職場に新入社員がやってくるこの時期。彼らが仕事の基本としてまず担当するのが、電話の対応だ。だが今の時代、それが「ハラスメントにあたるのでは」という声もあるのだ。この「TELハラ」を取り上げて話題となったのが、4月6日放送の『羽鳥慎一モーニングショー』(テレビ朝日系)だ。
番組では「相手の会社名を聞き取れないし、自社の社員の名前と顔も一致しない」「固定電話にかけてきて『〇〇さんをお願いします』というくだりが面倒くさい。スマホにかければいい」などの新入社員の意見を紹介。入社3年めのテレビ朝日・斎藤ちはるアナ(24)は「(固定)電話に慣れていない世代なので、電話に出ること自体が緊張してしまう。ストレスに感じることは多い」とコメントした。
また、番組MCの羽鳥慎一(50)は、かつて日本テレビのアナウンサーだった時代を振り返り「先輩に電話を取られたら『申し訳ありません』って(言わないといけない)。今思うとなんだったんだ」と語った。コメンテーターとして出演していた、元フジテレビアナウンサーで弁護士の菊間千乃氏(49)も「何も教えず電話を取らせて、その後チクチク言うのがいけない」と、「TELハラ」の実態を解説した。
この、“年齢や肩書によって電話対応を押しつけられる状態”を「TELハラ」と命名した「fondesk」では、企業に勤める会社員を対象に、職場の電話対応の実情に関する調査を実施している。その調査によれば、「会社への電話を不要と感じることがある」と回答したのは62.8%。そして66.3%が、「会社への電話を受けることにストレスを実感」しているという。(以上、「fondesk調べ」)
総務省の「通信利用動向調査」(2020年5月公開)によれば、固定電話の保有状況は全世帯平均で69.0%だが、20代世帯に限るとわずか5.1%となる。家庭における固定電話は徐々に姿を消しており、若年層になるほど固定電話を使った経験値が低くなっていることは明らかだ。そのため、電話の取次ぎや伝言を受けるなど、電話対応の基本を知らないまま社会人となる若者が増えている。
また、スマホなら誰から電話がかかってきたのかわかるが、会社の固定電話の場合、ほとんどが知らない相手からかかってくるため、電話を取ることが怖い=「固定電話恐怖症」という言葉さえ生まれている時代なのだ。
企業のハラスメント対策に詳しい、社会保険労務士の木村政美さんはこのように話す。
「『TELハラ』という言葉は初めて聞きましたが、かつては多くの会社でそのようなことがおこなわれていたと思います。しかし、そんな常識は今では通用しません。右も左もわからない新入社員にいきなり電話対応をさせ、失敗すれば叱責する。こんなことをすれば、ハラスメントと受け取られても仕方ないでしょう。まずは研修で、電話対応を一から教えること。きちんと段階を踏んでいくことが必要です」
ビジネスでもメールによるやり取りが中心となっている現代だが、まだまだ電話でのやり取りも必要とされるのも事実。仕事の基本であり、電話の応対で社会人としての常識やビジネスマナーを学べる、と考える人も多い。ハラスメントと取られないためには、まずは会社がトレーニングをしっかりと受けられる場を設け、新入社員に「成長への近道」として認識を持ってもらえることが必要な時代なのだ。
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