cat_12_issue_oa-davincinews oa-davincinews_0_5368777d9cad_「好き」ということばでセックスの負担をかけ合うのはやめにしよう。AV男優・一徹さんインタビュー 5368777d9cad 0

「好き」ということばでセックスの負担をかけ合うのはやめにしよう。AV男優・一徹さんインタビュー

2019年9月3日 19:00 ダ・ヴィンチニュース

「あ、そのスマホケース、かわいいですね」

 インタビューをはじめようと思った矢先、唐突にそう言われて戸惑った。いや、ドキッとした。目の前にいたのは、人気AV男優の一徹さん。まるで少年のような笑顔を浮かべ、ぼくの持つスマホケースを見つめている。やがて、その目線がこちらに向く。

 あぁ、一徹さんがみんなに愛される理由がわかったかもしれない――。まだ一言、二言しか言葉を交わしていないにもかかわらず、そう思った。どこにいたって飾らず、素直で、正直者。だからこそ、聞いてみたい。どうして、『セックスのほんとう』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)という著書を出そうと思ったのか。

■セックスのリアルを伝えていくことが、これからの自分の役割

 本書は、一徹さんが「セックスのリアル」について、等身大の言葉で綴った一冊だ。

 ページを開くと、顔射や潮吹き、中イキなど、ストレートなAV用語が並んでいる。しかし、それらはセンセーショナルさを演出するために使われているわけではない。むしろ、その逆。これらの単語から連想される「セックスへの思い込み」をぶち壊そうとしているのだ。

 そう、セックスには多分に思い込みが含まれている。それはなぜか。ぼくら男性陣が、AV上の演出を「セックスのお手本」としてきたからだ。そして、それが男女のすれ違いという哀しい不幸につながっている。一徹さんは、それをあらためるべく、筆を執った。

 しかし、現役のAV男優が、AVのイメージを壊すような一冊を書くことに躊躇いはなかったのだろうか。

「たとえば、『アウトレイジ』のようなバイオレンス映画を観ても、それを真似しようとは思わないじゃないですか。劇中で人が殺されていても、完全なフィクションだとわかっているわけで。それと一緒で、ぼくらもAVをフィクション、ファンタジーとして作っているんです。それを観るのは、ある程度分別のついた大人なので、エンタメとして楽しんでもらおう、と。でも、女性向けの作品に出るようになってから、いろんなお手紙をいただくようになったんです。そこには女性が抱えるセックスの不満などが書かれていて…。もしかしたら、AVが悪影響を与えている側面もあるかもしれないと、それまで自分がやってきたことに対する罪悪感のようなものも覚えたんです」(一徹さん、以下同)

 AVはファンタジーである。画面の向こう側で気持ちよさそうにしている女優さんも、演技をしているのだ。けれど、多くの男性はそれを真に受けてしまう。そして、AVで目にした行為を、現実のセックスに持ち込む。それが女性の喜びにつながると信じて。

 そんなAVに出演してきた一徹さんは、自らの影響力も踏まえ、「既存のセックス観」を変えるべく活動をスタートさせた。

「いま、『RINGTREE』というレーベルを立ち上げて、よりナチュラルなAVを作っているんです。これまでのものはどうしてもニーズに合わせた過剰な演出があったんですけど、よく考えてみると不自然なんですよね。変わった体位をしてみたり、終わった後、ひとりで女の子がはぁはぁ言っていたり。そういったファンタジー要素を限りなく排除したAVを作ることで、正しいセックスのイメージが広まったらいいな、と思っています。そして、『セックスのほんとう』を書いたのも、その一環だったんです」

 ただし、と一徹さんは続ける。

「いくらAVがファンタジーだとしても、影響を受けてしまうのは仕方ないと思うんです。そもそも、男性側も不安なんですよ。実際、どんなセックスをすればいいのか教えてもらう機会もないので、正解がわからない。だから、AVで観た気持ちよさそうなことを試してみる。それに対して、女性側も正解を知らないし、仮に違っていたとしても言葉にできない。性のことって人格にまで結びついてしまうので、なかなか否定できないんです。つまり、セックスの現場では男女がお互いを思いやるからこその“哀しいすれ違い”が起きているんですよ」

■「好きだから」「愛しているから」を免罪符にしてはいけない

 セックスにおける、哀しいすれ違い。それは「好きなんだから」「愛しているんだから」という好意を免罪符にすることでも生まれてしまうという。

「『好きだから、ゴムをつけなくてもいいよね?』とか、『好きだから、顔に精子をかけても受け入れてくれるよね?』とか、好きという気持ちを盾にする人は多いと思います。そして、女性側も好きだからこそそれを拒否できない。でも、セックスと好きっていう気持ちを一緒くたにして考える必要なんてないと思うんです。それに、この問題は女性側にも言えます。『好きなのにどうして連絡してくれないの?』とかって、よく言いますよね? 好きというロマンティックな感情をもとにした主義主張は男女関係なく存在していて、でも、そろそろ“好き”というマジックワードでお互いに負担をかけ合うのはやめた方がいいと思うんですよ」

 そして、このすれ違いの最たるものが、ここ数年問題視されている「性的同意」ではないだろうか。本来、セックスというものは双方の同意があって、はじめて成り立つもの。しかし、その「同意」に対する男女間の考え方の違いが問題になっている。

 たとえば、楽しいデートの後、ふたりでホテルに泊まったからといって、その事実がそのままセックスを許可したこととイコールにはならないということだ。相手が本当にセックスに同意してくれているのかを見極めないと、レイプ問題に発展してしまう。だからこそ、男女ともに、相手の意志を慮ることが求められる。

「“性的同意”についてはここ1、2年で急速に広まってきた問題で、既存の価値観を変えるべく、草の根運動をしていかなければいけないと思っています。この問題については、男性側が胡座をかかせてもらっていたとも思うので。ただ、これは本当に難しい問題なんです。自分自身を含めて、より意識的に対応をしていかなければいけない時代になったんだと思います」

 SNSの発展に伴い、よりセックスの問題が可視化されやすい時代になった。その一方で、現状に窮屈さを感じている人は少なくないだろう。けれど、一徹さんは「諦めたくない」と前を向く。

「デリケートな問題が可視化されるようになって、生きづらさを感じる人も増えたかもしれません。でも、他者との関係を築くことを諦めたくない。だから、これまでタブーとされてきた性の話を、もっともっとしていかなければいけないと思うんです」

