミラー ハリス〉から、F・スコット・フィッツジェラルドの最高傑作といわれる小説から着想を得た、2つのフレグランスが発売された。2人の調香師がそれぞれの解釈でアーティスティックに表現した香りから、ストーリーを読み解きたい。

小説の世界、光と影が香りで蘇る

無垢と情熱、戦後の苦悩と新しい時代への希望など、変化とコントラストを描いた小説『夜はやさし』の一節を、2人の調香師が独自の解釈と手法で『スケルツォ』と『テンダー』という2種類のオーデパルファムに仕上げた。2つの香りは互いに寄り添い、小説に見られる光と影や葛藤が活き活きと感じられる。

情熱的なカラーと香りが織り成す万華鏡『スケルツォ』

『スケルツォ』は、グラースの調香師の家庭で育ち、〈ミラー ハリス〉の多くのフレグランスを手掛けるフランス人パフューマ― マチュー・ナルダンによる作品だ。
小説さながらのめくるめく情熱な香り。タンジェリンから、明るいナルシスの香りへと変化し、愛を思わせる深いダークローズが香り高いパチョリ、バニラ、ウード・ウッドと交じり合い、虹色の光を反射するスイーツショップのウィンドウを思わせる、うっとりするような甘い香り立ちに。

霧に包まれた光と影、ミステリアスな『テンダー』

『テンダー』はグラースでキャリアをスタートし、メジャーフレグランスで研鑽後に独立、環境に配慮した作品を生み出しているベルトラン・ドゥシュフールの作品。
ホワイトボーダーストーンの上にたちこめる花のミストに包まれた、光と影を合わせ持つ。ミステリアスなブラックインクチューリップ、ライトピンクの雲のように咲き乱れるピオニー、繊細なローズとグリーンヒヤシンスのミステリアスなノートが広がる。

 


問い合わせ:インターモード川辺 フレグランス本部  Tel: 0120-000-599


Cover Photo: @forget_me_not_originals, Text&Edit: Hiroko Chihara

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朝の洗顔で1日が始まる ギンザレディの肌支度

2018年5月24日 01:00 GINZA

美容に精通したドクター・髙瀬聡子先生に初夏のスキンケアについて教えてもらいました。ヘルシーな素肌があれば、 メイクアップはほんの少しで十分!それが、ギンザレディの肌支度。ヌーディな肌で出かけましょう。

朝の洗顔、おざなりになってません?

今日も3度目のスヌーズでようやく起き上がったあなたに提案です!少しだけ早くベッドから出て、丁寧に顔を洗ってみませんか。小鳥の行水のようにぴしゃりと肌に水をかけるだけじゃ足りません。夜の空気がなま暖かくなり湿度も60%を超えるこの季節、ひと晩のうちにコップ1杯以上の汗をかきますし、顔の皮脂腺からは過剰に皮脂が分泌され、肌の炎症を引き起こす酸化という現象が起こっています。さらに不要な角質やベッド周りの埃が表皮に付着することも。ああ、想像しただけで肌がベタベタしてきそう……。

 

すっぴん美人になれる洗い方

では、夜の“不浄”をどう流すか?まずは手に水かぬるま湯を取って肌に優しくなでつけて。それから手の上で作った泡を、皮脂分泌がさかんなおでこと鼻からのせていきます。顔全体をふわふわの泡で覆ったら、汚れを吸着させるためにふっとひと呼吸(汚れよ、出て行けと念を込めて)!時間を置きすぎると肌を乾燥させますが、今の季節なら脂っぽいところには少々長めに泡をのせておくとテカリを抑えられます。すすぐ際も手にすくった水かぬるま湯で。シャワーは肌に摩擦を与え、炎症のもとになりますし、熱いお湯で洗うのも乾燥の原因になったり、逆に防御反応による過剰な皮脂分泌のもとになります。──朝の洗顔は初夏の日差しに負けない肌作りの第一歩。「洗うのが楽しみで早く目が覚めちゃう」なんて思えるくらい大好きになれる洗顔料を探すのも、動機づけとしてはありかも!

