『防災教室 身の守りかたがわかる本』(理論社)は、子どもにもわかりやすいイラストや写真を使って防災の知識がまとめられた1冊。著者は防災士・災害食専門員として活動する今泉マユ子さん。東日本大震災を体験し、子どもの命を守るためには、親が守るのではなく子どもが自分で身を守れることが大事だと気づいたといいます。いつ、どんな状況でやってくるかわからない災害。大震災から8年が経とうとする今、親子で防災について学んでみませんか。
■地震発生! 0分後、10分後、それぞれ何をすべきか答えられますか?
地震発生後の行動について、どのタイミングで何が必要なのか、すぐ答えられるでしょうか。本書では、わかりやすく詳細にわたる知識が紹介されています。
このように順を追ってやるべきことを教えてくれます。状況は常に変わりますので、これはあくまでも目安。ですが、地震は起きた瞬間だけでなく余震や火災などの危険が次々と迫ってくることから、順序に応じた行動が必要になるといいます。
本書で紹介される災害は地震だけでなく、台風、大雨、土砂災害など多岐にわたります。災害に遭う前にできることや、災害後の避難先で体調をくずさないためにできる行動なども紹介されており、“防災”とは災害前後のことまで通して考えてはじめて成り立つものだと気づかされます。お子さんが避難訓練だけでは得られなかった知識も、十分にカバーしてくれるでしょう。
■興味を示さないお子さんには「防災さんぽ」のチャレンジを
防災には、知識を蓄えるだけでなく、その場の危険に応じて行動できる対応力を身につけることも大事。そのためには、実際に体験しながら覚えるのがいちばんだといいます。
子ども同士や親子でできる防災体験として紹介されているのが「防災さんぽ」です。自宅や学校などのよく行く場所から避難場所までの道のりを書いた「防災マップ」を作り、その道を実際に歩いてみましょう。くずれそうなブロック塀などがあれば、「地震でゆれたらどうなるかな?」と話し合い、あぶないと思ったことをマップにチェック。公衆電話や消火器がある場所もマークしておきましょう。マップを見ながら繰り返し練習することで、いざというときにもすぐに行動できるようになります。
防災アイデアは他にもあります。水道が使えない生活を体験しておく「断水ごっこ」では実際に水道が止まったときに備えるべき道具がわかりますし、災害食をためしに食べてみると、非常食の開け方が意外と難しいことに気づくかもしれません。本書は子どもの興味を引くようなアイデアばかりで、今までは防災に興味を示してくれなかったというお子さんにも最適でしょう。
■“知っているつもり”の知識をきちんとおさらい。いざという時に役立つ防災ガイド
災害で起こりうる出来事を細かく想定し、あらゆる角度から「命を守るための行動」を教えてくれる本書。必要な情報がシンプルにまとめられているので、お子さんの「知りたい」という知識欲も満たしてくれます。「1冊まるごと暗記したよ!」なんて積極的に学んでくれそう。時には親子で言葉を交わしながら「おうちならどの場所に逃げるのがいいかな」など、具体的なアイデアを出しあうのも良いでしょう。
もしかしたら、防災について身近に感じているのは、大人より子どものほうかもしれません。子どもたちは学校などで定期的に避難訓練を受けているからです。本書ではそんな子どもたちに「みなさんには防災リーダーになってほしい」と呼びかけています。防災について知っている人が多ければ多いほど、守れる命も増えるはずです。この本で得た知識を、他の家族やお友だちに教えてあげてもいいですね。あなたのお子さんも防災リーダーに!
災害では“知っているつもり”が命取りになってしまいます。うろ覚えしていた知識を丁寧に正しく説明してくれるところも本書の良さです。大人もまた多くのことを学べるでしょう。「生きていれば必ず会える」と熱くメッセージを送る著者の思いが、本書のそこかしこに感じられます。お子さんや家族の命を守るために! いざという時のガイドとして役立つ、防災グッズとともに備えておきたい1冊です。
文=吉田有希
『防災教室 身の守りかたがわかる本』(今泉マユ子/理論社)
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