■セックスとはなにか――正直、わからない

 一徹さんのお話を伺っていると、現代社会が直面する問題に真正面から向き合っている印象を受ける。けれど、なかには、AV男優という一徹さんの肩書きだけを見て、「性産業に従事している人間がなにを言っているんだ」という差別意識をあらわにする人もいるのではないか。

 実際、そういった職業に就いた人たちへの偏見や差別は根強く残っている。先日、妊娠・出産を公表した元AV女優の蒼井そらさんに対し、SNS上では「子どもが可哀想」「子どもがいじめられる」という声が多数見られた。

 率直に言って、どうかと思う。「子どもがいじめられるから、AV女優は出産をするな」と言うのではなく、そもそもいじめをする子どもたちの意識を変える方が先だろう。そんなAV業界への差別問題を話題にしたとき、一徹さんはほんの少しさみしげな表情を見せ、口を開いた。

「蒼井そらさんの話題を目にしたときは、ぼく自身も胸が痛みました。彼女だけじゃなく、SNSで顔を出して活動しているAV業界の人たちは、みんな偏見に遭っていると思います。でも、ぼくはそこにイライラするよりも、こうして発信をするメリットを享受できていることに感謝をしているんです。もちろん、偏見や差別はなくなっていけばいいなと思いますけど、難しいのかもしれない…。結局、ぼく自身も含めてそうなんですけど、人間は困っている人を下に見てしまう機能がインストールされている生き物なんですよ。その本能的な部分をいかに理性で抑えられるのか。それがこれからの時代の課題かもしれないですね」

 さらに、性についてはっきり主張する女性を待ち受けている、セクハラ被害についてもこう断言する。

「AV業界の人に限らず、一般の女性でも性について発信をしていると、『この人は簡単にヤれるんだ』と思われてしまうみたいなんです。そして、突然、勃起した画像が送られてきたり、オフパコのお誘いが届いたりする。そこは誤解してほしくない。性の問題を真面目に話しているのと、エロ話をしているのとでは意味が違うんですよ。でも、残念ながらいまはそこが同一視されてしまっています。たとえば、助産師のシオリーヌさんは、YouTube上に性教育の動画をアップしているんですが、それが性的満足を促す動画だとみなされて収益化が一時的に停止されていたそうなんです。いまは収益化も再開されたそうですが、彼女はコンドームの付け方などを真面目に伝えているだけなのに、なぜか性的なコンテンツだとみなされる。男性側の意識もそうですが、そういう仕組み的な部分も変わっていかなければいけないと感じています」

 現代のセックスにまつわるさまざまな問題について、真っ直ぐな意見を述べてくれた一徹さん。最後に、一徹さんにとっての「セックスとはなにか」を聞いてみると、しばし沈黙した後に、ゆっくり話し出してくれた。
「ぼく自身、セックスを生業にしているので、ご飯を食べていく手段でもありますし、自分という存在を受け入れてくれた場所でもあります。ただ、それを度外視すると、相手を傷つける恐れがある行為でもあるので、掴みどころがない…。だから、正直、わからないです」

 正直、わからない――。セックスをそう表現した一徹さんは、やはり素直で正直な人だ。これまで何人もの女性と身体を重ねてきた一徹さんをもってしてもわからないのだ。ぼくら一般人が、セックスについて理解できていないのも当然だろう。

 でも、だからこそ、ぼくらは学んでいかなければいけない。セックスとはなにか、を。そこには答えなんてないのかもしれないし、時代背景や相手によって、その意味は異なっていくはずだ。ただし、それを追求することを諦めてはいけない。「セックスのほんとう」を知ることが、複雑化する現代における人間関係を良好なものにしてくれるカギとなるのだから。

取材・文=五十嵐 大 写真=後藤利江

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cat_12_issue_oa-davincinews oa-davincinews_0_d09e0c5d3217_都内某所、エリートサイコパスが集う会員制秘密クラブで起きたある事件とは―― d09e0c5d3217 0

都内某所、エリートサイコパスが集う会員制秘密クラブで起きたある事件とは――

2019年9月3日 19:00 ダ・ヴィンチニュース

 猟奇的な描写が読み手の好奇心をくすぐるミステリー小説は、数多く存在する。だが、『キリングクラブ』(石川智健/幻冬舎)ほど、“人間の闇”を美しく描いている作品には、これまで出会ったことがない。本作は単なるミステリー小説の枠に収まりきらないほど、強烈なインパクトを与えるものだ。

■サイコパスが集う秘密クラブに潜入、その中には――

 主人公はフリーライター兼パパラッチをしている、佳山藍子。藍子はある日、友人から東京都内にある会員制の秘密クラブ「キリングクラブ」で、時給2万円の給仕のアルバイトが募集されていることを聞く。

 好奇心旺盛な藍子は高額な時給にも惹かれるところがあり、早速「キリングクラブ」で働くことに。任された仕事は至って簡単でゲストに飲み物を運ぶ程度のものだったが、藍子はその場所には金と危険のすえた臭いが漂っていることに気づく。それもそのはず。実は「キリングクラブ」は、社会的に成功したエリートサイコパスが集う“楽園”だったのだ。

 物語は「キリングクラブ」に通っていた会員の青柳が生きたまま開頭され、扁桃体を抜き取られたことを機に、さらに怪しげな方向に転がっていく。

“扁桃体は感情を掌る部位だ。それを選んで切除したということは青柳がサイコパスだと知っていた可能性がある。”

 藍子は、事件をそのように分析する「キリングクラブ」のトラブル対処要員で刑事でもある辻町と一緒に、犯人捜しをすることに…。

 しかし、事件はそれだけでは終わらず、同じように開頭され、扁桃体が抜き取られた第2、第3の殺人が発生する。藍子と辻町は、猟奇的な連続殺人に巻き込まれ、背景に隠された驚愕の真実を知ることになるのだが…。

 こう流れを記すと、本作はサイコパスを追い詰めるミステリー小説なのだと考える方も多いだろう。だが、本当の凄みはもっと深いところにある。主人公である藍子を含め、登場人物全員が、常人とは違うダークな価値観や闇を抱えているからだ。

 なぜ犯人は扁桃体という部位にこだわり、殺人を重ねていったのか。その理由が判明する時、読み手のあなたは“人の感情”について今までよりもっと深く考えるようになるはずだ。

■綺麗事は一切抜き、サイコ的思考にしびれる!

