犬の便(ウンチ)は“健康のバロメーター”ともいわれ、下痢をしているときは不調が隠れている恐れがあります。今回は、犬の下痢の種類や原因、危険度の高い下痢の特徴について解説します。治療法や対処法、予防法もご紹介するので参考にしてくださいね。
目次
犬の下痢とは
犬の下痢の原因
危険度の高い犬の下痢の特徴
犬の下痢の動物病院での治療法
犬の下痢の自宅での対処法
元気があっても長引く場合は動物病院へ
犬の下痢とは
引用元:getty
そもそも犬の下痢とは、どんな状態の便のことを指すのでしょうか。
正常な便と下痢の違いとは
犬の健康的な便は、バナナのような形をしていてつやがあり、人が手で掴めるくらいの程よい固さをしています。一方、下痢とは便の中の水分が何らかの原因によって増え、柔らかくなった状態です。下痢は便の柔らかさの程度によって、以下のように種類分けすることができます。
便の硬さによる下痢の種類分け
◆軟便:形はあって掴めるが、いつもより水分が多く柔らかい便
◆泥状便:形はなく泥のような状態の便
◆水様便:ほぼ水のような状態の便
軟便の場合は、大きな問題がないことが多いですが、続く場合は獣医師に相談してください。
下痢は通常の便の色(こげ茶色~黄土色)をしたもの以外にも、以下のような色をしていることがあります。
便の色による下痢の種類分け
◆白色便:グレーや白っぽい薄い色をした便
◆タール便:黒いドロドロとした便(血便)
◆赤い便:便に赤い血液が混じっている便(血便)
◆粘血便:便にゼリー状の粘液や血液が混じる便(血便)
上記のような色の下痢が出ている場合は、病気が関係しているなど危険度が高い下痢の可能性があります。早めに動物病院で検査を受けるようにしてください。
犬が下痢をするときは大腸か小腸に問題がある?
犬が下痢になるときは、小腸か大腸どちらかに異常があります。このどちらに異常があるかによって、下痢の特徴は以下のように異なります。
◆小腸性下痢
小腸に問題がある場合、1回の便の量は多くなるものの、回数はいつもとあまり変わらないことが多く、形は軟便から水様便までさまざまです。長引くと体重減少などが見られます。
◆大腸性下痢
大腸に問題がある下痢なら、1回の便の量は普段と同じか少なめになり、回数が増えるのが特徴です。また、便がなかなか出ない「しぶり」が見られることがあり、便の形は軟便で粘液が混ざることも多いようです。
犬の下痢の原因
引用元:getty
では、犬の大腸や小腸に異常をきたす原因とは何なのでしょうか。
ドッグフードや食べ物
ドッグフードの切り替えタイミングで、便の状態に変化が見られることがあります。また、食物アレルギーが関係して下痢になるケースも。他にも、人のご飯をあげたり、ドッグフードやおやつを与えすぎたりするなど、いつもと違う食環境も下痢につながります。
環境の変化などによるストレス
季節の変わり目や引っ越し、ペットホテルに預けられるなど、普段と生活環境が変わると緊張やストレスを感じ、腸の機能が低下して下痢をすることがあります。環境の変化のみならず、犬は何かしらのストレスを感じると下痢などの症状が見られるので、注意してください。
寄生虫やウイルス
子犬によく見られるのが、寄生虫が原因の下痢です。子犬だけではなく高齢犬など、免疫力が低下している犬がかかると、重症化してしまうこともあるので注意が必要です。
また、犬パルボウイルスやコロナウイルスなど、ウイルスが原因で下痢を起こすことも。ほかにも、大腸菌やサルモネラ菌といった細菌性の下痢もあります。
内臓疾患
内臓になんらかの疾患を抱えていると、下痢の症状が見られます。下痢を起こす病気としては、膵炎や炎症性腸疾患(IBD)、消化管腫瘍などが挙げられます。
生まれつき下痢になりやすい犬もいる?
