《IR誘致撤回は民意だからしかたない判断だけど、市長なら税収を増やすビジョンを掲げないとでしょ》
《過去の追及より、いまの問題に対処して。財政、どうするんですか?》
カジノを含む統合型リゾート施設(IR)の誘致を撤回した横浜市の山中竹春市長。11月9日の定例会見で、IR誘致に至った経緯を本年度内に報告書にまとめて公開する方針を示した。IRを巡っては、市民団体から、誘致に至る経緯を第三者委員会で検証するよう求める声が上がっている。
IR誘致を巡っては、反対運動を展開してきた市民団体「カジノを考える市民フォーラム」がIR誘致に至った経緯の検証を市に求める考えで、同日開かれた集会では、2年にわたる活動を振り返るとともに、第三者委員会を立ち上げるなどして検証するよう市に求める方針を確認した。
しかし、ネットでは、冒頭のような厳しい声が。『朝日新聞デジタル』によると、市の財政規模に対する借金残高などの割合を示す将来負担比率は2019年度に140.4%と、京都市、広島市に次いで3番目に悪い。
20、21年度には、将来の借金返済のために積み立てている「減債基金」を200億円ずつ取り崩し、臨時財源として計上した。さらに、コロナ禍による市税減収を補うために赤字地方債を発行し、21年度は500億円に上るという。
「財政の健全化」課題がのしかかる山中市長だが、本誌は同氏にまつわる“もう一つの問題”を8月2日に報じている。それは、同氏も立候補していた横浜市長選(8月8日告示、8月22日投開票)前のことだったーー。
本誌は、山中氏が横浜市立大学在籍時、ごく些細なミスを犯した若手研究者に対して「あいつに仕事させるな」「君には向いていない。次の仕事を探してきたら」と切り捨てる発言をしたり、論文の解析責任者だった別の研究者を論文の共著者から外し、退職に追い込んだことについて報じた。山中氏が市長に就任する前の数年間で、15人以上が辞めていったという。
なかでも衝撃的だったのが、2019年11月17日、データサイエンス学部の人材採用について相談してきた同僚のA教授へ山中氏が送った以下のようなメールだった。
《「干す」ことにより、●●先生は自ら去りました。■■君についても同様に対応した方がいいと思います》
同僚を退職に追い込んだことに言及し、別の同僚も「干す」べきだとするこのメールの文面を、本誌は画像とともに紹介した。山中氏は当時、本誌の取材に対して「在職中の学内行政に関するものであり、関係者のプライバシーの保護、秘密保持の観点から、存否を含めて答える立場にない」と回答している。
山中氏のホームページでは、いまもトップ画面に「SmartFLASHに掲載された報道 事実無根の報道について」という文章が掲載されている(2021年12月3日現在)。本誌が山中氏の事務所に送った質問状などをリンクしたうえで、「記事内容は憶測をもとに事実無根の内容を記載したもの」だと、記事の内容を否定するものだ。
本誌が送った質問状はPDF形式でアップされており、質問状に書かれていた関係者の実名や連絡先について「プライバシー保護の観点から黒塗りとさせていただきました」と注釈がある。しかし当初は、その文書をコピー&ペーストすれば、黒塗りの下に書かれている“パワハラ被害者”の実名が誰でも見られる状態になっているずさんなものだった。
8月30日、山中氏が市長に就任して最初の記者会見で、本誌は質問に立った。記事のどの部分が「事実無根」なのか、ホームページには具体的な反論がないからだ。しかし山中氏は、本誌の質問に対してしどろもどろになり、「ホームページに記載してあるとおりだ」と繰り返すばかりで、会見を打ち切って会場から“逃げた”のだった。
12月15日、山中氏は横浜市会で審議を受ける。市長選をめぐり、山中氏に近い市会議員らが、横浜市立大当局に“不当な圧力”をかけたという疑惑について説明するためだ。山中氏は、今回は追求から逃げず、説明責任を果たすのか――。
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