 正義と悪がぶつかり合い、善人が勝利する――そんなストーリー展開には飽きたという人の心に、本作の残酷で美しい文章は響くだろう。作中で描かれている「キリングクラブ」に集う会員たちは、サイコパスの中でもごくわずかのエリートサイコパスであり、金と権力にしか興味を示さない。その常軌を逸した思考に読者は驚き、同時にどこかワクワクさせられてしまうのだ。

 他人を蛆虫呼ばわりする会社経営者、法廷を遊び場だと考える弁護士、患者を自分の作品だと思っている脳外科医など、登場人物たちはみな歪んだ価値観を持っている。しかし、彼らは常人離れしているが、個性的である分、人間味も感じられる。

 サイコパスである彼らは、自分たちのことをこうも語る。

“サイコパスは、高性能の最高級スポーツカーのようなものだと言われていた。そして、このスポーツカーを上手く運転できる精神の持ち主かどうかが、成功者と“危険地帯”との分かれ道なのだ。”

 この言葉を目にすると、天才と狂人はまさに紙一重なのだと思えてならない。

「キリングクラブ」は犯罪の香りが立ち込める危うい場所だ。だが、会員たちにとっては世界にたったひとつの楽園でもある。

“人生がつまらなかった。いっそのこと、火の中に飛び込みたいという衝動を強く抱いていた。ただ、ここに来て、ようやく猿山の中で人と出会えたような、そんな安堵を覚えた。捕食対象ではなく、友人と呼べるものを初めて得ることができた。”
“理解者がいることが、殺人衝動を抑えるもっとも有効的な手段だった。”

 本作はミステリー小説というフィクションであるが、「人殺し(キリング)をしないために、大儲け(キリング)をしている」というエリートサイコパスたちの心の脆さも描いている。それを知ると、サイコパスの抱える秘密や苦しみにも思いを馳せたくなってしまうから不思議だ。

文=古川諭香

『キリングクラブ』(石川智健/幻冬舎)

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cat_12_issue_oa-davincinews oa-davincinews_0_0ba5ae63ee13_「素晴らしい絆で泣けた」「想像の裏をかく展開」“男女逆転”大河ロマン『大奥』の最新巻に反響続出! 0ba5ae63ee13 0

「素晴らしい絆で泣けた」「想像の裏をかく展開」“男女逆転”大河ロマン『大奥』の最新巻に反響続出!

2019年9月3日 17:30 ダ・ヴィンチニュース

 男女が“逆転”した世界を描いた大ヒットマンガ『大奥』(白泉社)の17巻が、2019年8月28日(水)に発売された。佳境を迎えつつある壮大な歴史物語に、読者からは「まさに想像の裏をかく展開。次の新刊が待ち遠しい」「連載も追ってるけど単行本で一気に読むと勢いがすごい。徳川家茂をここまで面白く描けるなんて…」「最新刊も身もだえするほど面白い!」と絶賛の声が相次いでいる。

『大奥』17巻(よしながふみ/白泉社)
 同作は2004年から少女マンガ雑誌『MELODY』で連載されているSF大河ロマン。物語の舞台となるのは男子のみを襲う謎の疫病が国中に流行り、男子の数が激減した江戸時代。女性の将軍に仕える美男三千人が集められた「大奥」で起こる様々な事件が、史実とフィクションを織り交ぜながら描かれていく。

 2010年には海外のSF賞「ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア賞」を日本のコミックとして初めて受賞した他、「手塚治虫文化賞」マンガ大賞など数々の賞を獲得。実写映画などのメディアミックスも展開され、2012年には堺雅人が主演を務めたテレビドラマ版も話題を呼んだ。

 最新刊では徳川14代将軍・家茂とその正室、和宮を中心とした物語が展開することに。2人の心の距離は徐々に近づいていくものの、幕府は依然として荒波の中。そして家茂は攘夷決行のために上洛を余儀なくされる―。

 “同性の夫婦”という現代的なテーマにも繋がる家茂と和宮との関係に、ネット上では「2人が信頼と愛を紡いでいく姿に心を打たれる」「家茂と和宮の関係が素晴らしい絆で、ただただ泣けた」「家茂と和宮の関係性が切なくも可愛くて好きなんだけど、この先の展開が不安すぎる。どうか幸せになってほしい…」と大きな反響が上がっているようだ。

 またコミックスと同日に発売された『MELODY』10月号では『大奥』が表紙となり、17巻の着せかえカバーとして使用できる「『大奥』着せかえブックカバー」が付録に登場。最新刊の続きとなるエピソードも掲載され、「家茂との子を作る!」と言い出した和宮と困惑する周囲の面々のその後が描かれている。

『MELODY』2019年10月号(白泉社)

 動乱の時代にあって、「大奥」はどんな変化を迎えていくのか。怒涛の展開からこの先も目を離せない!

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cat_12_issue_oa-davincinews oa-davincinews_0_48d195843dee_あなたは何問答えられる!?  “ごみ清掃芸人”滝沢秀一の知っているようで知らない「ごみの話」 48d195843dee 0

あなたは何問答えられる!?  “ごみ清掃芸人”滝沢秀一の知っているようで知らない「ごみの話」

2019年9月3日 11:35 ダ・ヴィンチニュース

 生活していると必ず毎日出てくるごみ。紙くず、ペットボトルといったものから、ビン、家電製品まで、本当にありとあらゆるごみを出していますが、皆さんはごみの分別、ちゃんとできていますか? これは燃えそうだから可燃ごみでしょと言って、自分基準のあいまいな分別になっていませんか?

 そんな人は『ごみ育 日本一楽しいごみ分別の本』(滝沢秀一/太田出版)でもう一度ごみ分別方法を勉強し直してみましょう。本書はお笑い芸人でありながら、ごみ清掃員歴7年の“ごみ清掃芸人”である著者が、子どもにも読みやすいようにクイズ形式でごみの分別について紹介しています。

 日々のごみ分別を楽しく学べるだけでなく、今後の環境問題まで考えさせられる、まさに画期的なためになる1冊。そこで今回は、この中の初級、中級、応用から1問ずつ出題してみます。

1、<初級編>魚肉ソーセージは何ごみ?(P.15)

 子どものころから大好きな魚肉ソーセージ。あのビニールの部分をむきながら食べるということ自体が斬新で楽しかったりします。でも、よくよく見れば先端に留め金として金属がついています。これを捨てるときは何ごみで捨てればいいのでしょうか?

