写真:天皇陛下と坪井さん
5月1日に即位された天皇陛下が、即位を内外に宣明される「即位礼正殿の儀」が、10月22日、皇居で執りおこなわれた。天皇陛下は「国民の幸せと世界の平和を常に願い、国民に寄り添いながら、憲法にのっとり、日本国及び日本国民統合の象徴としてのつとめを果たすことを誓います」と述べられた。
そんな陛下の姿をテレビで見守っていた人がいる。学習院大学から歩いて3分ほどのところにある洋食店「マックスキャロット」の元店主・坪井明人さんだ。
じつはこの店、陛下が学生時代からたびたび足を運ばれてきた、行きつけの店だという。
初めて店を訪れたとき、陛下はまだ大学院生だった。坪井さんは「ご学友の方と10人ぐらいで来られていました。チキンカレーやポテトチーズグラタン、イカ墨パスタなど、ガーリックのきいたものを頼まれ、皆さんで分け合って召し上がっていました」と当時を振り返る。
「将来、天皇になられる方のお食事を作るのは、たいそう緊張しました。でも、陛下から『たいへん美味しいですね』と優しい言葉をかけていただき、その心遣いに嬉しさを感じました。とても穏やかな空気をまとわれた方でした」(坪井さん)
いつも店に予約を入れるのは、陛下以外の参加者だった。だが、その後で警察から「よろしくお願いします」と電話がかかってくるので、陛下がいらっしゃることがわかるのだという。
坪井さんは「陛下がお気を遣われているのか、店内には客を装って2名のSPがいるぐらい。ただ、やはり店の外には私服警官がわんさかいました」と語っていた。
陛下は酒豪でもあったという。
「最初はビールで、その後はウイスキーのロックを何杯も飲まれます。最初のご来店で、ご学友の方々と一緒に、ウイスキーの瓶を4、5本空けておられたのには驚きました。それでも、まったく乱れる様子もなく、姿勢もきれいなまま。かなりお強いです」(坪井さん)
取材中、店に設置されている大型テレビには、ずっと儀式の様子が映し出されていた。坪井さんはそのお姿を見ながら、「陛下は遠い存在ですが、お店でご友人の方々と楽しそうに過ごされる姿に、親近感も覚えていました。その意味では、非常に不思議な感じがしますね」と懐かしそうに見つめていた。