「六代目山口組」と、そこから分裂した「神戸山口組」の抗争は、1月7日、新たな局面に突入した。
抗争が激化している両団体は「暴力団対策法」に基づき、「特定抗争指定暴力団」に指定。同日以降、組事務所が使えなくなるだけでなく、組員数人が集まっただけで逮捕されることになった。司忍六代目山口組組長(77)による先代組長の墓参も、例年どおりには、おこなえなくなりそうだ
対象となる「警戒区域」は、両団体の本部がある兵庫県をはじめ、愛知、大阪、京都など6府県10市に及ぶ。
ところで、“暴力団の影響下にある街” を、地方自治体が公表していることをご存じだろうか。15都道府県と4市の「暴力団排除条例」などで、「暴力団排除特別強化地域」が指定されている。
たとえば、「東京都中央区銀座6丁目から8丁目まで」「愛知県名古屋市栄3丁目1番から15番まで」といった具合に、総数386カ所の、細かな町丁名までが公表されているのだ。
民事介入暴力対策に詳しい依田竜典弁護士が解説する。
「指定された地域は、もともと繁華街で、暴力団に対して『みかじめ料』を払っている店舗が多い地域と考えられます。古くから暴力団の影響力が強い地域を指定し、公表することで、暴力団の資金源を断ち、クリーンな街を目指そうというものです」
指定された地域で、店がみかじめ料などを払った場合、暴力団と店側の双方が即座に逮捕され、刑事罰の対象になる。処分の際には、勧告や公表、行政命令といった手続きが省略されるという強い条例だ。
都内在住の暴力団関係者は、「影響が出ている」と語る。
「歌舞伎町や銀座でも、自分のシマが特別強化地域になったことを、組関係者は認識している。今後はますます、みかじめ料が取れない。あとは、闇で営業している裏カジノなどから取るしかないな」
強化地域に指定されることで、地価は下落しないのか。ある不動産関係者は否定する。
「強化地域には、以前から組事務所などが多く、周辺に比べて地価がそもそも高くない。事務所がなくなり指定が解除されれば、かえって地価は上がるだろう」
とはいえ、暴排条例は、暴力団対策に特化したものだ。依田弁護士は、こう警告する。
「暴力団員の数は減っていますが、“偽装離脱” も多い。半グレの活動は、必ずしも条例の規制対象とならないため、対策が必要となります」
そのためか、行政の締めつけが強くなっても、分裂した山口組3団体の抗争は、沈静化していない。別の暴力団関係者はこう話す。
「六代目山口組の高山清司若頭が、昨年10月に出所して以来、神戸山口組との抗争が激化し、尼崎市では神戸側の幹部が射殺された。
現在は、高山若頭が若頭補佐ら幹部に指示を出し、彼らが地方を飛びまわって会を開いているという。警戒区域以外なら、集まっても逮捕されないからだ。
神戸山口組は昨年、大物幹部が銃撃事件の実行犯として逮捕されたこともあり、厳しい運営を迫られている。また任侠山口組は、団体の名称を新たに『絆會』に変更、“脱山口組” を目指すことにした」
法の “抜け穴” を見つけ、生き残りを図る暴力団。戦いはまだ続く。以下の関連リンクでは、386カ所の暴力団排除特別強化地域を公開する。
(週刊FLASH 2020年2月4日号)
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