3月21日、引退を表明したシアトル・マリナーズのイチロー。会見では「ま、団体競技なんですけど、個人競技ってところですかね」と語っていた。
プロである以上、常に自分が活躍し、成績を残さなければ意味がないと考えているイチロー。「個人競技」と言いながら、チームとして本当に勝ちたいと思ったのは、WBCの2006年と2009年の2回だけだという。
「これを上回るチームはないですね。プロなのにあれだけチームとして勝ちたいという闘志とか思いが詰まった時間を共有したのは、あの2チームがダントツですね」
とYouTube「トヨタイムズ」内の「イチロー×豊田章男×小谷真生子 2018 『ここだけの話』(後編)」で語っている。
プロスポーツ選手なら自分が活躍しないと意味がないと思うのは当然だが、それをはっきり口にするイチローに対して、周りのチームメイトから自己中心的ととられたこともあった。
アメリカのスポーツサイトESPN(2008年9月27日)によれば、クラブハウスの中では、数人の選手がイチローのことを心から嫌っていたという。また、元コーチだったジョン・マクラーレンは、ある選手がイチローのことを「殴ってやりたい」と話しているのを聞いたことがある。
当時、イチローは1シーズン200安打を目標として公言していたが、チームは下位に低迷。一部の選手からは、勝つことより、自分がヒットを打つことしか興味がないと見られてしまった。悩んだイチローは、尊敬する先輩にアドバイスを求めた。
「オフに王監督に会ったときに聞いてみたんですよね。監督は現役時代、どういう気持ちでプレーされてましたかって。そしたら『そんなの自分のためにきまってるじゃねーか』って。それも間髪入れず」(前出「トヨタイムズ」)
チームメートとの不和に悩むイチローは、王貞治の言葉を胸に自分のためにヒットを量産し続けたのだ。
イチローのチームメイトで、愛弟子のディー・ゴードンは、シアトルタイムス(3月21日)で「身勝手かもしれないけど、野球を続けて欲しかった」と話している。
イチローはゴードンに野球の知識や技術を惜しみなく教え、若手の質問にも真摯に答えていた。選手交代のとき、ゴードンやチームメイトと笑顔で熱い抱擁を交わしたイチロー。自己中心的な選手とは程い姿がそこにはあった。
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