 答えは、「可燃ごみ」。先端の金属部分は燃えないので、ハサミなどで切って不燃ごみとして捨てることが理想ではあるけれど、素材の9割が可燃ごみだった場合は、1割不燃ごみが付いていたとしても可燃ごみで出せるんだとか。この基準は初耳でした。同じような例としては、ベルトや洋服に金属ボタンが付いていても可燃ごみと出して大丈夫だそうです。

2、<中級編>中が汚れているソースの空き容器は何ごみ?(P.41)

 料理を作る家庭なら必ず調味料があると思いますが、例えば使い終わったソースの容器は何ごみで出すと思いますか? ちなみに、容器には“プラ”と書かれています。

 答えは、「可燃ごみ」。一見“プラ”と書かれていたら、プラスチック資源の日に出したくなりますが、中が汚れているプラスチックはリサイクルには適しません。リサイクルに汚れは大敵なので、この場合は可燃ごみとして出すようにしましょう。せっかくリサイクルできるならと一生懸命中身を洗ったとしても、結果として水を汚すことになってしまうので、ここは無理せず可燃ごみとして出すことをおすすめします。

3、<応用編>せんべいや海苔と一緒に入っている乾燥剤は何ごみ?(P.95)

 せんべいや海苔などを買うと、「これは食べられません」と書かれた袋が入っていたりしますよね。これはせんべいや海苔が開封したあともしけらないようにする働きがある乾燥剤と呼ばれるものです。さてこれは何ごみでしょうか?

 答えは、「不燃ごみ」。見た目は紙っぽい袋に入っているので可燃ごみと判断してしまいそうですが、乾燥剤は一定量以上の水分が加わると熱も持つ性質があるため、もしこれを水気がある可燃ごみと一緒の袋に入れてしまうと発火してしまう危険などがあるため、「不燃ごみ」扱いになっているんだとか。確かにこれは応用編だけあって、かなり難易度が高い問題。

 ここで紹介した以外にも、マンションのチラシや歯ブラシ、ビンタイプのマニキュアなど、思わずうーんと考え込んでしまうような分別問題もあったりして、大人でも勉強になる情報がたくさん紹介されています。

 ちなみに、1回に1家庭から出せるごみの量が45リットルの袋で3袋までって知っていましたか? もし引っ越しなどでごみが大量に出るときには、事前に清掃事務所に電話しないといけないことをお忘れなく!

日ごろから分別を守り、ごみを出さない生活へ

 最近ではSDGsという言葉もよく耳にするようになり、お店でのビニール袋の有料化や、プラスチックストロー廃止など、少しずつではありますが社会的により地球環境への取り組みが強化されつつあります。でも、個々の家庭ごみに目を向けてみると、まだまだ意識は遠く、ついつい便利なものを購入して、間違った分別のままごみを出すということが起こり続けています。本書にもありましたが、ごみの最終処分場はあと50年でいっぱいになると言われています。50年というと、自分の子ども世代が大人になったときにそれを迎えてしまうということです。そうならないためにも、改めて正しいごみ分別の知識を身に付け、いかにごみを出さないような生活にするかを各家庭ごとに本気で考え、すぐに行動していかなければいけない時期になってきています。

文=JUNKO

『ごみ育 日本一楽しいごみ分別の本』(滝沢秀一/太田出版)

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cat_12_issue_oa-davincinews oa-davincinews_0_78a847d0e708_40代から「求められる人」になるために、能力よりも大事なことは? 78a847d0e708 0

40代から「求められる人」になるために、能力よりも大事なことは?

2019年9月3日 06:30 ダ・ヴィンチニュース

 人生80年時代をすでに超えて、人生100年時代が到来するともいわれる。そう考えると、異称が初老の40歳ではあるものの、まだ折り返し地点にすら到達していない。人生半ば。これからさらに高みを目指そうと思いを秘めている40代もいるだろう。

■40代は能力より信用で勝負

 しかし、20代なら勢いや元気といった若さで押し通せても、40代になるとそうはいかない。周囲は40代に、若さの代わりとして「信用」を求める。『いくつになっても「求められる人」の小さな習慣』(中谷彰宏/青春出版社)は、40代からの信用の大切さを説く。

ミスをした時に、許されるかどうかは信用の差になります。
えこひいきされるためには、信用をつくっていくことです。

 本書は、40代から転職、再就職、再雇用を希望したり、他者から求められたりするためには、まず「信用がある人」を目指すべきだ、と述べている。人生の後半戦で成功するのは、必ずしも「能力がある人」ではないのだ。

 飲みニケーションという文化が岐路に立たされている。もしかしたら、就職氷河期で社会に冷遇された40歳前後の少なくない人々は、他の世代以上に飲みニケーションを大切にして、世渡り上手に努めてきたかもしれない。懇親会、反省会に積極的に参加するのは当たり前。2次会、3次会まで付き合って、周囲の信用を得てきた。しかし、本書は、そんな信用の集め方を40代からは変えるべきだ、としている。

 本書によると、「求められない人」は、パーティーに遅れてやってきて、最後までいる。そして、自らが2次会に参加するだけでなく、「もう帰るの?」と言って周囲も巻き込もうとする。一見、人の繋がりを大切にしようとするがゆえの言動に見えるが、本書は手厳しい。

 パーティーは前半と後半で層が違う、と本書は述べる。そして、「求められる人」は忙しいため、1次会でパッと帰る。「求められない人」ほど、自分が待っているのが寂しいためわざと遅れてやってきて、忙しくないためダラダラと遅くまでいる。ダラダラと遅くまでいると、ダラダラした人脈ができ、結果、求められない人たちの人脈に巻き込まれてしまう。

■パーティーでも仕事でも“前”が肝心

 これと似たような例は、仕事の時間にも見ることができる。日本人は、残業が大好きだ。しかし、本書によると、パーティーでも仕事でも“後ろ”は効率が悪い。残業をするのなら、早朝にその分の仕事を回すのが「求められる人」になるための近道だ、という。

一流は、朝に仕事をしている人たちです。
夜は、二流が仕事をしている時間です。

 40代の信用は社会での20年間以上の蓄積ではある。しかし、人生80年、100年時代といわれるこれからの日本。求められる人を意識した行動にチェンジさせるタイミングは、まだ遅くないとも考えられそうだ。

文=ルートつつみ

『いくつになっても「求められる人」の小さな習慣』(中谷彰宏/青春出版社)

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cat_12_issue_oa-davincinews oa-davincinews_0_71dfca3419b9_「僕はやさしい人間です」と答える殺人少年…“境界知能”の子供たちが非行に走る理由 71dfca3419b9 0

