5月9日に始まった大相撲夏場所。大方の予想通り、横綱・白鵬(36)は右膝を手術した影響で、6場所連続の休場となった。これは年6場所制となった1958年以降で、横綱としては3番めの長さとなる記録だ。白鵬自身が語っているように7月場所は、まさに進退をかけた場所となる。
だが、長年取材してきたベテランの相撲ライターは、こう語る。
「現在、膝のリハビリをおこなっているが、状態は相当悪いと聞いている。たとえ7月場所に出たとしても、80%くらいの回復具合で、引退は避けられないだろう。それよりも注目すべき点は、引退後にある」
ご存知のように、白鵬の幕内優勝回数は史上最多の44回。その実績を考えれば、横綱のみが現役時代の四股名で親方になることを認められる「一代年寄り」が確実と見られていた。
ところが、夏場所の番付発表の前週に、「横綱の継承発展を考える有識者会議」(委員長・山内昌之東大名誉教授)が、八角理事長に提言書を提出。提言書はその制度そのものに疑問を呈したもので、「一代年寄の名乗りを認める根拠が見出せない」と言及したのである。これによって白鵬の悲願だった「一代年寄り」は、事実上消滅した。
「これまで一代年寄となったのは大鵬、北の湖、千代の富士、貴乃花の4人。白鵬の実績は、この4人をはるかに上回っている。それなのに『根拠を見出せない』と言われたのは、これまでやりたい放題やってきたツケでもある。現在、協会内で白鵬を支持する親方は、ほとんどいないと聞いている」(同前)
結果、白鵬が引退後も協会に残るためには、105ある年寄名跡のいずれかを取得しなければならないが、スポーツ紙の担当記者も「これまでの好き放題の行動が、年寄株取得の足枷になる可能性はある」と語る。
「白鵬が親方として角界に残ることに批判的な意見が多いのは事実。これを覆すには、過去の行動を反省し、一人でも多くの親方を味方に取り入れなければなりません。
白鵬は引退すれば元横綱という立場になりますが、元横綱の場合は、引退から5年以内に年寄株を取得すればいい(できなければ廃業)。言い換えれば時間があるわけです。資金的には問題はないし、日本に帰化し、妻も日本人。現在、間垣の株を取得する動きはあるようですが、焦らず時間をかけて取得に動くのではないでしょうか。
そして、その間に各親方の信頼を得ていくことが重要です。なぜなら、白鵬はたんなる親方になるのではなく、理事長の座を目指しているからです」
果たして、ヒールからヒーローへと、変貌を遂げることはできるか?
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