写真:高山清司若頭
「警察は、ついに本気になってしまったようだ。職質した警官の目の前で発砲し、2人も射殺したのだから、これ以上見過ごすわけにはいかないのだろう」(関東在住の暴力団関係者)
10月10日、神戸市の神戸山口組系山健組事務所付近で暴力団関係者2人が射殺された事件で、兵庫県警は六代目山口組系弘道会傘下の組員、丸山俊夫容疑者(68)を現行犯逮捕した。
事件を受け、愛知県警と兵庫県警、大阪府警は13日までに、六代目山口組と神戸山口組の対立抗争が激化しているとして、山口組総本部や弘道会事務所、山健組事務所など両組織の主要な事務所計19カ所に、暴力団対策法に基づき使用を制限する仮命令を出した。警察は両組織が抗争状態になっていると認定したことになる。
「丸山容疑者は、警察の調べに対し『報復のためにやった』と供述しているとの話もある。そんなことを言ったら、抗争状態にあると認めるようなものだ」(同)
確かに10日の射殺事件は、計画的に行われた可能性がある。
「男は週刊誌の記者を名乗っていたんです。僕らが見ても、けっこういいカメラを持っていた。ただ、組幹部らの顔写真を狙うわけでもなく、建物の周辺を撮っていたので、何か変だなあと思っていました。現場にいた記者は『もしかしたらヒットマンかもしれない』と冗談で話していました。まさか本当だったなんて驚きましたよ」(週刊誌記者)
現場はJR元町駅から約750mの住宅街。この日は月1回行われる山健組の「定例会」の日。取材のため組事務所周辺にいた週刊誌記者らのなかに丸山容疑者はいたとみられる。
定例会が終了しても丸山容疑者はその場にとどまり、近くに停めた車の中にいた。不審に思った警官が職質をかけ、警官が囲む目の前で、丸山容疑者は車から飛び出して拳銃を発射、2人を射殺したのだ。殺害されたのは、いずれも山健組傘下組織の組員だった。
六代目山口組と、分裂した神戸山口組との間の抗争は、今年に入って激化していた。
4月には、神戸市内の商店街で、神戸山口組の2次団体最高幹部が、六代目山口組系組員に刺される事件が発生。また、8月には新神戸駅近くにある弘道会神戸事務所前で、弘道会系の組員が3発の銃弾を受けた事件も起きた。犯人はまだ逮捕に至っていない。
暴力団に詳しいジャーナリストは、山口組にとって最大の危機だと警告する。
「今回の射殺事件は、8月に起きた事件の “返し”(報復)と見ていいと思います。10月18日に六代目山口組ナンバー2の高山清司若頭(高は正確には「はしごだか」)が府中刑務所から出所することになっています。その前に返しておかないとタイミングをなくすと思ったのでしょう。
でも今回の事件で、警察は両組織を特定抗争指定暴力団に指定する可能性が出てきました。そうなると事務所は閉鎖され、5人以上で歩いていただけで逮捕される。実質的に壊滅に追い込まれる可能性が出ているのです」
関東に住む暴力団関係者はこう見ていた。
「今回の事件で、弘道会のトップまで責任を問われる可能性がある。そのため、傘下組織が弘道会から抜けるという情報が飛び交っている。山口組が消滅して、それぞれ傘下組織が独立するか、他団体の傘下に移るかという事態になった。ヤクザ社会の勢力図がごっそり変わり、また新たな抗争が起こりかねない事態だ」
出所する高山若頭は、今回の事態を収めることができるのか。