「僕はやさしい人間です」と答える殺人少年…“境界知能”の子供たちが非行に走る理由

2019年9月3日 06:30 ダ・ヴィンチニュース

『ケーキの切れない非行少年たち』(宮口幸治/新潮社)

 読者は非行少年(少女)に対してどんなイメージを持っているだろう。恐ろしいのは間違いないが、もっと彼らの内側の部分、たとえば「なぜ非行を繰り返しているのか?」という疑問を持ったことはないだろうか。

『ケーキの切れない非行少年たち』(宮口幸治/新潮社)を読めば、彼らへの見方が一変するかもしれない。それだけ衝撃的な内容がここに書かれていた。著者は児童精神科医の宮口幸治さん。「この本を政治家や教育関係者、すべての親御さんに配って、どう対処すべきか日本中で考えてほしい」。本書を読み終えた私はそんな感想しか出てこない。ページをめくるたびに何度も言葉にならないため息がこぼれた。読み進めようとする手は、たびたび止まった。

■世の中のこと全てが歪んで見えている可能性がある


 とても当たり前だが、私たちは目で見て、耳で聞いて、物事をしっかりと理解して、ときに未来を予測して、行動している。これは認知というやつだ。目の前の物事をしっかり認知して理解して行動するから生活が成り立つ。

 しかし、この認知が弱ければどうなるだろう? 目の前のものを見る力がほかの人より弱くて、誰かの言葉を聞き取るのが苦手で、頭で深く「う~ん」と考えるのが得意じゃなければ…途端に生活が厳しくなる。日常が生きづらいものになる。

 たとえばそんな子どもたちは学校の勉強についていけるだろうか? 一般的な友達付き合いができるだろうか? もしできなければ、誰が助けてくれるのだろうか? 成人に満たない彼らに、どんな選択肢があっただろうか?

 著者の宮口さんは、医療少年院で非行少年たちと長く接してきた。そこで衝撃的な体験をする。あるとき少年に複雑な図形を模写させる機会があった。そこで彼が描いたのは、図と似ても似つかぬもの。別の少年には、ケーキのまるい円を描いて「どうすれば3人で分けることができる?」と問題を出してみた。ケーキを3等分するだけ。小学生でも解ける。しかしその少年は「う~ん」と悩みながらケーキを縦に切り、再び深く悩んだ。もう一度問題を出し直しても、同じことを繰り返した。結局この少年は、ケーキを3等分できなかった。

“世の中のこと全てが歪んで見えている可能性がある”

 宮口さんはそう悟ったそうだ。問題は、医療少年院にいる彼らがただの非行少年じゃないこと。強盗、強姦、殺人事件などを起こした中学生・高校生だ。そんな彼らに、簡単な足し算引き算、漢字の読み取り、図形模写、短い文章の復唱などができないケースが目立った。

 非行少年は、心の問題をこじらせて凶悪犯罪に走ったとはかぎらない。生活に支障の出る軽度な知的障害「境界知能」が非行を起こさせている可能性がある。

■「反省する」以前の問題で被害者や遺族が浮かばれない


 医療少年院では少年たちに更生を促す面接を行う。宮口さんはあるとき殺人を犯した少年と面接した。「自分はどんな人間だと思うか?」と聞いてみると、彼はこう答えた。「僕はやさしい人間です」。すべての読者が、この場面で目を見張るだろう。天を仰ぐかもしれない。

 宮口さんが、どんなところがやさしいのか続けて聞くと、「子どもやお年寄りにやさしい」とか「友達からやさしいと言われた」と少年は答える。そこでさらに「でも君は○○をして人が亡くなったよね? あれは殺人だけど、それでもやさしいの?」と聞くと、そこで少年は初めて「あー、やさしくないです」と返したそうだ。

“そこまで言わないと気づかない”。本書に記された言葉に、文字を追い続けた私は愕然とした。彼らには、自分の行ったことを理解し、反省し、葛藤し、これからどうするかを思い悩みながら答えを出す「力」がないのだ。「反省する」以前の問題だ。これでは被害者や遺族が浮かばれない。

■非行少年の多くが“後先を考える力”に乏しい

 しかし非行少年だけを責めることもできない。許されない行為を犯したが、ある意味で彼らも被害者だからだ。宮口さんによると、非行少年には以下の共通点があるという。

・認知機能の弱さ……見たり聞いたり想像する力が弱い
・感情統制の弱さ……感情をコントロールするのが苦手。すぐにキレる
・融通の利かなさ……何でも思いつきでやってしまう。予想外のことに弱い
・不適切な自己評価……自分の問題点が分からない。自信があり過ぎる、なさ過ぎる
・対人スキルの乏しさ……人とのコミュニケーションが苦手

 これに加えてもう1つ、「身体的不器用さ……力加減ができない、体の使い方が不器用」があるそうだ。このような問題があると、当然学校生活に支障が出る。そこで適切な支援が受けられないと、イジメに遭ったり、先生から「単なる問題児」として扱われたりと、非行に走るきっかけが生じる。彼らは想像を絶するストレスを溜めこんでいることが多いのだ。

 宮口さんによると、非行少年の多くが“後先を考える力”が乏しいそうだ。つまり感情に任せた衝動的な行動が出やすい。誰からも理解されず、支援も受けられず、想像を絶するストレスを溜めこんだ彼らは、感情に任せてどんな行動に走るだろう。怒りに任せてイジメてきた相手を殺すかもしれない。お金が欲しくなって凶悪な強盗をするかもしれない。性行為がしたくで幼い少女に手を出すかもしれない。

 では、どうするべきだろう? どうすれば非行少年という被害者を生まず、その被害者が加害者になって、別の被害者を生む構図を打ち砕けるだろうか?