夜の汚れを洗い流す洗顔 ITEM

1 .海洋由来成分の働きで外的ストレスに強い肌へ。とろりとしたきめ細かな泡が毛穴の奥の汚れにもアプローチ。

2 .泡立て不要のポンプ式。軽やかな感触と精油の芳香が癒しをもたらしてくれる。洗うたびに肌のバリア機能を強化する処方も特徴。

3. Tゾーンはベタつき、頬は乾燥する混合肌のためのジェルタイプ。清々しいセージの香りが朝のスイッチに。

4 .肌細胞のスムーズな生まれ変わりを促進するサボテンの花のエキスを配合。

5 .角栓づまりもすっきり落とせる酵素パウダー。洗い上がりは程よくしっとり。

タンクトップ ¥3,000(プチバトー | プチバトー・カスタマーセンター 0120-190-770)

Photo(model): Syunya Arai(YARD) Photo(product): Satoshi Yamaguchi Styling: Arisa Tabata Hair: NORI(YARD) Make-up: UDA Model: Shizuka jasmin Text & Edit: Chihiro Horie

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cat_2_issue_oa-ginza oa-ginza_0_53f27bece6e6_今行くなら”半分くらい外”の店 53f27bece6e6 53f27bece6e6 今行くなら”半分くらい外”の店 oa-ginza 0

今行くなら”半分くらい外”の店

2018年5月23日 21:00 GINZA

自分のいる空間と外、川、あるいは空。 まわりとの境があいまいになる店に、たまに出会う。編集部が厳選した3軒をお届けする。

〈赤羽橋 月下〉

ひっそりと、でも大きく開いた塔の下。 まさに、外とつながる夜。

麻布十番で飲んだあと歩いて帰りたくなって、夜の港区をふらふら。東京タワーのまばゆいオレンジに吸い寄せられた先に、その店を見つけた。橙に包まれた「月下」。その扉は優雅に放たれていて、良ければどうぞと話しかけてくるようだった。まわりも明るいことだし、扉のフレームをスクリーンに見立て観察すると、ワンシチュエーションの映画に見えてくる。扉の奥のカウンターのバーテンダーは、今夜も丁寧にカクテルを作る。男女はしっとりとソファに腰掛け、おしゃべりを続ける。あるいはこれが舞台なら、誰かあの小上がりに座ったほうがいい。絶対に絵になるし、気持ちがいいはずだから。縁側と呼ぶのはちょっと違う気がするけど、気持ち的にはじゅうぶん縁側だ。誰も座らないならと、バーテンに一声かけ、座ってみた。歩いたら、少し暑い。モヒートを1杯飲んでいくことにした。ホワイト・ラムがたっぷりダブルで注がれて、だいぶパンチのある2軒目になったけど、そんなことより縁側だ。足を放り出して座れば、まさに内と外の境界線上である。見上げれば、想像をはるかに超える画角の、雄々しい電波塔。ああここは、東京の麓なんだ。そう思って少し泣けた。やっぱりこの縁側、特等席だった。

「月下」
住: 東京都港区東麻布1-9-3
☎: 03-3589-4111
営: 18:00〜翌3:00
休: 日・第2、第4土

〈白金台 スラッシュカフェ〉

思い立ったが、ハレの日。まるで絵画のような究極の借景。

記憶の中の八芳園はいつも晴れている。足を運ぶのは決まって大安吉日だからだけど、そのせいで、おめでたい用事がないと行けない聖域だと思い込んでいた。でも「スラッシュカフェ」に初めて足を踏み入れて、それは大きな間違いだと気づいた。外から見るのと、中に入ってみるのとでは、表情が違う。声を大にして言いたい。「八芳園の待ち合わせ、ロビーじゃなくここにして!」と。多分入り口のレジ横を過ぎたくらいがボーダーラインで、そこからぐんと見える景色が変わる。重要なのは窓。この窓枠からあふれんばかりの青と緑は絵画でしかない。額縁をくぐって外に出ると、江戸時代から主人を変え受け継がれてきた、雄大な庭園がぐるり。眼下には鯉が泳ぎ、白無垢の花嫁が記念撮影をする。これぞ天下の八芳園。向こうに頭を出すホーマットのマンションすら、もはやこの風景の一部だ。こうなれば何が出てきても美味しいと言ってしまいそうになるから、いったん深呼吸。ランチコースのメイン、ぺザンハーブを効かせた仔牛のローストは柔らかくとろけて、付け合わせのカブも玉ねぎも美味い。おめでたくなくても全然大丈夫。なんならお茶でも最高。なんでもない日に八芳園を訪れる、いい口実ができた。

