「資金が豊富な米国や中国と違い、日本の予算では、10年に1台のペースでしかスパコンの開発はできません。その制約のなかで1位、しかも四冠を達成したのは快挙。『日本の技術は遅れている』といわれるなか、おくれをとってないことを示してくれました」(科学ジャーナリスト・寺門和夫氏)
「2位じゃ、ダメなんでしょうか?」
「すでに『富岳』の利用が始まっている新型コロナ対策のシミュレーションだけでなく、アルツハイマー病に有効な新薬の開発にも活用できます。新型バッテリーの開発や防災分野、宇宙の謎の解明まで活用できる裾野は広い。
「まず、地震予測に必要な過去の地震データを、より明確に分析できるようになります。それにより、巨大地震の発生が危惧される南海トラフ周辺で起きた小さな地震が、プレート本体と関係ある地震なのか、まったく関係ない地震なのかを区別でき、危険な場所を特定できるようになります」
「これまで利用してきたスパコンの解析能力に制約があり、海底下の構造を単純化して、地表も平面として把握するような単純なモデルしか計算できなかった。
『富岳』の解析能力があれば、過去の地震情報と海底下の構造、ひずみの溜まり具合を組み合わせて分析でき、数ヶ月から1年後以内に、巨大地震が起こる可能性を予測できます。
「蓮舫さんの発言から、使いやすいスパコンを作る方向に、日本全体が変わりました。ありがたいことなんですが、プレッシャーでもあるんです。『世界一のスパコンで、こんな予測しかできないの?』と言われないよう、今度は使う側が頑張らないと」(堀氏)
“最後っ屁” にさせないためにも、今度は使い方でも1位を目指す。
写真提供・理化学研究所
(週刊FLASH 2020年7月14日号)