4月21日、スウェーデンのファッションブランド「H&M」が、“ガッキー” こと女優の新垣結衣(32)が新キャンペーン「LET’S CHANGE」のアンバサダーに就任したと発表した。
H&Mといえば、中国・新疆ウイグル自治区での綿花生産で、少数民族が強制労働をさせられていると報じられていることへの懸念を表明。この声明に対して、中国国内で反発が広がり、大規模な不買運動へと発展している。4月23日現在、中国最大手EC企業のアリババが運営するECサイト「Tmall(天猫)」や「タオバオ(淘宝)」から、同ブランドの商品が削除されている状態だ。
一方の新垣は、中国でも大人気。中国最大のSNS「ウェイボー(微博)」を運営する「シンラン(新浪)」は、2020年1月に日本人女優の人気投票を実施。石原さとみ(34)や長澤まさみ(33)を抑え、見事、新垣が1位に輝いている。
今回のアンバサダー就任は、彼らの愛するガッキーが、敵であるH&Mに味方をしたという構図だ。愛国心と “ガッキー愛”、はたしてどちらが勝つのか……。現地に住む中国人に、その複雑な心境を聞いた。「H&Mへの嫌悪感よりも、ガッキーへの愛が勝つことはない」と断言するのは、日本料理店を営む北京在住の38歳の男性だ。
「中国は、子供から老人まで、年代を問わず愛国教育を受けています。たしかにガッキーは超人気ですが、許されることはありません。中華圏で人気になりたいなら、こういう仕事は受けないほうがいいと思いますよ」
そんな厳しい声がある半面、「長年のファンは離れない」と語るのは、上海在住の39歳の英語教師だ。
「新垣さんがH&Mのアンバサダーに就任したことは、すでに中国の一部ニュースで取り上げられています。もしこれが広まれば、ライトなファン層は離れるかもしれません。
でも、2007年公開の映画『恋空』などから彼女を知っている、古くから応援し続けるファンは離れませんよ。それぐらい、根強い人気があるんです」
「私はガッキーを支持します」と公言するファンもいる。
「H&Mは、中国上陸当初は新進気鋭のブランドとしてもてはやされていましたが、現在はごく普通のファンションブランドというイメージ。そもそも、中国ではそれほど人気がありません。だから海外で報道されているほど、中国国内での不買運動の注目度は高くないんです。
今回の件はすべてH&Mが悪いと思いますが、決してガッキーまで悪くいわれる筋合いはありませんよ」(日系企業に勤務する上海在住の35歳男性)
はたして、ガッキーは「反中」の烙印を押されてしまうのか。「その鍵を握るのは『ピンクちゃん』です」と解説するのは、中国事情に詳しい香港在住のライター・角脇久志だ。
「中国には、日本のドラマを見てユニクロの服を買うような、日本好きの20代〜30代は非常に多いですが、彼らも小さいときから強烈な愛国教育を受けています。その中の一部が、『小粉紅(ピンクちゃん)』と呼ばれています。
彼らは90年代以降に生まれて『未熟な共産主義者』と言われ、自分たちの意に沿わない存在を見つけると、ネットで集団行動を起こし、攻撃をかけるのです。 2019年の香港デモのとき、人権問題として米国、ヨーロッパが中国に制裁を加えた際、彼らは『中国の内政問題に外国が口を出すな』と、激しく反発をしました。
ネットでも、中国で世代を超えて人気を誇る『SLAM DUNK』の作者である井上雄彦氏が、香港デモを支持する当時の河野太郎外相(58)のツイートに『いいね!』を押しただけで、『作品は二度と見ない、グッズも買わない』と大炎上しました。
同じように、新疆ウイグル自治区については、多くの中国人が『中国の内政問題』だと考えています。とくに最近は、他国に先駆けコロナの収束に成功し、経済も回復したことで自信をつけており、中国人は米国、ヨーロッパに対して『コロナも収束させられない外国が、内政問題に口を出すな』という思いが強いです。
新垣さんのアンバサダー就任が『ピンクちゃん』に目をつけられたら、炎上してしまう可能性が高いでしょう。最悪の場合、批判を受けてアンバサダーを辞任しなければいけなくなるかもしれません」
根深い外交問題を理由とした炎上は、“鎮火” も難しい。ガッキーに飛び火しないといいが……。
外部リンク