「スラッシュカフェ」
住: 東京都港区白金台1-1-1 八芳園本館1F
☎: 03-3443-3105
営: ランチ11:00〜14:30・カフェ14:30〜17:00 ・ディナー17:00〜21:30LO、土日祝ブレックファースト8:00〜11:00
休: 無休

〈表参道 茶洒 金田中〉

中と外が涼やかに混ざり合う、 隠された庭園へ。

扉を開ける前から、この店はすでに始まっている。入り口にたどり着くまでの、ひんやり仄暗いエントランスにハッとするからだ。現代美術家の杉本博司さんが特注した四半敷の敷瓦が黒々と輝く通路を歩く。見上げればさらに、地面に向かって垂れる同氏の彫刻があって、この時点ですでにひとつの作品を堪能した気分だけれど、入り口へ向かう階段を上りきるとパッと日が差し、視界が開けた。ぽっかり口を開けた店内と、苔むす庭園が境なく混ざり合っていて、ドアを開けて中に入ったはずが、また外にいるような錯覚に。そこに、10mはあろうかという見事な一枚板のベイヒバのテーブル。食べるのは、可愛らしいわらび餅。口に入れてみると、人肌ほどに温かく、本蕨粉の香りがふわり。なにより黒みつが最高だ。甘さと美味さを噛みしめながら、目線を庭に戻すと、みずみずしいシラカシが爽やかに風に揺れている。深い陰影をたたえた鉄平石は水平に積まれ、名俳優のように涼やかな表情を見せる。その下の祠には、これまた杉本さんが置いたという磨崖仏に見立てた鎌倉時代の透かし彫り五輪塔。目の前にガラスがなくて、そして表参道にこの場所があってよかったと思わず感謝をしながら、お茶をすする。

「茶洒 金田中」
住: 東京都港区北青山3-6-1 オーク表参道2F
☎: 03-6450-5116
営: 11:30〜20:30LO(ランチ〜14:00)
休: 不定休


Photo: Kazuharu Igarashi Text: Neo Iida

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買い物よ踊れ♡今月の自腹ショッピングリスト

2018年5月23日 14:33 GINZA

スタイリスト、エディター、ライターの3人が実際に買ったもの、買っちゃう予定のものをご紹介。日々ファッションに向き合う彼女たちがワードローブに選んだ、ガチな精鋭アイテムはコレ!

「〈ロエベ〉は憧れブランドのひとつ。バッグはもうちょっと大人になるまで我慢しようと思っているのですが、靴やアクセサリーは意外と手に届きやすいアイテムがあったりして、ちょこちょこチェックしています。今季目をつけたのがこのプラットフォームサンダル。スカラップやカットワークが愛らしく、ジュートソールが軽やか。上質感がありながら、デニムと合わせたりしてラフな使い方ができそうなのが◎。インソールやストラップはラムレザー。肌あたりがなめらかで、履き心地も文句ナシ」(スタイリスト木村舞子)

「今年の夏はコレ、と心に決めた〈サイモン ミラー〉の“Bonsai”バッグ。暑い季節はかっちりしたバッグだとなんか重くてバランスが悪い。その点こちらはやわらかいヌバックで、バケツ型のフォルムに遊び心があり、レザーだけどライトな印象。さらっとした夏服と相性がよいのです。ハンドルはアクリルで、汗が気にならないのも高ポイント。ミニサイズが人気ですが、私は財布も手帳もすっぽり収まるサイズを購入して、仕事にも遊びにも活用するつもり!」(スタイリスト木村舞子)



 

