蟹は人によってはアレルギーを起こす食材のひとつのため、妊娠中に食べても大丈夫か心配になる妊婦さんもいると思います。今回は妊娠中の蟹を食べるときに注意したいこと、蟹を食べることでおなかの赤ちゃんに影響があるのか解説します。
妊娠中に蟹は食べられる?
妊娠中に蟹を食べる際、部位によっては食べてもよい部分と食べないほうがよい部分があります。
食べてもよい部分
蟹の筋肉部分は生でなく火を通していれば食べても大丈夫です。しかし、生や半生の状態で食べることは避けましょう。
生や半生で食べてはいけない理由は、蟹にはリステリア菌やトキソプラズマが生息していることもあるため、万が一母体がリステリア菌やトキソプラズマに感染すると、おなかの中の赤ちゃんにも胎盤を介して感染してしまう可能性があり、流産や早産の原因となったり、赤ちゃんに障害が残ったりするおそれがあるからです。リステリア菌やトキソプラズマは、しっかりと火を通すことで死滅できるため、蟹を生や半生状態で食べるのは控え、加熱処理をした料理を食べるようにしましょう。
蟹の筋肉部分には妊娠中に摂取したいタンパク質をはじめとするさまざまな栄養素が豊富に含まれており、特にビタミンB群の一つで神経や血液細胞の正常化に役立つビタミンB12が多いことで知られます。ビタミンB12は蟹の種類にもよりますが、100g(太めのカニ足2~3本) で、1日の必要量を満たします。
食べない方がよい部分
蟹味噌は食べないほうがよい部分となります。蟹味噌は、人でいうと肝臓と膵臓の部分です。肝臓は有害物質の解毒・分解するはたらきがあるので有害物質の濃度が高い臓器となります。蟹は海の底に生息しているため、海の底にたまっているカドミウムなどの有害な物質を取り込んでいる可能性もあります。カドミウムを過剰に摂取することは体にとって有害です。食品安全委員会の資料(※1,2)では、一般的な日本人における食品からのカドミウム摂取では、健康に悪影響を及ぼす可能性は低いといった報告がありますが、その一方でカドミウムの濃度と早期早産の頻度との間に関係がみられたという研究結果もあります。ですので、蟹味噌にはカドミウムが多く含まれていることから、食べることは避けたほうがよいでしょう。
参考:
※1 食品安全委員会「食品中のカドミウム」
※2 食品安全委員会「食品から摂取されるカドミウムの健康影響評価」
蟹を食べることでおなかの赤ちゃんへの影響はある?
蟹は厚生労働省が指定するアレルギー症状の明らかな原因と特定された「特定原材料等」のひとつのため、妊娠中に食べることでおなかの赤ちゃんに何らかの影響があったり、生まれた赤ちゃんが、将来、蟹を食べた時にアレルギー反応が出るのではないかと心配される方は多いのではないでしょうか。
しかし、厚生労働省では、甲殻類のアレルギーがない妊婦さんが妊娠中に蟹を食べたことで、赤ちゃんが甲殻類のアレルギーになるということは十分な根拠がないと発表していますので、蟹を食べること自体がおなかの赤ちゃんに影響を与えることはないと言えます。
まとめ
高タンパクで栄養豊富な蟹ですが、アレルギー物質を含む特定原材料のひとつでもあります。アレルギーのない妊婦さんが蟹を食べるとおなかの中の赤ちゃんが将来蟹のアレルギーになるという十分な根拠はありませんが、妊娠中に蟹を食べる場合は、感染や蟹に蓄積した有害物質の影響も考慮し、必ず火を通して、筋肉部分を食べるようにしましょう。
監修者:管理栄養士 井上 わかこ
京都女子大学 食物栄養学科卒業 管理栄養士 一女の母
外食産業での勤務経験(オーガニックレストラン勤務) が長く、その経験から素材や調味料も健康に大きく関係すると考えている。現在はクリニックやスポーツジムで、定期的に栄養カウンセリングやセミナー活動を行っている。
ベビーカレンダー編集部