14年ぶりに復帰した西武ライオンズでも、昔と変わらず “主役” を張る松坂大輔(39)。西武主力勢のキャンプ地である宮崎・南郷には、「平成の怪物」目当てに、例年以上に多くのファンが詰めかけていた。
「キャンプで注目されることは、入団時から想定していました。でも正直、『どこまでやれるの?』と思っていましたね。
昨季は肩を痛め、一軍での登板は2試合のみ。ですが、2月13日には、ブルペンで102球を投げ込み、翌日も『肩の状態は悪くありません』と、満足そうな様子でした」(西武担当記者)
松坂は、意外な部分でも、番記者たちの注目を集めていた。
「じつは、松坂は今キャンプに、9つものグラブを持ち込んでいたんです」(同前)
その9つとは、「ラグデリオン」「ディーバイエム」「宮崎和牛グラブ」「RYU」「アクセフベルガード」「ワールドペガサス」「ダイス」「美津和タイガー」「フォースキフト」。かなりの野球フリークでなければ知らないような、マニアックなグラブばかり。
大手メーカーの担当者は、「松坂選手は人が使っていないグラブを使うのが好きなのでしょう」と解説する。なかでも松坂が特別な思い入れを持つのは、「ワールドペガサス(以下、WP)」だ。
WPといえば、桑田真澄氏(51)が現役時代に使っていたブランド。松坂がWP社のグラブを使い始めたきっかけを、同社グラブマイスター・西島唯博氏が語る。
「2019年、中日の門倉健コーチが使っていたのを借りてキャッチボールをしたところ、『しっくりきますね』と気に入ってくださったそうです。それで、2020年から正式に、松坂選手にグラブを提供することになりました。
弊社の投手グラブは、ショートとの兼用で、やや小さいんです。なので、投手用に指カバーをつけ、松坂選手からの要望で、全体も1cmほど大きく作り直しました。
特注部分は、ほかにもあります。現在のWPのロゴは、桑田さんが使っていたころとは違うデザインなんです。でも松坂選手が『(WPだとはっきりわかる)桑田さんのころと同じロゴにしてください』とおっしゃって(笑)。相当なこだわりがあるみたいですね」
じつは松坂にとって桑田氏は、少年時代から憧れ続ける特別な存在。自宅にも、桑田氏からもらったグラブを飾っている。
その桑田氏は、現在もWP社のアドバイザーを務めているが、松坂の復活を願うひとりでもある。たびたび渡米し、メジャーリーグ時代にも松坂のもとを訪れていた。
西島氏は、松坂の要望どおりのグラブを突貫で作り上げ、キャンプ初日に南郷へ。その際、出来上がったグラブとともに、桑田氏から託された直筆のメッセージを渡したという。
「松坂選手への思いを書いた内容でした。『陰ながら応援しています。現役生活もそう長くはないと思うので、悔いのない野球人生を送ってください』という、心のこもったものでした」(西島氏)
桑田氏のメッセージは、松坂の胸に響いたようだ。毎日新聞2月19日付朝刊のインタビューで松坂は、こう語っている。
《一時期いろいろな人に『やめるとはどんなことですか』と聞いていた時期がある》
《今は一年、あがいてあがいてあがきまくって、悪あがきしてやろうと思っている》
桑田氏のマネジメント事務所の関係者は、「手紙は事実です」と話して、こう続ける。
「昔から桑田は、(松坂を)応援していました。『いつかまた輝いてほしい』という願いから、お渡ししました」
前出の記者は、こう話す。
「松坂のWPへの評価はよかったですよ。キャンプ中には『これが、いちばんいい』とも話していました。シーズン中も、メインのグラブとして使うことになるでしょう」
背水の陣となる2020年、直筆手紙で背中を押してくれた大先輩と繋がり深いWPを、松坂は本命グラブにするのだろう。
「松坂選手は、2~3社のグラブを使い分けられると思います。でも、そのなかの1社でうちを使ってもらえれば、嬉しい限りです」(西島氏)
松坂は日米通算170勝。記録でも桑田氏の通算173勝を追いかける。今年、松坂が勝利を挙げれば2年ぶりのこと。そのとき、松坂は桑田氏に、どんな直筆 “礼状” をしたためるのだろうか。
写真・産経新聞
(週刊FLASH 2020年3月10日号)
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