「ここ最近注目しているドメスティックブランド〈COATE〉。パターンや素材にこだわりが見え、モードすぎずシンプルすぎない、リアルに着たいと思わせるワードローブが揃っています。このワンショルダースカートは、カジュアルだけど品よく着られるひとめぼれアイテム。シンプルに白Tと合わせるだけですごくかわいいんです!裏地の白が見えるデザインなので黒でも重くならず、コットンリネンの質感もいい。どこをとっても気が利いているなあと。しかも、ショルダー部分を下ろして2WAYで着られるすぐれもの。このクオリティでこのお値段は絶対手頃だと思います」(スタイリスト木村舞子)

「〈クロエ〉のイニシャルリングを愛用中。他のアルファベットも買おうと思いお店に行って、目移りしちゃったのがこちら。数字モチーフのリングってほかのブランドでもありますが、華奢なものしか見つからなくて。年齢を重ねると指が痩せてくる…それをカバーするために、ボリュームのあるキラキラ、が手元に欲しい。このナンバーリングは数字のフォルムがごろんとしていて、それでいて印象はシャープ。リング部分の厚みもちょうどよく、着けてみるとなんともいい感じに収まるんです。値段が手頃なので、いくつも買い揃えたい。まずはラッキーナンバーから!」(編集S)

「レトロなカラーブロッキングと、スポーティなナイロン素材に惹かれたこのバッグ。夏に持つバッグは軽やかなものがいい。カゴバッグは好きだけど書類やら何やらでいつも荷物の多い私にカゴは心もとない…ならばシャカシャカだ! とピンときたのでした。コンパクトに畳んで携帯できるのでサブバッグ使いしてもいいし、ちょっとくらい濡れてもOKなので雨の日にも重宝。スポーツウェアに新鮮な解釈を加えた今季のイザベル マラン}は、他にも気になるものがたくさん!」(ライターM)

「シースルー×ドット。旬の要素をかけ合わせたシューズはメゾンブランドの靴も手掛けているスペインのファクトリーブランドから。レディなデザインですが、フラットで履きやすく、デニムなどカジュアルなアイテムに合わせてもとてもかわいい♡ 普段フッドベッドサンダルやスニーカーばかり履いている私ですが、これを履いたら、久々に“女靴”に開眼してしまいました。サンダルだとラフになりがちだけど、シースルーシューズなら軽さをキープしながらきちんと見えるのもいい。これこそオンオフ使える一足だと思います」(ライターM)

「毎年夏の旅行前に水着を探すと、欲しいものがない!今年こそは早めに…と思っていたところに出会ったのがコレ。バーガンディカラーのワンピースは、ほんのりレトロな雰囲気が漂い、愛らしくも大人っぽい。フロントに施したシャーリングは、体型カバーにも一役買ってくれそうです。バスト部分には安心感のあるパットが付いているのも嬉しいところ。〈セント ヘレナ〉はオーストラリア・バイロンベイ発のブランド。この水着を着て、バイロンベイみたいなのんびりしたサーフタウンでプカプカ泳ぎたい♪」(ライターM)





 

「疲れて帰ってきても、素敵なルームウェアがあると、疲れが2割は減る気がする。〈ナナデェコール〉は以前から好きなブランドで、オーガニックコットンのパジャマやタオル生地のガウンやなどいくつか所有。夏物を新調したいと思っていたところ見つけたセットアップは、上品なネイビーベースにさりげないドット模様。かわいいけれど甘すぎないのが気に入りました。丈の短すぎないキュロットだと、家の中でアクティブに動けるのがいい。さらりとしたオーガニックコットンで、寝る時も、家事をする時も気持ちよく過ごせそう」(編集S)

スタイリスト木村舞子

この夏はワンショルダーが自分の中でアツいです。只今絶賛引っ越し計画中。気持ちのいい季節ですが、休日はひたすら部屋探し。

編集S

2009年からGINZA編集部に在籍。PVCバッグを買ったら、中に入れるポーチやハンカチ、定期入れ、ペンケースも新調したくなった。

ライターM

衣替えのタイミングでハウツーどおりにニットを丁寧にホームクリーニングしたら、かなりいい感じの仕上がりに。新たな趣味になりそう。

Styling: Maiko Kimura Text: Yasuko Mamiya

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