生まれつき消化管機能が弱いと、下痢になりやすくなります。また、アトピー性皮膚炎などアレルギー体質の犬は腸内環境が乱れやすいため、少しの体調の変化や、ドッグフードの原料などの影響を受けて、下痢をしやすい傾向にあるようです。
危険度の高い犬の下痢の特徴
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このように、一口に下痢といってもその原因はさまざまで、原因によっては危険度(緊急性)の高さも異なります。色や形状での危険度については冒頭でも触れましたが、ここでは、下痢の危険度を見分けるチェックポイントについて、もう少し詳しく見ていきましょう。
危険度の低い下痢のチェックポイント
・元気がある/食欲が変わらない
・嘔吐や腹痛など、その他の症状が見られない
上記に当てはまる場合、一過性の下痢の可能性が考えられるので、2~3日くらい様子を見てみてもよいでしょう。ただし、元気や食欲があっても下痢が3日以上続く場合は、動物病院で診てもらってください。
危険度の高い下痢のチェックポイント
・元気がない/食欲が低下している
・嘔吐や腹痛、震えなどその他の症状が見られる
・子犬・シニア犬である
・3日以上続く
上記に一つでも当てはまる場合は、なるべく早く動物病院を受診した方がよいでしょう。元気がなくぐったりしているなど、その他の症状が見られるときは、夜間でも救急にかかったほうが安心です。また、生後3ヶ月以下の子犬やシニア犬の場合は、たとえ元気があっても状態が急変しやすいので注意しましょう。
犬の下痢の動物病院での治療法
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動物病院での下痢の治療は、原因によって異なります。たとえば、寄生虫が原因で下痢をしている場合は、駆虫薬などで治療するのが一般的ですし、食物アレルギーが原因の場合は、低アレルゲンの療法食を処方されることもあるでしょう。また、腫瘍などが原因なら、手術が必要となるケースも考えられます。
まずはなぜ下痢をしているのか、問診や検査などによって原因を究明することが重要です。
動物病院へ行くときの注意点
犬は自分の体調について説明することができないので、下痢の診断や治療には、飼い主さんの観察が重要な手がかりになります。愛犬が下痢をしたら、元気や食欲はあるか、いつから・どのくらいの頻度で下痢をしているのか、下痢の形状や色などを観察し記録しておくとよいでしょう。
なお、動物病院へ行くときには、便をペットシーツなどに包み、ビニール袋に入れて持参すると、診察がスムーズに行えることがありますよ。
犬の下痢の自宅での対処法
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では、愛犬が下痢をしているとき、飼い主さんはどのような点に注意すればよいのでしょうか。
数日様子見をする場合の注意点
◆ご飯は少なめ/半日の絶食
愛犬に元気や食欲があり、数日間様子見をする場合は、ご飯をいつもより少なめに与えるか、半日ほど絶食させてみましょう。ただし、ご飯を抜くと胃液を戻してしまう犬もいるので、その場合はご飯を少量与えるようにしてください。また、食欲があるからとご飯をあげすぎると、回復が遅れてしまうことがあるので注意が必要です。
◆飼い主さんの判断で下痢止めを使うのはNG
下痢は原因によって、下痢止めを使った方がよい場合とそうではない場合があります。下痢止めを使用する場合は、必ず獣医師の判断に従うようにしてください。飼い主さんの判断で、市販の下痢止めなどの薬を使うのもNGです。
病院へ行った後の注意点
動物病院を受診し、自宅に帰ってからの飼い主さんの対応も重要です。薬が処方されたときは獣医師の指示通り与え、回復したからといって飼い主さんの判断で薬を中断することはやめてください。
また、ストレスが原因の可能性がある場合は、何が愛犬のストレスになっているのか生活を振り返り、生活環境を見直すことも大切です。
完全に通常の便に戻るまでは、しっかりと愛犬の様子を観察し、異変が見られたらすぐに動物病院へかかってください。
元気があっても長引く場合は動物病院へ
引用元:getty
このように犬は、ウイルスや病気、ストレスなどのさまざまな要因によって、腸内環境に異常をきたし、下痢になることがわかりました。
感染症が原因の場合は、定期的なワクチンの接種や、予防薬の投与によって予防できるものもたくさんあります。また、毎年の健康診断は、下痢を症状とする病気の早期発見につながるので、積極的に受けさせるようにしましょう。ほかにも、乳酸菌サプリメントなどを取り入れて、愛犬の腸内環境を整える習慣をつけるのも、下痢予防につながるかもしれませんね。
愛犬が下痢をすると心配になりますが、症状をしっかり観察するなど落ち着いて対処することが大切です。また、少しでも不安が残る場合は、かかりつけの獣医師に相談するようにしましょう。
参考/「いぬのきもち」2017年6月『危険な硬さ・色がわかる2大スケールつき 愛犬のウンチで健康チェック!』(監修:東京動物医療センター副院長 南直秀先生)
監修/いぬのきもち相談室獣医師
文/hasebe
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。