■非行少年は「忘れられた人々」「気づかれない子どもたち」


 本書の衝撃的な内容は続く。まだまだ続く。このあと宮口さんは、子どもたちを非行少年にしない「1日5分で日本を変えるメソッド」を解説している。その内容を読む限り、解決策として有効であるように感じた。しかしそれは、この問題に気づいた学校現場でしか行われないだろう。まずは日本全体に非行少年の本質的な問題を周知しなければならない。

「境界知能」は軽度の知的障害であるため、それほど問題視されない場合がある。しかし言い換えると、適切な支援が受けにくかったり、誰にも気づかれず健常者として扱われ、生きづらい日々を無理やり過ごすことになったりする可能性も秘めている。非行少年は、単なる問題児じゃない。本書に記された「忘れられた人々」「気づかれない子どもたち」という表現が嫌でも目に焼きついた。

 私たちは「忘れられた人々」に気づかなければならない。非行少年に対する一面的なイメージにメスを入れ、「気づかれない子どもたち」をしっかり見つめる社会をつくる必要がある。まだ非行に走る前の、「ケーキの切れない少年たち」をどうすれば救えるだろうか。

文=いのうえゆきひろ

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赤字経営のサンリオピューロランドに奇跡を起こした元専業主婦の人材育成術

2019年9月3日 06:30 ダ・ヴィンチニュース

『来場者4倍のV字回復! サンリオピューロランドの人づくり』(小巻亜矢/ダイヤモンド社)

 ハローキティやシナモロール、ポムポムプリンなど、国内だけでなく海外にも熱狂的ファンを持つ人気キャラクターで世界にKAWAIIブームを巻き起こしたサンリオ。しかし、近年の不況の影響で東京都多摩市にあるテーマパーク・サンリオピューロランドは赤字経営に陥っていた。その経営を2年で黒字に再建した女性館長がいる。彼女が行ったのは設備投資やリストラではなく、「みんななかよく」を掲げた人材育成だった。

『来場者4倍のV字回復! サンリオピューロランドの人づくり』(小巻亜矢/ダイヤモンド社)には、度重なる不幸や大病を患いながらも51歳で東京大学大学院に入学し、専業主婦からサンリオピューロランドの館長となった小巻亜矢さんが、如何にして廃園寸前の経営難を脱却したのかが描かれている。

 もともと結婚前はサンリオの社員だった小巻さんだが、久しぶりに遊びに訪れたサンリオピューロランドの実状に愕然とした。どこか暗く、スタッフに笑顔はなく、統一感がなく、レストランのメニューもパッとしない。すぐに問題点をまとめてサンリオの辻社長にレポートを送った。すると「君がやってみないか」と、顧問に大抜擢される。そこからが小巻さんの挑戦の始まりだった。

■社員の本音を引き出す「対話的自己論」


 スタッフはサンリオが好きで入社してきた人ばかり。やる気がないわけがない。経営が低迷した根本的な問題は社員のコミュニケーション不足だと気づいた。まずは全社員と面談を行い。仕事への思いや本音を聞き出した。実は小巻さんの専門は経営学などではなく、教育学。とくに「対話的自己論」と呼ぶ、自分の内なる声との向き合い方を模索する学問だ。面談でも「本当の自分だったらどうしたいですか?」と問いかけ社員の積極性を引き出した。自分の得意分野に問題を引き込んで解決する点がユニークだ。

■「やさしい話し方」と「あたたかな聴き方」


 加えてスタッフと話すときに注意したのが、「やさしい話し方」と「あたたかな聴き方」だ。「ゆっくり、わかりやすく」「相手の話を遮らない」「感謝の気持ちで話す」など、話を否定せずに聞く姿勢を心がけることで、次第にスタッフたちも活発に意見や提案を言うようになり、社内の雰囲気は少しずつ変わっていった。心の余裕が皆に笑顔を取り戻した。

■「部署横断型会議」


 続いて演出の統一にも着手した。以前は、例えばショーのメインカラーはオレンジ、限定グッズはピンクとバラバラで、レストランのメニューにも連動性を感じなかった。これはグッズを手掛ける販売部、イベントを展開する企画部、そして営業部や運営部などの連携が足りないせいだった。そこで部署ごとの代表者が集まって企画を話し合う「コンセプト会議」を導入した。部署の垣根を越えて一緒に議論することで、お互いが他の部署の仕事を理解することにも繋がった。

 その他にも、お金をかけない策を次々と打ち出すことで、サンリオピューロランドの経営はだんだん上向きはじめ、2年で来客者数4倍という快挙を成し遂げた。小巻さんのモットーは「みんななかよく」。これはサンリオの企業理念で、若き頃にサンリオから学んだことだった。

 どんな大企業でも経営が傾くと人材教育はおざなりになりがちだ。だが人材なくして会社は成り立たない。会社は人を育てる場所という小巻さんの人材育成こそが、会社経営のあるべき姿なのかもしれない。

文=愛咲優詩

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フランスの地方に学べ! 子育て世代が住みやすい街や村の魅力とは?

2019年9月3日 06:30 ダ・ヴィンチニュース

『フランスではなぜ子育て世代が地方に移住するのか: 小さな自治体に学ぶ生き残り戦略』(ヴァンソン藤井由実/学芸出版社)

 日本では少子高齢化が大きな社会問題となっています。とくに、少子化については将来の社会保障費の担い手不足の問題とも絡んで、早急な対策が必要です。このような少子化の主な指標に出生率があります。低迷する日本と違い、フランスは一時期落ち込んでいた出生率が見事に回復しました。これにはいくつかの理由がありますが、子育てしやすい環境を社会全体で培ってきた結果であるといわれています。

 ここで注意したほうがよいのは、子育てに優しい環境は、子どもを持つ家庭だけに関わる問題ではないという点です。親子の生活が充実していることだけではなく、より一般的に、女性が活躍しやすい社会でもあり、高齢者が住みやすい社会でもあるのです。とくにフランスではパリのような大都市圏より、地方都市や村落地域のほうがその環境に恵まれているため、移住を希望する子育て世代が増える傾向にあります。

 1980年代からフランスに住む著者による『フランスではなぜ子育て世代が地方に移住するのか: 小さな自治体に学ぶ生き残り戦略』(ヴァンソン藤井由実/学芸出版社)は、子育て環境についてのフランス社会の制度について、地方都市や村落の実例に基づいて鮮やかに解き明かしています。全体の構成は、日本社会の抱える問題点の指摘(第1章)から入り、フランスの地方が元気になるシステムの特徴(第2章)が述べられます。そして、過疎から抜け出し人口増に転じた5つの地方について、それらの対策の特徴が述べられる(第3~7章)のです。最後に、このようなフランスの地方から日本が何を学べるのか(第8章)が明確に示されます。

 それぞれの章では、簡潔でありながら具体的で客観的なデータをもとにした、高密度な内容が論じられています。叙述のスタイルには無駄がなく、まるで教科書を読んでいるような気持ちになるかもしれません。たとえば、日本の地方の衰退プロセスついて書かれた第1章では、戦後の都市政策の歴史的変遷について、コンパクトに構成された文章の中に鋭い指摘が見られます。第2章以降のフランスについて紹介される部分についても、一読すれば、地方行政の担当者の選出の仕組みとその意識について、日本との相違が明快にわかるのです。

