「女性店員が、午後2時ごろ男性の客に呼ばれ部屋に入ってから2時間出てこない」という、店側の110番通報があったのが始まりだった。
6月17日午後2時ごろに発生した埼玉県さいたま市大宮区の漫画喫茶「マンボープラス 大宮西口店」で発生した立てこもり事件。膠着状態は実に30時間以上にも及んだが、18日23時ごろに「犯人の男を確保した」との一報が伝えられた。また、人質となっている女性店員も保護されたという。
現場は大宮駅から直線で200メートル足らず。大宮駅からまっすぐに伸びる4車線道路に面しているビルの7階で、すぐ近くにはそごう大宮店、現場の裏にはビックカメラがある。また道路を挟んだ対面には、埼玉県で最大のホールやホテル、展示場が集まる大宮ソニックシティのビルがそびえる。まさに大宮区の中心地にもかかわらず、そこに死角があった。
「通常のマンガ喫茶は簡単な仕切りがある程度で、きちんとした施錠もできません。しかし、マンボープラスは完全個室を売りにしていて、1畳から2畳ぐらいの狭い部屋ですが、壁が天井まで伸びるように仕切られており、窓もありません。内側から鍵をかければ女性でも安心して使うことができますが、今回はそれが裏目に出てしまいました。窓がないので、中で犯人と女性店員がどう座っているのかも把握できず、犯人とのやり取りはインターフォン越しでした。
犯人とはコミュニケーションが取れていて、17日の段階では『何時に出るよ』と自ら言っていたそうです。でもその時間になっても出てこず、『やっぱり何時に出る』と別の時間を言うんです。女性の生存は確認できているといい、『はい』とか簡単な返事をしており、声は確認していた。女性に大きな傷がなく命に別条がないとみられるので、時間を引き延ばしていました」(捜査関係者)
だが17日未明の時点では、埼玉県警は現場の報道陣に対して「夜明けまでには解決させる方針だ」と、事件の早期解決を匂わせていたという。
「事件が起きてからずっと、付近は封鎖されたまま。事件現場は駅前ということもあり、人が動き出す時間帯までに解決させないと、周辺が大混乱するとみたのでしょう。でも、結果的に何もできなかったようです。深夜には捜査員が行き交い、バタバタする場面もありましたが、明け方以降はぱったり動きが止まっていました」(マスコミ関係者)
一体なぜ、ここまで時間がかかったのか。前出の捜査関係者は、漫画喫茶の構造が突入を難しくさせていたのではないかという。
「狭い部屋ですが、中の動きがわかりません。ちょっとでも壁を壊したり、鍵を壊すなどの動きがわかったら犯人が何をするかわからない。飲み物や食料の差し入れを頻繁にできればチャンスが生まれるのですが、犯人も警戒していると予想された。犯人はトイレにも行けていないはずなので、室内は過酷な状態。ひとまず、犯人の体力が無くなるのを待っていたようです」
だが、元兵庫県警警察官で警察ジャーナリストの飛松五男氏は埼玉県警の“待ちの姿勢”に異を唱えていた。
「小さい部屋でしょうが、犯人とコミュニケーションが取れている間に突入すべきだったと思います。たいていの場合、立てこもりの犯人は、じつは早く捕まえてほしいと内心で思っているものです。犯人の体力があり、理性が働くうちに突入する必要があります。体力が限界にくると自棄を起こして、逆に何をするかわからない。その方が、相手に被害が及ぶ可能性もあります。
私は以前、新幹線内で殺人未遂の容疑者が女性連れでトイレに立てこもった現場を経験したことがあります。そのときは別の車両でトイレのドアをレバーでこじ開ける訓練をしたうえで、一気にドアをこじ開けて、女性を助け出しました。訓練してさっとやれば、犯人はそんなに抵抗できないはずです。立てこもり事件は、長期化すればするほどより犯人を追い詰める。だから、早めの決断が大事なんです。埼玉県警はちょっとビビっていたのでしょう。責任を取りたくないといった理由で突入が遅れているのであれば、言語道断です」
24時間以上にも及んだ立てこもり事件。一刻も早い原因の究明が求められている。
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