仕事の1日を、ランチ前とランチ後に分けて考える人は少なくないはず。たとえば2時あたりに線を引いて、それまではとにかく仕事に集中、なるべくto doリストを減らして、後半は比較的ゆったりと仕事をするというリズムの人もいるかもしれない。
そして午前中仕事に集中しすぎて、ランチの時にはお腹がぺこぺこ……なんてことも? 楽しみにしていたサンドイッチをようやく食べられるときの幸福感はあるけれど、実際体にとってどうなのか、専門家に聞いてみた!
お腹が空くのを待つ利点は、お店が混んでいないことだけじゃない。"お腹が空いた" という感覚を味わうことは、"食べる時間" であり仕事の中の "休憩 の時間"である食事の時間を、より満足度の高いものにしてくれる。(ただ、この空腹感が、食べるものがないという危機感を感じるものではないのは本当にありがたいこと)。
空腹は最高の調味料という表現を聞いたことがあるかもしれないけれど、これは体のどんな働きから起こるもの? 実際空腹になるまで待たない方がいい? 食事の回数は増やすべき? 専門家の回答を早速チェック!
お腹が空いたとき、たまにいい気分になるのはどうして?
ニューオーリンズにあるオックスナーフィットネスセンターの栄養士、モリー・キンボールさんは、空腹になるまで待つことは、2つのダイエットの効果をもつという。過去に流行したケト・ダイエットとプチ断食だ。
「ケト・ダイエット中の人は、エネルギーが湧いてきて感覚が研ぎ澄まされるといいます」と、キンボールさん。
「また、プチ断食をすると集中力が上がると言われており、この2つの関連を示す研究は多くあります」と続ける。午前中の方が仕事がはかどるという経験は、この働きのおかげかも。
空腹時の味覚について教えてくれたのは、栄養士でコンサルタントのメーガン・ギルモアさん。
「食事を抜くと、舌は味をより受け入れやすい状態になり、甘い、しょっぱいなどの味覚により敏感になるという研究結果があります。空腹は味わう能力を高めてくれ、料理の味をよりおいしくしてくれるという説もあります」
じゃあ、ごはんを我慢してから食べたときのあの幸福感はいったい? どうやら脳内では幸福を感じる物質が分泌されているとう。
「すごくお腹が空いたときにご飯を食べると、それに対応してより多くのドーパミンが分泌されるという話があります。ドーパミンは脳内の神経伝達物質の1つで、喜びや満足感を感じる一因となるものです」とギルモアさん。
「空腹時にご飯を食べるとより幸福感を感じるのは、このドーパミンの分泌の増加によるものかもしれません」
たとえば売れてる歌手が、ライブにわざと30分遅れて登場して、観客のテンションをより高くするのも同じような理論。
「さらに空腹時は、食事をより楽しみにしていて、準備万端の状態といえるので、何も考えずに機械的に食べるときとは違うはずです。」とキンボールさんは言う。
「そういうときのはじめの何口かは、何を食べてもすごくおいしく感じるもの。そのあとは目の前のお皿にあるものをただ食べるだけの動作に変わります」
さらにキンボールさんは、空腹なのに食事を我慢するという自制心から得られる達成感についても解説してくれた。場合によっては、体に良くない習慣につながってしまう可能性もあるとか。
「待つことによって自分の意思や自制の力を感じていい気分になるかもしれませんが、たまにやりすぎる人がいるので注意が必要です。自分にとってちょうどいいバランスを見つけ、不規則な食事にならないようにしましょう」
空腹になるまで待つのは体に悪いの?
驚くべきことに、栄養士たちはこの食べ方を否定しなかった!
「食事の時間がきたから食べるのではなく、体が食べ物を欲するまで待つというのは、体の状態に耳を傾けているということ。胃や脳は私たちに語りかけてくれます。自分たちの体の状態から、いつ食べるべきか判断できるはずです」とキンボールさん。
とはいえ、食べる気分にならなくても、お腹が空くのを待たずに定期的に食事を摂るべきじゃないの? 代謝を上げるためにも朝起きてから1時間以内に食べるのがいい、と聞いたことがあるかもしれないけれど、7時にご飯を食べる気分にならない人も少なくない。
「体が空腹を感じないのには、理由があるはずです。そんなときに無理をする必要はないといえます。」と、ギルモアさんは言う。「むしろ体に悪いかもしれません。時計なんかより体が一番分かっているはずですから」とつけ加えた。
ただし、お腹が空いたからといって不健康な食事に手を出してしまうのはよくなさそう。体がエネルギーを必要として炭水化物に飛びついてしまうこともあるし、それで罪悪感を感じてしまうかも。
「食事を我慢しすぎると、目の前のものなら何でも食べてしまう可能性があります。健康的なスナックを持ち歩くことで、そういった誘惑を避けるのがいいでしょう」とギルモアさん。
こんなときのためにも、バナナを持ち歩くのはいい選択かも!
original text : Kaitlin Menza translation:Yumi Kawamura photo : Getty Images