 著者が取り上げる5つの事例についても、子育て環境とその地方に特徴的な施策が紹介され、地方活性化に役立つ代表的なモデルが網羅されています。たとえば、六角形をしたフランスのほぼ真ん中にある、中央高地の山間村ポンジボーの例では、子育て環境と同時に高齢者の支援策に注目するのです。また、フランス北西に位置する大西洋岸の漁村バシュルメールの例では、地場産業と観光業の関係について述べられます。バシュルメールとはほぼ点対称の位置にある、南仏の農村カドネの例では、移住してくる子育て世代への支援策の現状について知ることができるのです。

 このような村落での施策と同時に、中心市街地の再生についても目が向けられます。かつては賑わいを見せた商店街が衰退して、シャッターを閉じたままの店舗が目立つようになる「シャッター通り」問題はフランスにもあるのです。南西部にある人口2万人クラスのビアリッツ、西部の4万人クラスのサンブリューなど、規模に応じた施策の例が示されます。また、ベルギー国境に近い、北部のシャルルヴィルメジエールの首長は、マクロン第25代フランス大統領のかつての上司です。本書では最後の例として、この地で展開される斬新な活性化策も紹介されるのです。

 このような例に見られるフランスでの子育て環境改善の施策を日本の現状と比べてみると、両者はコインの裏と表のような関係にあることがわかります。つまり、日本の現状をひっくり返すと、対照的なフランスの魅力的な事例になるのです。ということは、ひっくり返せばよいわけです。もちろん、フランスの地方で上手くいったからといって、それがそのまま日本で通用するとは限らないでしょう。しかし、対照的な例を知ることで、現状の問題点と改善の方向性はわかるはずです。国民性の違いなどはたしかにありますが、本書から人口増加対策を通じた日本の地方都市や村落地域を活性化するヒントを得ることは充分にできるはずです。

文=sakurakopon

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cat_12_issue_oa-davincinews oa-davincinews_0_e140e65a71cb_「美容はモテでも若返りのためでもない、自分にやさしくする練習だ」【読書日記⑥】 e140e65a71cb 0

「美容はモテでも若返りのためでもない、自分にやさしくする練習だ」【読書日記⑥】

2019年9月2日 19:00 ダ・ヴィンチニュース

2019年7月某日

 とある対談記事の取材をする前、私は美容室に来ていた。美容室といっても、頭を真っ赤に染めてもらうほうの美容室ではなくて、ヘアメイクのほう。対談の前も、イベントの前も、プロフィール写真を撮る前も、デートの前も、初めてクラブに行ったときも、私はいつも美容室でヘアメイクをしてもらってきた。眉毛も自分で整える自信がなくて、2週間に1回のペースで眉カットにも通っている。


 プロに手をかけてもらうと仕上がりが実際違うとは思うし、何よりその事実が私を支える背骨になってくれる。ときどきお任せしたメイクが派手すぎたり、自分好みでなかったりすることもあるけれど、自分がしたメイクでは大事な場面で勝負しに行けない。自分の化粧に自信がない。

 スキンケアもよくわからない。Twitterで「スキンケアをしてから眠る私えらい」という類の投稿を見ただけで、その人と、その人に“いいね”している人をミュートしてしまうほどにコンプレックスがある。そして、そんなことをしている自分にもガッカリしながらメイクしたまま寝てしまう。

 そう思うくらいなら、自分も努力すれば良いのだけど、次から次へと新しく商品や情報が登場し「こんなメイクは時代遅れ!」「お金をかけなければきれいになれない!」などと煽るようなキャッチコピーを見ていると心が折れて、メイクなんて適当な自己流でいいかという気がしてくる。負け戦をするくらいなら万年補欠でいたい。

 それでも一度、ベーシックなメイクの仕方は知っておいたほうがよいかなと思っていた矢先、当時付き合っていた風の男の子に「なんかもっとちゃんとメイクとかしたほうがいいんじゃない? 〇〇さんもメイク講座通ってきれいになったし」と言われたことがある。カチンと来て、30,000円のメイク講座に通い始めたけれど、何かが劇的に変わったという実感もなく、美容部員さんとの居心地の悪い時間を消費するだけの徒労に終わった。

 メイク講座を勧めてきた男の子も悪いと思ったのか、「最近きれいになったよね」としきりに言うようになり、当時の私も好き好き大好き超愛してるモードだったので安い言葉に脳みそをドロドロ溶かして浮かれていたけれど、自分ではなく好きな男のテンションを上げるために払った30,000円はやっぱり高かったなと思う。30,000円あったら、1カ月間はバーミヤンのおつまみセットで豪遊できる。何だか思い出したらムカついてきた。今からでもいいのでバーミヤンを奢るか30,000円ください。

『美容は自尊心の筋トレ』(長田杏奈/Pヴァイン)

 そんな美容に対するコンプレックスと恐怖心のかたまりのような私が手に取ったのは、美容ライターの長田杏奈さんによるエッセイ集『美容は自尊心の筋トレ』(Pヴァイン)だ。発売直後から話題になっていたのだけど、正直なところ私は最初、絶対に手に取るまいと思っていた。美容本の多くは美容に詳しい人が知識をひけらかして「そんなんだからあなたはダメ!」とマウントをとるか、「ありのままのあなたが美しい」と根拠のない励ましをしてくる。だからこの本もそうに違いないと決めつけて斜に構えていた。でも、『日本のヤバい女の子』を描かれたはらだ有彩さん(※最近続編が刊行されました)がTwitterで感想を書いていたのを見て、ちょっと読んでみようかなという気持ちになって、勇気を出して買ってみた。

 恐る恐るページを手繰って読んだ『美容は自尊心の筋トレ』は、私が知っている美容本とは全く違っていた。
 この本の読みどころはまず、各エッセイのタイトルにある。

「『見た目が9割』だったら警察いらない」
「クラス1の美人とも交換したくない顔」
「SNSは人目を気にしないための壁打ち」
「死ぬほど好き♡でも自尊心は委ねるな」

 などと、スカッとするようなパワーワードが並ぶ。

 目次を読むだけでも元気が出てくるけれど、中身はこのパワーワードの羅列だと思ってくれていい。

 私がとりわけ好きだったのは「本当にあった、写真に写らない美しさの話」の中にある、この部分だ。

そして、実は目に見えてる美しさが写らなくて、歯がゆいことは、公私共によくある。ただ、単に写真うつりが悪いという話ではなく、写真では捉えきれない魅力が溢れているんだなと解釈している。鏡の中の自分がパッとしないなと思ったとき、写真に写った自分が期待外れだったときは、鏡も写真も信じなくてオッケーだと思う。ましてや、電車の窓をや。

