人に歴史あり。バスケにスーパースターあり。スーパースターにシグネチャーモデルあり。シグネチャーモデルにBOXあり!
新型コロナウイルス感染予防対策でステイホームされている皆さんが少しでも楽しんでいただけるように、今回からしばらくは、1992年のアトランタ五輪で一世を風靡した“ドリームチーム”のメンバーのBOXシリーズをお届けします。
第2回でパトリック・ユーイングの「ECLIPS」を紹介しましたが、アトランタ五輪の第2弾はみんな大好きマイケル・ジョーダンの「AIR JORDAN Ⅶ」(エア・ジョーダン7)。そのBOXのお話です。
ジョーダンは、1984年シカゴ・ブルズにドラフト3位で指名され、チームを6回の優勝に導いたNBA史上最高のスーパースターです。先日、ブルズでのラストシーズンを追いかけたドキュメンタリー“ザ・ラストダンス”がNetflixで公開になり、若いファンはジョーダンのプレーを初めて見た人もいると思います。
「AIR JORDAN Ⅶ」は、世の中にエア・ジョーダンブームを巻き起こした「JORDAN V」(5)、91年の初優勝を支えたVI(6)に続くモデルとして登場しました。
レザーでしっかりと覆われた前作と大きく異なっていたのは、シャープなフォルムを実現させた、薄く柔らかい軽量化されたデザイン設計でした。ハイテクブームによって重量感のあるバッシュから一気に方向転換し、イメージを一新させたNIKEの手腕は見事としか言いようがありません。
その人気を不動のものとしたのが92年に開催されたバルセロナオリンピックでした。
カラーリングは赤・白・紺・金を施したUSAカラー。NBAでは、自身の背番号23をヒールに施していましたが、こちらは代表での9番が入っています。30年近く前のバッシュですが、これまで作られたどのコラボモデルよりも美しく、世界中にバッシュの魅力を伝えた歴史的な1足だと思います。
ちなみに、当時の国際ルールでは好きな番号がつけられなかったため、背番号9番と11番(漫画「スラムダンク」の流川楓の背番号)が、人気番号になりました。
BOXは上蓋と下箱が繋がった一体型です。画像は上蓋と下箱が一体であるところを見せたいので、あえてジャンプマンマークは上下逆になっています。若干マット調で漆の生乾きのような黒い上蓋は、開くときに指の指紋がついてしまうほどの滑らかさと繊細さが同居しています。
そして、中央に鎮座している深いトゥルーレッドのジャンプマンマークは、見る者の心を鷲掴みにします。シンプルかつアイコニックなグラフィックは、彼の所属チームのブルズを連想させるとともに、Back to back(2連覇)を達成した王者の風格を感じさせます。
下箱は「AIR JORDAN Ⅲ」からシリーズの重要なデザイン要素となったセメント模様が施され、唯一無二の特別感を演出。個人的にはシリーズを象徴するBOXデザインの完成形だと思っています。
ただ、オリンピックという世界中が注目する大舞台、しかも初代ドリームチームで履いたモデルのBOXなのに、デザインは至って普通です。
当時からイケイケのNIKEが手抜きしたのか?それともあえて何もしなかったのか?今となっては知る由もありませんが、発売からすぐに完売し、世界的な話題にもなった超ヒット作ですから、BOXはこれで十分だったのでしょう。
文●西塚克之
【著者プロフィール】
西塚“DUKA”克之/日本相撲協会公式キャラクター「ハッキヨイ!せきトリくん」の作者として知られる人気イラストレーター。入手困難なグッズやバッシュを多数所有する収集家でもあり、インスタグラム(@dukas_cafe)では、自身のシューズコレクションを公開中。ダンクシュートでは名作シューズ列伝『SOLE&SOUL』を連載している。
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