 私はこの一文を読んで、まだ見ぬ長田さんが大好きになり、忠誠を誓ってしまった。こんなことを言える美容ライターは未だかつていただろうか。以後、長田さんのことは勝手に“美の姉御”と呼ばせていただいている。

 それから、この本がすごいのは美の観点から女性が陥りがちな呪いに切り込み、毒素をデトックスしてくれるところだ。

 先の「死ぬほど好き♡でも自尊心は委ねるな」の中では、恋愛の相手に自分の価値づけを求めてしまう女性に対する叱咤激励が、「母で妻で女で、それで?役割スタンプラリーからの卒業」では“の母になったら母らしいメイクを”というように、役割や肩書とメイクを紐づけて押しつける世間の風潮に真っ向から戦いを挑んでいる。

 ときに鋭い指摘をしながらも、そのスタンスに奢りはなく一貫してやさしい。自分のちょっと先を生きるお姉さん友達が「いつまで落ち込んでいるの? こっちに来なよ、楽しいよ」と手を振って待っていてくれているような感じだ。

 今まで幾度となく「ありのままのあなたが美しい」というフレーズに触れてきたけれど、1ミリも心が動くことはなかった。世の中に数多いる美しい人を前にして、ありのままの自分が美しいと思えるまでの間には崖ほどの大きな溝がある。その溝の上に丁寧に根拠やエピソードで作られた橋を架けて、向こう岸に渡してくれる人がいなかった。それをしてくれたのが長田さんだった。著作の中でも書かれていたように、これは美容本の形式をとったエンパワメント系のフェミニズム本だ。

「できましたよ」

 そう言われて鏡を見ると、髪の毛も化粧も盛りに盛られた私がいた。化粧はケバケバでちょっと怖いし、髪の毛なんか赤い鳥の巣みたいで、美容師さんには悪いけど笑いをこらえるのに必死だった。これはこれで悪くないかもしれない。でも、ちょっとやりすぎで、私が自分でメイクをしたほうがよかったかもと思った。

 後日、大好きなお友達から誕生日にもらったアイシャドウのカラーパレットを開いてみた。色とりどりのアイシャドウを全部自分のために使っていいんだと思ったらワクワクした。赤を多めに乗せて、オレンジも重ねてみると風合いが変わる。私はこれ以上にないくらいに自分の顔に夢中になって、鏡越しの自分を見つめた。

 出来上がったメイクはやっぱりへたくそだったけれど、どこをどうしたら可愛くなるのか、もっといろいろ試してみたいと思えた。明日もお化粧をするのが楽しみだなと思いながら、いつもより丁寧にメイクを落として、珍しくパックをして眠った。

文=佐々木ののか バナー写真=Atsutomo Hino 写真=なかむらしんたろう

【筆者プロフィール】ささき・ののか
文筆家。「家族と性愛」をテーマとした、取材・エッセイなどの執筆をメインに映像の構成・ディレクションなどジャンルを越境した活動をしている。Twitter:@sasakinonoka

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「会社の人間関係に疲れた…」嫌なヤツには「期間限定思考」で接する! 職場のしんどいが消え去る本

2019年9月2日 17:30 ダ・ヴィンチニュース

「休日に、明日からまた仕事だと思うと憂鬱になる…」「面倒な仕事を押しつけられても断れなくてつらい…」「同僚と比べて自分は劣っている気がする…」そんな仕事におけるストレスを抱えている人は多い。

『1万人超を救ったメンタル産業医の 職場の「しんどい」がスーッと消え去る大全』(井上智介/大和出版)は、産業医・精神科医である著者が、職場の「しんどい」のときほぐし方を教えてくれる1冊だ。

 本書からすぐに真似できる考え方を3つ紹介したい。

・人生は「60点合格」が一番心地いいと考える

 職場やSNSで人と比べて劣等感を持つこともあるだろう。だが「100点満点の自分」を目指したところで、理想と現実のギャップに悩み続けるだけかもしれない。もし100点を取れたとしても、「次も100点を取らないと許せない」とずっと自分に負荷をかけ続けるだろう。そこで本書がすすめるのが「人生の合格ラインを60点にする」ことだ。そこを目指せば「失敗しても当然」「うまくいかなくてOK」と考えることができる。「しんどい」を消すには、心に余裕を持たせることだ。

・嫌なヤツとの付き合いは「期間限定思考」で

 職場の苦手な人物との関係は、ゴールを作ると楽になったりする。たとえば、イヤな上司との関係。「2年以内に2回は定期の異動チャンスがあるから、それで上司か私が異動にならなかったら転職しよう」と考えてみてはどうだろう? 終わりが見える「期間限定」の形は気楽に感じる。だが、著者によるとこの「期間限定思考」を実践したほとんどの人は実際には転職に至らなかったという。心に余裕が生まれることで、相手の懐に飛び込めるようになるのだという。まずは、自分の決めた「期間」でそれを試してみよう。

・NOと言えない人は「先制パンチワード」で自分を守る

 イヤな仕事でも「頼まれると断れない」という人は多い。頼まれ仕事の負担を回避するために使いたいのが「先制パンチワード」だ。「先制パンチワード」は、先に自分がへりくだる態度を見せることで、相手にイヤな気持ちをさせず断るための言葉だ。

例:「Aさんには迷惑をかけますが、できません」
例:「ダメなやつだと思われるかもしれませんが、できません」

 こういった、先にへりくだる枕詞をつけてみる。また、普段から「ゴミを拾う」「ドアを開けてあげる」という自分にできる「小さな親切」を先にして、印象をよくしておけば、無理難題の「大きな親切」を断りやすいという。

 著者は産業医として「ラフに生きる」というモットーを掲げているという。「ラフ」には「大雑把な(rough)」「笑い(laugh)」という2つの意味がある。本書はそんな「“ラフ”に生きるコツ」も紹介しており、本書を読者の気になった部分から気軽に読んでもらえたらとしている。しんどい気持ちを抱えて疲れきった自分の心を、本書のテクニックで“ラフ”にほぐしてほしい。

文=ジョセート

『1万人超を救ったメンタル産業医の 職場の「しんどい」がスーッと消え去る大全』(井上智介/大和出版)

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